村上春樹のレビュー一覧
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ジャズを聴くと『ポートレイト・イン・ジャズ』が読みたくなるし、『ポートレイト・イン・ジャズ』を読むとジャズを聴きたくなる。そんな本です。
というのも、久し振りにセロニアス・モンクを聴いていて、またこの本を読み返したからです。
様々なジャズ・ミュージシャンが、村上春樹の文章によって、和田誠のイラストと共に彩られていく本書ですが、大好きなセロニアス・モンクについての文章をちょっと引用してみます。
「濃いブラック・コーヒーと、吸いがらでいっぱいになった灰皿と、JBLの大きなスピーカー・ユニット、読みかけの小説(たとえばジョルジュ・バタイユ、ウィリアム・フォークナー)、秋の最初のセーター、そし -
Posted by ブクログ
過去の人間関係におけるあまりに深い傷のせいで、自分自身がわからなくなり、自己嫌悪に陥る様子がリアルだった。つくるほど壮絶な経験をしたことはないが、自分に色がない、自分には人に与えられる特別なものはないと思ったことがあったため、この本を読んでいると、このような感情をより明確に言語化されているような感覚があった。物語の後半で、つくるに対してエリが言った、「もっと自信と勇気を持つべきだよ」「たとえ君が空っぽの容器だとしても、それでいいじゃない」「もしそうだとしても、君はとても素敵な、心惹かれる容器だよ。」という言葉が印象に残っている。自分では個性がなくつまらないと思っていても、ある関係の中ではとても
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Posted by ブクログ
小説とはこういうので良いんだよ、と言っているかのように感じる作品。肩の力が入れられてない軽妙さを伴った不思議な非日常が彩られており、読者を小説の世界へ誘う。これは村上作品全般に言えるかもしれない。
本作は境界線が曖昧で淡い。主人公は母親と価値観や考え方が大きく異なる。容姿や勉学などに向上心は無く、自分の得意な絵を描くことに重きをおく。しかし、母親はそんな娘を評価せず、嘆きすらする。互いに良い点、悪い点の評価が真逆といっていい。価値観が異なることで親子という関係でも人間関係に歪みが生じる。初めは小さな歪みが、やがては大きな事態へと変貌する。
これは社会人にも当てはまるだろう。他人の価値観を重んじ -
Posted by ブクログ
1980年代、ヨーロッパ諸国に長期滞在した著者が、その土地で過ごした出来事を書き綴ったエッセイ本。時系列的に『ノルウェイの森』、『ダンス・ダンス・ダンス』を執筆した頃になるが、本書にもあるように、『ノルウェイの森』が売れたことは本人も予想外のことであったが、皮肉なことに、この作品によって長編小説をしばらくの間書けなくなってしまった。しかも日本国内で散々な目にあったこともあって、この時期は本人にとってはつらい時期であった。このように、本作は単に海外の日常を書き出すのみならず、著者がスランプに陥ったとき、どのような生活を送って、再び長編小説を書くに至ったのかという、復活の軌跡としても読める。
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Posted by ブクログ
「ねえ、みんなそうやっていつかはいなくなってしまうのよ」
私がこの台詞とこの本を通して浮かんできた風景は「風の吹く草むら」である。
短く刈られた草むらとまばらに生える樹木しか視界に入らない公園(武蔵境近くだと野川公園でしょうか)。風が吹く前と後で目に見える景色は変わらない。
ただ、自身の身体を風が通り抜けた前と後では、明らかに違うものがある。不可逆な時間の流れの話でも、崩れた前髪の話でもない。
風に吹かれたという「体験・経験」が自身の中に積み上げられる。
いつかのインタビューか何かで、彼の目指す小説とは、読む前と後で読者の立ち位置が少しでも変わっているようなものである、みたいな発言があった