冲方丁のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
少女娼婦バロットは賭博師シェルに計られ爆炎にのまれた。瀕死の彼女は緊急法令スクランブル09により蘇り、シェルの犯罪を追う。
心を殺し、望むことを諦め、男たちに支配され、死さえ従順に受け入れかけていたバロット。彼女が蘇り、手に入れた力を操作する時に感じた征服感と高揚感の描き方が良かった。力を手に入れた人間は間違いなく彼女のようになるから。
まだ1冊目だけど、最後まで彼女が戦うだけの話なのか、今後彼女の内面の変化を描くのか、気になるところ。
必要以上にグロテスクな部分もあるけど、沖方丁のリズム感あふれる文体は好きだと思った。
*以下引用*
*愛の定義は与えることだ。それにはルールがある。与えられる者が守るべきルールが。それさえ守れるなら、君は愛され続ける (p18)
*(生きていていいの?)誰もイエスと言ってはくれない気がした。それこそ無条件に愛された経験がない人間が抱える欠落だと泡がささやいた。その欠落に従ってこの世から消え去るか、一生涯イエスという答えを探すために生きるのか。 (p49)
*心の殻を、割れずにいるだけだ。あまりに自分を傷つけるものが多すぎて (p70)
*信じられることが何よりの支えだった。裏切られないという確信。それが世界に満ちてさえいれば麻薬も銃も必要ないのだと、何年も前に兄に言われたことを思い出した。 (p117)
*私の知ってる女の子たちみんな、それが手に入らずにクスリや男でぐちゃぐちゃになって生きてる。そんな目に合ってまで生きてる言い訳がほしいだけなのに。(中略)私を愛して、ウフコック。 (p144)
*この全ては自分が起こしているのだという快感が込み上げた。それは圧倒的な支配力だった。物事を思い通りに動かし、感情を持つ人間さえもいいように操作する力。(中略)男のひとたち、みんな、いつもこんな感じだったんだ。これか、と思った。自分を支配する男たちが味わっていたものはこれだったのだ。この胸の焼けるような甘い思い。これをどうして自分も味わってはいけないのか。 (p263-p264) -
Posted by ブクログ
茫然自失になるほど度重なる別れ。
しかし、裏を返せばそれだけの喪失感を覚えるほどの出会い・縁が春海にはあった、という事でもあり。
おことを喪い、伊藤様を看取る事も出来ず、泣き崩れる春海の姿が切なくてかないません。それだけ大事な人たちだったんだ、と。
そして、道策の一途なツンデ…もとい、ライバル心。本当に春海は人に恵まれている。
誰もがその大きな器に水を注ぎたくなる、いい表現です。
それでも改暦の儀は困難な事業。ありとあらゆる知と力を尽くして、ついに成就なるか……以下続巻、という時点で結果はアレなわけですけれどw
兎にも角にも幸せな春海の人生。
どんな困難に打ちひしがれようとも、やはり彼は幸せだと思います。
素晴らしい人の縁と全てを賭けられる夢がある。これ以上に素晴らしい人生は、そうはない。 -
Posted by ブクログ
ライトノベルから小説へ脱皮した、沖方氏の短編集。歴史小説的な天地明察につながる日本改暦事情からOut of ControlといったSFちっくな作品までをおさめた作品となっていて、筆者の想像力と疾走するような文体を思いっきり感じることができる。ちょっと森博嗣のような文体の作品も。
天地明察の本当に素晴らしい小説を生み出すに至ったのは、きっと時空を超えた想像力なんだろうなあ。「人間の心信・遊び心が極まって文化になるのだ」という粋を感じる文章から、筆者の持つ小説を書くということは、言葉を大事にして、それがもたらす文化に至るひとしずくを力一杯刻む作業なのだと感じた。仕事でもプライベートでも、自分自身が紡ぐ言葉とは結局何を作るのか。そして、文化に繋がる何かなのかということを意識していきたい。