村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私は村上春樹さんの「ド」がつくほどの初心者。
中学生の頃に『ノルウェイの森』を読んで以来、
気まぐれに数冊ほどしか読んできませんでした。
なので、これまでの作風との比較はできないし、
本書が春樹さんらしいのか、らしくないのかもわからない。
それでも、ごく純粋にファンタジーとして楽しめた一冊でした。
『夏帆』村上春樹
まるで白昼夢を見ているような物語だ…!
絵本作家の夏帆が出会う、不思議な男やアリクイの奥さん。
パラレルワールドのようでもありながら、
その世界がじわりと現実を侵食してくるような感覚がある。
✧
そして本書の核にあるのは、
母と娘の関係を描いた物語なのだと思う。
母と娘って、どのような関係が理想なんだろう。
友人のように仲の良い関係?
それとも、夏帆とその母親のように、
微かな距離のある関係?
確執とまではいかなくても、
「愛されていない」と感じることは、
大人になった夏帆の足枷になっている。
夏帆が迷い込んだ世界の出口を見つけることは、
母親との曖昧な関係性に
ひとつの答えを見つけることでもあるのだ。
✧
さて、ここからは本音なのだけれど……
「君みたいな醜い相手は初めてだよ」という言葉。
すべてが明らかになったあとだから書くけれど、
そんな清潔感のあるイケメン
(しかも実は●●●●)
に言われたら、ある意味ご褒美じゃないですか……?
しかも言葉は容赦ないのに、
行動がやさしすぎて、好きだ!ってなった。笑
本当にすみません。
少数派なんでしょうか、これ。
同じって人、いませんか。 -
Posted by ブクログ
古本屋で見つけ、20年ぶりに読んでみた。ドローンのように「視点」が移動する様子、眠る美女を見つめる「仮面」、連日の深夜残業で精神が崩壊している男など、夜の闇とともに不気味な事象がいくつも現れ、夜中の読書を愉しませてくれた。
また、相手の腹の中を探り合うような若い男女の会話も、歯切れが良いところもあれば不器用なところがあって楽しかった。初めてこの本を読んだ20年前、私は学生で、村上春樹独特の雰囲気を味わうことが出来ていなかったが、今回は少しだけこの小説が放出しているメタファー「眠れる人と眠れない人、ダークな欲望と良心、努力と才能 etc」を感じ取ることができた。本書のタイトルでもある曲も聴いてみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人はそれぞれに固有性を有している。それは時として才能と言われ、時としてただ時代の中に埋もれていく。あるいは誰にも気づかれずひっそりと色を失っていく。
本作のシロには明確にピアノの才能があったかもしれない。しかし、彼女の才能は多崎つくるが見た夢のように世間や社会が才能と認識できなければ無に期してしまう。自分の才能を疑い、自信をなくし色は徐々に褪せていく。才能あるいは人の持っている固有性とはそのくらい曖昧で繊細なものである。
固有性というのは孤独であるのと同義である。誰にも理解して貰えない想いや行き場のない感情をずっと維持していくのは容易なことではない。だから多くの人は社会や世間に迎合していく。それは決して悪いことではない。社会を維持していく為に必要な自浄作用みたいなものだ。多くの人が駅構内をシステマティックに移動するみたいに。
シロはその誰もが有している固有性の象徴である。彼女は死んだ。何者かに殺されて。色を消されたのである。しかしその喪失や残り香のようなものを多崎つくるやクロは今も持っている。おそらく他の二人も。つくるがクロに言おうとしていたように時の中に全てが失われたわけではないのだ。
彼らを繋げていたのは今は失われた或いは褪せたそれぞれの固有性なのであろう。その固有性の裏にあった孤独感が彼らを固い絆で結んでいた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ書店で、猫好きなので猫にまつわる書籍が並べられている中から本を選ぼうとしたとき、この本が置いてあり、村上春樹さんのエッセイを読んでみたいと思い、手に取った。
ただの猫好きなだけなら、「猫を棄てる」というタイトルの本を手に取ることは絶対になかったが、村上春樹の名前に釣られてパラパラと頁を捲ると、中のイラストの雰囲気からきっと悪意的な意味や暴力的な内容での猫を棄てる訳ではないとすぐに読み取れたので購入をした。
猫にまつわるエピソードを軸に、中心として語られるのは著者の父についての話であったが、普段戦争に関わる作品は避けてしまうので、こういった偶然の機会がないと戦争について触れることがないので自分にとっては良い機会になった。
村上春樹さんのエッセイは初めてだったが、小説と同じようにどこかサラッとした文でスッと入ってくる感覚は小説と同じ印象を受けた。ドロドロとした表現や強い感情は書かれておらず、どこか少し距離を置いて書かれているような文章だからこそ普段戦争の話が苦手な自分でも抵抗少なく読めたと思う。
作中の「降りることは、上がることよりずっとむずかしい」という言葉に、まさに人生ってそうだよなぁ。と深く頷いていた。
読者からしたら、村上春樹さんは特別な神様みたいな存在であるが、著者自身からの誰しも今の自分は両親のちょっとした行動の違いがあれば存在してなかったかもしれない。そんな当たり前のことだけど、どこかで忘れがちなその当たり前のことに改めて向き合ってみることで今の自分という事実との向き合い方を問うてる作品だった。