額賀澪のレビュー一覧
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▼4編の連作ものです。共通するのは、とある一冊の本(架空の本なんでしょうが)。書名は「時をかける色彩」。戦前や戦中、戦後直後のモノクロ写真に、AIを使って色彩をつけたもの、という本。
▼実際に同様の本が、世間にはあります。ただどうやらこの書名は架空。小説上の小道具です。
この本が共通項。で、この小説自体は2022年の発表だそう。2022年の2月から、ロシアによるウクライナ侵攻が起こっています。
▼この小説は、ウクライナ侵攻が、「戦争は現在進行形なんだ」と強く認識を持った人々・世代の物語でもあるようです。
「(2022年時点の)現在を生きる人たちが、若者たちが、戦争について考えること。それをどうやったら、紋切りの良い子にならずにできるのか」
ということが共有する主題。なかなか、野心的な小説だなと思いました。
以下、ネタバレを含む各エピソードの備忘メモ
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①君がホロコーストを知った日へ
・20代後半の、東京都内で大手書店で働く書店員の男性。
・同年代の、男性で、看護師として働く人。
が出てくる。二人はルームシェア的に共同生活をしている。
物語は書店員の側、書店員の気持ちで進んでいく。
このふたりは、どうやら同性愛者、性的マイノリティーさん。
それを恐らく自分の生活や家族や仕事の周りには言っていない。
出版社の担当者から、「時をかける色彩」を売りたい、協力を、と、言ってくる。
書店員は、都内の最大手書店の、最大旗艦店で勤めている。
過去にPOPなどから、地味な本をヒットに導いたことがある。
カリスマ書店員、と呼ばれたり。
自分の祖父は戦時中もかすかに知っている。だがちょっとボケてきている。
戦争を語り継ぐ?ための本を、どう売るか。POPになんて書くか。迷う。
たまたま、看護師が戦争の、ホロコーストのドキュメンタリーを見ている。
書店員は、看護師に、祖父の話をする。
看護師は、「なぜホロコーストのドキュメンタリーを見ていたのか」を語る。
それは、「同性愛者も同様に”処分”されていた」と知ったからだった。
それを知って、書店員にとってきっと、「戦争」は少し身近なものになる。「戦争」を起こしていけないと思う。
(以降、②③④は、書店員が①の物語時間のあとで、この本をいろいろ工夫して売った、という結果を受けての物語になる仕掛け)
②戦略的保健室登校同盟
愛媛県松山市。女子高生の紫帆と松葉が主人公。
ふたりは教室に行きづらい「保健室登校同盟」。
紫帆の方はニヒルで賢い。「こういう感想文とか書いておけば、大人は喜ぶんだよね」。
夏休みの自由研究、「戦時下の松山市」についてやろう、と。
「時をかける色彩」がヒントになっている。
結局、松山空襲の際に焼け残ったというお地蔵様を見つめ、その体験からなにかしらから「自分事」な感覚が強くなる。
という縦軸に加えて、
紫帆の親との葛藤(両親が離婚、父親と離れていて、たまに会うが面倒だったり)、そして、ステレオタイプで判断されることへの不快感、ふたりの友情、などが描かれる。
③平和教育のおちこぼれ
書店員の知人、取材する側の、テレビディレクター。東京在住、青柳守美が主人公。30前後か。独身。広島県出身。ドキュメンタリーをやっている。終戦特集とか。
そしてまた今、終戦特集を考えろと言われている。広島に帰省すると、両親は本当は結婚して子供を産んでもらいたい。あからさまに言わないが面倒くさい。
姉がいる。結婚している。義兄と、姉は、高校時代からの付き合い。義兄は、主人公青柳守美にとっては高校の先輩。
この、姉と義兄は、高校時代に「平和活動の委員」みたいなことをやっていた。つまり「平和教育の優等生」である。
広島は平和教育が盛んだ。大学生になって東京に行くと、「8月6日」を知らないような若者もいて、唖然としたり、腹が立ったり。
そして、平和教育に関係してきた長い歳月と、世界中で無くならない戦争・・・・みたいなことに悩んだり。
青柳守美は、そんな「広島平和教育の落ちこぼれだったジャーナリスト」として、戦争にまつわる番組を作ることに不安を感じたりもする。
だが、最後には、「偽善でもなんでもやらないと次に渡せない」。
「時をかける色彩」を題材に番組を作ることに。
④remember
東京、私立高校。共学。レオ・ブラウンという日米ハーフの男子。バイリンガル。父が米人、母が日本人。最近親の仕事都合で日本に。日本の高校で色々気を使いながら生きている。
学校、文化祭、「戦争を考える。時をかける色彩を自分たちもやってみる」みたいなことをクラスがやる。被害者としての日本、加害者としての米国、という構図が気持ち悪い。さぼる。さぼり仲間が桜太。ふたりは仲良くなる。
桜太は、福島311で、罹災した畜産業者の家の子供だった。放射線で住めなくなり、こっちに来た。当初、いろいろと、からかわれた。
レオ・ブラウンは、「戦争、平和教育の上で、自分が感じていた違和感、同調圧力、紋切りなきれいごと」へのもやもやした思いが、「311の被災者の桜太に対して、なにも知らない、勉強していない、自分が、今自分が反感を持っている周囲と同じである」という構図に気が付いて、311の勉強をする。
また、このクラスの活動を、③の青柳ディレクターが取材で訪れる。
結局、レオ・ブラウンは、曾祖父のモノクロ写真を持ってきて色彩をつけてもらう。曽祖父は、西海岸にいた。子供のころは日本人の労働者たちの子供と仲良くしていた。それを写真を通して感じる。
そして、桜太も先祖?の写真(自分も育った畜産農家としての暮らしや建物が映っている)を持ってくる。自分にとっての失われた故郷。 -
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中学校の先生の過労死をきっかけに、働き方改革を進めることになった学校の物語。
部活動の話が中心に展開するのだけど、知らず知らずのうちに自分も部活動を神聖化していたのかもと思った。
何かを犠牲にしてでも頑張るもの。やるからには勝ちを目指さなくちゃいけない。帯にあるように「週6の練習で、目指せ全国大会!」というような部活が、キラキラした青春のように思ってしまう。
吹奏楽部の女の子が熱心な母親に部活を辞めたいというシーンで「自分が青春したくて私を使ってるだけじゃん」と言うところが、なぜだかすごく印象に残った。
親になると、つい子どもに青春して欲しいと思いがち。それって、一歩間違うと自分が青春するのに子どもを使っているだけということにもなるなと。
自分への戒めになる一言だった。 -
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こちら、お話は6章からなるのですが、まず第5話「願わくば海の底で」があり、そこに第1話〜第4話・最終話が加えられたとのこと。
それぞれの語り手によるそれぞれの「菅原晋也」を読んでからの第5話は、菅原くんの奥行きがめっちゃ広がっているので、なんか気持ちの行き場がない感じ。
東北地方の海が見える高校で起こるちょっとした事件と、そこにいつも関わってくる美術部の菅原くん。
絵の才能もあり、いつも飄々としている彼は部内のムードメーカー的存在ですが、ちょっと困った癖に悩まされています。
明るく軽い彼がいつも胸に持っているわだかまりや、才能があるから受けてしまうやっかみ。それらを抱えた菅原くんのキャラクターが魅力的だからこそ、余計にずっと苦しい。
あの日そこかしこでいろいろあったんだろうな、と想像できる。
大事な人の行方がずっとわからず、気持ちの折り合いなんかつけられるはずもない。宙ぶらりんの気持ちを持ち続けている人がたくさんいる、と想像できる。
震災について、より自分に近いところから想いを馳せられる。中高生に読んでほしい一冊でした。 -
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ネタバレ短編集はサクッと読めて良い!
copy
騙された、僕って言うもんだから
ト・モ・ダ・チ
え、分かる。怖いけど早苗の気持ちが分かる。
親友が欲しくて、孤立してる子に近づく気持ち。
この子だったら親友になってくれるんじゃないか的な下心。
ただ、あることないこと言いふらすのはだめです。
卵の殻
よかったのでは??お母さんはちょっとずれていたけど、遼子はずれてないように思えたし。
水底の星
タイプの違う負けず嫌いたち。怖い。
こっちを向いて。
刺さりまくりで痛い。仕事を辞めると仕事でつながっていた人脈がなくなるのが怖くて仕事辞められない。思えば、これまでの友達は、一緒に担ぐ御神輿があった。同じお神輿がないと、女ともだちって作りにくいのかも。
ブータンの歌
たぶん本筋とは違うけど、介護問題は根深い
ラインのふたり
結局、ふたりは何か共通の敵を作ってなんでもいいから文句言いたかっただけなんじゃないかと思った。ジャミラの方が一流だった。
獣の夜
同い年だ。なんか憧れた。好きな話だった。 -
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部活が先生達を苦しめているんだ!
公立小中学校の先生が働き過ぎだという記事はよく目にする。朝が早い、休憩が取れない、授業後は部活指導や事務仕事、保護者対応。そして週末は部活の遠征の付き添い。これがずーーーっと続く。残業という概念がなく、残業代が出ない。
典型的なやりがい搾取。
子供達のために、学校の先生には心身共に健康で居てほしい。長時間労働はダメだし、せめて時間管理をして残業代は出さないと。消費税減税2年間なんてやらずに、そのお金で、公立小中学校の先生の給料を上げた方が良い(特に地方)。そういえば、アメリカの公立小学校は、1クラス生徒20人位だったよな。日本はやっと35人にしたばかり。先生が少なすぎ。 -
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ネタバレずっと考えさせられる、教育現場のリアル
週6日の練習、目指せ全国大会! ――部活動って、そんなに頑張らないとダメですか?
教育現場の理想と現実を描いた、今とてもタイムリーな社会派小説。
中学教師の過労死をきっかけに、「学校」や「部活」のあるべき姿を問い直す1冊です。
「定時帰り」「部活動廃止」「完全週休二日制」を掲げる新校長。 同僚の訃報に怯える英語教師、部活に懸けるバレー部部長、青春を守ろうとする保護者会会長。
生徒、教師、保護者……それぞれの立場から描かれる群像劇だからこそ、すごく引き込まれます。
先生が限界まで働く今の状況は、やっぱりおかしい。
教員の働き方改革や部活動のあり方について、しっかり、向き合わなきゃいけないなと感じました。
学生さんはもちろん、親世代や先生方にまで、ぜひ手に取ってほしい作品です -
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「読書感想文ってさ、自分のことを書く作文なんだよ」というフミちゃんの言葉が印象に残った。
読書感想文は、本を読んで感じたことを書くものだと思っていたけれど、「自分のことを書いていい」と考えると、少し見え方が変わる。なぜ心が動いたのか、なぜこの一文が印象に残ったのか。考えてもわからないことは、わからないまま書いてもいい。読書を通して、自分の心を探っていく。
本を読んで生まれたモヤモヤが、別の本を読んだことでふとつながることもある。そう考えると、本を読むことは自分の中に潜っていくことなのかもしれない。
「必要なものだけ効率よく選んでいると、そのうち息苦しくなる」という言葉にも共感した。読書はインプットするだけでなく、感じたことを言葉にするアウトプットも含まれているのだと思う。吸ったら吐かないと苦しいように、読んだら書いたり話したりすることも必要。
読書感想文を書くことは、本を読むだけではなく、自分自身を読むことなのだと感じた。