【感想・ネタバレ】短くて恐ろしいフィルの時代のレビュー

あらすじ

脳が地面に転がるたびに熱狂的な演説で民衆を煽る独裁者フィル。国民が6人しかいない小国をめぐる奇想天外かつ爆笑必至の物語。ブッカー賞作家が生みだした大量虐殺にまつわるおとぎ話。

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Posted by ブクログ

ほんのわずかな、まるで箱庭の中の出来事のようなお話
こっけいで、ばかげていて、それでいて
きっと世の中はそんなことばかりかもと思わせる
可笑しいけれど、笑えない
できれば、大ケラー国で暮らしたい
いや、そのまた外の国のほうがいいかな

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2024年10月24日

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翻訳でも伝わる著者の文章力。盲信的、狂信的に破壊の道へと突き進むフィルの凶暴さが、ある種のアイロニーを伴って面白おかしく表現される。

一番印象深いのは大統領のもうろくさ。人ごとではない。周囲の人間関係に当てはてめても、さらには自分ごとに鑑みてみても。

他人がいる限り受け入れられない主義思想は生まれてしまう。そこには誤解や妄想が含まれようとも。相容れない対象に対する慈しみと寛容の心を。今一度噛み締めたい戒めですね。

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2024年08月24日

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ネタバレ

NHK「理想的本箱」、「戦争が近づいた時に読みたい本」の回で初めて知り、今日ようやく読むことができた。

中編程度の長さで、文章も決して難しくなく、児童文学のような雰囲気もあるので、活字に慣れていない人でも読みやすいのではないだろうか。

登場人物たちは機械の部品や植物、触手などで出来ている不思議な生物たち。
しかしその発言内容や行動は、人間にとても近く、特にSNSを見ていると差別主義者やヘイターがよく口にするような言い分のオンパレード。
そして完全に「善人」と言える人物はいないし、完全に「悪人」と言える人物も存在しない。

見たこともない不思議な生物たちの滑稽とも言えるような争いの話なのだが、その行動はナチスをはじめあらゆる人間(もちろん日本人も)が繰り返し、戦争に突入してきた流れの縮図であり、創作内のことでありながら全く他人事とは思えない。

最後、突如現れた創造主によって彼らは解体され、作り直される。
その時創造主はフィルの体は使わず、「モンスター」と名付けて象徴とした。
組み直された本ホーナー国の人々は正体不明のフィルを恐れるけれども、その中にフィルを恐れず、むしろ美しいものと感じる人物が現れーーー話は終わる。

創造主は本来の性質は「善」だと言った。
しかしフィルの部品を取り除いても、結局フィルの火種を摘むことはできなかったのだ。

ナチズムにも、レイシズムにも完全な“終わり”はない。
「いつまで先の戦争の話をしているんだ」と戦争反対を訴える人々を冷笑する人々がいる。

ホーナー国のように、現実でも火種はいつどこに芽生え、再燃するかわからないのだ。

だからいつまでだって訴えなければいけないと改めて感じた。

戦争反対。
憲法改正反対。
第二、第三のフィルは“生まれる”のだ。それはもう防ぎ用がない。
だから民衆は常に目を光らせ、のさばらせないように注意しなければいけないのだ。

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2024年06月03日

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ネタバレ

横からぽっと現れた口の達者な人物によってあっという間に国が乗っ取られ、逆らう者を手にかける様子が恐ろしかった。登場人物が人間ではなく、色んなパーツのより合わせで動いているため生々しさは少ないはずだけれど、ある日突然権力者の決定によって殺されてしまうことに変わりはないのだった。
言葉を利用して鼓舞し、揚げ足をとり、押し切り、隙をついて場を支配するフィル。ちょっとしたアイデアから始まったはずなのに、気付けば全員従わざるを得ない状況になっていて、日に日に力関係の変化していく様子が面白かったし同時に怖かった。
長い物に巻かれて自分可愛さに保身に走る者たちや、それとは逆に、おかしいことをおかしいと言える者たちの心理も書いていて、全員が非常に人間らしいのである。特に被害者を責め始めるところがリアルだ。おとぎ話のようではあるが、現実の世界で起きていることと大差はない。
意外だったのは創造主が登場したこと。争いが絶えなかったのに“お前たちは善なのだ”と語るのを見て、これは人間を信じている話なのだと思った。
あれだけ暴君だったフィルも朽ち果て、何も知らない新時代の者にとっては遺跡を見る時のような不思議な癒しとなっているラストが良かった。過去に学び、よりよい世界を夢見ることが何よりも必要な気がする。そして人類にはそれができるはずだという希望が含まれているように思った。
中篇だけれど味わい深かった。

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2024年03月21日

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示唆に富んだ話だった
独裁者と言われる人がモデルかなと思うと同時に、もっと身近な問題としても捉えられる気がした
1人の横暴な人に逆らえない状況や、正しい人を正しいと言えずに自分を正当化してしまう所など自戒の念を込めてありがちだと思った

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2024年01月11日

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理想的本箱の紹介を受けて。おとぎ話。表現されている登場者は、人と同じ。人に例えると残虐といえる行為をするため、理屈をつけて正当化。おとぎ話のようなので客観的に見ることができる。自分のまわりの人に似た光景も見られるし、自分もそうなんだとの自戒にもなる。

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2023年08月11日

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めちゃくちゃおもしろかった。

・疑心暗鬼から虐殺までの過程
・悪の陳腐さについて
・悪事は属人として押し着せられ構造的には何も反省されない
・そして繰り返す(多分)

という示唆深ポイントばかりだった。
何かにむすびつけずにフラットに読むのもアリ。

鈴木久美さんの装丁も素敵。

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2023年05月16日

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なんだかとてもタイムリーでとても考えさせられる、それでいてとてもとてもユーモラスなお話だった。

特定の誰かをモデルにしたわけでなく、独裁者の最大公約数として描かれる「フィル」。
だから、あの人にも見えるし、あの人にも見える。
いつの時代も、いや、誰の中にも存在する「フィル」の影。

巧妙な演説で人々を魅了し、ついには年老いて耄碌した王の座にとってかわる。
国と国との境目。
税金の徴収。
武力衝突。
親友隊の組成。
侵略者の処刑。
危険分子は芽が出たらすぐ。見せしめに。

それぞれの国の住人たち、親衛隊や市民軍やマスコミや隣国の人々の動き方も実にリアルでゾッとする。
民衆はいつだって影響されやすく、変わりやすい。
そのことを私たちは忘れてはならない。

そして岸本佐和子さんの訳がめちゃくちゃいい。
こういう奇妙なお話は翻訳すると分かりにくくなりがちなんだけれど、もともと日本語で書かれていたような自然な語り口。
奇妙で不思議なおとぎ話の世界がありありと目の前に浮かんでくるような描写。
国民が一度に一人しか入れない国土の小ささとか、抽象的な図形や無機物でできた身体をもつ人々とか、脳がラックから外れるとか。そんな突拍子もないねじれたユーモアが、違和感を覚えさせない日本語で描かれている。

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2022年03月26日

購入済み

最高に面白かった!去年読んだ中でベストオブベスト。
読んでいてクスッと笑ってしまう小説は久しぶりでした。

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2022年01月15日

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壊れたおとぎ話のような世界観がおもしろかったです。登場人物のセリフの言い回しや描写の仕方にユーモアがあって、クスッとしてしまうところもあります。

しかし、俯瞰的に見ると自分も含め、人間というのは、本作に出てくるキャラクターたちのように、滑稽な生き物だと気付かされます。

自分と違うものを蔑んで憎んだり、本作のような俯瞰した目線で捉えられたなら、こんなにしょうもないことはありません。

そして、独裁者のフィルの運命はいかに。
なるべくしてなった、この結末は多くの歴史が証明しています。

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2021年11月03日

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ネタバレ

 アメリカの小説家ジョージ・ソーンダーズの中編小説。原書は2005年に発行。本書は2011年に出版された単行本を、2021年に文庫化したもの。
 あらすじとしては、一人しか入れないほど小さい「内ホーナー国」と、それなりに広い「外ホーナー国」との間に起こるいざこざと、国境の監視役(自称)であるフィルが暴走し独裁者となる顛末を描いた「おとぎ話」となっている。軽快なユーモアはあるが、正直に言ってつまらないと思いながら読んでいたが、読後しばらく考えてみるとあることに気づく。確かに背筋が寒くなった。

 登場人物はどれも奇妙な造形をしており、脳がラックに入っているものや、枝や鹿の角が突き出たもの、シャベルのような尻尾など、イメージを寄せ集めただけで悪意すら感じる。登場人物は少ない上に個性に乏しく恐ろしく愚鈍で、情景描写さえも「小川が流れてりんごの木が生えている」など、小学生でももう少し上手に描けそうなほどお粗末だ。ストーリーも行き当たりばったりで、まるで子どもの人形遊びのようだ。しかし、それこそが作者の意図なのだ。
 もし、自分の子どもが人形の手足と文房具を付け替えて、本書にあるような残虐なストーリーを考え出したとするとどうだろうか。恐ろしくなってこないだろうか(私は恐ろしい!)。あとがきで以下のような著者の言葉が引用されている。「この本は、世界を過度に単純化し、〈他者〉とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語なのです。私たち一人ひとりの中に、フィルはいます」

 あとがきによると、執筆中のアメリカで9.11が起こっている。ソーンダーズが時代をどのように捉えたかはわからないが、本作のメッセージは政治的なことではなく、人間の根源的な欲求に根ざしているのではないか。つまり男の子の人形遊びが加熱していく姿に、人類の悲惨な歴史をぴたりと重ねたのだ。自分のお気に入りの人形があれば、都合よく強くする。カッコ悪いオモチャは倒すか破壊する。それに飽きたら捨てる。あの巨大な手のように。フィルは私が飽きて捨ててきたオモチャ達だった。
 ジョージ・オーウェルの『動物農場』が引き合いに出されるらしいが、少しお門違いであると思う。『動物農場』は人間社会への確かな観察があり、コミュニティの理想が没落していく様をありありと描いているので良くできた「寓話」となっている。しかし本作には社会を観察しようという気はさらさらない。ステレオタイプな独裁者のイメージは、社会批判というにはあまりも稚拙だ。本作は、生活は豊かになっても歴史から何も学ぼうとせず、無知を安っぽいストーリーに埋められてしまう人類の写し鏡なのだ。
 作品の批評をするときに、資本主義対共産主義、右翼対左翼、男対女、愛国心対反日などなど単純な二項対立に落としこむことが間々見られるが、それこそ子どものごっこ遊びである。結局、「善対悪」の構図にすり替えられ、〈他者〉はいつも「悪」にされる。そこには建設的な対話はなく、気まぐれなヒーローの勝利しかない。ありとあらゆるところで「分断」が起こっている今、脳のないフィルの暴走は、既にはじまっている。
 とはいえ以上の感想こそお門違いかもしれない。あとがきにあるように、(裏読みばかりしてないで)この軽快でグロテスクな物語をゆっくり楽しむこともできる。不思議ともう一度読み返したくなるような、真似のできない魅力があるように感じた。

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2025年12月02日

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テレビ番組で取り上げられていて気になり読みました。

国民が一度に一人しか住めない「内ホーナー」と巨大な「外ホーナー」の争いが描かれています。

描かれているキャラクターがロボット(?)たちなのか、想像しているだけで楽しい本でした。

アニメ化されてもいいなぁと思う1冊でした。

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2025年03月02日

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独裁者の誕生と破滅、人と国の破壊を描いた寓話。玩具のようなロボットのようなキャラクターが住む国のお話、絵をイメージすればユーモラスなはずなのに、読むのがしんどくて参った。国土を削られ、財産を奪われ、生き残るすべがどんどんなくなっていく。きつい。独裁者の方もどんどん脳が壊れてまともじやなくなっていって、こちらもきつい。

きついきついばかり言っているけど、ほんとに、ユーモアがユーモアに見えないくらいしんどかった。どこかで「抱腹絶倒」と紹介されていたけど、うそでしょ?ってくらい全然笑えなかった…

ディストピアものは若いうち、あと平和な時代に読んだ方がいいと痛感。今はリアルの世界が過酷すぎる。あと、自分ならこうやって撥ね返す、という覇気を持って読めないと、ダメ押しだけどもう一度、ホントにきついので。

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2025年02月13日

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人ひとりしか居られない程小さな国、内ホーナー国
それを取り囲む外ホーナー国
内ホーナー国民は7人おり、両国の境、外ホーナー国内の一時滞在エリアで常に6人が入国を待っている
国民の姿形は無機物と生物のツギハギ
この奇妙で童話のような世界観で語られるのは国同士・人同士の争い
きっかけは外ホーナー人であるフィルによる内ホーナー国批判の演説
フィルの演説は力強く煽動的であるのだが、興味深いのは、脳が外れてしまった時に為されることが多い、ということ
本書は2011年に刊行されているが、フィルの語りにはドナルド・トランプ氏であったり、小泉進次郎氏であったり、多くの政治家の姿が重なる…
この物語は政治家批判のメッセージも受け取れるが、同時にそんな政治家を選んでもしまっている国民への警鐘にも感じた

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2025年01月24日

Posted by ブクログ

星新一を思い出した!
やり取りは軽快で可愛いけど、話は重くて悲しい。もうちょい楽しい場面も多かったらよかった。

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2024年10月27日

Posted by ブクログ

独裁者が誕生する様子や、同調圧力に流される集団心理などが、ブラックユーモアで語られる寓意に満ちたディストピア小説。

国民が、一度に一人しか住めない極小国と、その周囲を取り囲む大国の物語。ある日、大国の国境警備員が巡回中に、小国からの侵犯を発見。騒動を大国の論理を押し付けて収めたのは、たまたま近くのカフェにいた中年男のフィル。この男、脳がはずれて地面に転がるたびに熱狂的な演説を繰り返し、次第に民衆を魅了していきます。対して、この男が独善的な要求を小国に突き付けるたびに、小国は疲弊していき……という話。

脳がはずれると書くと、面喰らいますが、そもそも登場人物たちが荒唐無稽・奇妙奇天烈な容姿なため、決してグロテスクに感じることはありません。それより”脳みそ空っぽ”の人が、私的な感情のこじれから暴走し、隣国の生活基盤の破壊から虐殺にいたる過程や、国境を紐に例えて、自他を線引きする様は、風刺の効いた現代への警鐘ともとれました。ラストを読むと、まだまだ平和な世界は遠いことを示唆しているようで考えさせられました。

正誤(2刷)
単行本あとがき3行目:
コロラド鉱業大学→コロラド鉱山大学

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2024年09月07日

Posted by ブクログ

短くて恐ろしくて、滑稽で物悲しい。
国のあり方はファンタジー、登場人物の外見は不思議。でも、内側を突き詰めれば私達と同じに思えるのが空恐ろしく。
面白いけれど笑って済ませられない、人間とモンスターの物語でした。

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2023年09月29日

Posted by ブクログ

フィルの暴力的な独裁が本当に辛かった…
けどタイトルに『短くて〜』と入っていたのでなんとか読めた!
ほんとロシアのウクライナ侵攻とだぶって見えたね…
デウス・エクス・マキナ的な事が起こらないかな〜。

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2022年10月02日

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2022年、ある政治家が、別の政治家の弁舌の巧みさをヒトラーのようだと発言し、研究者や政治家、マスコミを中心に論争が巻き起こっている。
また、あるテレビ番組で、ヒトラーとなぞらえることはヘイトスピーチだと語った研究者に対し、批判が殺到した。研究者の所属する大学は彼を解雇しろという抗議の声が上がった。
どれも、SNSという小さな国の中で。

読むにつれて、上記の事象を考えずにはいられなかった。

「この本は、世界を過度に単純化し、〈他者〉とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語なのです。」
(p.153,訳者あとがきから著者の言葉)

フィルはヒトラーであり、我々自身でもある。
フィルの時代と、今日の日本、何が違うのか。

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2022年02月09日

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奇妙で滑稽で面白い。
所謂風刺的な寓話なのだけれど、とにかく突拍子もない設定とキャラクターに引き込まれてしまう。魅力的で演説巧みな独裁者に傾倒してしまう単純な大衆、他者を冷酷に切り捨ててしまう集団心理。テーマとしてはメジャーと思うけれど、この物語のような表現は常人では思いつかないだろう。
物語の序盤で語られる、主人公フィルの脳が「ラック」に固定されていてときどきそれが「滑り落ち」長引くと「おかしくなる」という設定にまずやられた。さすが岸本さんの訳本、期待を裏切らない。大好きだ。
何も構えずただ物語を楽しむだけで充分だと思う。

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2021年12月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白おかしく読み始めるも、徐々に感じる戸惑いと慄き
内ホーマー人への圧制が「人間的」な要素がないだけに、より浮き彫りになる容易さへの恐怖
知らぬ間に根付く差別意識、忍び寄る独裁
頭の片隅ではわかっていても、なんとなく甘んじて受け入れていると、どんな未来が待っているのか

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2021年10月11日

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「何かを風刺しているんだろうな〜」というお伽話風小説。最後に大ケラー国よりも外側にある国が内側の国に対して同じように統治を始めるとか、新しい15人の国で同じようなことが繰り返されるとか、そういうお約束のオチを期待してしまったのだが、なかった。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

問題作。
あとがきにもあるが、ジョージ・オーウェルの「動物農場」を引き合い出されて書評が多く語られているそう。
家畜を擬人化して、独裁体制的な政治を批判しているが、こちらの擬人化されているものは、もっと過激で何が何だか分からない奇妙な物となっている。
ちなみに登場する大統領の姿は「小柄で貫録たっぷり、たくさんの腹、白い口髭、二重顎が小山のように積み重なり、細く頼りない三本脚で支えてる」だそうだ。
どんな生き物だか想像が出来ない。他の登場人物はもっと分からない。
何となく気が付かない内に、どんどん恐怖政治が実行されて行き、気が付くと理不尽な理由で自由が奪われ、ちょっとした事で殺される(物語では解体される)。
ともかく、とても恐い話。大人の寓話。

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2024年09月26日

Posted by ブクログ

NHKの理想的本箱で紹介され気になった本。
人間はくだらないことで争い続けるけど、こうやって第三者が現われて問題がサクッと解決すればいいけど、そううまくいかないのがこの世の常。戦争、早く終わって欲しい。
フィルがモンスターとして過去のものになり、忌避されるようになっても再びフィルに惹かれてしまう人が現われるっていうのが繰り返される独裁の予見のよう。

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2023年12月13日

Posted by ブクログ

岸本さんの本ということで読む。

着想が面白い、こんな国の話は読んだことがなかった。だって3国でてくるけど、国民の圧倒的少なさよ。こんな国の民主主義はあってないような。すぐにパワーバランス崩れるから。

ヘンテコ三昧の登場人物(最初人間と思っていたのですが、読み進めるとどうやら違う)。外の国の大統領がでてくる度にハラハラ。そして題名通りのフィルの恐ろしさよ。

最後の最後で全編通してそこいらにあった雰囲気は一変し、クライマックスへ。

いや、でもね。
とにかく岸本さんの唸るような圧倒的翻訳力よ。

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2023年07月11日

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国の形も人間の形もとても独特でユーモラス、ありえない遠くにあるお伽の国を描きながら、私が今生きているこの酷く醜い世界の一部を伝えてくれている。本を開いたここも、フィルの世界になるかもしれないし、もうなりかけているのかもしれない。

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2023年01月26日

Posted by ブクログ

自分が正義だ、間違ってないと思うことは怖いこと。違った意見も取り入れるから多様性になるわけで。そういう意味ではこの人の言うことは正しいと妄信することも怖いことだよね。自分が良ければいいの?損得勘定や利己主義に流されそうになってしまうけど、一人一人目の前の人の立場に立って考えてみる。思いやりをもつ。人に関心をもつこと。きっとその優しさが1番大事なんだと思う。そうじゃないと、独裁者は生まれてしまうよね。みんな自分が1番大事って思ってるんだから。

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2022年10月09日

Posted by ブクログ

キャラクターが人ではない、モノのように描かれている。タイトル通り、フィルの独裁的な行いを書いているが、書かれた時代が違っても、現在の戦争が頭をよぎる。
おとぎ話のようで、風刺小説のようでと思っていたら、最後の解説を読んで納得した。

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2022年09月11日

Posted by ブクログ

今まで読んだ本の中で、一番頭の中で想像した画がこびりついて離れない話だったかもしれない。

今まで読んだ翻訳本は、読みづらく、想像しづらいものが多かったけど、素晴らしい翻訳の力!

単行本の場合、表紙がどんななのかわからないけどこの文庫本の表紙がなんだか好き。

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2022年04月07日

Posted by ブクログ

世界を過度に単純化し他者とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語
わたしたち一人ひとりの中に、フィルがいます_φ(・_・

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2022年01月25日

Posted by ブクログ

アイディア勝負の短めの長編ディストピアSF小説。ブラックだが軽さが効いていて読んでて楽しい。でも展開に驚きはなく平均点そのものという印象。

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2021年11月18日

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