岸本佐知子のレビュー一覧

  • ねにもつタイプ

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    我が道を行く翻訳家だなぁ、まったく。
    友達になれそう!と思ったり、無理!と思ったり忙しい。でも好きだ。大好きだ。

    翻訳は掃除婦しかまだ読んでいないけれど、今後彼女の作品に触れるたびに、素の彼女を思い出して、ふっと笑ったりするかもしれない…。

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    2023年02月14日
  • 話の終わり

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    これは私の話だ、と思った。
    好きな人の髪の色や服、コーンチップとトランプ、安くて苦い紅茶の味。事実を並べているだけなのに、そこからいろんな感情が連想されるところが素敵だった。
    誰かのことを好きになって、愛して、深い悦びを知ったとしても、別れがこんなにも辛いのなら、最初から何もしなければいい、そうやって人と距離を置いて暮らしたら楽なのかなと思った。

    あんなに好きだったのに、一緒にいる時間が耐え難くなる。でも別れたらその姿を求めてやまない。なんでこんなに矛盾していちいち喜んだり倦んだり悲しんだりするんだろう。

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    2023年03月05日
  • いちばんここに似合う人

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    孤独で優しく不穏な短編集。何と表現したらよいか迷う短編ばかりですが不器用で純粋な登場人物たちにはどこか共感してしまいます。時折挿入される愛のシーンも寂しい気持ちになります。

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    2023年01月04日
  • 最初の悪い男

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    43歳独身女性の妄想強めの現実世界。
    20歳の居候が入り込んできて、日常がどんどん変わってしまう。
    妄想がリアルだけど、現実がそれを超えて広がっていく。

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    2023年01月03日
  • なんらかの事情

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    岸本佐知子の妄想という名の暴走エッセイ第二弾

    気楽に読めてクスッと笑える。
    ホントに不思議な方です。

    「やぼう」に爆笑しました\(//∇//)


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    2022年12月13日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    フィルの暴力的な独裁が本当に辛かった…
    けどタイトルに『短くて〜』と入っていたのでなんとか読めた!
    ほんとロシアのウクライナ侵攻とだぶって見えたね…
    デウス・エクス・マキナ的な事が起こらないかな〜。

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    2022年10月02日
  • 『罪と罰』を読まない

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    面白そうだなと購入。でも期待せずに読み初めて、えっ、これ予想以上に面白いじゃんとびっくり(笑)
    ドストのラスコに馬の修造だよ?「罪と罰」かなり読みたくなったんだけど、私はいつか読む読む詐欺マン(笑)

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    2022年08月31日
  • 気になる部分

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    予想を超えて面白かった。
    収録されているエッセイの初出は、一番古いものだと1993年。だけど、時代を感じさせるものは少なく、普遍的な日常や記憶の中からお題を取り上げて深く考える過程が、上手く、面白く文章化されている、と感じる。
    元々人間的にも魅力を感じていて、この本を読んで言語感覚も好きなことを確認できた。

    岸本さんは、元々はショーン・タンの絵本の訳者として知り、その後、アトロクで翻訳者のお仕事の話だったか日本翻訳大賞の審査員としてだったか、とにかく出演し話しているのを聞き、話し方や話す内容、会話の反応から「この人、なんかちょっと気になるな……」と思っていた(そのとき一緒に出演していた柴田元

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    2022年08月31日
  • なんらかの事情

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    ネタバレ

    ★3.8
    岸本さんのものの着眼点がとにかくおもしろい。

    特に好きだったのは前半部分で、もう今の時代マスクしててよかったなっていうくらい電車の中で読みながらニマニマしてしまった。

    自分にとっては一見どうでもいい、どうでもよくないことが他の人の気持ちを楽しくさせてくれるんだなと、。
    こういうくだらないこと(本人にとってはそうでもないことかも)を人に伝えたり、お話するのっていいな、と思う。
    岸本さん、元気をありがとう。

    わたしも思ったこと、くだらなくても
    これからメモしとこ。誰かや自分を時々救ったり救わなかったりするかもしれないから。


    好きな章:
    才能 レジで遅い列並ぶ人優勝
    ダース考  

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    2022年05月07日
  • 『罪と罰』を読まない

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    『罪と罰』を読まずに読む。

    まず自分も『罪と罰』を読んだことがありません。確か主人公は若い男で老婆を殺す話だったはず。それくらいしか知りません。というわけで前半の推理合戦も、後半の読後感想も楽しく読み、『罪と罰』読みたい、と思いました。色々なキャラクターが気になります。これは読むしかないのでは?

    「読む」という行為は、読む前から始まっており、読んだ後も終わらない。読書は一人で完結しない、著者や他にその本を読んだ人、また読んでいない人とのつながりだと思いました。読書万歳。

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    2022年05月01日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚か

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    2022年04月21日
  • いちばんここに似合う人

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    80歳を過ぎた老人に海もプールもない土地で泳ぎを教えた経験を語る女性の話とか、あり得ないようでいていや、あるのかもしれんな…と思わせるようなユーモアと魅力があって、息抜きに読むにはちょうどいい。比較するにはポップ過ぎるけど『ワインズバーグ・オハイオ』を思い出した。

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    2022年04月15日
  • 『罪と罰』を読まない

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    いやこれ、めちゃくちゃ面白かった。
    世界的名作、ドストエフスキー作の『罪と罰』を読んだことのない作家4人が、持っている知識(断片的)を駆使し、出版社の人にヒントをもらいながら、作品の内容を想像(妄想)し語り合う企画を書籍化したもの。

    企画からして既にかなり面白そうなのだが、なまじ作品構成や小説づくりを日頃から考えている人たちなので断片からの推理力や展開への発想が鋭かったり、好き放題言ったり盛り上がりがすごい。というかわからないからこそ皆さん言いたい放題。笑

    特に三浦しをんさんによる登場人物へのあだ名の付け方や人物考はかなり笑わせてもらった。
    主人公の名前も「ラスコーリニコフ」じゃとっつきに

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    2022年02月18日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    2022年、ある政治家が、別の政治家の弁舌の巧みさをヒトラーのようだと発言し、研究者や政治家、マスコミを中心に論争が巻き起こっている。
    また、あるテレビ番組で、ヒトラーとなぞらえることはヘイトスピーチだと語った研究者に対し、批判が殺到した。研究者の所属する大学は彼を解雇しろという抗議の声が上がった。
    どれも、SNSという小さな国の中で。

    読むにつれて、上記の事象を考えずにはいられなかった。

    「この本は、世界を過度に単純化し、〈他者〉とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語なのです。」
    (p.153,訳者あとがきから著者の言葉)

    フィルはヒトラーであり、我々自身でもある。

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    2022年02月09日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    奇妙で滑稽で面白い。
    所謂風刺的な寓話なのだけれど、とにかく突拍子もない設定とキャラクターに引き込まれてしまう。魅力的で演説巧みな独裁者に傾倒してしまう単純な大衆、他者を冷酷に切り捨ててしまう集団心理。テーマとしてはメジャーと思うけれど、この物語のような表現は常人では思いつかないだろう。
    物語の序盤で語られる、主人公フィルの脳が「ラック」に固定されていてときどきそれが「滑り落ち」長引くと「おかしくなる」という設定にまずやられた。さすが岸本さんの訳本、期待を裏切らない。大好きだ。
    何も構えずただ物語を楽しむだけで充分だと思う。

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    2021年12月15日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ひとつの本でこんなに語りあえるなんて。読む前の妄想満点の会話に噴き出し、読んだあとの感想戦や読み解きに唸らされる。その後の後書きで、数年後には皆すっかりうろ覚えになっていたとの記述に、それで良いんだと安心。
    ステキな会話に加わった気分で楽しめた。

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    2021年12月07日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ネタバレ

    面白おかしく読み始めるも、徐々に感じる戸惑いと慄き
    内ホーマー人への圧制が「人間的」な要素がないだけに、より浮き彫りになる容易さへの恐怖
    知らぬ間に根付く差別意識、忍び寄る独裁
    頭の片隅ではわかっていても、なんとなく甘んじて受け入れていると、どんな未来が待っているのか

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    2021年10月11日
  • 最初の悪い男

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    一番ここに似合う人、あなたを選んでくれたものに続いて。こんなに1人の人の著書を読むのは久々。人があえて文字にしたり口にしたりしないような人間のどろっとした事や世界の一部を冷静かつプッと笑っちゃうような表現でひとつの作品にしちゃうのがこの人のすごいところ。動物の鳴き声が「たすけて」に聴こえてもその動物にとっては全く違う意味かもしれないし、とか。しょーーもないんだけど確かに真理だと思わせられる面白い表現がいっぱい。端的に書こうと思えば全然書けそうなことを良い意味でダラダラ書いてて、でもそのどうでもよさに登場人物たちの生活を感じる。短編もドキュメンタリーも面白かったけど長編は読み終わってこのミランダ

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    2021年09月24日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ネタバレ

    『罪と罰』は挑戦したことはあるけど、結局まだ読めていないです。
    なので、こんな有名な作家さんたちも読んでないんだ!と嬉しくなって手に取ったのですが、最終的に読んでる・・・!
    でも読まずに推理する座談会って画期的すぎる。
    そして言うこと言うことが面白い。登場人物に変なあだ名付けるし。
    でも『罪と罰』が堅苦しくない、エンタメ本だと分かったので、
    この本を傍らに置いて今度こそ読破してみたいです。
    欲を言えば『カラマーゾフの兄弟』とか他のドスト作品でも座談会して欲しい。

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    2021年09月01日
  • なんらかの事情

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    「なんらかの事情」 岸本佐知子(著)

    2016年 3/10 文庫第1刷発行 (株)筑摩書房

    「ねにもつタイプ」の第2弾らしい…

    岸本佐知子さんの翻訳がとても良い感じなので
    エッセイに手を出してしまったが…

    とても変な人だって事が良く分かりました。

    依然として好きです。

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    2021年05月24日