あらすじ
11年前、北の大津波に呑まれた沖晴は死神と取引をしたという。人間の五大感情のうち『悲しみ』『怒り』『嫌悪』『怖れ』を差し出し、『喜び』だけが残されて生還した。高校生となった沖晴が瀬戸内の階段町で出会ったのは余命一年の音楽教師・京香だった。笑うことしかできない沖晴は京香と心を通わせることで次第に感情を取り戻していく。沖晴は京香の命が尽きる前に普通の少年に戻れるのか。感動の傑作青春恋愛小説、待望の文庫化!
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Posted by ブクログ
ネガティブな感情なんてなくなったらどんだけラクかっておもってきた
なければないほどいいし、ポジティブに憧れながらこれからも苦しむんやろうなぁと
でも、ネガティブもないと、人間は壊れちゃうし
それこそが人間らしさやったりして
感情があることって、感受性豊かなじぶんって
しあわせなのかもってプラスにおもえた
人の何倍も痛みを知っとる沖春くんは
ほんとはとてつもなく優しくて
だれよりも人がすきで、人間らしくて、
そんな感情を取り戻した沖春くんも、
どんな沖春くんにも寄り添うことができた京香も
ふたりともまっすぐで、愛おしくてだいすき
ずっとなみだ堪えるくらい
切なくて寂しくて、でも終始あったかくて
めちゃくちゃ心揺さぶられた
どんな人でも何か抱えるものがあって
ひとつやふたつの悲しいことがあるわけで
そう思うと誰にでもやさしくなれる気がする
死ぬのも怖いけど残されるのも怖いなぁ
Posted by ブクログ
2025/05/16
額賀澪さんの作品という時点でもう楽しみだったので、ようやく読めてよかったです。
青春系のいつもの系統とは少し路線が違うような、人の生き死にに触れる人々の変化の過程や証を物語にしたような印象です。
主人公の踊場京香と志津川沖晴は海岸のとある場所で出会い、沖晴は何だか不思議な力が備わっている人らしい。喜怒哀楽の感情のうち、楽しかなくてなんか常に笑っている。どんな時でも笑っている。
一方の踊場京香はガンで余命一年を宣告されて、音楽の先生をしていたところをその仕事を辞めて地元に帰って来たところだった。
治療もせず、自分の死を受け入れて生きていこうと思っていたところへの沖晴との出会いで色々なことが変わっていく。
そんな2人を中心とした物語で、内容に深みと厚みがあるような感じを受けました!
Posted by ブクログ
手前ではファンタジーかと思いつつ入っていたけど全然リアルで現実味のある 結果死神出んかったけど、死神に例える心理の最後はマイナス思考も大事な事だと示してくれるって事。京香が死んでからの物語の方が沖晴の人間らしい生き方と京香という人間がどれだけ凄かったかがわかった気がする。1人になる魔女は変わらず淡々と生きて大切な娘たちを悼んでいるのだろうか、泣いたのかな、あと生まれた赤ちゃんを見て泣いた沖晴 ちゃんと泣けたね
Posted by ブクログ
自分が過去に失った大切な人や、今を取り巻く環境をひとつひとつしっかりと受け止めて、自分の異常性に向き合い一歩ずつ確実に成長していく沖晴くんがとても素敵でした。
それに寄り添い僅かな余命を削ってまで沖晴くんに寄り添う京香さん自身もまた、美しかったです。
お互いがお互いの関係性を声には出さずにいたけど、2人の関係性はどんな言葉でも言い表せない、どんな人でもなれないかけがえのない関係だったと思います。
Posted by ブクログ
大切な人を失って、そして得て、また失って、どんどん強くなって行く沖晴くんの姿に引き込まれた。
負の感情を感じられるからこそ、喜びを感じられるのだと感じた。
沖晴くんにとって大切な人が亡くなってしまったけど、沖晴くんの周りには大切な人がたくさんいて、新たな命も産まれて、暖かな世界が広がっていて、ほっこりしました。
Posted by ブクログ
主人公の沖晴くんは、小学生の時、震災の大津波に家族と共に呑まれたが、ひとり生還した高校生。
その時、『喜び』以外の感情を失って、いつも笑っている。
そんな沖晴くんは、元音楽教師の京香に出会う。
京香は余命一年の宣告を受けて、生まれ育った街に帰ってきたのだった。
この二人の交わりの物語。
本の紹介や帯には、青春恋愛小説、究極のラブストーリーと書かれている。
綺麗なラブストーリーでした。
大切な、本当に大切な人を突然失った沖晴くん。そのことで後ろ向きな感情に蓋をしてしまった。
心に負った傷はどんなに深いでしょう。でも、それに蓋をしてしまった。
その彼が京香に出会い、心触れ合うことで失った感情を取り戻していく。
その様子がわかりやすく心に伝わって来て、何度も泣いてしまいました。
沖晴くんが「死」を受け入れて生きていく様子にホッとして、また涙を流してしまいました。
ラブストーリーと共に、生と死、命についても考えさせられた、とても素敵な物語でした。
Posted by ブクログ
この本を通して、作者が伝えたいことを私なりに解釈したつもりだが、自分の性格上、ネガティブな感情に支配されやすいので、ネガティブな感情は無い方が、生きやすいんだろうと、なお感じた。
ただ、他者には、人間らしさを求めてしまっている。
感情に揺らぎがない人って、京香が沖晴に最初に感じたように不気味だし、なんとなく安心感ない。
私自身、怒りや悲しみ、苦しみといった感情を他者に曝け出すのが苦手で、人間らしいというより人間臭いなと思ってしまうので、よくその感情を自分の中に留めておくことが多いが、私が他者に人間らしさを求めるように、他者も私に人間らしさを求めているのかもしれない。
京香を思い続けながらも、かと言って執着しすぎず、沖晴が人生を生きている姿にグッと来ました。
京香も人を失う悲しみを知っているからこそ、沖晴含めた登場人物に、そっと寄り添う人間性が素敵で、そんな人間になりたいと思いました。