額賀澪のレビュー一覧
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東北地方沿岸部の高校で過ごした菅原晋也の3年間を彼に関わった上級生や同級生や後輩たちが、彼と過ごした日々を語る。
美術部に入部した彼は、飄々とした性格だが大切なものほど失くしてしまうという悪癖に悩まされていて、第一話からその発端を窺わせる内容だった。
第二話は、会食恐怖症を暴く。
第三話は、彼の才能を羨ましく思う後輩と美術教師。
第四話は、彼の姿がない大学。
第五話は、彼がいなくなったあの場所で…。
菅原晋也ともっと一緒にいたかったのに…と誰もが思っただろう。
才能のある不思議な彼。
いなくなったことも認めたくない…と。
だが彼はいないという現実。
それでも彼がいたあの頃を誰もが覚えている -
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戦後80年。
80年という節目を感じながら読もうと思ったが、終戦記念日なんぞとっくに過ぎていた頃に読むことになってしまった…。
自分がこの世に生まれ成長し今に至るまで、どれだけの戦争・紛争が起きているのだろう?またどれだけの天災も起きているのだろうか?
5編からなる短編集は軸となるAIで彩られた資料集『時をかける色彩』。
ここで思い出したのは、地元の資料館(東京大空襲・関東大震災の遺物が遺されたところ)を、小学校の時に授業の一環で行ったこと。第三章の『平和教育の落ちこぼれ』に出てくる守美のように、凄惨であり目をつぶれば瞼に戦禍が蘇るトラウマと恐怖に慄いた記憶が蘇った。
目をつぶりたくなるよう -
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8月15日で終戦からちょうど80年を迎える。
殆どの日本人が戦後の生まれとなった今、
太平洋戦争をはるか遠い昔話と感じる人も少なくない。
戦時下の写真はモノクロばかりで、灰色がかった光景はどこか「歴史上の出来事」のように感じさせる。
戦時中のモノクロ写真をカラー化した『時をかける色彩』という写真集をきっかけに様々な立場の人達が戦争を自分に一歩近付けて考えるという5編からなる連作短編集だ。
どの編も考えさせられるものがあり、特に書店員飛鳥の『時をかける色彩』のポップには心に刺さるものがあり読み応えのある1冊だ。
登場人物の名前に色が入っていたり、普通からちょっとはみ出したそれぞれの主人公達の -
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戦時中などの写真に色をつけた「時をかける色彩」と言う写真集をめぐる連作短編集。
年齢も住むところも違う様々な環境の人たちが「時をかける色彩」に触れることにより、戦争とは何だったのかを問いかける。
戦後80年。
もう太平洋戦争を直接語れる人は、ほとんどいない。
それでも数年前に比べて、当時の様子を語る人が増えて来た印象を受ける。
作られる作品も現実に忠実なものがある一方、ある意味、戦争に意味があるのかと反戦のメッセージが含まれてるものも出て来た。
どちらも間違いじゃないし、それを比較することで、今作中にもあるが、「戦争を二度と起こしてはいけない」ってしか言えなかった自分が少し恥ずかしくなってくる -
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夏休みの小学校の図書室。宿題の読書感想文を仕上げたい小学生が訪れます。そこにいたのは、謎の中学生フミちゃん。悩める小学生たちに、本をすすめ、書き方をアドバイスします。
さまざまな思いをかかえる小学生たちが、フミちゃんのアドバイスを聞いて、原稿用紙に向かいながら、それぞれの自分の気持ちと向かい合っていきます。
感想文の書き方のハウツー本かと軽い気持ちで読み始めましたが、大間違いでした。
かつての私も、この物語の一小学生のように、優等生的な結論でまとめておけばいい、という考えで書いていましたが、ここで書かれた感想文は、まさに日記のように気持ちを伝えていて、ホロリとさせられました。
子どもたちにぜ -
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ネタバレ天才になれたらな、なんて、幼い頃はよく思っていた気がする。でも確かに、天才なんて勝手に周りが呼び始めるのだ。周りが囃し立て、才能ある者を天才として作り上げる。本人が天才を背負うことの大変さも考えず、プレッシャーに押し潰されてしまうことだってあるかもしれない。もしそうなったときには簡単に忘れて、次の天才探しを始めてしまう。無責任だと思うけれど、自分もそれに乗っかってしまっている一人だと思う。
才能が開花したのが遅ければ、それを見つけてもらう機会がない。才能を伸ばす経済力がなければ、それを諦めるしかない。たとえ才能があったとしても、タイミングや環境、誰かとの出会いなど、いろいろなものがうまく重な -