岸本佐知子のレビュー一覧
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「訳者あとがき」で岸本佐知子さんが、「描かれるのはたいてい八方ふさがりの現実で、その現実をなんとかしようとあがく人物たちのドタバタがどうしようもない悲哀と笑いを誘い、最後には彼らへのいとおしさに、不思議としんみりさせられる」とあるが、まさにその通りの読後感の話が多い。様々な奇想も面白い。
バッドエンド寄りの話も多く(てかほぼそう)、それもいいんだけど、ハッピー寄りの結末を迎えた話にはすごくグッときてしまった。
「もしも誰かが最後の最後に壊れてしまって、ひどいことを言ったりやったり、他人の世話に、それもすごいレベルで世話にならなきゃならなくなったとして、それがなんだ?なんぼのものだ?」「そこには同時にたくさんのーたくさんの良いことのしずく、そうおれには思えたー何滴もの幸せな、良い絆のしずくがきっとこの先にはあって、そしてその絆のしずくはー今までも、これからもーおれが勝手に距離できるものじゃないんだ。拒否。」って、老いや病に対抗する、本当に力強い人間讃歌。
特に好きなのは、『訓告』『センプリカ・ガール日記』『十二月の十日』。
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翻訳家でエッセイストでもある著者の読書感想文 + 翻訳小説食わず嫌いへの読書案内(初心者向け、上級者向け)+ 業界日記&メモ。視点や発想が日本人としてはユニークなので、分厚い本でも飽きずに読めた。
谷川俊太郎の『ことばあそびうた』に関する部分で、「言葉を発するということは、それ自体が音楽を奏でるようなもので、意味なんかなくたって、ただもう楽しいということだってある」とあり、著者の訳書もきっとリズム感にあふれているに違いないと確信した。
AIアシスタントに著者の翻訳本を何から読めばよいか尋ねると、ルシア・ベルリン作品集かミランダ・ジュライ作品集のどちらかの短編集から入るのがよいとのこと。それならば『掃除婦のための手引き書』あたりから読んでみたい。
ちなみに、著者の幼少期の環境を知りたいなら、坪内祐三著『玉電松原物語』を読むとよさそうだ。 -
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普通にエッセイという心構えで読んでいくと、不思議な常識を知らないうちに飲み込まされていて、話を読み終わった後で、それがおかしかったことに気付かされるおそろしい文章群だった。
夢十夜に近いと思う。
作者岸本さんは、女性で現在64歳らしいのだが、本全体を通して、年齢や性別を特段感じなかった。
たしかに老いに関するエピソードや、話にあげられる俳優などには年齢が反映されているとは思う。しかし出来事に対して過去の体験や事件をあまりもちださずに、空想の論理をコロコロと転がしていく話の展開がとても柔軟だからだろうか。
小さなお婆さんの話が一番好きかも -
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ルシア・ベルリンの24の短篇。
私は「すべての月・すべての年」に続いて2作目。
とりわけ変わった設定ではなく、1900年代半ばの普通の生活がベースになっている短篇。
一度に全部読んだらすぐに忘れちゃうかなと思いきや、随分とずっしりとした読後感。
軽くて面白い短編集はたくさんある。
しかしこれはずっしりと面白い短編集。
これは何に因るものなのかなあと考えてみたのだけれども、まずは空気の重さまで感じられるようなリアリティ。
実体験をベースにしているものが多いと聞いてなるほどと思うと同時に、実体験を扱えばすべてこのようなリアリティが出るかと言ったらそうはいかない。
場面、表情、行動の切り取り方が素晴らしいのだ。文章のひとつひとつ、そして文章の組み合わせによって意識的にこの雰囲気を作り出しているのだから、唸らされる。
私もメキシコにいて、当時を生活しているかのような気持ちにさせられる。楽しい。
そしてもう一点は、語り手の現在の行動に説得力を持たせる過去。
ほとんどすべての作品の語り手には、過去がある。そしてその過去が間違いなく現在に影響を与えている。
その過去があっての今なのだなという納得感は、物語を楽しむ上で重要なのだが、これが絶妙である。
短篇のなかで、限られた枠のなかで、端的に、かつ印象的に過去を記述する。
それが台詞だったり、行為だったり、景色だったり。とにかく過去を印象づける。絶妙に。
とにかく高い技術によって、日常の話が大勢の人間に絶賛される物語に昇華されているのは見物。
そしてそんな難しく考えなくても、楽しく読める。
「なんかよくわからないけど、おしゃれっぽいし楽しい」っていうのでも良い。手に取ってみて欲しい。 -
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独裁者の誕生と破滅、人と国の破壊を描いた寓話。玩具のようなロボットのようなキャラクターが住む国のお話、絵をイメージすればユーモラスなはずなのに、読むのがしんどくて参った。国土を削られ、財産を奪われ、生き残るすべがどんどんなくなっていく。きつい。独裁者の方もどんどん脳が壊れてまともじやなくなっていって、こちらもきつい。
きついきついばかり言っているけど、ほんとに、ユーモアがユーモアに見えないくらいしんどかった。どこかで「抱腹絶倒」と紹介されていたけど、うそでしょ?ってくらい全然笑えなかった…
ディストピアものは若いうち、あと平和な時代に読んだ方がいいと痛感。今はリアルの世界が過酷すぎる。あと、自分ならこうやって撥ね返す、という覇気を持って読めないと、ダメ押しだけどもう一度、ホントにきついので。 -
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初読
坂口文庫。
坂口さん曰くまったく読み進められない本シリーズの2。
これはわたしもかなり難儀しました。なかなか手強い。最初いくつかサラっと読んだとき 全然サラっと行かなくてこれは困ったと思った。
短編集のうち いくつかは まぁまぁ読めるのがあって もうそれでいいかなと思ったケド 別の日にまたちょっと読んだら もういくつかホォと思うのもあり。その時思いついて解説先に読んでみたのがよかったのかも。でも解説のおかげで最初の時には気がつかなかった重いツライ感じもわかってきた。
フィクションとしたら 全然面白くないけど これがノンフィクションに近いとしたら それはちょっと興味あるというか ちょっと惹かれるなと。
多分に怖い物見たさの要素もあるけどね。
なんとかひと通りは読めた。
それにしても坂口さん これよく買ったなぁ。
全く坂口さんチョイスっぽくない。
星1.5
2回目以降 直近で数回読み返す 星4 ハマる
最初は無理だと思ったのに 読み返すつど惹かれていく この本にというより こんな人生を生きた人に惹かれるのかも。
表紙の人が作者みたいだ。すごいキレイな人だ