岸本佐知子のレビュー一覧

  • なんらかの事情

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    いちばん早いと思ったレジが、最も遅くなる。

    買ったばかりの服のボタンが、初めて着ようとした時に、ぶらぶらになって垂れ下がってる(しかもそこそこ高いやつ)。

    家庭科の授業で配られた裁縫セットの中にあった、アルミの円盤部分に、なぜかローマ皇帝の横顔みたいな模様がある、針穴に糸を通すための道具のような、間がもたない気がしてついつい入れてしまった飾りが、心の琴線に触れる。

    上記について、すごい、私の心が読まれてるよ。
    なんか分かってくれる人がいる! 
    と、思わず心の中で快哉を叫んでしまった。

    ダースベイダーも夜は寝るのだろうかと考えることや、アロマを嗅ぐ時の「くんかくんか」って表現は私のツボに

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    2023年05月27日
  • いちばんここに似合う人

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    読書会の課題図書。
    ジャームッシュの初期の映画を見ているような。
    エイドリアン・トミネの「サマーブロンド」とか、映画で言うと「ゴーストワールド」を彷彿とさせる。
    一時期の村上春樹さんもちょっとこういう感じだった。
    レーモンド・カーヴァーを初めて村上さんの訳で読んだときと似た感覚。
    だが、それから21世紀になり、よりより閉鎖的な気分になってるんだなあ、と。
    その中でも泥の中の蓮、という気分にさせてくれるものもあれば、そうでもないものも…。

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    2021年02月28日
  • なんらかの事情

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    ネタバレ

    日常と妄想の狭間的エッセイ第二弾。こちらのほうが、前作「ねにもつタイプ」よりマイルドな印象。ところどころほんのりブラックで、妄想をかきたてるオチ。お気に入りの一編は「瓶記」。空き瓶の訴えにエンドレスの予感。モノが捨てられない人ほど共感しそうだ。それから「やばさの基準」も好き。著者の語る“あの宇宙人”と比べれば、たしかにねぇと思う。そこと比べたら、自分の中の(やばい……)は太刀打ちできないよ。

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    2021年01月27日
  • エドウィン・マルハウス

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    おもちゃ箱と宝箱をひっくり返したような物語。その、ひっくり返して出てきたもの一つ一つに、まんべんなく焦点が当たるような。全部読み終わって、どこからがフィクションなんだっけ?としばらく考えてしまった。

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    2020年12月04日
  • なんらかの事情

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    三浦しをんさんと似た雰囲気を感じる。仲が良いのも頷ける。
    検非違使に笑いを禁じえなかったし、あだ名の時には吹き出しそうになったので外で読むのを止めた。

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    2020年10月23日
  • なんらかの事情

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    翻訳家として活躍する岸本さん。
    エッセイストとしての評価も高い。

    エッセイがうまい女性の書き手には、昔から妙に憧れてきた。
    独自の感性を持った、自立した女性という感じを持っていたのだ。
    古くは片山弘子、向田邦子、竹西寛子。
    しかし、岸本さんはちょっと毛色が違った。
    ――面白すぎるのだ。

    「ごわす様」がやってきて、アロマテラピーなどの素敵生活を一瞬にして無化する。
    いや、普通の人はそれを「我に返る」と言うのだろう。
    それを擬人化する。
    しかも、「ごんす」「がんす」「やんす」「でげす」という兄弟分までいるという。
    この想像力!

    コップで牛乳を飲むとき、表面にできる影が怖かった幼少期。
    私はそ

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    2020年10月11日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    タイトル通り変愛を集めた短編集。

    「お、おう、そんなところに」「そんなのと」「え、何この設定」とか本当にそれぞれ変な愛ばっかり笑

    吉田篤弘目当てだけど、電球交換士が出てきていたとは。

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    2020年04月16日
  • 最初の悪い男

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    ネタバレ

    同年代の独女には劇薬だ。
    こうも赤裸々に語られると、どうにもいたたまれない、それでも読むのを止められない。

    今の変わり映えしない生活は居心地良くはあるけど、少し窮屈で退屈。
    このまま老いていくのかと思うと、このままで良いのかと不安にもなってくる。
    そろそろ何か新しいことを始める時なのかもしれない。

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    2020年03月22日
  • いちばんここに似合う人

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    面白かったです。
    ミランダ・ジュライは初めて読みました。岸本佐知子さんの訳も読んでみたかったです。
    人々の関わりが濃く描かれていますが、ひどく孤独を感じました。濃密であればあるほど、独りで立っていました。
    この感覚は親しく思います。楽しく会話してても、ひとり、ということをまざまざと突き付けられることはよくあります。
    「何も必要としない何か」がすごく好きでした。
    これからも読んでいきたい作家さんです。
    岸本さんはエッセイを面白く読んでいたばかりでしたが、訳書も文章が生き生きとしていて好きです。

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    2019年10月25日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    「恋愛」ではなく「変愛」…変わった形の愛が描かれたアンソロジーです。
    面白かったです。
    ディストピア文学が大好きなので、「形見」が好きでした。工場で作られる動物由来の子ども、も気になりますが、主人公の子どもがもう50人くらいいるのも気になりました。色々と考えてしまいます。
    「藁の夫」「逆毛のトメ」「クエルボ」も良かったです。藁の夫を燃やす妄想をしたり。クエルボはラストは本当に名の通りにカラスになったのだろうか。。
    多和田葉子、村田沙耶香、吉田篤弘は再読でしたがやっぱり良いです。
    岸本佐知子さんのセンス好きです。単行本から、木下古栗さんの作品だけ再録されなかったようですが。
    表紙の感じに既視感が

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    2019年08月30日
  • 最初の悪い男

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    ある種妄想の世界に生きる43歳の女シェリルと、その前に現れる最強最悪の「現実」クリー。よくある女性2人の分かり合いの物語ではなくて、変化、変化、変化。2人の関係はひたすらに変化し続ける。避ける、闘う、愛し合う、あらゆる剥き出しの感情の表出だ。そして見えていないものが見える。職場の人物。セラピスト。恋愛。あまりにも入り組んでいて話の流れとして読みやすいとはいえないけれど、最初に感じたあまりの嘘くささ(現実との乖離)から、最後には滅茶苦茶な現実が輝く。エピローグの輝かしさ。
    主人公にどことなく共感してしまう。ぜんぜん違う性格だし考え方も違うけれど、その人生回避の姿勢に。しかし彼女はぐちゃぐちゃでは

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    2019年06月14日
  • 最初の悪い男

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    ネタバレ

    netflixのドラマのようにゴクゴクと読んでいけちゃう喉ごしでありながら、しっかりと人間のアブない深淵を覗かせてもくれる一冊。笑い、泣き、慄きました。

    個人的に一番キてるな〜と思ったのは、シェリルが玄関でカタツムリ百匹ぶちまけながら自慰にふけってしまうシーン。その後人間同士の関係は驚くべき変化を遂げていくのに、カタツムリは後半に至ってもまだ屋内を這っていたりする。また、クリーが去った後もしばらく彼女の搾乳したミルクがジャックに与えられ続ける描写などもあって、一瞬で変化する物事とマイペースに連続性を保った物事との対比が面白く、もの悲しい。

    奇妙な筋立てにリアリティーを与える細かな描写もいち

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    2019年05月28日
  • 最初の悪い男

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    43歳独身妄想女シェリルの家に、上司の娘クリーが転がりこんできたことで起きた人生の奇跡。
    精神的に余裕がないと辛い。人間ってどうしてこうも残酷で単純な生き物で、また美しいのだろう。
    シェリルの妄想はリアルだ。欲求や理想をこれでもかと見せつけ、私の脳内にまで踏み込んでくる。
    サプライズでシェリルと読者を困惑させる。守るべきもののおかげで、なんとか前へ進むのだが。

    幸福とは変化なのか?理想の追求なのか?
    この結末は正しい。そう納得するしかないのは私の器の問題。

    タイトルの意味を理解した時、やはり正しいと再認識するだろう。

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    2019年05月04日
  • 最初の悪い男

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    ミランダ・ジュライは、「人生はビギナーズ」の監督マイクイルズの妻。彼女の初長編であるこの作品は、中年女性シェリルの元に飛び込んできた、上司の娘、20歳のクリーとの物語。傍若無人なクリーとの関係は、二転三転して予測がつかない。かなりファンキーな展開かつ、シェリルの空想話が混ざってくるので、かなり独特な読後感。何が言いたいんだか、よくわからないが、気の利いたエピローグでなんとなくすっきりする。

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    2019年03月16日
  • 最初の悪い男

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    人生とは肉弾戦だったと、こんなにはっきり突きつけられて清々しい。
    意表を突くタイトルも巧妙な角度から作品を浮き上がらせる象徴性で、手練れの技につくづく感じ入った。この言葉だけで、血気溢れるこの物語のことを、私たちはすぐに思い出せるだろう。

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    2019年02月24日
  • 最初の悪い男

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    面白かった。平日にひと晩で読んでしまい、明日は寝不足だ。実はこの人の書く人物のみじめっぷりがあまりに身につまされるので好きではない。しかし、面白くて止まらなかった。

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    2019年01月18日
  • いちばんここに似合う人

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    登場人物たちの孤独に揉まれて飲み込まれて息苦しいのに不快じゃない不思議な感覚。特に「モン・プレジール」と「あざ」が印象に残った。

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    2018年11月25日
  • 最初の悪い男

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    ミランダ・ジュライのワールド爆発な長編。
    短編が上手い人が長編も上手いとは限らないけど、この作品はいつもの彼女の世界観が出すぎなくらい出ていて楽しかった。
    主人公の妄想オンパレード、ズレた登場人物たち、珍妙な展開。タイトルも、そこから取るんかい!という唐突さ。
    意外性とかいうレベルでなく、とにかくへんです。笑
    でもへんなのに愛おしくて、登場人物にあまり感情移入しない、キャラ小説を好まない自分が最後にシェリルと別れるのが惜しいと思ってしまったほど。
    翻訳も安定の岸本佐知子さんで、良かった。
    ずっとこのコンビでいてほしい!

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    2018年11月12日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    いくつか読んだことがある作品も収録されていましたが、今までの愛に対する見方を思いっきり揺さぶられる一冊であることは間違いなし。
    どれもこれもお勧め?
    「韋駄天どこまでも」は漢字遊びの要素なので、編者も書いているように翻訳は超絶技巧が必要だなぁ。
    単行本にしか収録されていない作品があるそうなので、単行本も読まねば。

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    2018年07月21日
  • いちばんここに似合う人

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    ずっとじわじわと感じていたのは恐怖だった。
    今わたしは主人公たちの孤独を想像出来ないほど子供でもなく、人生楽しいから大丈夫!と笑い飛ばせるほど「将来」の近くにもいない。
    大人になっていくということが、今の孤独をより深めていくことだとしたら?
    そんな恐怖で、読むペースはいつもより遅かったように思う(純粋に表現が好きで読み込んでいたこともある)。


    読み終わった今、どんな話か一言で、と言われたら
    「泣き疲れて眠るような」と答えたい。
    救いはないとしても、明日が来て何が変わる訳でもないとしても、今夜はとりあえず、おやすみ。
    そんな小説だと思った。

    朝寝坊して、致命的ではないけど初歩的で鈍臭いミ

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    2023年04月18日