岸本佐知子のレビュー一覧
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こんなに笑えて、こんなに寂しく苦しい物語は初めて
ミランダ・ジュライの短篇は、出来る事なら気づかないふりをしていたいような、心の奥底の孤独感や悲しさを、笑いながら軽やかに、残酷なくらい鋭く、容赦なく掘り出していく。
とぼけているような、ユーモアたっぷりの軽やかな語り。でも絶望的に悲しいのだ。
独り言のような面白い独特の文章なので、原文が気になってそちらも読んでみた。ストレートで乱暴な性描写や表現も、よりサラッと乾いた印象。語りも、よりクールでシュールな肌触りがする。全編を通して、訳文のほうが女性的な感じかな。どちらもいいので、どちらもお勧め。
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Posted by ブクログ
確かに禅問答のような、詩のような。不思議な感覚になる。
今のところ中でも、「大学教師」という話は意外に!うなずけた。
女がカウボーイと結婚したいと思い込む。ほぼ話はカウボーイと結婚したらという妄想で続く。カウボーイと結婚して暮らしたらきっと馬具に油を塗ったり、素朴な料理を作るのだろう・・・・と。でも女は思う。もしカウボーイと結婚することになったら夫も連れて行こうと。
たぶんこれが夫婦なんだと思う。お互いが一部になって自分でもあり伴侶でもあり一対にいつしかなっているんだと思う。
村上春樹的にいえば「100%の女の子に出会う」というのに近いのではないかと強く思った話。 -
Posted by ブクログ
寝るためのひとり尻取りから脳内論争が勃発。
ゴキブリが怖いのはその見た目、感触、そして味。
人々の願い事を覗き見る七夕観測が好き。
人々が殺到する福袋は兵器になるのでは。
コピーの一文字埋めクイズで間違えるマイナーな人々。
夜中の3時に訪れた小さな客人。
食べながらスキップするとおいしくなる説。
翻訳中のニコルソン・ベイカーの作品の機微。
ちょっと変わった翻訳家の妄想エッセイです。
ブックデザイン:田中一光/片山真佐志
カバーイラスト:土谷尚武
薬関係のコマーシャルで悪い部分をちょっと残す、
私も気になってたんです!歯磨き粉のCMとか。
あと絶対全員正解するだろう、っていうクイズに
間違えちゃう人々の存在とか。
わかるわかる、と思いながら読めるエピソードと
この人の頭の中を覗いてみたいと思うエピソードと
半々くらいで飽きさせません。 -
Posted by ブクログ
些細なことで感情を揺るがさない、大人の余裕にあこがれる。我欲を手放しなさい、なるほど。自我を解放する瞑想もおすすめです、なるほど。しかし、筆者のように雑念満載で上手くいかないのであった。だが、本書を読み進めてハッとひらめいた。
筆者は、時にホームレスのおじさんになったり、江戸の人になったりする。キノコやニシン、はたまた無生物の死語までも擬人化し対話を試みる。このアプローチでも自我の解放に辿りつくのではないだろうか。
つまり、自我を消し去るのではなく、他者をどんどん取り込み自我を無限に拡張していくことで無我に近づくのである。
疑うのならば、自我の拡張を実践した本書を読むといい。些細な気がかりなら、本書を楽しむうちに雲散霧消しているはずだ。本書では解消しないまじめな方は、瞑想がおすすめである。 -
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あくまで個人の感想として書くが「好き」か「嫌い」の二択だけで感想を言うと「嫌い」な作品。
今までにない読書体験や共感を強く得られたり、小説としての特異性には驚愕させられる。
しかし、自分が求めている読書体験は、あくまで読者としての安全な立場から、作品を通しての感情や学び、成長、心の豊かさを欲しているのであって、巻き込まれることを求めているのではないと、訳者の岸本さんの書かれたあとがきではっきりとわかった。
この作品には何人もの「私」が登場する。
作者の意図か否かわからないが、この「私」の輪の中に読者も巻き込まれる作品で、あとがきで書かれた「奇妙に不安定で生々しい気持ちにさせられる」のだ。
この表現がぴったりで、一人でふらりと入った食堂で、突然同席された数人の会話に入ってしまい、なんか楽しいかもと思った瞬間、突然「ねえ、そうでしょ?違う?やっぱりこうだよね?」と振り回される感覚。
ブッカー賞やマッカーサー・フェロー賞を受賞された作家で、確かに作品としては凄いのだろう。
しかし読後は「ふうーっ」と疲労感を覚える作品で、結局何だか分からんものに巻き込まれたなと感じたのが素直な感想だろう。
今までにない読書体験をしたい方にはお勧めしたい作品。