【感想・ネタバレ】国境の南、太陽の西のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月03日

面白かった…。どれもわかる…というところがあって、おしゃれなジャズが流れるバーに行きたくて仕方がない。

…もちろん僕はイズミを損なったのと同時に、自分自身をも損なうことになった。…その体験から僕が体得したのは、たったひとつの基本的な事実でしかなかった。それは、僕という人間が究極的には悪をなし得る人...続きを読む間であるという事実だった。僕は誰かに対して悪をなそうと考えたようなことは一度もなかった。でも動機や思いがどうであれ、僕は必要に応じて身勝手になり、残酷になることができた。(p.66)

…だからお前がどこかで他の女と寝ていても、それは責めないよ。でもな、遊ぶのはいいが遊ぶ相手だけはきちんと選んだ方がいいぞ。うっかり選び方を間違えると、人生を踏み誤ることになる。…あまりつまらん女は相手に選ぶな。つまらん女と遊んでいると、そのうちに本人までつまらん人間になってしまう。馬鹿な女と遊んでいると、本人まで馬鹿になってしまう。でも、かといってあまりいい女とも遊ぶな。あまりいい女とは関わると、もとに戻れなくなってしまう。もとに戻れなくなると、行き迷うことになる。(p.184)
…幾つかのことに気をつければそれでいいんだよ。まず女に家を世話しちゃいけない。これは命取りだ。それから何があっても午前二時までには家に変えれ。午前二時が疑われない限界点だ。もうひとつ、友だちを浮気の口実に使うな。浮気はばれるかもしれない。それはそれで仕方がない。でも友だちまでなくすことはない(p.185)
相手を行き迷わせるような女になりたい。一方で、友だちをなくさないような行動をしたい…

…明日の朝になって目がさめたら、世界はもっとすっきりとしたかたちを取っていて、いろんなことが今よりもっと楽になっているに違いないと。でもそんな風にうまくはいかない。明日になっても、おそらく事態はもっとややこしくなっているだけだろうと僕は思った。問題は僕が恋していることなのだ。そして僕にはこのように妻がいて、娘がいるのだ(p.194)
わ~か~る~~

「君はそこにいる」と僕は言った。「そこにいるように見える。でも君はそこにいないかもしれない。そこにいるのは君の影のようなものに過ぎないかもしれない。本当の君はどこか余所にいるのかもしれない。あるいはもうずっと昔に消えてなくなってしまっているのかもしれない。僕にはそれがだんだんわからなくなってくるんだ。…」(p.235)

…たとえば何かの出来事が現実であることを証明する現実がある。何故なら僕らの記憶や感覚はあまりにも不確かであり、一面的なものだからだ。僕らが認識していると思っている事実がどこまでそのままの事実であって、どこからが「我々が事実であると認識している事実」なのかを識別することは多くの場合不可能であるようにさえ思える。だから僕らは現実を現実としてつなぎとめておくために、それを相対比するべつのもうひとつの現実を――隣接する現実を――必要としている。でもそのべつの隣接する現実もまた、それが現実であることを相対比するための根拠を必要としている。それが現実であることを証明するまたべつの隣接した現実があるわけだ。そのような連鎖が僕らの意識のなかでずっとどこまでも続いて、ある意味ではそれが続くことによって、それらの連鎖を維持することによって、僕という存在が成り立っていると言っても過言ではないだろう。でもどこかで、何かの拍子にその連鎖が途切れてしまう。すると途端に僕は途方に暮れてしまうことになる、中断の向こう側にあるものが本当の現実なのか、それとも中断のこちら側にあるものが本当の現実なのか。(p.280-281)
わかりすぎる…。「それは眩暈にも似た奇妙な感覚」なときもあるし、夢のようにじわじわと思い出せなくなる感覚でもあるのだ。

…でも僕がかつてその音楽の中に見いだしていた特別な何かは、すでにそこから消えてしまっていた。僕が長いあいだその音楽に託し続けてきたある種の心持ちのようなものはもう失われてしまっていた。それは相変わらず美しい音楽だった。でもそれだけだった。そして僕はもうその何かの亡骸のような美しいメロディーを、何度も何度も繰り返して聴きたいと思わなかった。(p.288)
The Star-Crossed Lovers、ずっと聞き続けている。美しいメロディー。。
私にもこの心が失われた先に、美しさを一緒に散らすような音楽があるのだろうか。

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Posted by ブクログ 2023年07月10日

一言感想【誰かを傷つけてしまうこと、を思い出す】

とても好きな作品でした。
主人公の男は本当にダメな奴ではあるんだけど、僕になったり、イズミになったり、奥さんになったり、どの人にも感情移入するような感じで読めました。
というのも、どれもありえなくは無いというか…
人を深く傷つけ、自分も同時に損なっ...続きを読むてしまうような経験は何となく、あるもの。程度にはよるけれど。
それを肯定するわけではないけど、そういうことも、あるかも、と思える。
誰かが村上春樹さんの作品は、現実から1センチ~3センチくらいズレた話と言っていたけど、近くもなく、遠くもなく…また、近くて、遠い…。
"物語"として丁寧に描かれていると思いました。

誰かがやってきて、背中にそっと手を置くまで、僕はずっとそんな海のことを考えていた。
で終わるのとてもいい。
また読み返したいです。

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Posted by ブクログ 2023年04月22日

男の身勝手な物語。
3人の女性を傷つけた挙げ句、自己憐憫に塗れた言い訳をするのはなかなかすごい。
ただハジメくんの苦悩もなんとなく自分の人生で重ねられる部分もあり。
最後、ハジメくんの背中を叩いたのは誰なんだろう。誰もがあり得るように思える

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Posted by ブクログ 2023年08月21日

読みやすく面白くないとは言わない物語
でも好きではないなー

マジでただのエゴイストな男の不倫話
はじめ(主人公)は特別感を感じているし、そこに固執しているけれど陳腐で普遍的でどこにでも起こり得る恋慕の話。自分に酔いしれて、自己嫌悪、自己評価、自己愛、自分にばかりベクトルが向いた男の話。
自分しか見...続きを読むえず、周りの人間が何を感じて何を考えているか、そこまで頭が回っていないところが本当に自己中。はじめの語りだから行き届かないが由紀子だって同じ人間なわけで彼女だってきっとずっと考えているのだろう。それは読んでいてなんとなく感じた。
人の心は縛れないのか。特別感、幼少期の(幼年から青年期に入る微妙な期間?)思い出はやはり特別なものと大事にしすぎてしまうのかも。

ただ、文章の所々に出てくる比喩表現はすごく的を射ていたり、刺さるものもある。砂漠の話はすごく好き。

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Posted by ブクログ 2023年06月13日

後半になっていくにつれて今までずっとリアルな話を展開していたと思っていたものが、ミステリアスな雰囲気に。
島本さんは幻想だったのか。最後のイズミの描写はなんだったのか。一回読んだだけでは難しかった。

最後に妻である有紀子は僕に対して「何かに追われているのはあなただけではないのよ。何かを捨てたり、何...続きを読むかを失ったりしているのはあなただけじゃないのよ。」と言い、そして僕は思う「そして、おそらく今度は僕が誰かのために幻想を紡ぎ出していかなくてはならないのだろう」と。

人はみんな何かを失っていくけど時間は元に戻らず進み続ける。不確定な未来に向かって。

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