村上春樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『ねじまき鳥クロニクル』第一部を読んでいると、
物語を追っているだけのはずなのに、
心が勝手にこれまでの人生を整理し始めるような感覚に陥った。
猫の失踪、仕事を辞めた主人公の日常、
奇妙な電話や不可解な人物たち。
表面的には淡々とした出来事が続いているだけなのに、
読み進めるほどに、
自分自身の内側が静かに揺さぶられていくのを感じた。
第一部でとりわけ印象に残ったのは、
間宮さんが語るノモハンでの体験である。
涸れ井戸の底に落とされ、
一日に数秒だけ差し込む光を浴びた瞬間、
彼は「自分の人生はそこで終わった」と感じたという。
助かった後の人生は、
生きているのに生きていない、
死んでいるの -
Posted by ブクログ
去年の4月くらい友達にお勧めされて買うだけ買っとったやつ。
この時期は何かと考えていた。
違いを憂いていた。
格差を憂いていた。
自分の性質として、何かと頭の中でしっかり言葉を作ってから話す傾向があり、そうではない人にニュアンスが伝わらないことにもどかしさを感じていた。
高校の友達は良かったなんて思ったこともある。
そんな保守的思考を持っていたり、教育を重く考えたりな自分にお勧めしてくれたのだ。友達が。
今思えば深刻になりに行ってた感あるけどね。というか、ある。
当時『カラマーゾフの兄弟』読んでたり、『1Q84』読む前にはジョージ・オーウェルの『1984年』読んでると細かい部分も楽しめるよと言 -
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Posted by ブクログ
視点からの話が印象的だった。エリの部屋に満ちている空気、場の乱れ、静けさなどが肌で感じられるくらいリアリティをもっていた。
タカハシとマリの会話に癒されつつ、白川との温度差を感じた。
アフターダークは人の無意識の世界を書いているという河合隼雄さんの紹介を読み、「白川」もひとりの人間の中に存在しており、誰しも部分的には逃げられないものを抱えているのだろうかと思った。
人の心のやるせなさを現実味をもって書きつつも、マリとエリの心の交流が、書かれていないストーリーの裏でしっかりと感じられ、最後のシーンはあたたかい気持ちになった。
村上春樹さんの長編にしては珍しく落ち着いた気持ちで読めた。笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレなかなかに酷いことをする主人公だった。終盤、それが彼自身の欠落というパーソナリティであることが自身の口から述べられるのだけれども、周囲の人物からしたら本当にたまったもんじゃない。彼のいう吸引力をお互いに感じているであろう有紀子は彼の過ちとその欠落を踏まえても許すことができたけれどもイズミはそうではなかった。彼女は主人公のことを好きだったかもしれないけれど吸引力は感じていなかったのかもしれない。そしてその後は、傷をいやすような出来事や人物に出会えず、死を内包して生きているのだろう。島本さんですら、ボーリング場の廃墟では死を瞳にのぞかせていた。
死について述べる場面は村上春樹の筆力?を強く感じた。