冲方丁のレビュー一覧
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ここまで来るのが本当に長かった。
2011年に三冊構成で刊行されると思われていた『マルドゥック・アノニマス』は形を変えてやってきた。
ようやく、ガス室で再会した二人。
このシチュエーションは、『Preface of マルドゥック・アノニマス』として2011年に開示されていた。
そして今は2018年春。
『マルドゥック・アノニマス3』である。
この物語は長い。
そのひとつの要因は、登場人物の多さ。覚えられない。だけど、読み進める。そこにバロットがいるから。
そしてたどり着いたのが、前出のガス室での再会だ。
バロットとウフコックは再びパートナーとなるのだろうと思っていた。なぜならバロットはウフコックにとって残された最後の希望だからだ。
プロローグは終わった。
ここから再び二人の闘いがはじまる! -
Posted by ブクログ
先に「決戦!関ケ原2」を読んでしまったので、こちらも。
今回は徳川家康(伊東潤)、可児才蔵(吉川永青)、織田有楽斎(天野純希)、宇喜多秀家(上田秀人)、島津義弘(矢野隆)、小早川秀秋(沖方丁)、石田三成(葉室麟)。
2を読んだ時も感じたが、この戦いほど様々な思惑が交錯した戦いもないように思える。裏切りや傍観や致したかなく、という気持ちで参戦する者、戦いが終わった途端に保身や論功行賞に走る者、純粋に戦うことを突き詰める者、自分自身でなく自分の国をどう守るかに徹する者…。
この戦いでの勝者と敗者ははっきりとあるものの、その後の人生や評価、あるいは自分自身が顧みての勝者と敗者はそれぞれで、何が勝ちで何が負けかは分からない。
それらを七人の作家人が七様に描いてくれたのでどれも面白かった。
個人的には安国寺恵瓊も面白そうな人物で、その後に別の人物像で描いてもらえないだろうかとも思った。
この中では織田有楽斎や宇喜多秀家、小早川秀秋は面白かった。 -
Posted by ブクログ
決着が、つきます。
ともかくも、それに尽きる。
死すべきものは死に、残るべきものは残り…。
印象的だったのは、カジノの勝負の大詰め。バロットがウフコックを「外し」て勝負に臨む場面。
あ、この娘は自分の力で生きようとしてる…と。それでこそ、ウフコックといることが出来る…と。心の中で快哉を叫びました。
冒険小説の魅力とは、
「現実ではあり得べからざる困難に対して、様々なものを奪われ、喪失した人物が、自ら能力と心を振り絞って戦うことで乗り越えていく自己回復のプロセスを読む」
という達成感と爽快感、必死さにあると思うのですが、これはそういう意味では一級品。回復の助力をする者は魅力的であって欲しい。その魅力を語るという意味でウフコックはとびきり格好いいです。
でもそれだけじゃなくて。
バロットが自分の力でウフコックを護り、自分の未来を掴もうとした瞬間から、バロットも「何かを与えうるもの」に変貌してゆく。
それがとても素敵でした。
敵側のはずのカジノの面々が、バロットと心を重ね合わせるところも、馴れ合いでなくて大人の対応ですし。
敵役の悲しみにも寄り添いながら、罪は罪として清算させる。そこに妥協がないのもいい。凄惨な場面があるのに、清々しく。悲しいのに納得がいきます。
最後の方でウフコックとバロットが涙する場面は、最高の愛の場面です。
「ずっと愛してもらいたいと思っていた。
でも、愛したいと思ったのはあなただけ。」
と言った趣旨の言葉が、ズンと胸に来ます。
抱いていてくれと告げる、ウフコックのほのかなぬくもりも。
なにもかもを失ったとしても、与えられるだけではない。ただ無意味に与えるだけでもない。
生きるだけなら一人でも出来る。でも…取り戻した何かを、愛する人に一途に差し出せるから…。抱きしめることが出来るから…。
ああ、これ以上言葉は要りませんね。
刺さった何かを大事にしたいです。 -
Posted by ブクログ
戦いを勝ち抜くのは、何も圧倒的な重火器力だけではないことがこの2冊めと、3冊目の大部分を費やして描かれます。
シェルの犯罪を立証する証拠を握るべく、バロットはシェルの経営するカジノに乗り込むのですが…BJのルールを解って読んでると、息が詰まるような熱戦が。よくわからないと、最初はついていくのに大変ですが、頑張って読み進めて下さい。3巻でいろいろ見えてきます。
ところで。
ウフコックやボイルドが帰属していた研究機関「楽園」が登場します。が…。ここの『何かは、確実に有益で正しく、物悲しいほどの均衡と叡智を持っているのに、確実に何かが間違っている…』
そんな寂寥感と終末感が切ないです。
これはどこかいびつだと感じて、ウフコックは外に出たのだろうなと、私は感じました。
どんな障害や疾病、傷を持っていても、ある意味万能に生きられる、そんな世界は、確かに桃源郷。それを差し出されたら私は、どうするでしょう。愛する人に鳥籠で捕らえられるのなら、一種のファンタジー。でもここには、その優美さはありません。
…私もやはり、猥雑でも良い。傷つけられる怖さと可能性を孕んだ都市へと出ていく気がします。
過去と向き合うことを放棄したものは、冒険小説の
主人公にはなれません。楽園でのいろんな邂逅や、カジノでの熱戦は、バロットが自分の内面と過去に降りていく、その長い縄梯子なのかもしれないのです。