額賀澪のレビュー一覧
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「ヒトリコ」「さよならクリームソーダ」の額賀澪さんによる、出版業界と作家を巡るルポルタージュです。
読んでいて感じたのは、「おまけ」で著者自ら述べているのと同じく、「売れたい」という焦りが全面に出ているということ。目を爛々と輝かせ、作家として地に足をつけるべく、目標を立てて取材をする……そういう著者の姿が(見たこともないのに)目に浮かぶようでした。
内容で面白かったのは、装幀のところと書店のくだりでした。
確かに最近の本の装幀ってイラストが多くて鮮やかな、構図も工夫されているものが多いなー、とか、業界に関わった人しか知らない「プルーフ」にまつわる色々な話など、読んでいて楽しかったです。
作家志望もそうでない人も、さらっと読めて軽く楽しめる内容だと思います。 -
Posted by ブクログ
額賀澪さんの作品はかなり前に「ヒトリコ」を読んだことに引き続き、2作目です。
クリームソーダと聞いて思い浮かぶのは、個々人に差はあれど、丸いバニラアイスの乗った緑色のアレ、ではないでしょうか。見るも鮮やかでさわやかなあの佇まい。
しかし、本作に登場するのは同じクリームソーダでも、少し趣が違っています。
舞台となるのは、花房美術大学。通称ハナビ。登場するのは一人の新入生・友親と、その周囲を取り巻く面々。主に対比して描かれているのは、若菜という4年生の男子学生です。
あらすじを読んだ感じでは全く想像できないでしょう(実際、私もそうでした)が、私が読後に感じた本作のテーマは
・家族
・死
・偽り
・芸術を究める人たち
というものです。
末尾にある解説にもあるように、学問である「芸術」を究めようと門戸を叩き、その内側に入った人たちの壮絶かつコミカルな生活ぶりと、本作の二本の柱となる友親、若菜の二人の抱える問題について描いた本作は、目まぐるしいスピードで過ぎ去っていきます。
表紙の爽やかな装丁に惑わされてはいけません。
クリームソーダは『甘くて辛くて、少し苦い。そしてちょっと痛い』。青春の甘酸っぱさの裏には、どろどろとした蟠りや過ち、死に肉薄するような苦悩が秘められているのです。
青春小説なんだけど、大人もしっかり味わえるように作られている。
この作品はまるで、大人のプリンのようなほろ苦い味わいに仕上がっている、と感じました。(喫茶店の定番メニューにかけてみましたが、伝わったでしょうか……?) -
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私のなかで、額賀さんといえば「青春小説」のイメージ♪
著者の作品は読後の爽快感がたまらない。
これまで見たことのある映画やドラマのメイキング映像が次々と思い出され、いろいろ想像しながら楽しく読みました。
短いワンカットにつぎこむ情熱と技術、時間、お金、制作に関わる人員も手間もすごい。
人付き合いが苦手で気持ちを言葉にするのに時間がかかる安原と要領のいい北川。対照的な二人が一緒に映画を撮ることになります。
お互いが自分にないものを相手に見つけ羨ましく思う。
家庭環境は全く違うけど好きなことに真っ直ぐに打ち込む姿は一緒で、悩みながら成長する二人の姿がとても良かった。
映画を撮る側、撮られる側の役者と両者の視点を感じられたのもいい。
清々しい読後感でおもしろかった。 -
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ネタバレ読んでいて森絵都さん作の「カラフル」という作品を思い出した。
自らの魂が過去に戻りやり直すチャンスを得る。しかしそれは今まで自分が生きてきた人生の時間軸に影響はない。
「やり直し事業とか言ってたのに変えられないのか!」と主人公と一緒に苛立った部分もあったけど、確かに「未来を変えられるかも」とは言ってたけど「過去を変えられる」とは言ってなかったのよね。これはミスリードやったわ。
人生生きていく中でやり直したいって思うことは色々とあるだろう。
自分は部活での行動とか細々した事と学生時代恋愛とか位で、主人公の用に人生に影響する程度の事ではないのだけど、大小の差はあれどやり直しを願うのは誰もがあるはず。
でも人生は一度きりでやり直しなんて出来なくて、でも失敗はしてもいい。そのあと「どう生きるのか」というのが重要。学生から自分の同年代の30代前半位の人に読んでほしい一冊。
しかし主人公の「自殺目撃エピソード」はエグくて、PTSD的な事になってもおかしくないのでは?と感じた。落ちてくる同級生と目が合うなんてヤバすぎる。
そして加奈子の自殺の真相も後半明らかになるけれど、それを知ったカナコのコメントが笑えた。
カナコは生きてた頃の記憶というのは失われているからカナコと加奈子は同じ顔だけど別人格として確立されている。これはこの【やり直し】をする上で必須な設定だったのではと思う。 -
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額賀澪さんの描く、スポーツと料理を組み合わせた、青春小説。
箱根駅伝の花の二区を走る大学三年生の春馬。
彼を追うのは、かつての高校時代の先輩・助川、ライバル校の藤宮。
駅伝のレースが進む傍ら、物語は4年前の過去へ。
主人公は春馬の一つ上の兄、早馬へと移る。
早馬は高校三年生。陸上部の長距離の期待されるランナーだったものの、右膝の怪我により、陸上部のサポートに回る。
担任、稔の導きで、調理実習部の都と出会い、料理に没頭し始める。
その様子を見ていて面白くないのは、弟であり次世代エースの春馬、そして同級生の助川。
早馬はもう走らないのか?
額賀澪さんを読むのは初。
面白かった!イッキ読みしてしまった。
オリンピックの余韻が続いていて、スポーツものが読みたくなり。
早馬、春馬の視点がメインで、過去と現在が交差して物語は進んでいくんだけど、都、助川の視点も時折入り、同じ場面が違う登場人物の視点で書かれていたりなど、凝った作りになっていて、様々な登場人物の気持ちになって没入しながら読むことができる。
怪我、そして弟の目覚ましい成長に脅威を感じる兄。
走り続けて欲しいのに、料理などに没頭し始めた早馬にもどかしさを感じる春馬、助川。
そして、苦しい過去を抱えながらも、友人に厳しくもしっかり向き合い、料理を作り続ける都。
登場人物みんなそれぞれもがいているけど、魅力的です!
スポーツの楽しさ、苦しさも担当できるけど、題名通り、「タスキ」を繋ぐように、物語には様々な料理が登場する。
後半には春馬のためにと腕を上げた早馬の料理もホントに美味しそう。
料理って、体にも心にも大切だなぁと改めて感じる。
巻末にレシピとか載っていたら面白いのになぁと思った。
北京オリンピックでも、きょうだいアスリートが多く目立った。
金メダルを獲った平野歩夢選手、小林領有選手、髙木美帆選手は全員きょうだいで同じ競技に出ているし、ロソコラーレの吉田姉妹、スノーボードの冨田姉妹、ノルディック複合の渡部兄弟もそうだ。
家族だと刺激になるし、やっぱり少なからず「負けたくない!」という気持ちは起こるだろうな。
額賀澪さん。気になる作家さんになりました。
また他の作品も読んでみます! -
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労働観というものについてのクライアントの気づきと再生を描くヒューマンドラマ。
プロローグとエピローグを除き5話からなる連作短編集。
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『君たちに明日はない』 ( 垣根涼介 ) と比較して、テーマは対局にあるのですが、底に流れているものは近い作品でした。
各話のクライアントたちへの転職についての助言を通し、彼らを「大人」としての自立や仕事に対するスタンスの確立へと導いていくとともに、見習い CA の千晴自身が業務を通して自立と再生を図るという二重構造の構成になっていました。
設定がわかりやすく、軽めのタッチで読みやすいこともあって、まずまず楽しめる作品でした。NHKの夜ドラ向きだと思います。 -
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クライミングと向き合う男たちを描いた山岳ヒューマンミステリー。全5章とプロローグおよびエピローグからなる。
◇
高校でスポーツクライミングのインターハイ選手だった筑波だが、ある理由から大学入学後は競技活動はせず、先輩とともに趣味程度の登山でお茶を濁す日々を送っていた。
ある日、高校時代のコーチだった宝田が登山中に滑落死したと連絡があった。
だが、まさに宝田が滑落したと推測される時間に、筑波の携帯には宝田からの着信があったのだ。
はたして宝田の死は事故なのか、それとも自殺なのか。
* * * * *
額賀澪さんにしては珍しく、プロローグからミステリーめいた展開。それがなければ、ただの山岳男子青春ストーリーと思って読み始めたと思います。
けれど、筑波の携帯に滑落時のコーチから着信があったときの描写がミステリアスです。筑波が出たものの聞こえてきたのはコーチの声ではなく風の音だけ。なぜ無言電話だったのか?
俄然、展開がおもしろくなりました。おまけにコーチの死に絡んで、筑波は屈託を抱えているらしい。それはいったい何なのか?
重い設定ですが、額賀さん特有の淡々としたタッチのおかげで、スムーズに読み進めることができました。しかも決して浮ついた展開ではなく、緊迫感さえ感じるほどです。
また、当初から用意されていた謎が終盤になって次々と明かされていくのですが、どれも物語を根底で支えられるほどのウエイトを持っており、期待以上の出来映えです。
エンディングはさすが額賀さんらしく未来に希望を感じさせるもので、読後感が非常に爽やかでした。 -
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さらさらと、とても読みやすかった。
青春山岳小説といった感じ。
アスリートの引退後のセカンドキャリアについてもテーマの一つになっていて、興味深い。
個人的には、元フィギュアスケート選手の町田樹さんが講演されているセカンドキャリア問題の本質の話なども思い出して、考えさせられた。
作品の中の岳と穂高が、それぞれの痛みを抱えながら、良い関係になっていくのが心地良い。
やっぱり山岳小説は好きだなぁ。
「日常から離れることで自分にこびりついている余計なものを引き剥がしていくのが登山」「下山するときに引き剥がした余計なものを全部拾い集めて帰る」「そうやってまた日常に帰って行くんだよ」
この辺りが印象的でした。 -
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母親は幼い頃に亡くなったということで、父子家庭として育った周作。28歳になり、結婚を目前に控えていたが、突然父親が脳梗塞で倒れた。今も昏睡状態だったが、倒れる前、父親から通帳を託されていた。誰から送金されたのか?不明のまま倒れたので、周作は父親について調べることにした。
すると、25年前の傷害致死事件にたどり着いた。被害者は周作の母。犯人は母の不倫相手⁉︎病気で亡くなっていたと思ったのに母は殺されていた。
衝撃の事実を知ることになった周作はその後も事件の真相を探っていく。そこで見えてくる本当の真実とは?加害者は今どうなっているのか?
内容だけ見ていくと、ミステリー小説なのかなと思いましたが、結果としては涙を誘う家族小説でした。
今まで知らなかった両親の秘密と加害者の男の秘密を知るようになるのですが、ただただ切なかったです。もっと他に何か方法があったのではと思えてなりませんでした。
偽りの真実を知って育った周作が、本当の真実を知るようになっていきますが、その過程での心の揺れ動きが丁寧であり、切なすぎると思いました。
また、加害者の男の心理描写も辛すぎるなと思いました。背景となる家庭環境が故に犯罪を犯す加害者の姿に、「なんでこうなっちゃったんだろう」と悔しさが込み上げてきました。
そしてその経験を味わった分、その先に見える「家族」になることの幸福や大切さを感じました。優しさがあふれる雰囲気でじんわりと心に染み渡りました。
ちなみに表紙に描かれている食べ物ですが、野菜たっぷりでうずらの卵をのせた塩ラーメンです。これが物語において、周作と加害者をつなぐ食べ物となっていますが、内容を知ることで、ブワッと涙を誘ってくれました。
それぞれが悩みを抱え、それぞれが答えを出していきますが、全体としてほわっとした雰囲気で優しく包み込むような物語でした。
周作の恋人の子供についての問題はまだまだ続きそうですが、とりあえずは周作の物語が、ひとまず集結して良かったなと思いました。
これから、今までの空白の時間を埋められればと思います。