あらすじ
著者は、ミルハウザー、アーヴィング、リディア・デイヴィスからニコルソン・ベイカーまで、現代アメリカ小説の名翻訳家として知られている。一方、朝日新聞の書評欄「ベストセラー快読」での爆笑の名(迷?)コメントや、様々な雑誌で繰り広げられる独特のエッセイで、文筆家としても注目が集まっている。
本書は、ますます目が離せないそんな「芸人」――岸本佐知子が、ヘンでせつない日常を強烈なユーモアとはじける言語センスで綴った、初のエッセイ集である。眠れぬ夜の「ひとり尻取り」、満員電車のキテレツさん達、恐怖と屈辱の幼稚園時代、会った事もないのになぜだか鮮明に記憶に刻まれたある作家との思い出の数々……おかしさとせつなさで、おもわず笑いや涙がこみ上げてくること必至。ひとりでこっそり読むことをお勧めします。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
初っ端から心を鷲掴み。著者の頭の中を覗かせてもらっている感じが楽しい。「あ、そういうふうに感じます?」ってのが随所にあって面白い。ぷぷっと笑いつつ、共感しつつの、めっちゃ好みのエッセイだった。個人的に著者にとっても親近感で、私、岸本先生が好きです。
Posted by ブクログ
岸本佐知子さんが某洋酒メーカーを辞めて翻訳家となり何年か経った33~39歳の時のエッセイで、最初のエッセイ集がこの本です。
しょっぱなから、「リニアモーターカーは根性とか念力で動いている」と密かに感じているとのたまう岸本佐知子さん。
最初のエッセイを最後に読むことになってしまったが、この本も、岸本ワールドが期待できそう♪と確信。
とは言え、遠慮して抑えている感も伝わってきて、円熟した岸本ワールドをさらけ出すまでには至っていない。
一番面白かったのは、新書版で追加された最後のエッセイで、これだけが2006年(46歳)に書かれたものだから遠慮なく自由だ。
一度も会ったことのない川上弘美さんとの思い出話を詳しく書いている。
差し向かいで飲み屋でお酒を飲んだこと、歳も住まいも違うのに小学生の時同級生だったこと、高校の時も同じクラスにいたこと。
その時々の様子が鮮明に記憶されていて、絶対にあり得ないことが具体的に次から次へと思い出され筆が止まらない。
岸本さんのエッセイは楽しい!
ロールシャッハ・テストの絵がどれも「骨盤」に見えてテストにならない。
「お騒がせ」を「おさがわせ」と言う人がかなりいることに密かに気づいた。
人体で不要なもの、男の乳首問題。「乳首あてゲーム」という使い道くらいしかない。
売れ残り商品を完売させるには「福袋」にすればいい。
一卵性双生児の片方に素敵な名前を、片方にひどい名前をつけたら人間性に違いが出るか?
大人になってやらなくなることは、スキップ、ジュースのストローをブクブク吹く、月に向かって懐中電灯を照らす、クワガタに触った手を嗅いでみる、
まあ、こんな話題で埋め尽くされている。
"気になる部分"は、どうでもいい「部分」ばかりで、
トラックの車輪の後ろにぶら下がっている、あのビラビラしたものや、
ダイヤル式の電話の指止め金具や、
勤めていた会社の社長の額のホクロや、
工場見学に行った時の天井のパイプなど。
新書で200ページは少し物足りないが、期待どおり面白かった。
だけど、これで、楽しみに残しておいた岸本佐知子さんのエッセイがなくなってしまった。
これからしばらくは、何冊か残っている三浦しをんさんだな(^^♪
Posted by ブクログ
前回の「ねにもつタイプ」に引き続き、ひとりで吹き出しながら読んでしまった。電車で読むのは危険だ。みんなが知っている、知っていて当然のメジャーな話が苦手、の部分にうなずきすぎる。そうなんです、べつに自分だけ特別だとかそうではなくて、みんなが知ってるなら自分は知らなくてもいっか、という感覚なんです。そしてニコルソンベイカー、すごく読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
岸本氏の着眼点は相変わらず興味深いです。そっちの方向?とか、そこまで深く?など。「石のありか」は小学生のときのことを思い出しました。あったなぁ、そういえば。
それにしても、記憶力がすごいです。幼稚園の頃の一人遊びのことを克明に覚えているのはすごい。
「シュワルツェネッガー」、勉強になりました。
Posted by ブクログ
三冊のうちで、一番好きかも知れない。ビザールな(奇妙な)本に挙げられているものが私も特に好きだ。
最近読もうとした(最後まで読んでないけど)藤枝静雄、昔から読んできた筒井康隆(特に虚人たち)それに吉田知子、村田喜代子、それに、それに、奥泉光が(嬉)怖さがドッペルゲンガーのそれだ、と書いてある。私が好きなのもそのあたりか、裸で書割の窓に向かってサックスを吹くカフカかぶれの男など。なんとも言えず奇妙で面白い。
後、笙野 頼子(残念ながら未読、Wikiでは緊密な文体で鬱屈した観念・心理表現と澄明な幻想描写の融和を試行した、とある、読まねば)そして、川上弘美さんと酒を飲む夢。
言葉に拘って想像があらぬほうに飛んでいく話は、相変わらず突き抜けている。
* おかしな童謡編、「コガネムシンの子供に水あめをなめさせる」「山から小僧が下りてきた」短すぎるし何で小僧か。(私はこの小僧は冬将軍の孫で冬の前触れに偵察に来たのだと思っていた)
* 「根掘り 葉掘り」の「葉掘り」ってなんだ。
* 「おおよその見当がつけられない」
(私もこの先300Mで右折、と言われても車で走っていてみなさんは距離が分かるの?と思っていたら 今度の車は3.2.1と色が変わっていく。1になれば鼻の先で曲がるのだ。それでもタイミングが合わないことがあり信号を通過する)
* 「気になる部分」子供の頃社会見学でも、気になる部分にだけ目が行った。大人になって社長のほくろに気をとられた。
* 「透明人間」子どもの頃は自分の存在が希薄だったそうだ。
(最近読みたてなのに原典は忘れたが、透明人間は網膜も透明なので、盲目ではないかという疑問、なるほどと記憶)
* 「サルマタケ」はどう訳すか。辞書にもない、まして逆に「サルマタケ」を英訳する人はどうするのだろうと煩悶する。
---つね日ごろ英語で書かれた文章と向き合って、言語のちがいと文化の違いと言う薄いヴェール越しに、なんとかそこに表現されているものを感覚としてとらえようと四苦八苦しているせいなのだろうか。仕事と関係なく日本語の本を読んでいても、いつの間にか”もし自分が日本語以外の言葉を母国語としている翻訳者で今読んでいるこの文章を訳すとしたら”という視点で読んでいる自分に気づくのである。(略)頭の中で邪念の小人たちが勝手に苦悩し出してうるさいことこの上ない。---
* 数年前のアンケートあなたの夫になる男性にい一番望むものは、日本では「優しさ」アメリカの女性は「ユーモアのセンス」だったそうだ。
そんなこんなで興味深い話題が満載、一部を引いてみたが、こんなものだけではなく、こどものころの思い出、経験した不思議な出来事、いまでも折にふれて感じているあれこれが、私にも思い当たることが多くて一気に読んでしまえた。
Posted by ブクログ
たいして読んでないのに言うのもなんだけど、岸本さんのエッセイ、面白すぎ。さくらももこのエッセイを好んで読んでいた頃と同等の満足度を感じてます。もちろん褒め言葉。”ねにもつタイプ”も素晴らしかったけど、本作はもうちょっと現実寄り。翻訳家としてのコラムみたいなのも掲載されていて、それはそれで興味津々。岸本さんの翻訳本を、もっと読みたくなりました。
Posted by ブクログ
初・岸本佐知子さんエッセイ。
もうこれはクセになる。
私もたいがい変人だけど、岸本さんも相当な変人なんだと思う。変人同士だからか、岸本ワールドが居心地が良すぎてずっとプカプカ浮いていたい感じ。
気になる部分って人それぞれ違うのだけど、岸本さんの気になる部分はかなりマイノリティで、そもそも岸本さんにしか気にならない部分なんだろう。
私は岸本佐知子という人が気になりすぎて、彼女が翻訳し、またエッセイにも登場させている、ニコルソン・ベイカーの「中二階」を勢いで購入してしまった。
Posted by ブクログ
強烈なユーモアのセンスに度肝を抜かれました。瞬間的に気の利いたことが言えない私には、刺激的で、面白く読むことができました。
私も、周りを和ませる冗談が言えるようになりたいです!
Posted by ブクログ
万城目学さんが、エッセイが一瞬うまくなるドーピング、と称していたので手に取った。
独特の妄想癖ある岸本さん、あぁ私とおんなじような謎なこと考えがちな人が他にもいるんだ!と思ったのもつかの間、岸本さんのは激しすぎて、こりゃちょっと違う、と思いに至る(笑)。
面白く、すぐ読めた。
Posted by ブクログ
先日読んだ吉田篤弘さんの『おかしな本棚』に登場した1冊。
翻訳家でありエッセイストということでありますが、面白すぎて声出して笑ってしまいました。中でも岸本さんが洋酒メーカーでPR誌の仕事をしていた時のライターさんの事をかいた『ヨコスカさんのこと』と『「国際きのこ会館」の思い出』は爆笑でした。これを読んだら国際きのこ会館に宿泊してみたい!と思って検索したら今はもう閉館しているようでショック(TT)
このエッセイの中にも気になる作家さんと小説が紹介されていました。吉田知子さんの短編集『箱の夫』。そして村田喜代子、奥泉光さんなど私の存じ上げない作家さんもいつか読んでみたいです。
岸本さんの第二弾のエッセイ『ねにもつタイプ』は講談社エッセイ賞を受賞しているようなので期待が高まります。是非読まねば!
Posted by ブクログ
おそろしいことに気がついた。岸本佐知子さんのエッセイ集で未読のがなくなってしまった。これから何を楽しみに生きていけばいいのでしょう。…あ、『わからない』って新刊が出てるみたい。
■簡単なメモ
【意識的にオフにする】耳と脳をつなぐ回線を意識的にオフにする。おお、それはやったことがなかった。いろんなものをオフにして楽しんできたけど。今度試してみよう。戻れなくなったらどうしよう。
【一週間】一週間の歌はたぶんみんなへんやと思ってると思う。
【ガミネタ】「ガミネタ」って何?
【気になる部分】そこだけが気になり全体が見えなくなるというのはけっこうあったりします。「それ」が本体のように思えてきます。
【猿の不安】ここはもしかしたら架空の世界かもしれないという不安はけっこう多くの人が抱いたことがある不安かもしれません?
【サントリー】著者が勤務していたという洋酒メーカーはサントリーやと思う。「やってみなはれ」
【笙野頼子】前から読もうと思いつつなかなか手が出ない作家。岸本さんオススメのようなので思いきって手を出してみるか?
【透明人間】文楽の黒子になったらかえって目立ちそう。
【萩の月】有名な仙台銘菓。今はどうかしらへんけどいっときは仙台行ったらなにはともあれ萩の月の確保が最重要クエストやった。
【ひとり尻取り】だんだんルールが増えていって二進も三進もいかなくなった架空のゲームはたうさんあります。
【一人の男が飛行機から飛び降りる】バリー・ユアグロー著。岸本さんの1996年のベスト3に入ってるそうです。ぼくもちびちびと読みました。というか、一気に読もうとしたらけっこうしんどいです。
【ビラびらしたやつ】江戸の火消しが屋根の上で振り回してるアレ。ぼくもずっと疑問に思ってます。
【双葉状の突起物】赤塚不二夫のマンガの人物の口の中についている。そういやニャロメの絵を描くときなんかに必ず描いていたなあ。まあ、舌なんでしょうけど。今でもニャロメとケムンパスとべしは上手に描けます。
【ベイカー】ニコルソン・ベイカー。とりあえず『中二階』と『室温』は読んでみようと思いました。
【ホクロ】社長の額の真ん中にあるホクロ。押すのを我慢してた岸本さんのようですが、ホクロではないのですがボーッとしてるときに押してはいけない突起物を押してしまい、平謝りに謝ったことがあります。
【ポジティブ・シンキング】まあ、食傷気味ではあります。
【マイナーな人】負け組? さあ、それはどうでしょ。超勝ち組もまたマイナな人でしょう。
【マタンゴ】子どもの頃、恐怖に震えた。
【ミルハウザー】ミルハウザーは読んだことのある作品は全部好きなので岸本さんの訳した『エドウィン・マルハウス』も遠からず読みたいと思います。
【ヨコスカさん】不思議な人です。
【吉田知子】前から読もうと思いつつなかなか手が出ない作家。岸本さんオススメのようなので思いきって手を出してみるか?
Posted by ブクログ
翻訳家の岸本佐知子さんによる、エッセイ集。90年代に書かれたもの。
著者はクセが強く変わり者という印象だが、普遍的にみんなが感じているだろうこともたくさん言葉にしており、共感できる部分もある。翻訳の苦労話のようなものはほとんど書いていない。子ども時代に不思議に思っていたことや、会社勤めをしていたころの話などが中心である。
かなりたくさんの本を訳しているようだが、彼女の翻訳書は読んだことがない。売れているのだろうか。
Posted by ブクログ
予想を超えて面白かった。
収録されているエッセイの初出は、一番古いものだと1993年。だけど、時代を感じさせるものは少なく、普遍的な日常や記憶の中からお題を取り上げて深く考える過程が、上手く、面白く文章化されている、と感じる。
元々人間的にも魅力を感じていて、この本を読んで言語感覚も好きなことを確認できた。
岸本さんは、元々はショーン・タンの絵本の訳者として知り、その後、アトロクで翻訳者のお仕事の話だったか日本翻訳大賞の審査員としてだったか、とにかく出演し話しているのを聞き、話し方や話す内容、会話の反応から「この人、なんかちょっと気になるな……」と思っていた(そのとき一緒に出演していた柴田元幸さんも斎藤真理子さんも、みんな翻訳した本を読んでいたので、すごく面白い話を聞けたという記憶がある)。
Posted by ブクログ
スティーブン・ミルハウザーやニコルソン・ベイカーの翻訳で知られる岸本佐知子女史のエッセイ集。
1993年から1999年にかけて、色々な雑誌に掲載されたものを集めたとのこと。
テンポがよく、押しつけがましいところがなく、とにかく面白い。
ちょっと話を盛っているなと思えるもの、虚実が入り混じっているもの、それどころか虚しかないもの、と内容は色々だが、どれをとっても面白い。
この方の好きな作家や好きな作品などが、僕の嗜好と重なることが多く、まるで昔から知っているちょっと変わり者の女友達と会話しているような気分にさえなった。
この方の他のエッセイもぜひ読んでみたいと思う。
Posted by ブクログ
p34
「私には、ロールシャッハ・テストの絵がどれも「骨盤」に見えるのだが、異常だろうか。」
珍しくエッセイを読んでみた。
「考えてしまう」「ひとりあそび」「軽い妄想癖」「翻訳家の生活と意見」の4パートに分かれていて、それぞれ子供の頃の思い出やめくるめく妄想ワールドやら、毛色の違うエッセイ。
ぐうたらでデタラメと見せかけて、語彙センスと表現力が豊富で、しかも翻訳家の生活を垣間見られたのが良かった。
最後二、三文のオチが素敵なのです。
Posted by ブクログ
「穂村弘が好きなら岸本佐知子はいかがですか」、とすすめられた一冊。
読んでて言葉のチョイスがうまいなあと思いました。
そしたらなんと彼女、穂村弘と同じ上智大学文学部英文科。
よくよく考えたらわたしたちのゼミの先生も上智英文科だった。
上智英文科、強者ばかりじゃないか。
できるならわたしも行きたいぞ。
Posted by ブクログ
通勤電車で読むのは危険だと知りつつ、読んでしまった。
案の定、吹き出すのを我慢したエピソード、クスッと笑ってしまったエピソードが多々あり楽しませてもらった。
岸本さんのエッセイを読むと、妙に共感をおぼえて自己肯定感が増す。
Posted by ブクログ
ある日の午後,車でFMラジオをつけると,作家と翻訳家の会話が流れてきて,翻訳の苦労話などとてもおもしろくて聴き入ってしまった.あとで番組表を調べて見ると,作家は西加奈子さん,翻訳家は岸本佐知子さんだった.
というわけで岸本さんのエッセイを読んでみた.本を読んでこんなに笑ったのは久しぶり.この方の周りでは常に何か変なことが起こっているような錯覚を引き起こす.ほとんど自虐ネタで,妄想の虜になって,一般世間とずれが生じるというパターン.それと言葉の音に対する感覚が独特で,これまた妄想のネタになる.私はこれを電車の中で読み始めてしまい笑いをかみ殺すあやしいおじさんになってしまった.こういうハチャメチャぶりは山下洋輔以来かな.そうすると,岸本さんも傾倒していらっしゃる筒井康隆つながりもでてくる.
私もときどき使う私鉄のO線の話「キテレツさんたち」.私もキテレツさんを見てみたいが,残念ながら私には見えないらしい.
ラジオでも話題になっていた,ニコルソン・ベイカーが読みたくなった.この本のそでの著者紹介には「あんな本を訳したのは,やっぱりこんな人でした」と書いてある.
Posted by ブクログ
とにかく、読みながら吹き出していた。笑っていた。
いやなことも忘れるくらい、岸本ワールドに
ひきこまれてしまった。
とにかく面白いと、あちこちでレビューを目にし、
友だちも「きっと好きだよ」と勧めてくれて、
ずっと気になっていたエッセイ。
楽しい読書時間だった。
Posted by ブクログ
寝るためのひとり尻取りから脳内論争が勃発。
ゴキブリが怖いのはその見た目、感触、そして味。
人々の願い事を覗き見る七夕観測が好き。
人々が殺到する福袋は兵器になるのでは。
コピーの一文字埋めクイズで間違えるマイナーな人々。
夜中の3時に訪れた小さな客人。
食べながらスキップするとおいしくなる説。
翻訳中のニコルソン・ベイカーの作品の機微。
ちょっと変わった翻訳家の妄想エッセイです。
ブックデザイン:田中一光/片山真佐志
カバーイラスト:土谷尚武
薬関係のコマーシャルで悪い部分をちょっと残す、
私も気になってたんです!歯磨き粉のCMとか。
あと絶対全員正解するだろう、っていうクイズに
間違えちゃう人々の存在とか。
わかるわかる、と思いながら読めるエピソードと
この人の頭の中を覗いてみたいと思うエピソードと
半々くらいで飽きさせません。
Posted by ブクログ
初エッセイ本読破。エッセイ本とはこういうものなのか?と疑問に思いつつも、この著者は、頭の中に思い描いている疑問について、私が思うに、、他人には言えないこと、話しても絶対に共感を得られないというか、他人に話すことで、その他人から一定の距離を置かれる可能性がある部分を、曝け出して上手く言語化した結果、それがユーモアになったと勝手に理解した、抜群のユーモアセンスをお持ちの方、変人だなと思い、そい思うと、自身の心が救われる気がした。
Posted by ブクログ
翻訳者としての岸本さんしか知らないので、はじめて本書エッセイを読んで、へー、こんな人だったのかと思った。
細かいこと、みんなが気にしないことがやたら気になるひとが言葉づくしで書いたエッセイである。
テイストは、昨年読んだ三浦しをんの昔のエッセイにちょっと似ている。
それは20年前のエッセイだったので、さすがに古いなと思った。
本書も初出は20年ほど前のもの。
三浦しをんほどの共時性ニーズはないものの、やはりこの手の本は出版されてから、5年以内に読まないと鮮度が落ちてしまう。
今回は00年代以降の倫理観価値観の変化を大きく感じた。
いまの岸本さんが同じ内容を書くなら、書き方がかなり変わるだろうと思った。
岸本さんの会社員時代の話がちらちら出てくるが、洋酒メーカー、カオスで自由な社風のようだったので、サ◯トリーだろうなと思って調べたら本当にそうだった。だよね〜。
それにしても子供の頃からずっと都会に住んできたひとの感覚だなあと思った。
そういう意味では私はあまり共感しなかった。
後半、吉田知子の話がでてきて嬉しくなった。
そうだ、私は岸本さんが編んだ本で吉田知子を知ったんだった。おおいに感謝したい。
Posted by ブクログ
不思議な言葉のセンスが炸裂していて、妙な臨場感もあり、愉快な気持ちで読める本だった。少し時代を感じる箇所もあったが、やはり翻訳について書いてあるエッセイは興味があった。こういう話をもっと読んでみたい。
どこまでもひとりで飛んでいってしまいそうな自由な発想と想像力の豊かさが眩しかった。
会ったこともないらしい川上弘美さんの思い出が綴ってあるのが怖い。ここに書かれているのはとてもミステリアスな魅力溢れた「カワカミさん」だ。ここだけ短編小説を読んでいるような味わいがある。
Posted by ブクログ
外国文学を読む時、最近は訳者が気になるんです。エドウィン・マルハウスという本を読んでみたいと思っているのですが、その訳者さんが岸本さん。というわけでエドウィンに行く前に岸本さんのエッセーにて彼女をチェック。
いやはや、なんというか、ぶっとんでおります。
幼少期の自分語りを読んでいると、え、なんかかなりへんてこな子だったのね、、、と思うのと同時に自分もそういや同じような事普通にしておったぞと気付き、強烈なショックを受けるという。
そしてどうやらご自身の変態さ(失礼過ぎる)に完全にお気づきのようで、そのなんというか自分の趣向というのか、好きな本を訳したいという感じでお仕事をされているのかなと勝手に想像。
III章「軽い妄想癖」では、今までのキテレツぶりから一転してちょっとなんというかゾッとする小話が続くんですよ・・・
いやはや、懐が深くてビックリです。彼女がお好きな本を何冊も紹介されているのですが、なんというか読むのが恐い(笑
Posted by ブクログ
勧められて読んだがこの独特な感性。言葉のセンス。良い意味で変人ですね。
思わず笑ってしまうネタがほとんどで基本面白い、んだけど正直「ん?」と思った描写もあったので、手放しで「好きなエッセイ」とは言えないです。でも岸本さんの他のエッセイや翻訳本も順に読んでみるつもり。
Posted by ブクログ
翻訳家である岸本佐知子の主に90年代のエッセイ。
岸本佐知子という翻訳家の名を初めて認識したのは恐らく高校時代のこと、それは例の『中二階』という奇妙な小説の存在を知ったのと同時であったと思う。しかしそのときは、『中二階』も彼女の他の翻訳も手に取ることはなかった。その後、大学生となった2000年代初め、朝日新聞の「ベストセラー快読」という書評コーナーで初めて彼女の文章を読むようになった。それ以外にも、確か白水社だったか筑摩書房だったかが出していた出版情報誌に連載されていたエッセイなどにも目を通していた。
当時と云えば、小泉政権下、人の生を「勝ち/負け」という思慮の陰翳を欠いた暴力的な記号で序列化可能なほどに平板化してしまえると浅ましくも思い上がった即物的な(無)価値観に社会それ自体が同一化し始めていた頃、そんな卑しい世相を軽妙なユーモアと皮肉とで茶化してくれていたのがこの岸本佐知子の書評だった。私は毎週その文章に大いに笑いながら、彼女のいつも的確な標的を選定してくるセンスと毒気を笑いに包むユーモアとのおかげで、なんとか当該の社会の中で正気を保てているように感じていた。そのくらいに、当時の私は社会というものによって精神的に参っていた。だからいまでも、彼女の感性は信じられるものだと、どこかで思っている節がある。
そんな彼女の文章を書籍で読むのはこれが初めてだった。ただし冒頭の「空即是色」を読むのは二度目で、一度目がどの媒体だったのかははっきりと覚えてはいないが、やはり何度読んでも面白い。
今度ようやく『中二階』を読んでみようと思っている。朝日新聞の「ベストセラー快読」は、どこかで書籍化されているのだろうか。もしそうなら読んでみたいし、もしそうでないならどこかから出版されることを期待している。
Posted by ブクログ
変な人って変なんだなぁとしみじみ感じいった。
私の好きな作家翻訳家の皆さんはだいたい通して世界を見るフィルターの具合がずいぶんおかいしいので、それをちらりと覗くと本当に面白い。