【感想・ネタバレ】行先は未定ですのレビュー

あらすじ

「生きることはわかったような気がするんだけど、死ぬっていうのはどういう感じなのかな」
谷川俊太郎さんは、亡くなる2週間前まで語ってくれました。

「いきる」「はなす」「あいする」「きく」「つながる」「しぬ」とは?
詩人が語った111の言葉を、書き残した44の作品と一緒に構成する「ことば+詩集」です。

ぽつりとおかしく、ぽつりと鋭い、谷川さんが置いていった言葉たち。

92歳でこの世を去るまで、新しい作品を生み出し続けた谷川さん。
「答えのない人生」を生きた谷川俊太郎さんの宇宙が見えてきます。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

鉄腕アトムを書いた人だったのですね。
昔、高校生の時に
詩を書く授業で
恥ずかしくて自分の詩を書けなく
バレそうもない歌詞を
提出した記憶がある。

今なら違反してますよね。

詞の書き方を教わった感じです。

0
2025年10月20日

Posted by ブクログ

俊太郎さんは根っからの詩人なのだということを、
改めて感じました。言葉を疑っているとおっしゃっても、難しい単行本はなくて、言葉の意味、持ち味?を素直に生かしている作品ばかりです。
言葉の背景に、俊太郎さんの人生そのものが見えている、そんな詩を書けるなんて、すごいです。
話す言葉、心から流れ出た言葉が、自らメロディを奏でて詩になったという感じです。
何回も推敲なさるということですが、
言葉に命を与え、読む人の心に響くことで、世の中のためになるって、詩人の偉大さを思いました。
ほかにも大好きな詩人はたくさんいますが、
俊太郎さんはわたしのお師匠さんです。

0
2025年08月31日

Posted by ブクログ

2024年11月13日に92歳で逝去された国民的詩人谷川俊太郎さんが最後に連載されていた朝日新聞の「谷川俊太郎 未来を生きる人たちへ」をもとに新たに詩などを掲載して再構成されたもの。

谷川さん、井伏鱒二はお好きで西脇順三郎はあまり好きでなかったとは初めて知りました。


目次
    いきる
いまは生きている意味もなくていいと思える

    はなす
僕には自分の言いたいことはないんですよ

    あいする
好きってやっぱり非常に肯定的な言葉ですよね

    きく
いい音楽には、自分がない そういう言葉を書けたらいいな

    つながる
人間であることがいやなんですよ わざとらしいんですよ

    しぬ
死ぬっていうのはどういう感じなのかな 死んでみないとわからないんだよね



「いのち」

ある年齢を過ぎると
どこも痛くなくても
体がぎこちない
けつまずいて転んでから
それが分かり
体は自分が草木と
同じく枯れてゆくと知る


人間として
社会に参加した
忙しない「時間」は
悠久の自然の「時」に
無条件降伏する
落ち葉とともに
大地に帰りたい
変わらぬ夜空のもと


言語で意味を与えられて
人生は素の生と異なる
己が獣とも鳥とも違う
生きものなのを
出自を共にしながら
人は誇り
人は恥じる
    ー「今日は昨日のつづき」2025年所収



「さよならは仮のことば」

夕焼けと別れて
ぼくは夜に出会う
でも茜色の雲はどこへも行かない
闇にかくれているだけだ


星たちにぼくは今晩はとは言わない
彼らはいつも昼の光にひそんでいるから
赤んぼうだったぼくは
ぼくの年輪の中心にいまもいる


誰もいなくならないとぼくは思う
死んだ祖父はぼくの肩に生えたつばさ
時間を超えたどこかへぼくを連れて行く
枯れた花々が残した種子といっしょに


さよならは仮のことば
思い出よりも記憶よりも深く
ぼくらをむすんでいるものがある
それを探さなくてもいい信じさえすれば
       ー「私」2007年所収




「さよならは仮のことば」をお亡くなりになられた今再読すると胸がじんとします。

0
2025年08月18日

Posted by ブクログ

谷川俊太郎さんの最期の詩集ですね。
人生の大半を詩人として生きてこられた稀有な方でした。
どれほど、私は谷川氏の作品を読ませていただいて、
詩の道の前方を見つめ続けて、生きてきたことか……。
自分に残された、生きる日々をしっかりと生きてゆきます。

0
2025年07月27日

Posted by ブクログ

谷川俊太郎が”国民的詩人”と
称されていることがストンと落ちる
「ことば+詩集」。

詩とつぶやきの境界なく読めます。

「ほんとうに出会った者に別れはこない」
巨星堕ちて、
この傑作フレーズがますます響いたよ。

0
2025年07月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「行き先は未定です」と聞いたとき、どんな気持ちでしょうか?期待か、それとも、少し不安になるでしょうか。言葉の受け取り方は、そのときの心の状態や、未来に対する考え方によって変わりますが、未来を「可能性」として捉えたとき、「未定」は自由で希望に満ちた言葉になります。でも、先が見えないことに不安を感じやすいときには、「未定」は落ち着かない、心細い状態を表すものにもなります。「未定」という言葉が希望にも不安にもなるのは、読み手自身の「心の地図」が関係していると思います。
谷川俊太郎さんの作品はやさしさと同時に、どこか「しんどさ」を感じることがあります。偉大な詩人であると分かってはいますが、同時に苦手な詩人になることがあります。それは、時に彼の詩が沈黙や死、孤独といった深いテーマを、静かに、でも確かに浮かび上がらせるからです。ある評論で、谷川さんの詩には「言葉の意味から滲み出すものを沈黙に探る」姿勢があると語られています。読む人は、ただ言葉を追うだけでなく、自分の内面と向き合うことになる。その時間が、少し苦しくもあり、でもどこか心に残ると思えてなりません。この詩集のタイトルを聞いたとき、やっぱり谷川さんらしいタイトルだと思えました。
少し話がそれますが、一部収録の詩集『二十億光年の孤独』は、宇宙の広がりと人間の孤独を重ね合わせるような作品です。勝手なイメージですが中島敦の『山月記』や梶井基次郎の『檸檬』、太宰治の『人間失格』など、孤独や葛藤を描いた文学にも同時に惹かれるような気がします。これらの作品に共通するのは、「孤独を静かに、美しく描く」という点です。登場人物の姿を通して、自分自身の心の奥にある感情と向き合っているのかなと思うことがあります。
さて、この詩集の構成は、「いきる」「はなす」「あいする」「きく」「つながる」「しぬ」という章で、人生の旅を詩でたどるような流れになっています。晩年の谷川さんは、「生きることはわかったような気がするんだけど/死ぬっていうのはどういう感じなのかな」と語りました。この言葉には、死を恐れるのではなく、未知のものとして静かに受け入れようとする姿勢が感じられます。
また、谷川さんは「沈黙は私にとって切実な主題です」とも語ります。詩は、ただ言葉を並べるものではなく、人の奥深くにある静けさとつながるもの。晩年の作品では、意味よりも「響き」や「気配」を大切にし、読む人が自由に感じ取れるような余白を持った言葉を目指していたようです。同時に、詩と音楽の関係にも深い関心を持っていました。「詩はなくても生きていけるけれど、音楽はなくちゃ生きていけない」と語り、音楽を生きるうえで欠かせないものと捉えていました。朗読とピアノを組み合わせた作品『聴くと聞こえる』では、言葉が“話される音”として自然に響いていました。「いい音楽には、自分がない。そういう言葉を書けたらいいな」という言葉には、自己を消して、ただ響きとして存在する詩への憧れが込められています。詩や音楽は、意味を押しつけるのではなく、聴く人・読む人の心にそっと寄り添うものです。
詩集を読んだ後、タイトル「行き先は未定です」は改めて心に静かに問いかけてきます。未来が決まっていないことを、恐れるのではなく、受け入れてみる。そこに、谷川さんの詩が教えてくれる、やわらかくて深いまなざしがあるように思います。寂しさはありますが、新しい旅路への白地図を示してくれたような気がします。

0
2025年11月05日

Posted by ブクログ

過去の作品には好きなものがいくつかあるが、この本はいかにも追悼本ぽいまとめられかたであまり自分の好みではなかった

P9 人間として 社会に参加した せわしない「時間」は 悠久の自然の「時」に 無条件降伏する(「いのち」より)

P47 名を除いても 人間は残る 人間を除いても 思想は残る 思想を除いても 盲目のいのちは残る いのちは死ぬのをいやがって いのちはわけのわからぬことをわめき いのちは決して除かれることはない いのちの名はただひとつ 名なしのごんべえ(除名)

P80 どんな不機嫌な表情にもまして ほほえみこそが怖しい秘密をかくしている それがそんなにも優しく見えるのは 嘘をつくよりは黙っていたいと たぶんあなたがそう思っているから (「ほほえみ」より)

P111 すきがいっぱいあるひとは のんきであかるくつきあいやすい きらいがたくさんあるひとは つきあいにくいけどおもしろい すきでもきらいでもないのはつまらない(「バウムクーヘン」より)

P130 何ひとつ言葉はなくとも あなたは私に今日をくれた 失われることのない時をくれた (「魂のいちばんおいしいところ」より)

P184 だって言葉って。万人共有のものでしょう いくら自分の個性で書いたと思ってても 結局万人にそのまま通じちゃうわけだから

0
2025年08月09日

「小説」ランキング