額賀澪のレビュー一覧

  • 競歩王

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    天才高校生作家とかつて呼ばれた榛名
    箱根駅伝を諦めて競歩の道に進んだ八千代
    今に苦悩する2人が「歩む」先は栄光か挫折の続きなのか


    単にスポーツ小説とは言えない感じが、この物語の深さでした
    だって、主人公は小説家だから
    今は書けない小説家だから
    立場は違えど、壁にぶち当たっている2人だからこそ語れる言葉が心地良い
    強引に涙を誘う展開ではなく、恋愛要素も多少のスパイス程度にしてるのも、2人の感情に光を当て続けられた要因かと思う
    それが私には丁度良かったです
    とても爽やかな、そして前向きになれた素晴らしい作品でした

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    2023年06月20日
  • 女ともだち

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    ネタバレ

    女性作家8人による、「女ともだち」がテーマのアンソロジー。


    うむむむ、女の友情はもろいというけれど、こんなにすごぉ〜く気持ち悪くて、べとっとするものばかりだろうか…
    相手と『同じ』を競うような構図が、いくつもの作品に…あー、たしかに、『おそろい』スキだよなぁ…トイレ一緒に行ったりしてるよなぁ…
    いやはや。下手なホラーより怖い。
    どれも面白かった。

    その中で、「ブータンの歌」は、くすっと笑えて、阿川佐和子さんらしい軽やかさだった。

    「ラインのふたり」嶋津輝さんは初読。ちょっと山本文緒さんのような奇妙な迫力。
    他の作品も読んでみたい。

    「獣の夜」森絵都さん、爽やかな作品しか読んだことがなかったので、ジビエを貪り喰らいながらテンションが上がっていく女二人のパワーに圧倒された。痛快。

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    2023年06月20日
  • 風に恋う

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    ネタバレ

    元吹奏楽部員ということもあり、すごく楽しめた。
    席を変えて、暗闇で、そんな合奏やってみたいな。そこまで打ち込めてはいなかったけど。

    単純に熱血部活もの!ではなく、拘束時間、将来、オーディション、大会……。取り巻く環境や問題についても触れているところがよかったです。

    基と瑛太郎の二人の主人公、どちらの葛藤もいい。特に、瑛太郎がいい。大切だったあの時間を悔やんでしまうことがないなんて言えない。だからこそ、そうなってほしくない。最後に決めるのは自分だけど、無責任なことを言わず一つ一つ選びながら声を掛けるのがいい。

    1年生を部長に大抜擢、その奮闘ぶりがもっと見たかったな。

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    2023年06月18日
  • さよならクリームソーダ

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    片付けをしていたら出てきたので(多分娘のもの)読んでみることにしたけど、ベタベタの恋愛小説かと思いきや、それほどでもなかった。逆に感動の物語でした。

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    2023年06月13日
  • 完パケ!

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    人はどうしても嫉妬する生き物だから、
    芸術の道に進む人は、
    一般以上に苦しむだろうなあ。
    でも、そこを乗り越えてこそ辿り着く場所がある。
    築かれる関係がある。

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    2023年06月13日
  • 転職の魔王様

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    広告代理店での激務に心身を壊し休職した主人公羊谷が、転職エージェントでキャリアアドバイザー「魔王様」こと来栖と出会い、来栖のもとでキャリアアドバイザー見習いをするお話。

    主人公の広告代理店での上司が、◯通で過労自殺した東大卒の女性に起こった出来事の引用が多くてね(広告代理店って時点で少し予想はついたけどさ)。
    仕事は死んでも離すな!とか、オリジナルで言える人間がそう何人もいてはたまらない。
    なので、この本、最初の印象は良くなかった…。
    人によってはフラッシュバックするようなセリフを、そのまま引用しちゃうの…?って。私も、あの件を思い出して苦しくなっちゃったし。

    でも、読み進めたらなかなか良いなって思うような、転職というより「学生シューカツ」の真理だなと思えるような、共感できる記述が結構あった。

    体育会系の爽やかでやる気のある若者を演じて就職した会社では、そのキャラを演じ続けるのがつらくない。
    一箇所に3年も勤められない人間はどこでも通用しないという言葉の呪い。
    じゃあ3年勤めたらその先どーなるの。
    これらは、若者仕事あるあるなんじゃなかろうか??

    シューカツ面接ではなくても、面接で取り繕ってしまった過去は誰しもあるだろう。わたしもある。
    そういう人には、響くものがあると思う。

    来栖さんの過去にさほど興味をもてなかった私は、後半2作はちょっと蛇足が多く感じてしまったけどな。

    装画はおかざきまりさん。
    表紙は多分、主人公羊谷。
    で、裏表紙の白髪のセクシーイケメンは、魔王様こと来栖?
    来栖さんはこんなセクシーイケメンですか?!
    読んでる限り、もうちょいクールで神経質なところのある人なのかな?と思ったんだけど。
    裏表紙見るたびになんとなく恥ずかしくなってしまう…そんな裏表紙。

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    2023年06月10日
  • 放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー

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    ネタバレ

    「その爪先を彩る赤」は、多重人格を装う必要性がよくわからなかった。さらにはあまりに露骨なヒントでねらいが読めなかったなぁ。総じてキャラ設定の意味を十分に活かせていない気がする。長編だと違うんかな?

    「東雲高校文芸部の崩壊と殺人」は、妙に淡々としていたがトリックはよかった。というか、淡々としていたからトリックの良さが際立ったのかもしれない。高校という世界をどのように色づけるかは、世界観だけではなく、トリックの受け取り方まで変えるんだなと改めて思った。

    「黒塗り楽譜と転校生」は、転校生って必要?って感じの扱いになっちゃった気がする。タイトルにつけて一定の役割を期待したのだとは思うけど、作品全体としてはむしろマイナス方向ではなかろうか。今回の謎の本質をよりプラスにさせるためのテクニックだったと仮置きしても、それでもなお悲しい存在になっちゃってるなぁと思う。3枚目にもなりきれない的な。

    「願わくば海の底で」という作品は、海の底で、もしくは海の底に何を願うのかという、タイトルをどう受け取るかで事件との距離感を変えてしまう難しい作品かもしれないと思った。それがまだまだ誰の記憶にも新しい震災だからということではなく、人の生き死にには、特に残された人にとっては当人にしかわからないことがあるという大前提をミステリーの伏線にしたところだろうと思う。ミステリーは誰にとってもフェアでなければならない。イレギュラーな形で人を失う辛さを、誰しもがもつ感情や意図で隠さなければならない状況を持ち込むことでそのフェアさを担保したという。短編だから表現できたのかもしれないね。長いと震災のイメージがデカくなりすぎるかもしれない。

    「あるいは紙の」は、高校というおそらく10代のそれなりに濃密な時期が、こうした日常の謎で彩られていたかもしれないというある種の夢をリアリティをもって見せてくれた(つまりは自分の高校時代は多分もっと平凡だった)。新聞部の矜持とかいうことではなく、おそらくただの若気の至りなんだろうけども、何をするかより、誰とするかみたいなところで主人公の彼は、裏染と向坂にアテられたんだろうな。
    ただ、タイトルの意味がわからなかった。向坂が無理をしてる理由もよくわからないままな気がする。今回の事件の前の2つの殺人事件を経て、もしかしたら向坂は裏染の立ち位置が広がってることになんかちょっと焦ったのかもしれないね。

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    2023年06月08日
  • モノクロの夏に帰る

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    第二次世界大戦、太平洋戦争というものがどんどん遠ざかっていきます。
    子供の頃も既に遠い出来事でしたが浅草に行くと傷痍軍人が居たり、おじいさんは大体戦争に行った事ある人だったし、おばあちゃんと言えば戦争体験者であることが当たりまえでした。
    ナチスドイツの酷さを色々な映画や本で見ながらも、日本も同盟国であった事はどこか遠い出来事のようだし、被爆国でありながら日本人の多くはアメリカに悪感情は持っていないと思います。僕もその一人。
    自分たちが知っている、学んできた事と同じ時間軸で、他方では違った歴史が積みあがっている事実。そんな当たり前の事が思い浮かばないのが人間の愚かしい所だと思います。

    被害者の道理、加害者の道理。被害者が加害者に変わる事、加害者が被害者になる事。知っていながら目をつぶる事、被害者を置き去りに罪だけを追求する事。悲しんでいる事を続ける事を暗に求められ続ける事。よろこびを見つける事で悲しみを忘れていると非難される事。
    青春小説の形を取っていますが、そういううしろめたさを感じながら、皆知らなければいけないし、知るという事で過去未来の人々とつながっているという事を感じて欲しいというメッセージに感じられました。

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    2023年05月25日
  • タスキメシ

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    駅伝といえば箱根駅伝ですが、走る選手にはそれぞれにドラマがある。
    「ちゃんと走る」って簡単じゃなくて、そのために毎日毎日努力していて。
    そんな日々の積み重ねがあって、あの舞台に立っているのですよね。

    箱根駅伝が好きで毎年見ているので、コースも頭に浮かぶし、臨場感ある描写に引き込まれました。

    そして解説が柏原竜二さん!!
    私が箱根駅伝を好きになったきっかけの方です。
    どこで襷を受け取っても必ず一位にしてくれる。
    そんな期待を背負って走られていた柏原さんの過去とか思いとか、初めて知ったエピソードもあって驚きました。

    この小説の兄、弟、親友、すべての要素というか共感できるのが柏原さんだなぁと。
    ある意味とてもリアル。

    また箱根駅伝の前に読み返したくなる作品です。

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    2023年04月27日
  • 転職の魔王様

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    なかなか本心を言葉で出さないというのはもどかしいが、それはそれで読み込むには面白い
    人生はそんな事の繰り返しだから

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    2023年04月23日
  • 転職の魔王様

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    ちょうど転職を終え、人材業界へ転身したので勉強のために読みました。
    自分の人生は自分の頭で考え、決断する。
    エージェントはその決断のサポートをする仕事であること。
    その他、人材業界で働く上で大事な言葉を多く知る機会になりました。

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    2023年03月26日
  • 風は山から吹いている――Why climb mountains with me?

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    登山をしたことが無いけど、山に行きたくなる。

    筑波岳はスポーツクライミングでインターハイにも出たこともあるが、大学ではスポーツクライミングは続けないと決めていた。しかし、大学の部の勧誘がしつこくてウンザリしていたところ、今度は登山部から勧誘される。登山部は梓川穂高1人しか部員がいない。1回だけと誘われた岳は筑波山に登り、結局、登山部に入る。
    2人には人には言えない過去があった。物語が進むにつれて明かされていく秘密。2人とも辛く苦しい気持ちを抱えていたのだ。
    そんな苦しみを忘れさせてくれる登山、やってみたくなる。そこまで本格的なのではなくてもいいから。

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    2023年03月17日
  • タスキメシ

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    今作を読む前に、「タスキメシ・箱根」から読んでしまったけど、「~箱根」で紫峰大学の食堂を切り盛りする眞家早馬の現役選手に対する熱く、優しい思いの裏側に隠された過去を知れた感じがするので、順番が逆になっても、全然問題がなかった。
    今作は早馬がまだ高校生の頃の話。
    有力選手だった早馬だったが、駅伝の激走後、膝を故障し、3年の大事な時期をリハビリ生活で過ごしていた。
    そんな中出会ったのが、料理研究会の都。
    都に料理を教えてもらううちに、母親を亡くし、暴飲暴食だった家族の栄養管理に目覚め、同じく有力選手である弟の春馬の栄養面でのサポートに活路を見つける。
    ずっと背中を追い続けていた兄・早馬の姿を複雑な思いで見守る春馬。ライバルであり、良き理解者であった陸上部キャプテンの助川の葛藤など、当事者である早馬以外の登場人物の心情が手に取るように伝わってくる。
    一度は陸上を諦めた早馬が、ラストで大学進学後、再び陸上を始める展開にさらに胸が熱くなった。
    もちろん、出て来る料理はどれも美味しそうで、料理初心者の早馬でも作れる料理なので、読んでいて作ってみたくなるのも魅力。
    この話を知った上で、もう一度「箱根編」を読んでみたくなった。
    「箱根編」では一切出て来ない都のその後も気になる。

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    2023年03月16日
  • タスキメシ

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    3/7から濃厚接触となったために自宅待機中。
    この間、3冊目を読み終えました。

    タスキメシは、駅伝と食べものの単純な青春ものだと思って読み始めたら・・・
    なんと、高校生が思い悩んだり、いろいろな感情が入り混じった深い物語でした。
    人生いろいろな場面で決断していかなければならないと思いますが、後悔しない人生を送りたいですね。
    それから、作中に出てきた料理は、どれも美味しそうでした。
    面白かったです。

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    2023年03月10日
  • タスキメシ

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    ネタバレ

    高校生が様々な葛藤を乗り越えて、前に進んでいく姿が良かった。
    みんな、自分だけの進路を見つけられて良かった。

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    2023年02月20日
  • 競歩王

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    今作も文句なく面白かった。額賀さんのスポーツものって、単にその競技の話だけじゃないところが本当に素晴らしいと毎回思う。今回も鳴り物入りでデビューした若き学生作家と、やむなく駅伝から競歩に転向したあるアスリートの2人の人生が絡み合う形で、非常に面白かったです。知られざる競歩の世界も興味深い!ただ一つ、主人公に絡んでくる新聞部女子のキャラが微妙だったな…主人公との関係の結末も含めて。そこ以外は大満足!でした。

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    2023年02月16日
  • 放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー

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    前作から、10年ぶりの復活となる本書は、創元推理文庫から2020年に発売された、「書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー」の第二弾で、全て1990年代生まれの作家が書かれているのが特徴ですが、どちらかというと、その若さはあまり気にならず、バラエティに富んだ多種多様な作風を、一冊で体感できた喜びが強かったです。


    武田綾乃 「その爪先を彩る赤」
    演劇部の失くなった靴を捜索する話で、犯人や動機は分かりやすいものの、その後の探偵に絡む、謎解きの細やかな伏線が見事だと思いましたし、そこに潜んでいたのは、探偵と「僕」との間における、稀少な価値観の共有で、こうした自分を認めてくれるような喜びは、学園生活では、やはり大切ですよね。

    斜線堂有紀 「東雲高校文芸部の崩壊と殺人」
    武田さんの、明るい雰囲気の話の後だけに、余計に衝撃的に思われて、犯人探しや事件の謎以上に、後味の悪さが凄まじく、おそらく、大人の全く介入しない状況もそうさせたのかもと思うと、学生たちの持つ視野の狭さに、思考能力の限界や恐ろしさを感じさせられて、もはや狂気的ですらある。問題作。

    辻堂ゆめ 「黒塗り楽譜と転校生」
    ミステリの要素に、やや専門性を感じられたが、合唱コンクールを絡めた清々しい物語には、これぞ青春といった気持ちの高まりを覚え、最初まとまらなかったけど、やるときはやるといった、かつての私の中学のクラスの雰囲気を思い出しましたし、謎の答えについても、同様の青春が滲み出ていて、この時しか体験出来ないことの素晴らしさを、実感いたしました。

    額賀澪 「願わくば海の底で」
    まさか、こうしたアンソロジーで、東日本大震災を題材にしたことに驚き、その筆致も、当時の哀しみだけでは表せないような、複雑で繊細な哀しみを、こと細かく表現しており、『その《潮時》を無理矢理踏み越えてきた』等に感じ入るものもありましたが、ミステリ要素も、最後の最後にどんでん返し的に入っており、しかも、それが見事というのが適切なのかどうか分かりませんが、皮肉にも、震災と絡んでいるからこそ成立するような、叙情感や喪失感に、諦観めいた悲しみ、そして、人として、どうあるべきだったのか? そんな事を考えさせてくれました。

    青崎有吾 「あるいは紙の」
    最近フォローしている人達の間で盛り上がっているのを、私は素知らぬ振りをしつつ、秘かに気になっていた方で、まずは短編をと、お試し感覚で読んでみたら「裏染天馬」シリーズで、しまったと思ったが、どうやら番外編的な感じでもありそうで、主役は「クラーク・ケント」の彼だったが、「向坂香織」とのやり取りに青春のもどかしい切なさがあったり、天馬とのやり取りの素朴さ等、まず物語としての面白さがあっての、最後の謎解きは渋いながらも効果的だったし、それは、向坂自身の思いの詰まった、彼女自身の存在意義を証明したようでもあって、彼の為したことの大きさを実感させられた終わり方は、とても素敵で、このシリーズにより興味を持ちました。それにしても、青崎さんは時代もの好きなのかな。


    以上、五つの短編を読みまして、いくつかの作品で印象的だったのが、この年代特有の、本音を素直に言えなかったり、自分の想定以上の意地を張ってしまうといった、そのもどかしい感情に苦しむ姿であり、これこそ青春に付きものなのかもしれませんが、おそらく実際にどうすれば良いのか、本人自身、分からないのでしょうね。

    しかし、そこを試行錯誤して乗り越えていくことが、大人へと成長していく、一つの要素なのかもしれないと思うと、これらの物語には、そうした成長への願いが込められているようにも感じられて、私の中のどこかで、アンソロジーには単行本に掲載しないような実験的なものや、ちょっとした小品を書いているといった、そんなイメージを払拭してくれた、素敵な作品集でした。

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    2023年02月14日
  • モノクロの夏に帰る

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    どの話も良かったけれど、第二話と第四話が特に好きかも。
    きれいごとじゃなくて本音で話せる人がいるって素敵なことだと思う。
    そして、登場人物がちゃんと別のストーリーでも生きてるのが何となくほっこりする。

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    2023年02月12日
  • 風に恋う

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     熱いです! 吹奏楽が熱い! 夢と希望に満ち溢れ、活力みなぎる若い時代‥そう、アオハルです! 大切な仲間と苦楽の時間を共有し、その初々しさが濃密に描かていて‥。そうです、青春は〝密〟なんです!(何処かで聞いたな)

     受験、オーディション、家族‥、生徒も指導者も苦悩し葛藤しながら、進むべき道を自らに問い続ける物語です。こんなに大変でも、一途に困難に立ち向かう姿に感銘を受けます。一人一人の登場人物が生身の人として描かれ、それらの感情と奏でる音楽が絡み合い、共鳴・調和し、その響きが読み手に大きく伝わる描写です。まるで演奏後の拍手喝采のように、胸が打たれる読後感です。ブラボー! ぜひとも多くの中高生に読んでほしい一冊です!

     本書のレビューから逸れますが、ここ3年ほどはコロナ禍もあり、中高生の部活動に携わる皆さん、指導者、保護者の方々には、新たな乗り越えるべき多くの壁に直面したことと思います。
     少なくとも、部活動に青春を賭けた中高生には、大会のある・なし、結果だけで、3年間の部活動の価値を決めないでほしいと、心から願います。頑張ったことそのものが、必ず活かせる場面がきっとくるはずですから。(あー、なんか偉そう‥。何様?)

     吹奏楽コンクールの課題曲は、マーチが多いそうですね。よく考えたらマーチは行進曲だから、前を向くための曲なんですよね。いやー、若いっていいなぁ‥。
     全国の中高生諸君、頑張れー!

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    2023年01月22日
  • タスキメシ 箱根

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    多分「タスキメシ五輪」が発売されたことをきっかけに平台にあった今作。
    この前の作品の存在を知らずに、読んでしまったが、今作からでも十分に面白かった。
    前作からの引き続きの登場人物であり、紫峰大学の駅伝部の栄養管理士兼コーチアシスタントの眞家早馬と、紫峰大学駅伝部主将の仙波千早の二人の目線で物語が描かれる。
    箱根駅伝初出場を目指す千早たちと、怪我で思うようなランナー人生を送れなかった早馬が食事を通じて、本気で箱根駅伝を目指していく。
    序盤は千早の早馬への得体の知れない悪意のようなものが理解出来なくて、イマイチかと思ったが、後半100ページ弱で描いた箱根駅伝の様子は圧巻だった。
    他の駅伝小説よりも圧倒的にページ数がないのに、10区それぞれの選手の熱い闘い、走りが伝わって来て、涙なしでは読めなかった。
    紫峰大学のモデルが筑波大学であることは、地元民であれば、すぐに分かる。
    その筑波大学の駅伝部監督が解説を書いているのも、凄いし、内容も読みごたえがある。
    箱根駅伝の小説と言うと、どうしても「風が吹いている」のイメージがあるので、駅伝とご飯をかけるのはどうかと、最初は読むのをためらっていたが、ちょうど箱根駅伝を5日後に控えたこの時期に、この作品に出会えたことはすごく良かったと思う。
    物語のラストはコロナの世の中に突入。
    綺麗ごとだけで終わらないラストが、他の作品も読みたくさせる。

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    2022年12月29日