村上春樹のレビュー一覧
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視点からの話が印象的だった。エリの部屋に満ちている空気、場の乱れ、静けさなどが肌で感じられるくらいリアリティをもっていた。
タカハシとマリの会話に癒されつつ、白川との温度差を感じた。
アフターダークは人の無意識の世界を書いているという河合隼雄さんの紹介を読み、「白川」もひとりの人間の中に存在しており、誰しも部分的には逃げられないものを抱えているのだろうかと思った。
人の心のやるせなさを現実味をもって書きつつも、マリとエリの心の交流が、書かれていないストーリーの裏でしっかりと感じられ、最後のシーンはあたたかい気持ちになった。
村上春樹さんの長編にしては珍しく落ち着いた気持ちで読めた。笑 -
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ネタバレなかなかに酷いことをする主人公だった。終盤、それが彼自身の欠落というパーソナリティであることが自身の口から述べられるのだけれども、周囲の人物からしたら本当にたまったもんじゃない。彼のいう吸引力をお互いに感じているであろう有紀子は彼の過ちとその欠落を踏まえても許すことができたけれどもイズミはそうではなかった。彼女は主人公のことを好きだったかもしれないけれど吸引力は感じていなかったのかもしれない。そしてその後は、傷をいやすような出来事や人物に出会えず、死を内包して生きているのだろう。島本さんですら、ボーリング場の廃墟では死を瞳にのぞかせていた。
死について述べる場面は村上春樹の筆力?を強く感じた。 -
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何年か振りの再読。
かつての私は突然出てきた双子の存在に戸惑いながらも、現実と空想の入り混じったその世界観に憧れていた。日常の隙間に顔を出すファンタジー。そんな捉え方をしていた。
そして、こんな世界に住んでみたいな、とさえ思っていた。
今回、双子が僕の元から去っていく場面を読んで、双子は「僕」の幻覚なのではないかと唐突に思った。
【幻覚】げん-かく
実際に感覚的刺激や対象がないのに、あるように知覚すること。幻視・幻聴など。
これは、ファンタジーや空想の世界などではなく、僕が実際に体験している幻覚だとしたら。
物語りの捉え方は一変する。
そういった違和感を僕はしばしば感じる。断片が -
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文学賞について書いている章で、芥川賞を取ることがすごいことと思い込んでいる人が多いから、村上さん賞を取れなくて残念でしたねとか来年はきっと取れますよ!とか言われるけど、村上春樹がそもそもその前提を同じくしてないので面倒くさかった、というボヤきにクスッとした
今、毎年ノーベル賞候補とか言われてるから、またボヤいてるかもww
In the chapter about literary awards, he writes about many people assume winning the Akutagawa Prize is an incredible achievement, so he -
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ネタバレ村上春樹の小説は学生時代には何冊か呼んだことがあり、どの小説も当時はよくわからなかった。
反面、このエッセイはとてもわかりやすく、共感できるポイントが多くあった。
他人の批評や徹底的な推敲を大切にしているところが意外であった。もっと自己中心的なスタイルで書いているという先入観があったからだ。
どんな文章にも必ず改善の余地はあるという謙虚な姿勢と、フィジカルな営みとして小説を書くという忍耐強さは好感が持てた。
学生時代が終わり10年以上が経った今なら、村上春樹の小説も面白いと思えるかもしれない。『田崎つくる』が興味を引いたので、手に取ってみようかと思う。 -
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「沈黙」
どうしようもなく嫌な相手にされた嫌がらせに苦しめられながらも、相手を哀れみ、同じ土俵に立ちたくないと葛藤し、苦しむ想い。
レベルの低い相手とは戦わないこと。
私が生きていく上で大切に思って来たことでもある。
それでいて、その相手の中にも「その人なりの正義」というものがあるのだということを理解出来るようになりたいと思う。
だから、私は同じような葛藤を抱えていた時に、恨みや憎しみではなく、「哀れみ」の感情だけが心に残っていたのかもしれない。
そして、その他大勢の傍観者達に対しては、興味すら抱けなかったのかもしれない。
「トニー滝谷」
彼が「孤独」の存在を知ってからの彼の抱える孤独がどう -
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木野や、シェエラザードは流し読みしてしまった
それでも素晴らしい短編集だった。
僕たちはいつも、彼らの横に立ち、彼らの揺蕩う姿を見て自分に重ね、彼らの共感者として夢想する。
そんな小説だった。
特に好きだったのは、イエスタデイ、そして女のいない男たち。
イエスタデイに出てきた女性は強く、そして脆く、危うい存在だった。それでこそ確かにそこに立つ実感を得ようとしている存在に理解を示すことができた。あるいはわかった気になっているだけなのかもしれない。
そして、戻ってきた時には少しズレた場所に立っている、この表現もすごく好みであった。
女のいない男たちではこの本の読み方を享受する。
僕たちはあ