【感想・ネタバレ】国境の南、太陽の西のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年04月17日

この本はほんとに、自分に爪痕を残した作品。

村上作品では、最後の展開は読者任せというか、はっきりと描かれないことも多いと思うが、この作品もそう。

最後の一文を、これからこの主人公が救われた、と取るのか、それとも異世界へ旅立つ暗喩と取るかで全く解釈が異なってしまう。

前の感想にも書いたけど、本当...続きを読むに本というものは、自分の状態によってかなり解釈が変化するものだと思う。

1度目に読んだ時は救いしか頭に浮かばなかったが、違う時に読んだら、死後の世界への誘いか、と読めた。

村上さんの本を読むと、何か気温が下がったような、ピリッとした空気感、世界観に自分が包まれるのがすき。読んでいる間、別世界に行けるというか。。。でもそこに、自分も含まれている。

あまり他の人の評価が高くないようだけど、わたしはなぜかこの本がとても好きです

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Posted by ブクログ 2022年02月08日

今まで読んだ村上春樹作品の中で一番暗くてヘビーだった。

自分の気持ちを正直に打ち明けることが最終的に行き着く場所なのだと思った。でも、素直に気持ちを打ち明けるのには時間がかかる。そもそもその気持ちに気づくことにも、それを相手に伝える決心をすることにも。そしてその間に物事は先に進んで複雑な形に凝り固...続きを読むまってしまう。
結局、素直になるためには段階を踏まなくてはいけないのかもしれない。ステップを踏む事でまた新たに踏まなくちゃいけないステップが生まれるとしても、物事があるべき場所に収まろうとする力が人をまた次のステップへ駆り出していく。

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Posted by ブクログ 2021年11月18日

村上春樹で上位に入るおもしろさであった。村上春樹実体験の要素も入り込んでいて現実味を帯びていてハラハラしながらどっと読み進めることができた。幼少期から成長する過程を描いていく時系列が過去から未来へ流れていくスタイルをとった村上作品を読むのはこれが初めてであった。内容は主に2人の女性と主人公の関係性を...続きを読む描くものである。小さい頃ずっと一緒にいた女性と中学で離れ離れになり、大人になって結婚する女性と出会う。、しかし安定した収入を稼ぐようになって幼少期の頃一緒だった女性と出会う。主人公は理性では抑えられない愛情を抱いてしまい、不倫をするという構成になっている。主人公の自分の行動への葛藤が船名に描写されていて。女性側も主人公の視点を通して描かれていて、女性の感情をこちらが想像する余地が与えられていてなぜこの女性はこう発言したんだろうと考えることができた。また再読したい。

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Posted by ブクログ 2021年11月09日

『自分が今、何かに激しく巻きこまれていて、その何かの中には僕にとって重要なものが含まれているはずだ…それが何であるかのかを僕は知りたかった』
『午前四時の街はひどくうらぶれて汚らしく見えた。そのいたるところに腐敗と崩壊の影がうかがえた。そしてそこにはまた僕自身の存在も含まれていた。まるで壁に焼きつけ...続きを読むられた影のように』
『ずっと井戸の底で暮らしているみたいだった』
『ある種のものごとは、後ろ向きには進まないのよ。それは一度前に行ってしまうと、どれだけ努力をしても、もうもとに戻れないのよ。もしそのときに何かがほんの少しでも狂っていたら、それは狂ったままそこに固まってしまうのよ』
『“しばらく”というのはね、待っているほうにとっては長さが計れない言葉なんだ…そして“たぶん”というのは重さの計れない言葉だ』
『みんないろんな生き方をする。いろんな死に方をする。でもそれはたいしたことじゃないんだ。あとに砂漠だけが残るんだ』


孤独と喪失の物語。
吸引されたイズミを失い、島本さんも失う。
現実には、有紀子と2人の娘と幸せに生きる。
全てを語るラスト…
『僕はその暗闇の中で、海に降る雨のことを思った。広大な海に、誰に知られることもなく密やかに降る雨のことを思った。雨は音もなく海面を叩き、それは魚たちにさえ知られることはなかった。誰かがやってきて、背中にそっと手を置くまで、僕はずっとそんな海のことを考えていた』
この『誰か』とは?
イズミか、有紀子か、島本さんか…

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月24日

恥ずかしいが、主人公が自分のように思えた。
幻想を見るのはやめて、自分が変わらなくてはならない。
目の前の現実を見なくてはならない。

印象的なセリフと思ったことを書いてみます。

p.66〜「でも何年かが経過してからあらためて振り返ってみると、その体験から僕が体得したのは、たったひとつの基本的な事...続きを読む実でしかなかった。それは僕という人間が究極的には悪をなし得る人間であるという事実だった。僕は誰かに対して悪をなそうと考えたようなことは一度もなかった。でも動機や思いがどうであれ、僕は必要に応じて勝手になり、残酷になることができた。僕は本当に大事にしなくてはいけないはずの相手さえも、もっともらしい理由をつけて、とりかえしがつかないくらい決定的に傷つけてしまうことのできる人間だった。…二十歳をすぎた頃に僕はふとこう思った。僕はあるいはもう二度とまともな人間になることはできないのかもしれないと。僕はいくつかの過ちを犯した。でもそ!は本当は過ちでさえなかったのかもしれない。それは過ちというよりは、むしろ僕自身の持つ本来的な傾向のようなものであったのかもしれない。そう思うと僕はひどく暗い気持になった。」
p.291〜「僕はこれまでの人生で、いつもなんとか別な人間になろうとしていたような気がする。僕はいつもどこか新しい場所に行って、新しい生活を手に入れて、そこで新しい人格を身に付けようとしていたように思う。僕は今までに何度もそれを繰り返してきた。それはある意味では成長だったし、ある意味ではペルソナの交換のようなものだった。…僕はどこまでいっても僕でしかなかった。僕が抱えていた欠落は、どこまでいってもあいかわらず同じ欠落でしかなかった。…僕の中にはどこまでも同じ致命的な欠落があって、その欠落は僕に激しい飢えと渇きをもたらしたんだ。」

p.208〜「たぶんこれからはしばらくはここに来ることができないと思います。もう帰らなくてはなりません。さよなら。お元気で」
p.242〜「国境の南にはもっとすごいものがあるんじゃないかと思っていたの」「そこは『たぶん』が多い国なの」
p.297「自分の中にこれから先ずっと有紀子や子供たちを守っていくだけの力があるのかどうか、僕にはまだわからなかった。…そしておそらく今度は、僕が誰かのために幻想を紡ぎだしていかなくてはならないのだろう。…でも今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は、力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろうー『たぶん』。」

→主人公は今まで多くの人を傷つけて来た。そのことによって、島本さん、イズミは、心の中の何かがぱったりと死んで、国境の南、太陽の西という場所にいってしまったのでは。島本さんは本当に死んでしまっていたのかもしれない。
その島本さんと再会してから、主人公は幻想を見させられていたのではないか。
p.297〜のセリフより、主人公が幻想を見させられていたことに気づき、主人公は、目の前の有紀子と子どもに力の及ぶ限り、幻想を紡ぎだしていこうとしているのでは。

また、何年か後に読みたいと思わせてくれた作品。

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Posted by ブクログ 2021年04月06日

タイトルからなんとなく想像していたのとはぜんぜん違った。まあ、他の作品もそうだけど。
自分の居場所ではない感覚、夫婦なんだけれど、実は何も分かっていない、何も尋ねようとしない。
もう一度読み返してから整理しよう。

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Posted by ブクログ 2020年12月04日

「ねぇ、」の多さが鼻に掛かるけど面白かった。
分かりやすい言葉で、恋でも愛でもないどうしようもできない何かを描ききっていて痛快だった。

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Posted by ブクログ 2022年05月02日

村上春樹の長編小説の中で、1番著者と主人公(「僕」)との距離が近く、親密度が高いと思った。もちろん同一人物ではなくて、「僕」は結婚して、子供を作り、2つ目の店を経営し始め、しだいにぼくら(著者、読者)から離れていくんだけど、自分の人生の正しさを「僕」は自問し、それに呼応して物語はほんとうの「僕」へと...続きを読む「僕」を引き戻していく。

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-そして私もたぶんあなたの全部を取ってしまうわよ。全部よ。あなたにはそれがわかっているの?それが何を意味しているのかもわかっているの?」(p248)

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中間の許されない決断をいつか自分がすることになるんだろうか、と思う。いつ、どんな決断をするんだろう。

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-思い出したようにときおり、雲の切れ目から太陽が顔を見せた。からすの声と、川の水音の他には何も聞こえなかった。僕はそんな風景を眺めながら、きっといつかこの光景を、どこかで目にすることになるんだろうなとふと思った。 (p160)

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Posted by ブクログ 2022年04月19日

欠落はどこまでいっても同じ欠落であるということ
欠落こそがその人自身であるということ
それでも生きていくということ

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Posted by ブクログ 2022年04月09日

不倫や浮気はダメということがすごく分かった。あと結婚する時も本当に好きな人と結婚しなきゃダメということが分かった。主人公も最初から島本さんと付き合って結婚出来たらよかったね。
途中に出てきた、ダブルデートをした片足を引きずる彼女は、とても良いアクセントだと思う。これがストーリーにどんな風に関わってい...続きを読むるのかは分からないが、こんな風にストーリーに直接関わらないことが書かれる事で、本当に人の人生を覗き込んでいるように感じる。多分人の人生にもこういうことはあると思う。大元のストーリーには関わらない小さな話、リアルである。
これを読んで、思ったのは「人生って短いんだなぁ。」だ。少年、青年時代はあっという間に過ぎ去り、進学、就職、そこからは毎日同じ人生。そして死ぬ。迷ったり悩んだり、悲しんだりしている時間が勿体ない。
ナットキングコールはジョジョを読んでいたお陰で知っていた。こういうところでもジョジョの知識は活躍する訳であるから、荒木先生は偉大である。

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Posted by ブクログ 2022年02月20日

主人公は嫌な感じだったが島本さんとの関係など雰囲気は彼の作品の中でもかなり好きな感じだった。しかしそれはどこまでも理想的であり現実味がありそうで全くないものだった。

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購入済み

真実

ジョモ 2022年01月29日

主人公の生き様が自分のライフプロセスと合わせて読め、前半の疾走感も凄くあっと言う間だった。真実はいったい何なのか、何が正しいのか非常に不思議な気持ちにもなった。彼らの続きが知りたくなる終わり方だった。村上春樹さんの作品を初めて読んだが、素晴らしさが少し分かつた。

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Posted by ブクログ 2022年01月17日

村上春樹が描くと「僕」になってしまう。例え、その主人公が俺と言っていたとしても、異なった言い方を本来はしていたとしても、村上春樹が描くと「僕」になってしまう、そんな気がした。
別のところにある物語が彼のフィルターで翻訳されて、村上春樹っぽく語り直される、そんな感じ。

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Posted by ブクログ 2021年12月07日

自分には何か欠けている、そしてそれを埋められるものを探している、と一度でも考えたことがあるのなら、読んで後悔はないと思います。自分がつねづね考えていたことがまとまった形で言語化されていて、すきっとしたし、胸がいたいとも思った。

登場する女性がみな、芯があってすてきなので、じっとりとした雰囲気の話で...続きを読むはあるがそこまで落ち込まなかったかも。落ち込んだけれど。

禿ワシは芸術と明日を食べるのね?

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Posted by ブクログ 2021年11月13日

何回目だろ…。読むの、と、思いつつ。

ザ・村上春樹

あの、独白のような語口。
きっと、この娘の方が…。
ずっと、思わせぶり
⁉︎。

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Posted by ブクログ 2021年09月05日

村上春樹の、作品の中では一番一気読みしてしまった。
読みやすく、そして先が気になりどんどん読み進めていきたくなる作品だった。
情熱的な愛の物語でもあり、そしてわたしはホラーも感じた。女の怖さというか。
結局、島本さんの【愛】が最悪の展開を免れたのかなあとかいろんなことを考えてしまう。また読みたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年02月07日

再々々々々々読くらい。
好きな箇所は同じだけど、刺さるところは毎回違う。
倫理的には褒められたことではないし、女の立場から言ったら「都合のいいこと言わないでよ」となる。

けど!
私はこの本が好きなのだ、それこそ"吸引力"を感じるレベルで。

そのへんにある何もかもをお盆に載せて...続きを読む持っていきたくなるような笑顔を持つ島本さん。
そして表情という名前で呼ばれるはずのものがひとつ残らず奪い去られていたイズミ。
彼女たちは対照的ではあるが、ハジメにとって意味するところは同じなんだろう。


そして、島本さんは「イエス」か「ノオ」しかないのよ、中間はないの、と言うが、それは幻想でしかない。
現実世界を生きる私たちは、中間を取るしかない時もあるし、むしろその方が多いと思う。
そうして生きているうちに、ある日自分の中で何かが死に、太陽の西へ西へ歩き続けて、自分自身も地面に倒れて死んでしまう。
なんとなくだけど、そんな気がした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月29日

結局最後まで今の島本さんのことが何も分からず、本当に幻のような存在がとても良い。別れる度に、もう登場しないんではないこと思ってしまう。
そしてイズミの怖さの表現がすごい。

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Posted by ブクログ 2022年03月13日

 結婚して子どもまでいる成人男性が、小学校の頃に好きだった女の子と再開してセックスして妻を傷付けるけど、結局女の子は消えちゃったので妻と縒りを戻す話。

 ……もう少しちゃんと書く。
 当時としては少数派の一人っ子だった主人公は、同じ小学校にいた足の不自由な一人っ子、島田さんに想いを抱いていた。別々...続きを読むの中学に進学してしまい、彼女のことを忘れられないまま、高校生になってイズミという女の子と交際をした。彼女と交際するも、彼女は島田さんが持っているものを持っていない、そんな美人でもない、と思い、結構雑に扱う。そんな彼に、イズミは以下の言葉を投げかける。

「あなたはきっと自分の頭の中で、ひとりだけでいろんなことを考えるのが好きなんだと思うわ。そして他人にそれをのぞかれるのがあまり好きじゃないのよ。それはあるいはあなたが一人っ子だからかもしれない。あなたは自分だけでいろんなことを考えて処理することに慣れてるのよ。自分にだけそれがわかっていれば、それでいいのよ」p.53

 結局他の女と姦通していたのがバレて、正直かつ不誠実な説明(言い訳)をして、イズミはそれを「理解しなかった」。壊れてしまった彼女を置いて東京へ行き、大学4年間をつまらなく過ごし、三十までを孤独に過ごした。
 三十になって一人の有紀子いう女性と結婚するが、そこには安心を求める主人公の気持ちがあったように思う。

「彼女と一緒にいると、この十年以上のあいだに自分が失いつづけてきたものの重みをひしひしと感じることができた。僕はそれらの歳月をほとんど無駄に費やしてしまったのだ。でもまだ遅くはない、今ならまだ間に合う。手遅れになってしまう前に、少しでもそれを取り返しておかなくてはならない。」pp.91-92

 で、結婚し子どもが二人、少なくとも形式的には順風満帆な人生を送っているときに、島田さん?に再開し、彼は島田さんという亡霊に搦め取られて……。そんな話。



 あらすじをなぞるとこれでもかというほどクズな主人公だが、私が今まで読んだ村上春樹の小説の中では比較的珍しく、主人公は妻と二人の娘もいる、その意味ではかなりスタンダードな社会人だ(義父が金持ちで、そのお金で自分のバーを持って、類い稀なる才能から経営もトントン拍子にうまくいくという点は浮世離れしている観もあるが、まあ…)。
 「子を持つ親として現実的に生きる」というノルマは、自分の孤独な過去や現在の人生に向ける眼差しを、曇らせてしまっているのかもしれない。

「これはなんだか僕の人生じゃないみたいだな、と。まるで誰かが用意してくれた場所で、誰かに用意してもらった生き方をしているみたいだ。いったいこの僕という人間のどこまでが本当の自分で、どこから先が自分じゃないんだろう。」
「でも僕はおおむね幸せな生活を送っていたと言っていいと思う。(中略)僕は何があっても、もう二度とあの二十代のうら寂しい孤独な生活に戻りたくなかった。ここが自分の場所なんだと僕は思った。」p.99

 しかし、どこか自分の根っこから浮いているような生活は、「何か」があったときにぽっきりと折れてしまうものだ。
 私自身、色々あって何もかもなくなってしまった。色々あって仕事もあって不自由なく生きているが、大きな喪失を抱えたままで何か辛いことがあった時、踏みとどまれる気がしないし、踏みとどまろうと思えないのだろうなと思う。
 この物語の主人公にとっての「何か」は、島田さんとの再会。彼はイズミの人生を壊したことを覚えているにも関わらず、妻のいる身でありながら島田さんに深く関わってゆく。それは或いは小学生時代に残したままの空白を埋め、自分の人生を取り戻そうとしているようにも見える。
 島田さんは警告する。

「とても残念なことだけれど、ある種のものごとは、後ろ向きには進まないのよ。それは一度前に行ってしまうと、どれだけ努力をしても、もうもとに戻れないのよ。もしそのときに何かがほんの少しでも狂っていたら、それは狂ったままそこに固まってしまうのよ」p.204

 それでも、主人公はどんどん破滅に向かっていってしまうのだ。


 人は何を持っているかではなく、何を持っていないかによって特徴づけられる、という言説を何かで読んだことがある。主人公は兄弟を持たないことが自分を特徴づけていると幼少期の頃に捉え、島田さんは健常な足を持たないことを深く気にしていた。
 この物語は、そうした自分の中にある欠落なり空白に上手く向き合って生きてゆくことができなかった男の話だと、今は解釈している。
 また、僅かにファンタジー要素があり、お伽噺のような薄気味悪さも相まって、小説のラストはともすればバッドエンドの可能性もある。表層的には主人公はただの浮気・不倫野郎ではあるが、大きな空白を抱え、それが取り返しの付かないものであるならば、彼はどうすれば幸せになれるのか、この小説には示されていない。
 この小説は長編『ねじまき鳥クロニクル』の一部になるはずだったものが、切り離されて一つの小説として独立したという経緯があるらしい。まとまった時間のある時に、次は『ねじまき鳥』も読んでみよう。

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Posted by ブクログ 2022年03月21日

途中までは、あぁ他の作品よりも迫ってくるものに欠けているなぁと感じていたが、最後の括りから(島本さんが消えて、奇妙な事件がいくつか起こって、イズミにも遭遇して、有紀子と話し合った夜)だんだんぞわぞわと感じるものがあった。

人間の弱さ、脆さ、抜け殻になってしまう感覚、虚な感覚、自分でわからないこと、...続きを読むコントロール出来ないこと、自分では無くなってしまうような感覚。

どれだけ歳を重ねても、やっぱり人間は弱くて脆いし、女の人の方が冷静な判断をうまく説明できるし、なんだか敢えてシンプルにあっさりと仕上げた大人の村上春樹小説という感じ。

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Posted by ブクログ 2022年03月19日

村上春樹作品の中ではこの作品に限らないのですが、登場する女性が「個人」として感じづらく、作品を通して一人(全体?)の女性の、ある側面を切り取り、それを個人として登場させているように感じました。イズミ然り、島本さん然り、有紀子然り…

イズミと島本さんはおそらく同一人物であろうと思います。主人公に会え...続きを読むない時は伽藍堂で無感情のイズミとして生活している。島本さんが精神で、イズミが肉体のようなもの。しかし有紀子の過去も二人と混ざり合っている感もある…

●P194. 彼女は気取ったフランス料理店の支配人がアメリカン・エクスプレスのカードを受け取るときのような顔つきで僕のキスを受け入れた。

娘かわいい...

●島本さんと石川へ行った後、義理の父と会食へ行った時の会話がなんとなく、良かったです。

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Posted by ブクログ 2021年11月18日

久しぶりに村上春樹の小説を読みたくなり、未読本を。老若男女に愛される理由である秘訣は“不馴れな純愛”“懐かしい初恋シーン”をそれぞれが脳内再生させるような描写が実に巧みだからだなぁと、悟る。

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Posted by ブクログ 2021年11月03日

じと〜っとするというか
なんだかもうすぐ雨が降る雰囲気だね
みたいなそんな様な気持ち悪さが
他作と比べてもダントツだったな〜
みたいな感触です
(言葉のチョイス等も含めて)

でも嫌いじゃないな

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年09月30日

「それは世界じゅうの青という青を集めて、そのなかから誰が見ても青だというものだけを抜き出してひとつにしたような青だった。」という一節がなんて綺麗な表現なのだろうと思った

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月05日

「僕は混乱して、何かもう少しましなことを言おうとした。でも言葉はうまく出てこなかった。僕はズボンのポケットに手をつっこんで煙草の箱を探した。それから自分が五年前に煙草をやめていたことを思い出した。」

「でも現実に僕は君に会ったんだ。そしてそれはもう元には戻せないんだよ。」

「あなたが運転している...続きを読むのをこうして横で見ていると、私ときどき手を伸ばしてそのハンドルを思い切りぐっと回してみたくなるの。そんなことをしたら死んじゃうでしょうね」

「それは特別なものであり、もう二度と失うわけにはいかないものなんだ。僕はこれまでに何度か君の姿を見失った。でもそれはやってはいけないことだったんだ。間違ったことだった。僕は君の姿を見失うべきではなかった。この何ヶ月かのあいだに、僕にはそれがよくわかったんだ。僕は本当に君を愛しているし、君のいない生活に僕はもう耐えることができない。もうどこにも行ってほしくない」

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Posted by ブクログ 2021年06月23日

1992年12月18日 第六刷 再読
最後まで再読し終わっても、当時読んだ時の印象が思い出せなかった。
JKの頃ドキドキしながら読んだコバルトブックスの富島健夫は思い出した。

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Posted by ブクログ 2021年04月06日

人は自分が思っている以上に、他人に影響を及ぼしていないし他人から影響もされない。
島本さんがハジメくんに強く惹かれても自分の事を最後まで話さなかったように、有紀子がどんなに夫に裏切られて死のうとさえ思っても戻ってきた夫を受け入れてしまうように。
ハジメが何かを失い続けて損ない続けて生きている事は、誰...続きを読むと出逢おうと変わることのない本質的なものなのだ。
誰か他人に「この人と出会って、自分は変われるかもしれない、変わったかもしれない」という幻想を持たせるために人は存在している…と解釈した。

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Posted by ブクログ 2021年03月07日

珍しく主人公が最後まで好きになれない…。過去の幻影に引っ張られて一時は今の幸せを手放したいとも思い、「中間」を失ってしばらく虚無に生きて、でも結局帰するべき所に帰する「僕」。全体的に彼の人生は心惹かれる女性の「たぶん」や「しばらく」という言葉の響きにある曖昧さという呪いにかけられている。不倫やそれに...続きを読む見せかけた純愛は珍しいテーマではないし、経験則と年齢を重ねるにつれて複雑さを増す理屈を捏ね回しながら出来事が語られる点なんかは通常運転なんだけど、いつも以上に「受け身」で、かつ周囲を必要以上に(しかも無自覚に、時には何をするでもなく実在そのもので)傷付けている。

というか女を舐めすぎ。妻も随分前から気が付いていたんじゃないのか…。島本さんは最初から最後まで幻影?妄想?とさえ思える。会いたい気持ちが強過ぎて、途中から幻として再会したのでは?なんて。妻は紛れもなく現実世界=「こちら側」の女性で、島本さんは完全に幻影で、イズミはその「中間」にいて…。
例によって残るは謎ばかり。中年男は誰?封筒は何だったの?従姉とのセックス狂いの時期、要る?

もうなんというか読めば読むほど美しいのにみんな嫌いになってくるし最後が辛すぎた。誰かイズミを幸せにしてあげて。

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Posted by ブクログ 2021年02月14日

“悪い星のもとに生まれた恋人たち”の物語。ハッピーエンドなのか迷う。内容関係ないけどジムでウェイトリフティングやって足が攣るってどういうことなの。

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Posted by ブクログ 2021年01月26日

人は普通に生きているだけでも自分を損ない、他人を損なってしまうもの。自分が他人に作った穴も他人が自分に作った穴もどうしたって埋め合わせることはできない。孤独を孤独のまま受け入れることのできない哀しい男の物語。
東京事変の曲にかつては男と女という曲があるのだけれどその雰囲気と完全に一致している。

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Posted by ブクログ 2022年03月06日

 タイトルがすごく好き。国境の南、太陽の西。引力のように惹かれるどこかへと、思いを馳せたくなります。
 主人公の男のひと、確かに正直で人間らしいとは思うけれど、わたしにはどうしても、どっちつかずで、身勝手で、卑怯で姑息なひとにしか見えなくて。当たり前の幸福をしあわせと思えないなんて、何て贅沢で心の狭...続きを読むいひとなのだろう、と思ってしまった。彼の行動に少なからず引いたし、呆れるし、腹は立つし、それを通り越して悲しくなってくるくらいでした。でもどこかで知ってもいるのでしょうね、わたしは彼を、完全には哂えないことを。
 出来るならこの小説を一蹴してしまいたいの、こんな男のひとは嫌いだ、と笑ってはねつけて、真っ直ぐな愛や、穏やかな生活に安住したい。でもわたしには、そうすることが出来ません。なぜなら、どんなに理不尽であろうと、すべてを捨ててまで惹かれゆくような何かがこの世界には存在するという可能性を、捨てきることが出来ないから。ひとを動かす大きな力(それはそう、運命とでもいうような)を理解しないのは寂しい人間ではないのかと、どこかで背伸びをしているから。

 自分の中で答えが出せない、という意味で、読みながらなんだか悔しかったです。とりあえず題名が好きであることと、妻の有紀子さんが素敵すぎることに免じて、ここでの評価は星3つに。

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