【感想・ネタバレ】短くて恐ろしいフィルの時代のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年03月21日

横からぽっと現れた口の達者な人物によってあっという間に国が乗っ取られ、逆らう者を手にかける様子が恐ろしかった。登場人物が人間ではなく、色んなパーツのより合わせで動いているため生々しさは少ないはずだけれど、ある日突然権力者の決定によって殺されてしまうことに変わりはないのだった。
言葉を利用して鼓舞し、...続きを読む揚げ足をとり、押し切り、隙をついて場を支配するフィル。ちょっとしたアイデアから始まったはずなのに、気付けば全員従わざるを得ない状況になっていて、日に日に力関係の変化していく様子が面白かったし同時に怖かった。
長い物に巻かれて自分可愛さに保身に走る者たちや、それとは逆に、おかしいことをおかしいと言える者たちの心理も書いていて、全員が非常に人間らしいのである。特に被害者を責め始めるところがリアルだ。おとぎ話のようではあるが、現実の世界で起きていることと大差はない。
意外だったのは創造主が登場したこと。争いが絶えなかったのに“お前たちは善なのだ”と語るのを見て、これは人間を信じている話なのだと思った。
あれだけ暴君だったフィルも朽ち果て、何も知らない新時代の者にとっては遺跡を見る時のような不思議な癒しとなっているラストが良かった。過去に学び、よりよい世界を夢見ることが何よりも必要な気がする。そして人類にはそれができるはずだという希望が含まれているように思った。
中篇だけれど味わい深かった。

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Posted by ブクログ 2024年01月11日

示唆に富んだ話だった
独裁者と言われる人がモデルかなと思うと同時に、もっと身近な問題としても捉えられる気がした
1人の横暴な人に逆らえない状況や、正しい人を正しいと言えずに自分を正当化してしまう所など自戒の念を込めてありがちだと思った

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Posted by ブクログ 2023年08月11日

理想的本箱の紹介を受けて。おとぎ話。表現されている登場者は、人と同じ。人に例えると残虐といえる行為をするため、理屈をつけて正当化。おとぎ話のようなので客観的に見ることができる。自分のまわりの人に似た光景も見られるし、自分もそうなんだとの自戒にもなる。

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Posted by ブクログ 2023年05月16日

めちゃくちゃおもしろかった。

・疑心暗鬼から虐殺までの過程
・悪の陳腐さについて
・悪事は属人として押し着せられ構造的には何も反省されない
・そして繰り返す(多分)

という示唆深ポイントばかりだった。
何かにむすびつけずにフラットに読むのもアリ。

鈴木久美さんの装丁も素敵。

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Posted by ブクログ 2022年03月26日


なんだかとてもタイムリーでとても考えさせられる、それでいてとてもとてもユーモラスなお話だった。

特定の誰かをモデルにしたわけでなく、独裁者の最大公約数として描かれる「フィル」。
だから、あの人にも見えるし、あの人にも見える。
いつの時代も、いや、誰の中にも存在する「フィル」の影。

巧妙な演説で...続きを読む人々を魅了し、ついには年老いて耄碌した王の座にとってかわる。
国と国との境目。
税金の徴収。
武力衝突。
親友隊の組成。
侵略者の処刑。
危険分子は芽が出たらすぐ。見せしめに。

それぞれの国の住人たち、親衛隊や市民軍やマスコミや隣国の人々の動き方も実にリアルでゾッとする。
民衆はいつだって影響されやすく、変わりやすい。
そのことを私たちは忘れてはならない。

そして岸本佐和子さんの訳がめちゃくちゃいい。
こういう奇妙なお話は翻訳すると分かりにくくなりがちなんだけれど、もともと日本語で書かれていたような自然な語り口。
奇妙で不思議なおとぎ話の世界がありありと目の前に浮かんでくるような描写。
国民が一度に一人しか入れない国土の小ささとか、抽象的な図形や無機物でできた身体をもつ人々とか、脳がラックから外れるとか。そんな突拍子もないねじれたユーモアが、違和感を覚えさせない日本語で描かれている。

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購入済み

2022年01月15日

最高に面白かった!去年読んだ中でベストオブベスト。
読んでいてクスッと笑ってしまう小説は久しぶりでした。

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Posted by ブクログ 2021年11月03日

壊れたおとぎ話のような世界観がおもしろかったです。登場人物のセリフの言い回しや描写の仕方にユーモアがあって、クスッとしてしまうところもあります。

しかし、俯瞰的に見ると自分も含め、人間というのは、本作に出てくるキャラクターたちのように、滑稽な生き物だと気付かされます。

自分と違うものを蔑んで憎ん...続きを読むだり、本作のような俯瞰した目線で捉えられたなら、こんなにしょうもないことはありません。

そして、独裁者のフィルの運命はいかに。
なるべくしてなった、この結末は多くの歴史が証明しています。

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Posted by ブクログ 2021年08月31日

面白かった!

寓話にしてはごちゃごちゃした印象は受けるけれども、ナチスを思い浮かべて読んだ。あとがきだか解説でのトランプの話も確かに当てはまる。誰か特定の人物ではなく寄せ集めたイメージで書かれているみたいだが、ナチスにもトランプにも当てはまるということは、進歩しないのか、それが本質なのか、単に繰り...続きを読む返しているのかどうなのだろう。

自分自身がフィルになることはないと言い切れる人もいるかもしれないが、私は割と誰にでもあり得ることではないかと思う。そして私自身はどうだろうと考える。フィルの立場はなかったとしても、外ホーナーの住人の立場で彼らと同じ判断をしない自信はないし、もしかしたら気付かずに加担している可能性も否定できないのが恐ろしいとこだな。

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Posted by ブクログ 2023年09月29日

短くて恐ろしくて、滑稽で物悲しい。
国のあり方はファンタジー、登場人物の外見は不思議。でも、内側を突き詰めれば私達と同じに思えるのが空恐ろしく。
面白いけれど笑って済ませられない、人間とモンスターの物語でした。

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Posted by ブクログ 2022年10月02日

フィルの暴力的な独裁が本当に辛かった…
けどタイトルに『短くて〜』と入っていたのでなんとか読めた!
ほんとロシアのウクライナ侵攻とだぶって見えたね…
デウス・エクス・マキナ的な事が起こらないかな〜。

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Posted by ブクログ 2022年02月09日

2022年、ある政治家が、別の政治家の弁舌の巧みさをヒトラーのようだと発言し、研究者や政治家、マスコミを中心に論争が巻き起こっている。
また、あるテレビ番組で、ヒトラーとなぞらえることはヘイトスピーチだと語った研究者に対し、批判が殺到した。研究者の所属する大学は彼を解雇しろという抗議の声が上がった。...続きを読む
どれも、SNSという小さな国の中で。

読むにつれて、上記の事象を考えずにはいられなかった。

「この本は、世界を過度に単純化し、〈他者〉とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語なのです。」
(p.153,訳者あとがきから著者の言葉)

フィルはヒトラーであり、我々自身でもある。
フィルの時代と、今日の日本、何が違うのか。

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Posted by ブクログ 2021年12月15日

奇妙で滑稽で面白い。
所謂風刺的な寓話なのだけれど、とにかく突拍子もない設定とキャラクターに引き込まれてしまう。魅力的で演説巧みな独裁者に傾倒してしまう単純な大衆、他者を冷酷に切り捨ててしまう集団心理。テーマとしてはメジャーと思うけれど、この物語のような表現は常人では思いつかないだろう。
物語の序盤...続きを読むで語られる、主人公フィルの脳が「ラック」に固定されていてときどきそれが「滑り落ち」長引くと「おかしくなる」という設定にまずやられた。さすが岸本さんの訳本、期待を裏切らない。大好きだ。
何も構えずただ物語を楽しむだけで充分だと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月11日

面白おかしく読み始めるも、徐々に感じる戸惑いと慄き
内ホーマー人への圧制が「人間的」な要素がないだけに、より浮き彫りになる容易さへの恐怖
知らぬ間に根付く差別意識、忍び寄る独裁
頭の片隅ではわかっていても、なんとなく甘んじて受け入れていると、どんな未来が待っているのか

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Posted by ブクログ 2021年08月31日

異質のものを排除したいと考えるエゴ、同意見のものこそ正義とする集団心理。寓話要素が強いから後味は軽いものだけど、結構なテーマですよね。読みやすかった

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Posted by ブクログ 2021年08月24日

権力は正しく使わないと、
自他ともに悲劇を作り出す。
気づいた時にほ、己の周りには
誰もいなくなっている。
本当の恐怖。

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Posted by ブクログ 2023年12月13日

NHKの理想的本箱で紹介され気になった本。
人間はくだらないことで争い続けるけど、こうやって第三者が現われて問題がサクッと解決すればいいけど、そううまくいかないのがこの世の常。戦争、早く終わって欲しい。
フィルがモンスターとして過去のものになり、忌避されるようになっても再びフィルに惹かれてしまう人が...続きを読む現われるっていうのが繰り返される独裁の予見のよう。

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Posted by ブクログ 2023年07月11日

岸本さんの本ということで読む。

着想が面白い、こんな国の話は読んだことがなかった。だって3国でてくるけど、国民の圧倒的少なさよ。こんな国の民主主義はあってないような。すぐにパワーバランス崩れるから。

ヘンテコ三昧の登場人物(最初人間と思っていたのですが、読み進めるとどうやら違う)。外の国の大統領...続きを読むがでてくる度にハラハラ。そして題名通りのフィルの恐ろしさよ。

最後の最後で全編通してそこいらにあった雰囲気は一変し、クライマックスへ。

いや、でもね。
とにかく岸本さんの唸るような圧倒的翻訳力よ。

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Posted by ブクログ 2023年01月26日

国の形も人間の形もとても独特でユーモラス、ありえない遠くにあるお伽の国を描きながら、私が今生きているこの酷く醜い世界の一部を伝えてくれている。本を開いたここも、フィルの世界になるかもしれないし、もうなりかけているのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2022年10月09日

自分が正義だ、間違ってないと思うことは怖いこと。違った意見も取り入れるから多様性になるわけで。そういう意味ではこの人の言うことは正しいと妄信することも怖いことだよね。自分が良ければいいの?損得勘定や利己主義に流されそうになってしまうけど、一人一人目の前の人の立場に立って考えてみる。思いやりをもつ。人...続きを読むに関心をもつこと。きっとその優しさが1番大事なんだと思う。そうじゃないと、独裁者は生まれてしまうよね。みんな自分が1番大事って思ってるんだから。

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Posted by ブクログ 2022年09月11日

キャラクターが人ではない、モノのように描かれている。タイトル通り、フィルの独裁的な行いを書いているが、書かれた時代が違っても、現在の戦争が頭をよぎる。
おとぎ話のようで、風刺小説のようでと思っていたら、最後の解説を読んで納得した。

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Posted by ブクログ 2022年04月07日

今まで読んだ本の中で、一番頭の中で想像した画がこびりついて離れない話だったかもしれない。

今まで読んだ翻訳本は、読みづらく、想像しづらいものが多かったけど、素晴らしい翻訳の力!

単行本の場合、表紙がどんななのかわからないけどこの文庫本の表紙がなんだか好き。

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Posted by ブクログ 2022年01月25日

世界を過度に単純化し他者とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語
わたしたち一人ひとりの中に、フィルがいます_φ(・_・

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Posted by ブクログ 2021年11月18日

アイディア勝負の短めの長編ディストピアSF小説。ブラックだが軽さが効いていて読んでて楽しい。でも展開に驚きはなく平均点そのものという印象。

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Posted by ブクログ 2021年10月03日

誰かが言った「風刺画のような小説」、まさにそんな感じ。
独裁やジェノサイド、権力に阿るマスコミにまつわるおとぎ話。

やや抽象化がすぎるかな。

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Posted by ブクログ 2021年08月16日

国民が一度に一人しか済むことができない極小の国「内ホーナー」とそれを取り囲む「外ホーナー」。とある出来事が外ホーナーの住人フィルを独裁者にし「内ホーナー」に対するジェノサイドへと至る過程を描いた寓話。

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