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あの日なら、僕はすべてを捨ててしまうことができた。仕事も家庭も金も、何もかもをあっさりと捨ててしまえた。――ジャズを流す上品なバーを経営し、妻と二人の娘に囲まれ幸せな生活を送っていた僕の前に、十二歳の頃ひそやかに心を通い合わせた同級生の女性が現れた。会うごとに僕は、謎めいた彼女に強く惹かれていってーー。日常に潜む不安と欠落、喪失そして再生を描く、心震える長編小説。
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Posted by ブクログ
この作品は、一般的に言われるような単純な「恋愛小説」ではないと思った。 人を好きになるとか、過去の恋人を忘れられないとか、そういう言葉だけでは説明できない、“人生の欠落”や“魂の飢え”のようなものを描いた作品だと感じた。 主人公のハジメは、家庭も仕事もあり、世間的には幸福な人生を送っている。 しか...続きを読むしその内側には、どうしても埋めることのできない空白が存在していた。 その感覚は、自分自身の体験と強く重なった。 一度変わってしまった心は元には戻れない。 この小説は、自分にとって単なるフィクションではなかった。 ハジメが家庭へ戻った“もう一つの人生”を見ているような感覚があった。 もし自分が別の選択をしていたら、あの物語のような人生を歩んでいたのかもしれない。 そう考えると、とても胸が痛んだ。 この作品の大きな特徴は、「何が正しかったのか」が最後まで分からないことだと思う。 イズミも島本さんも、その後どうなったのか明確には描かれない。 島本さんに何があったのかも分からない。 しかし、その曖昧さこそが、人間の人生や記憶の不確かさを表しているように感じた。 特に島本さんは、単なる“昔の恋人”ではなく、ハジメが失ってしまった何か――若さ、純粋さ、可能性、あるいはもう戻れない人生そのもの――の象徴だったのではないかと思う。 読後には答えも救いも残らない。 ただ、「人は本当に愛していても、戻れなくなることがある」という現実だけが静かに残る。 その感覚が、自分にはとても苦しかった。
一人っ子のミステリアスな女性、島本さんと12歳の頃からその子に恋心を抱く、既婚者である主人公の物語。 久々に素晴らしい小説を読んだ。『国境の南』というのは、自分が信じた偶像の先に存在する理想郷のようなものを示していると同時に、実際にはそこが空虚でありそこを追い求めて破滅すると言うことを示唆している...続きを読む題名のようにも思える。 「でも僕は島本さんのそうした外見の奥に潜んでいる温かく、傷つきやすい何かを感じとることができた」 これはまさしく国境の南、を示していると思う。 『太陽の西』の説明におけるヒステリア・シベリアナは今までの自分のある部分を殺して彷徨い続けるシベリアの農民を指すが、この物語では初恋の相手を思い続ける自分を殺して妻との生活に向き合う「新しい自分」を迎える覚悟を持った物語終盤の主人公と重なる。 こうした2つの言葉が並列に語られる本作の題名は、互いが同じ事を示しているようで、物語における主人公の心の移り変わりを示しているようにも思えて秀逸。 繊細な感情表現も素敵で非常に素晴らしかった。
水曜の朝、午前三時とかが好きならす刺さる一冊。大恋愛好きなら最後は尻すぼみかもしれない。 今の生活には満足していても満ち足りない気もするという感覚は正直すごい分かる。でもその感覚を埋めるものを他人に求めてはいけないというのが1つハジメくんが出した結論なのかなと解釈した。 でもハジメくんの気持ちもやっ...続きを読むぱりすごく分かる。家庭を持つとどうしてもパートナーとの会話に正直刺激的なものはなくなる。概念的な答えがないようなことをしゃべるなんてことはない。それよりも明日どこ行く、何食べる、家のあれ修理しなあかんなとか現実的なことで埋め尽くされていく。そういう中で刺激的な会話ができる異性の存在ってすごく大きくて、だからこそ魅力的に思えるし、人によっては過去の関係もある人であればたらればを考えることもきっとある。それはでも結局実際にはパートナーになってない関係だから成り立つんだよねというところではある。その上でなお失うものへの葛藤、あの頃の自分なら迷わず動いてたのにそれが今はままならない感覚も勝手ながら共感した。
村上春樹氏のインタビュー記事を読んでいて、読み直したくなり手に取る。 学生時代に一度読んだきり、内容はすっかり忘れていた。 一人っ子の少年が、青年になり、中年になっていく物語。男の中には常にある女性が居て、孤独な時もモノを持ちすぎた時も中心には彼女がいる。 成功譚でも、成長の物語でもない話が進んで...続きを読むいく。 リズムよく読みやすい文体、洒落た語彙。スラスラとテンポよくページを進めていけた。 物語に没頭し、喪失、孤独、加害を感じていった。 素晴らしい読書体験だった。
世間一般で言うところの「不倫もの」なのだけど、当作をそれだけで括ってしまうのはあまりにも短絡的すぎる。人間は決して完全ではないし、抑え切れない思いを抱いてしまうことは誰にでも起こり得るはずだ。(自分は村上春樹自身もそうであると信じている。それでなければこれだけの描写はできないと思う) 少年と少女が大...続きを読む人になり再会した、幼かった当時では明確に表現できなかった気持ちをはっきりと認識した、そして苦しい思いを抱きながら全てを捨てる決意までしかけた、というストーリーを村上春樹は繊細なタッチで綴っている。リストのピアノ協奏曲とか、スター・クロスト・ラヴァーズとか、登場する楽曲からも想像力を掻き立てられる。当作は決して下世話ではない、人間の性を描き切った秀作だと思う。
あれ、これも読んだことあるぞ。 村上春樹の本、もしかしてほぼ読んでるな… でもいつ読んだかとかまるで記憶ない… いま、他の本も意識して読むと この本のダンス・ダンス・ダンスのその後みたいだなーと思った。 ダンス・ダンス・ダンスでいったん現実に着地したものの、やっぱり心の震えを忘れられなくて、虚無...続きを読むの世界というか、地に足のつかないものに心惹かれてしまう。 結局最後はまた現実世界を生きることを決めるのだけど、心は常に現実の外側にもっと美しい心惹かれる何かがあるんじゃないか?と想像するスペースを残している気がする。 すごく共感できる。 雪かき仕事や家庭を放り出してバックパックで旅に出たくなることってある。
村上春樹の「小説」としては、初めて読む本。 いやーまさかのタイミングで読むことになった本だった。色々とドンピシャすぎ。 文学ってのは、然るべきタイミングで出会うようにてきてるんだなぁ… 個人的なそうしたバックグラウンドは置いといて、本の内容としては、恋愛小説。 小学生のころに、一人っ子(当時は珍...続きを読むしかった)という共通点で強烈に惹かれ合った女子との思い出がある主人公。紆余曲折ありながらも、別の女性と結婚し、バーを営みながら幸せに生きている時に、その女の子がお店にやってくる… というあらすじ。 シンプルなあらすじなのだけども、村上春樹のシャレたセンスの文章でグイグイ読ませる。 主人公も、女の子も、どっちも魅力的な会話をする。モテる人ってのはこうなんだろうなと思う。 (そう思わさせられる) 周りのサブキャラも皆強烈だった。特に奥さんの父親が好み。 ジャズ喫茶のオーナーとして成功していた村上春樹の人生哲学なんかも入っているような気がする作恋愛小説以外の深みも感じられた。 とにかく、シチュエーション的にぶち抜かれた小説だったし、それを抜きにしても素晴らしい小説だった。飲みやすい長さなので、村上春樹初心者にもオススメできる気がする。
センター試験対策の問題集で出会った。小学生の主人公が島本さんの家を訪れているシーン。初めて触れた村上春樹の作品。
素晴らしい....
素晴らしいの一言 この作品には既婚者が味わうであろう感情に"少し"の色をつけた現実的なストーリーである ただ、その"少し" あと一歩を踏み出すか 踏みとどまるか その少しの先を見させていただきました
#エモい
再読。 村上春樹作品は、何度読んでも新たな発見がある。目に情景が浮かぶ描写で、心が持ってかれる感覚。 ジャズバーに行きたくなる。 「ふと目をあげたとき、そこにはイズミの顔があった。」 再読 20170611 20260327再読
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