冲方丁のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
超次元的能力を持つ者フォースと持たざる者サードの対立が原因で一度滅びかけた地球を舞台にする近未来ハードボイルドSF。
主人公パットはその戦争で妻子を失った軍人。装置による制御がなければ正気を保てないほどフォースを憎んでいる。改造した肉体を持つ軍人であるパットはフォースを育成する機関から派遣された少女ラファエルとともにある事件の捜査に当たる、というあらすじ。
展開が早く文字数あたりの情報量が多いのでやっと着いていってる感じだったが、読んでいて不思議に状況が見える。迫力のあるサイキックバトルは怖いくらいだ。
父親としてのパットに共感しながら読んだのでラスト少し前パットとある人物の対面シーンでグッときた。
あとがきを読むとこの話は完結しながら他の話のプロットにもなっているらしい。それらも気になる。 -
Posted by ブクログ
ファンタジー、歴史物を読んできて、現代物。
格好良さというか、中2っぽさ全開。好きです。漢字の使い方が、かっこいいです。まあでも、これをかっこいいと思うのは、ヤンキー的な、夜露死苦的な感じがないこともないですが。
「天地明察」は、ちょっと中2っぽさは少なかったかな?
まあ、題名と初手天元とかは、ちょっといい感じか。
これを読んでいる間、古川 日出男古屋を思い出していました。とんでもない話なのに見てきたように書くところがにているのかなと思います。
この2人は凄いです。
それにしても、これが16歳の処女作。おとろしい話です。
荒い。でも、ものすごいものが埋まっている感がメチャクチャします。
これが、洗練されて、「ばいばい、アース」にもなるし、「天地明察」にもなっていくんですよねぇ。 -
Posted by ブクログ
アニメ化など話題にのぼることが多くて、ようやく手にした本書だが、予想以上にグロいシーン、ハードなシーンが多かった。特に敵の殺し屋グループがヒドくて、こんなのアニメ化したらどうなるん? 見るに耐えるのか? と下世話な興味がわくレベル。
物語の基本構造はごくシンプルで、復讐譚を兼ねた成長物語。
社会の底辺にいた少女が、たまたま社会的に成功した男に拾われ、専属の娼婦となるが、彼の商売のため、計画的に殺害されそうになる。そこを一組の事件屋がレスキューし、「スクランブル09」という法令にしたがって少女を再生させる。彼女はすべての事情を受け入れ、自分を殺害しようとした相手を追い詰めるため、戦う力を手に入れる。三部作の第一作である本書はだいたいここまで。
シンプルに成長物語とはいっても、主人公の心の動きがきちんと描き出されなくては、まったく説得力のない話になってしまう。その点、この作品では、主人公バロットの心の傷や弱点をきっちり描き出し、それらがどう変化し、さらには暴走するかを丁寧に追いかけている。
また、バロットを保護する事件屋たち――科学者のドクターと人工的に生み出された万能ネズミのウフコックが、とにかくよく出来た人間(ネズミ)で、鉄壁の安心感があり、バロットの凄惨な過去とうまく釣り合いがとれている。
ウフコックの支援を得て、肉体的にも精神的にもすっかり生まれ変わったつもりでいたバロットだったが、彼女が最大のピンチを自分で招いてしまうところが興味深かった。その理由というのがもう、すべての人類に共通するんじゃないかという根源的な理由で、うわぁ、と思った。
身体能力を人工的に強化すること、また生まれつきの才能ゆえに、バロットの戦闘能力はチートといえるレベルまで上がったのだが、これまで支配ばかりされてきた彼女が、他人を支配できる側にまわったとき、彼女は力に溺れ、他者をいたぶることに快感を覚えはじめる。支配と服従は人の心の根源に根ざし、表裏一体の関係だということ。人間は聖者ではないので、しっかり教育しない限り「これまでひどい目にあわされた」→「だから自分は他人をひどい目にあわせないようにしよう」というふうにはならないのだ。
これがウフコックに言わせれば、力の「濫用」にあたる。「濫用」に対してトラウマを持つウフコックは、それ以上バロットを支援できなくなり、最大のピンチに陥った。
もちろんバロットはこのことをすぐに理解し、いたたまれないほどの後悔にさいなまれるのだが、もう手遅れかもしれない。というところで次巻に続く。 -
Posted by ブクログ
賭博士・シェルの手により殺されかけたバロットはシェルの犯罪を調べていたドクター・イースターと人の知能を持った万能兵器のネズミ・ウフコックの手によって救われる。
そしてバロットは二人と共にシェルの犯罪を暴くため奔走するのだが……。
バロットは家庭環境から娼婦に身を堕とし過酷な人生を歩んできた少女です。彼女の家庭環境の一端は小説内の裁判シーンでも触れられますが、それだけに彼女がウフコックやイースターといった信頼できる大人たち(ウフコックは大人とは違いますが)に出会えたことが、そして彼らを信頼しようとしている姿がとてもいいな、と思いました。
終盤の戦闘場面の迫力もかなりのものです。バロットはシェルの手により瀕死の重傷を負いますが、マルドゥックスクランブル09という緊急法令により、禁止された科学技術を全身に施されることで生き延びます。その際バロットは特殊な力を手に入れ、兵器でもあるウフッコクの力も相成り自身の力に溺れます。その描写も凄まじいものがあります。
そしてバロットたちを付け狙うボイルドという強大な敵の存在や、禁じられた科学技術によって生まれたが故のウフコックたちの存在意義の話など読みどころは多いです。文庫で全三巻の作品ですが、あっという間に読み終えてしまいそうな気がします。
第24回日本SF大賞