額賀澪のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2025/11/29
10年前に刊行された本ですが、機会があって今になって読んでみました。
青春系の小説イメージが自分の中で強かった額賀澪さんですが、この「ヒトリコ」という作品は青春のキラキラした世界の裏側の人間模様に焦点を当てたような内容になっています。
主人公の深作日都子は小学校のときに起きたできごとがきっかけで人と関わることをやめ、1人でいることで学校生活を過ごすようになりました。
その件に関わっていた海老澤冬希という男の子は小学校のときに転校。
幼馴染の堀越明仁は日都子に寄り添おうとしますがシャットアウトされる…というのを高校まで繰り返します。
無理に人と関わる必要がない人が主人公なの -
Posted by ブクログ
棋士、フィギアスケーター、作家など天才とその観測者との物語。天才たちとの交流によって、生き方に思いをはせる連作短編集。
額賀澪氏の作品は初めてだったが、どの話も良かった。特に個人的には『カケルの蹄音』が良かった。この作品だけ、天才の度合いが違う気がした。
この短編集に出てくる天才たちは、全盛期を過ぎていることが多い。競技や分野によって輝ける時間が違うからだ。
特にフィギュアスケートといった低年齢の時期に全盛期が来る競技などでは、人生という目線で見ると『天才』以降のほうが圧倒的に長い。
この「天才」ではなくなってからの変化を扱っているのは、とても興味深かった。
「天才」は、自分よりも才能のあ -
Posted by ブクログ
素敵な本だった。
夏休みに、卒業した小学校の図書室に通う中学生のフミちゃん。そこへ、感想文用の本を借りにくる小6たち。感想文なんて苦手だと言う栄人、自分の気持ちに蓋をして周りに合わせている優衣、感想文を買おうとする虎太郎、感想文なんて読まなくても書けるから、先生達が喜びそうな本を選ぼうとする颯佑、可哀想な子と決めつけられて周りから気を遣われていることに辟易している千尋は、それぞれフミちゃんに本選びや感想文の書き方を教えてもらう。
5人が書き上げた感想文は、本音に満ちていて、自分と向き合って書き上げたことがわかる感想文だった。小学生に助言するフミちゃん自身も、実は悩みを抱えていて、図書室で毎日感 -
Posted by ブクログ
本作が手元に来たのは、本みくじで引き当てたから…
表紙を見た瞬間に嫌な予感がした。
つい最近まで転職しようかどうか、私自身が迷っていたからだ。
意を決して読み始めたがやはり予感が的中した。
グサグサと色んな言葉が自分に刺さる。
魔王様の言葉はもちろん、求職者達の心情も全てが私の心に攻撃してる。
でもふと思ったのは、ここまでグサグサ刺さる言葉を紡ぐ著者は、もしかして著者自身も自ら心をグサグサ刺しながら執筆していたのではないか?
そうでなければ、どこの馬の骨だか分からない読者の心をここまで攻撃できるなんてありえないと。
「迷える羊を導けるのは、迷える羊だった人間だけ」このフレーズに衝撃を受けた。 -
Posted by ブクログ
天才高校生作家のスランプ。夢見ていた舞台に立てず足掻く競歩選手。
好きなものが怖くなる、楽しめなくなる気持ちはなんとなくわかる気がして、ちょっと苦しくなる。
誰よりも速くゴールへ向かわなければならないのに走ってはいけない。たしかに矛盾した競技だ。ルールに縛られ、その中でもがいてゴールを目指す。
“天才高校生作家”というラベルを貼られ、書くことが苦しくなって、自分の立ち位置も分かっているのになかなか前に進めない忍と、
箱根駅伝を諦めざるを得なくなり競歩に転向して、でも心の奥では納得できなくて、苦しみながらも歩き続ける八千代と、
何かに縛られながらも、時間をかけてもがきながらも、一歩一歩進んでい -
Posted by ブクログ
〝菅原晋也〟という男の子について、友人らが語っていく甘酸っぱい青春ミステリー
──と思ったら。。。
【第一話 ガラス片の向こうで】
高校一年〜青い火の玉の謎
【第二話 炭酸水の舞う中で】
高校二年〜突然プールに突き落とされた理由
【第三話 黄色い花の下で】
高校三年〜彼が描いた花の絵の意図
語り手が次々と代わる連作で、菅原晋也は悪癖もあるけど憎めない、人懐っこい男の子。
迷子の子犬のような顔だって(・ω・`U)
どの話も〝人には話せない秘密〟が描かれている
大きい小さいはあれど、きっと誰もが秘密を持っているのではないだろうか。
もちろん、私も…
特に思春期の頃って、色 -
Posted by ブクログ
今回手にしたのは、読書YouTuberのオンライン読書会で感想を言い合う企画に参加した後に読んでみての振り返り、そして額賀さん御本人のSNSで知りました。
小学校のころの読書感想文、先生からも「自由に書いていい」と言われたことありませんか?
教え方がざっくりしすぎてて、何を書けばいいかわからなくて読書感想文が嫌になり、読書に忌避感を覚えたというルーツを持ってるので激しく共感(笑)
〈フミちゃん〉のような人に幼き頃に出会いたかったなと思いながら、小6の彼らに教えている〈フミちゃん〉は自身も自分を確かめてるのかななんて思ったりもした。
彼女の思いが垣間見れたのは颯祐くんに言い放った
「出題者 -
Posted by ブクログ
労働観というものについてのクライアントの気づきと再生を描くヒューマンドラマ。
また、サポートする CA を描くお仕事小説としての側面もある。
物語は、3話目までは主に主人公の千晴と各話のクライアントの視点で語られるが、第4話は魔王・来栖とクライアントの視点で、最終話は千晴と来栖の視点で、それぞれ語られていく。シリーズ3作目。
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早朝。無人のフロアに杖の音が響く。オフィスに一番乗りした来栖嵐は自席でノートPC を立ち上げた。その日の面談予定について、求職者や面談内容をチェックするのが朝のルーティンだ。
予定確認が終わり、新規登録者リストを開きざっと見ていた