あらすじ
夢の諦め方は、誰も教えてくれない
「雇止め」という冷たい現実を前に、研究を愛するポスドクが下した決断とは――。
青春小説家が描く、青春の終(しま)い方。
社会に横たわる痛切な苦みを描く、著者の新境地。
瀬川朝彦、35歳。無給のポスト・ドクターである。学生時代に魅了された
古事記の研究に青春を賭してきたが、教授職など夢のまた夢。
契約期間の限られた講師として大学間を渡り歩く不安定な毎日だ。
古事記への愛は変わらないが、今や講師の座すら危うく、
研究を続けるべきかの煩悶が続いている。
そんな折、ゼミ時代の先輩が大学の貴重な資料を持ったまま
行方不明になってしまうという事件が。
45歳の高齢ポスドク”となっていた先輩は、講師の職も失い、
なかばホームレス状態だったという。先輩は資料を「盗んだ」のか?
自らの意志で「失踪」したのか? そして、朝彦の下した将来への決断は?
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読んでて苦しくなるけど、全く希望が持てないわけでもなく、不思議な読後感が残った。
登場人物みんな優しくて、一生懸命で、それが余計に辛い。
私も今はありがたいことにやりたい仕事で生活ができてるけど、そうじゃなくなった時にこの本のことを思い出すだろうなぁ。
住む場所があること、食べるのに困ってないこと、仕事があること、友達がいること、ひとつひとつにちゃんと感謝しようと思った。
Posted by ブクログ
大学の非常勤講師の収入を得て、古事記の研究を続けている朝彦が講師の雇い止め宣告を受ける。同じ研究者の先輩は住むところもなくなり、貴重な資料を持って失踪。「大学の先生」でも非常勤講師の立場がいかに不安定なものなのか、日本の大学が研究者を使い捨て、コストを抑えて運営されているのかを改めて知った。就職氷河期に就活が重なった世代のストーリーもあり、シビアな内容だった。
Posted by ブクログ
絶妙なタイトル、、いいトシして自分のことだけしか意識が向いてない夢追い人たちの厳しい現実、経済状況や心理状況が赤裸々に描かれていて、、、
・・・私自身は、大人になることが当たり前だった最後の世代(?)で、30半ば過ぎても青春の終わらせ方がわからないとか、正直、いい加減にせーよクソ甘えてるよね、と切り捨ててしまいたい、と思うところもなきにしもあらず、とはいえ、子どもたちの世代をはたから見るに、今ってこうなんだよねー、理解を示さんといかんのかね、となんとなく日和ってしまう、、、
(我ながら、どんな立ち位置やねん⁉︎)
自由が認められ過ぎて、敢えて大人にならなくてもいいから、かえって悩み多いんかな?
いや、ごめん、違う、私には、今のこの状態から離れたくない、クビにされたくないと思うまでに、のめり込んだものはなかった。だから、単純に30半ば過ぎてもぐだぐだ言ってる彼らが羨ましい、かな。
、、、なんかわからんけど星5つです。
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研究者を志す若者たちの絶望。ポスドクはおろか生きることも閉ざされる。最後に夢を叶えましたって能天気な展開を拒絶し、学ぶ人々を支えられない諦念をしっかり描いている。力作だ。
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瀬川は本当にすごく強い人でした。
人生における大きなイベントが重なってどうしようもないとなっていた時でも、前を向こうとする姿にすごく胸を打たれた。
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まず日本での研究者の立場がこんなに過酷だとは知らなかった。
そして夢と現実のギャップ。
捨てられない大切なもの、切り替えられないもどかしさ。就職氷河期で人生を削られた人達。
今後の瀬川朝彦35才を応援したい。
Posted by ブクログ
言葉にならないけど読んでよかった。
小柳先輩を通して10年後の自分と向き合う辛さ。
瀬川を通して夢を託す栗山。
青春と年齢の狭間で選択を迫られる瀬川。
初めて読む作家さんでしたが、一気読みでした。
違う作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
研究者を諦めて一般企業で働いている人を何人か知っているが、適当に大学に入って就職した自分とは比べ物にならない葛藤を経て社会人になったのかもしれないと思った。
自分自身は、命をかけられるくらいに没頭したこともなく、なんとなく働いているので、いろいろと考えさせられた。
Posted by ブクログ
新聞の本の紹介コーナーに載っていた作品。
古事記の研究をしてる、35歳でポスドクの主人公が自分の進むべき道を探るお話。
ポストドクター略してポスドク。博士課程を修了し、常勤研究職になる前の研究者のことを指す言葉。全く知らない世界の話しだけど、身につまされるシーンが何度もあったな。学生でもないのに、大学にお金払ってまでも自分の研究を突き詰めるって、小説だから主人公達に気持ち入るけど、自分の身内にいたら理解してやれないかもな。
古事記に出てくる「色」の話はとても興味深かった。赤いとは言うけど、緑いとは言わない理由。日本人って凄いよな。
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読んでて悲しい感情もわくけど、好きなことにかける大人達にリスペクトを感じずにはいられない。富を生み出さないけど、才能ある人が好きなものをとことん追求し続けることが出来る世の中であって欲しい。
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研究者としての苦悩、好きなことを追い求め続けることの大変さ。真摯に学問に向き合っても報われない事実。
様々な社会の厳しさが分かる物語でした。夢中で読みました。
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終始、せつなかった。
「「好き」を道標に生きてきた。暗闇を進む灯火だった。この光のせいで生きていけないのだと気づいた。これを大事に抱えている限り、暗闇を歩き続けなければならない。消す日が来た。明かりを消して、この真っ暗闇を出て行く日が来た。」
自ら明かりを消すのは辛いことなのだろう。
小柳が最後に聞いた「こをろこをろ」は何も生み出さなかったのだろうか。瀬川が最後に聞いた「こをろこをろ」は新しい道標を生み出したのだろうか。
とにかく、せつない。
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まーじでしんどかった。古事記、そのうちちゃんと読みます。私は受験落ちた&修論で満足して博士諦めたクチだけれど、文系でポスドクってやっぱ厳しい世界……。仕事で青春出来てる私はラッキーだと思ってたけれど、やっぱ非正規だし全然他人事じゃないぜ〜。
Posted by ブクログ
読んでいて、ずっと苦しかった。
かつての自分の進路について、その時の親の考え、自分の希望、時代の流れなどが、一気に甦ってきたからだ。
好きを極めること。
その電車から降りること。
どちらが正しいとか、そう言うことではない。
ただ、苦しみは常にある、ということなんだと思った。
Posted by ブクログ
個人的には、SNSで個人を攻撃してしまう人の心理が少しだけわかったのがよかった。
自分がこういう人にならないようにすることが大切だし、世の中で成功とされていることや、経済的な物差し以外の価値基準を少しは持っておかないと、今の自分を肯定することは難しいのだと思った。
というよりも、今の世の中はそういう人が多いのではないか、潜在的にはみんな上を見て不満があるのではないかと思った。
上も見ず、下も見ずに、自分にできることをやっていきたいと思った。
あとは、きっちり調べていいポジションを取ることが大切だ、という趣旨の話をする場面では、メリトクラシーは現代で残っている最大の差別だという話を思い出した。
複雑な制度を賢く利用することが求められる現代社会はそれが行き過ぎていて、行きづらくなっているのではないかと思った。
Posted by ブクログ
いまの日本、何か間違ってないか?
「青春をクビになって」を読み
思わず口にしてしまいそうだ。
学部生時代に四年、大学院を修士課程の二年、博士課程の三年
九年を研究室で過ごす。
ポストドクター・博士研究員。
それでも「その多くが非正規雇用」
契約を解除されれば「大学講師」という肩書きを失い
ただの研究者となる。
P179
〈望んで乗り込んで、乗り続けたいと思っていた電車から
降りてしまった事実は拭い去れない〉
誰よりも勉強に励み研究に没頭して。
電車から降りようとも、生きていてほしい。
辛くて切ない。
やはり、何か間違ってないか?
と、ため息を吐きたくなる。
Posted by ブクログ
夢を追いかけることの意味を教えてくれる小説。
夢を追いかける続ける覚悟、夢を諦める勇気。
この2つの意味を理解していないと取り返しもつかないことになる。
ただ、好きなことやり続ける素晴らしさも教えてくれます。
そして、夢を諦める時、次の世代に何を残せるかも考えないといけない。
夢を持つ責任と大切さ教えていただいた気がします。
自分の中で挑戦心がくすぐられました。
夢で悩んでいる方には、何かきっかけを得れる小説だと思います。
Posted by ブクログ
夢にどう決着をつけるのか。無給のポスドクが本来没頭したい研究を続ける夢と仕事に困る現実に苛まれる現実。この折り合いをどう付けるのか。ポスドクらが置かれた環境の厳しさをノンフィクションのようなリアルさで描いた「青春をクビになって」。主人公は大学非常勤講師として働いている35歳の古事記研究者。突然、来年度の契約はできないとの通告を受ける。失踪した小柳先輩は自分と同じく就職氷河期の世代。自分も同じような展開になったかもしれないと他人事とは感じられずに読み進んだ。章間の展開が面白い。
Posted by ブクログ
主人公が言うように、世の中の役に立つ、金になる研究なら良かった、って、それ言っちゃ、いま現在その研究に力いれてる方は救われないのでは?と思ってしまった。結局、その道の第一人者になるか、スッパリ諦めて、また違う道を見定めるかを博士になる前に決めなきゃダメって物語なのか?なんだろう、もう少し希望のあるというか、新しい道に行くにしても捻りある物語が読んでみたかったな、と思ってしまった。
Posted by ブクログ
すごく辛い本だった。良い本と思うのでよけいに辛い。本当にこんな目に遭っている人がたくさんいるんだろうなと。主人公さんのラストが,そんなうまくいくことはないよというものではないことを心から祈る。
Posted by ブクログ
悲しかった。日本の古典を研究することが、生きる糧を得る職業になり得ない。日本の大学はいったいどこに向かうのか?非常勤講師は派遣法という改悪法で5年で雇い止めされるのだ。大学の先生なんてなりたい人はいくらでもいるという理論なのだろう。この国の教育はどこに行くのだろうか。でも、社会の仕組みに合わせなければ主人公は生きていけないのだ。正しく雇われて適正な賃金を得てほしいと願ってしまった。
Posted by ブクログ
218ページ
1600円
5月13日〜5月15日
何かを諦めるのも始めるのも若いにこしたことはないという感じだった。ズルズルと夢を追い続けるのがいいのか、諦めて違う道を模索するのがいいのか、答えは人それぞれ違う。少し刺さる内容だった。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて手に取った。内容は特別面白くもないけど、大学生時代に読めてよかったと思える一冊。章と間章のバランスがいい。全体的にやや重めだけど終わり方はくどさがなくて良い
Posted by ブクログ
青春小説を書いているのに、大体において登場人物があまり成功しない本を書く額賀さんですが、本作も大分苦くて重い。古典文学で大学院に進み、その先の人生の展望が見えず苦悩する若者の物語です。
日本は何かを突き詰めて研究して、年数を経た人に冷たいという事は知っていましたが、文学系となると僕が素人考えでもその先が無さそうだなと不安に思います。
そしてその不安はまさに現実のものに・・・。
Posted by ブクログ
今の時代自分の夢が何なのか分からない、やりたいことってなんだっけ?という人が多い中自分の夢をみつけそこを突き進んでいっても生活ができない。その研究が何かの役に立たないとその仕事はしてはいけないのかそう思った。けどそれと同時に、世の中は誰かのためになった報酬としてお金を貰うという仕組みができてしまっているのだからこうなってしまうのは仕方の無いことなのかと思ってしまう。
夢ってなんなんだろう。
お金が無いと夢は追いかけられないし夢は夢じゃなくなる。
そうなっていくと人は生きる意味を失うと私は思う。好きなことだけで生きていけないことは十分にわかるけど、それを生かせる何かを作ってあげることは出来ないのか。需要がない仕事は意味が無いことなのか、そう思ってしまう。
政治家だって、世の中を変えたいからなったんでしょ?世の中変えられないならポスドクみたいに生活できないぐらいのお給料しか貰えないよね?この差がおかしいって私は思う。
Posted by ブクログ
ポスドク(ポストドクター)と呼ばれる博士研究員
の置かれている状況がいったいどんなものなのか、本書を読むとよくわかる。
他の爽やかな著書とは違い少し重め、厳しい現実を突きつけられる作品です。
大学で研究を続けながら非常勤講師をしているポスドクの瀬川。
“雇い止め”のある非正規労働者の不安定さ。先の見えない悩みと葛藤。
「好きな研究ができる環境」と「経済的安定」を共に得ることって難しい。
希望へと続く「もし」「たられば」の言葉が頭のなかをグルグルまわる。
あぁ、これはしんどいなぁ…。
好きなことを貫くって難しい。
読んでて切なくなった。
自分のことを振り返ってみても、人生って選択の繰り返し。
社会問題を絡めながら、ポスドクの現実と夢の諦め方について描かれた作品。
しんみりとしてしまいました。
『何を抱えて、代わりに何を捨てて生きていくかって選択は、下した直後はしんどいはずだ。でも、何かを諦めても、意外と別の幸せは転がってるんだと思う』