岸本佐知子のレビュー一覧

  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    人ひとりしか居られない程小さな国、内ホーナー国
    それを取り囲む外ホーナー国
    内ホーナー国民は7人おり、両国の境、外ホーナー国内の一時滞在エリアで常に6人が入国を待っている
    国民の姿形は無機物と生物のツギハギ
    この奇妙で童話のような世界観で語られるのは国同士・人同士の争い
    きっかけは外ホーナー人であるフィルによる内ホーナー国批判の演説
    フィルの演説は力強く煽動的であるのだが、興味深いのは、脳が外れてしまった時に為されることが多い、ということ
    本書は2011年に刊行されているが、フィルの語りにはドナルド・トランプ氏であったり、小泉進次郎氏であったり、多くの政治家の姿が重なる…
    この物語は政治家批判のメッセージも受け取れるが、同時にそんな政治家を選んでもしまっている国民への警鐘にも感じた

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    2025年01月24日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    短編集とわかってはいても、一見バラバラな気がした。
    それがいつしか作者の生い立ちとも重なって、太い束のようなまとまりに感じられてゆく。
    若い無邪気さ、苦い経験、切羽詰まった状況、そしてごく日常の風景。
    どれも書き手がそこにいて、「これがあたし」といっているよう。
    けれどそこに押しつけがましさはなくて、静かに目の前に差し出す。
    謙虚で辛辣でちょっとクール、そして皮肉とユーモアを忘れない。
    フィクションのようにもノンフィクションのようにも見えたこの作品群。振れ幅の大きな彼女の人生の、ある意味伝記のように思えた。
    また読みたい。

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    2025年01月19日
  • ひみつのしつもん

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    ネタバレ

    おもしろいエッセイ集だけれど、ショートショートのようなものもいくつかあって、それがけっこう幻想的でホラーな雰囲気があると思う。まるで悪夢を見てハッと目が覚めたときのような感覚になるのだ。作者の空想力が豊かなので、現実との境界線が曖昧になっていくのも興味深い。
    りんごのみつが甘くないこととか、ヌテラの主原料とか、これまで知らなかったある意味どうでもいいとも言える知識が増えていくのがなんだか面白くて、友人とだらだら喋っているときのようなくつろいだ気分で読めるエッセイだった。

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    2025年01月11日
  • わからない

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    ルシア・ベルリンなどの翻訳家岸本佐知子さんの、エッセイや書評、日記などを集めた本。いままで本に収録されていないものを集めたとのことで、初めて読む岸本さんのエッセイにはちょっともったいなかったかもしれない。
    思考も言葉もコロコロと転がっていくような文章が面白い。思考は浮かび上がって飛躍して妄想に突入するし、言葉遊びも抜群に冴えている。
    ビジネスや自己啓発系のベストセラーを読んだ感想を率直に書き、挫折を語り、ツッコミをいれ……と自由すぎる書評(勧める気がなさすぎる)もすごかった。
    「わからない」「イエス脳」がお気に入りで、エッセイの部分が一番面白かったのでもっとたくさん読みたくなる。他の本も読んでみようかと思う。

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    2025年01月05日
  • わからない

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    なぜこんな展開なの?思考回路どうなってるのか
    一人ほくそ笑み、ツッコミ入れてる
    若いころ井上ひさしに遭遇して以来の衝撃!

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    2024年12月18日
  • すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集

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    ネタバレ

    誰もがここで書かれている彼女のことを好きになってしまったり、そうでなくても嫌いにはなれないんじゃないかと思った。賢くて繊細で、情熱と愛があり時に弱く、悲しみと喜びに満ちた人生を送る女性。彼女の言動には優しいぬくもりを感じるし、言外に親密な空気が漂うところが好きだ。
    「カルメン」や「ミヒート」で描かれている、悲惨な状況に陥ってしまった女性や子どもの話がとてもつらかった。あまりにも克明でハラハラしながら読むことになったが、決して同情的には書かれておらず、作者の冷静な目線をいつも感じた。
    姉妹のバカンスを描いた「哀しみ」が特に心に残った。少しの嘘だって、すべて妹への愛にほかならない。誰の視点かによって物事の見え方がまったく変わるところが良い。

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    2024年12月16日
  • わからない

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    エッセイ集。
    これはね、ほんとに公共交通機関で読まない方がいいです。
    油断してるといきなりぶっ込んでくる。

    ♫Lifetime Respect/三木道三(2001)

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    2024年12月08日
  • なんらかの事情

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    ヨシタケシンスケさんとの対談で知り、岸本佐知子さんの本を初めて読んだ。

    そして、読み始めてすぐにこの人の感性、たまらな〜く好きだと確信。
    そして、よくわかる!の嵐。
    落ち込んでる日でも、静かなカフェでも、笑いが抑えられない。こんなふうに世界を見て、表現できたら素敵だなあ。

    面白い話はたくさんあったけど、記憶に残っているのは「海です、海です」と言い続ける健気なナビさんと、筆者を静かに説得した瓶の長老の姿だ。
    それから外れレジを引き当てる才能もじわった。

    妄想エッセイ、自分でも書いてみたいと思ってしまった。

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    2024年12月05日
  • すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集

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    「一篇読むたびに深呼吸せずにはいられない」の帯の謳い文句に偽りはない。
    何か悪いことをしたような、それでも何か郷愁をそそられるような、一篇ごとにそんな気分にさせられる。
    登場人物はみんな傷を持っている。
    その傷一つ一つは、誰しもがいつか感じたことのある傷みを見いだせるような気がする。
    あの時の、あの感じ、という気分になりたいとき、ぜひ。

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    2024年12月03日
  • エドウィン・マルハウス

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    仕掛けが面白い。主人公つづった、親友にまつわる伝記がそのまま小説になっている。欧米の小説を読んでいて思うのは、「なぜこの語り手がこの話をするのか」の地固めが周到だ、ということ。マーガレット・アトウッドもそうだけど、大方の日本の作家のように「なんとなく一人称にしたかった」的な、ジャンルに寄っかかった書き方をしないところが、自立してていいなぁ、と思う。
    ストーリーは、ダークサイド・スタンドバイミー、といった印象。
    あるいは、月が月になろうとして、相手を自分の手で太陽にしてしまうような話。
    神官が神官になろうとして、相手を自分の手で神にしてしまう、と言った方が近いのかな。
    とにかく、そんな話。
    わざとなんだろうけれど、冒頭からしばらくは読んでいてかなり辛かった。固有名詞の羅列だったり、むやみに長い情景描写だったりがたっぷり続いて、「いいからストーリー進めてよ!」という苛立ちで飛ばし読みした部分がかなりある。
    読み応えが出てくるのは、ローズ・ドーンが登場するあたりから。主人公の粘着質な性格がこの辺りから露骨になってきて、加速度的に面白くなる。
    そして、「信用できない語り手」が語る小説が大好きなのだけれど、これもやっぱり当たりだな、と思わせられるのは、主人公が周囲から見たらどんな子なのかは読み手が想像するしかないように作ってあって、しかもそれがおそらくかなりの部分、伝記執筆の動機になっているんだろうと思わせるところ。何せ、こんなに毎日、かなりの時間を友人の家に入り浸って過ごしている息子に対して親がどう関わっているのか一切の描写がないどころか、親が何をしている人なのかもわからない。わからないので、断片的な情報からあれこれ想像せざるを得ない。その辺りが、上手いなぁ、と思う。

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    2024年11月22日
  • わからない

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    何度も笑いが吹き出すのと、大丈夫かどうなるんだとヒヤヒヤするのと、終始落ち着かない読書だった。まともなことがたまに挟まれると逆に心配になる。それが岸本佐知子さん。安心・ゆったりしてはいけない、落ち着いてはいけない読書。堪能した。

    「日記」、怒濤だった。悪夢見た。

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    2024年11月20日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    ハードな人生、タフな登場人物。軽やかに乾いた文章。ユーモアや余裕も絶妙に漂っていて。とてもカッコ良い短編小説たち。
    何度目かに読んだときから、これは彼女の人生で体験してきた「あきらめ」の上で物語られているのではないか、というような気がしてきている。
    不条理な世界、ままならない人生、過去のやり直せない過ちや消えない傷を受け入れる。「悔いるのをやめる。」一度あきらめる。そのうえで、それでも、ハードな人生をタフに生きていく、生きてきた。その人生から慎重に切り取られ、誇張を加え作り話混ぜ合わせ紡いでいく。そうやって書かれる短編小説は、きっと彼女と同じようにとても強い。そんな印象を受けた。
    あきらめることで手に入れられるもの、そうすることでしか手に入れることが出来ない強さやしなやかさ、余裕が、ものにできない短編小説があるのだ。そんな風にも思った。「あきらめ」以外にも相応しい言葉があるかもしれないし、的外れかもしれないけれど、幾つものことをあきらめてしまった後にはそんな風に読んでいた。ああ、まだ大丈夫なのかもしれない、と思えた。わたしもこの強さや余裕を手に入れられるだろうか、手に入れたいと思った。

    どの短編小説も素晴らしかったのだけれど、冒頭の初めて読んだ彼女の小説で、すぐに大好きだ、と思えた「エンジェル・コインランドリー店」。
    これもJAZZだった。JAZZみたいにロマンチックだ、と思った「ソー・ロング」。オーネット・コールマンのファイブスポットでの初演奏の一文にビックリしつつ嬉しくなった。
    刑務所での文章教室を舞台にした大好きな短編小説があるのだけれど、同じように文章教室を舞台にした「さあ土曜日だ」も素晴らしくて、同じように大好きになった。ここでは珍しく作家を思わせる登場人物は語られる側で、文章教室で習ったのか綺麗に哀しいオチもつくのだけれど、それでもやっぱり彼女の人生から物語られた素晴らしい短編小説だと思えた。が、特に好きでした。
    「全ての月、全ての年」も近いうちに再読したい。

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    2024年11月16日
  • ひみつのしつもん

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    ゆったりとダメな感じのエッセイ
    声を出して笑ってしまうところもいくつかあり
    すぐ夢想の世界に行ってしまうところが最初ザワザワしたが、本ってこういうものだったなとそのうち慣れました
    挿絵がおしゃれでピッタリ

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    2024年11月14日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
    「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
    その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得なかった「彼女の孤独や哀しみやささやかな矜持や希望」あきらめ、恨み、失望は、編者あとがきで岸本さんが書いているように「私たちみんなが心の奥に抱えているもの」なのだと思えた。少なくとも、わたしは同じようなものを抱えていた。改めてそれらを見つめることになる。さらにその語り合い、解釈を通して「なにか肝心なものが欠けた存在」では、と思いはじめる元夫、名無しの“男”の人生に自分を省みて、思い出し落ち込み、わたしも「少し涙ぐむ」。
    そして、もういない人を語りあうこと、あるいは不在になったときに語られることについても考える。別の方向からの印象を聞き、ぶつかり合いすり合わされることで、新しい印象が浮かび上がる。それは勿論“正解”ではないのだけど、新たな、あなた、わたしが描き出される。何処までいっても憶測でしかないそれを、真実とその人自体だと思い込む、そうせざる得ないことは、実はとても恐ろしいことなのではと思い至る。しかし、人も含めた世界はそうやってしか捉えることが出来ないのなら、それは真摯に語られるべきだ。この小説のように。そんなことを少しこじつけて思う。とても素晴らしかったけれど、予想していなかった怖い思いもした短編小説だった。太宰治の娘だということはさっき知った。「電気馬」も読んでみたい。

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    2024年11月13日
  • わからない

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    翻訳家でエッセイも人気の著者。
    まずタイトルと表紙に惹きつけられる。
    エッセイ、書評、日記の3部構成。
    外出は苦手と言うが海外含め相当出ている。
    止まらない妄想も読み応えがある。
    そして共感してしまう。
    海外文学の楽しみ方も知ることができ充実。

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    2024年11月08日
  • なんらかの事情

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    岸本佐知子先生のエッセイが好きだ。
    日記のようでいて、空想をひたすらに書き綴っている様な不思議なエッセイ。現実と想像の境、その間を面白可笑しく表現している。しかも読んでいてくどくない。
    前作の「ねにもつタイプ」の裏表紙には、岸本佐知子先生のエッセイを「読んでも教養が全く増えない」と表現している。
    本当に、読んでも教養は増えない。ただ、心の中には岸本佐知子先生の空想が残してくれた現実の可笑しさがそこかしこに積もっている。
    だから読んでしまう。

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    2024年10月28日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    星新一を思い出した!
    やり取りは軽快で可愛いけど、話は重くて悲しい。もうちょい楽しい場面も多かったらよかった。

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    2024年10月27日
  • ねにもつタイプ

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    短編を読んでいるようでもあり個人的な脳内をのぞき見ているような。
    脳内で繰り広げられる混ざり合う思考をこんなに分かり易くできるんだ。共感したり、できなくても笑えてしまうのも著者の筆の力が凄いからだ。こんなエッセイは読んだことがない。

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    2024年10月25日
  • わからない

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    実話なのか妄想なのかよくわからないんですよねこの人の話は。面白過ぎる。
    岸本佐知子が語る旧約聖書の話って何であんなに面白いのだろうか。

    書評では読んでみたい本がたくさん増えたのでゆっくり全部読んでいけたらいいな。
    ちなみに文庫化されてる彼女のエッセイは多分全部読んでるんだけど、翻訳書は「居心地の悪い部屋」しか読んだことがなかったりする。

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    2024年10月22日
  • いちばんここに似合う人

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    作品紹介・あらすじ

    水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。

    *****

    けったいな一冊、って印象。奇談、というわけでもなく、前衛的ってわけでもなく、虚実入り混じった印象でもなく。荒唐無稽な話でもなく、あくまでも現実に即した話なのだけれど、ちょっとどこか変。最初はあまりシックリこなくて「あれ、失敗だったかな」と感じたのだけれど、読んでいくうちにドンドンとこの底なし沼みたいなけったいな世界にズブズブと浸ってしまった。

    僕はあまり読書体験が豊富な方ではないので、断言はできないけれど、この短篇集に収録されているものと似たような作品を書いている人を知らない。唯一無二という意味でかなりユニークだと思う。仮に「小説の書き方」みたいなマニュアルがあったとしたら、そのマニュアルを完全に度外視して自由奔放に書き連ね、でも作者自身はそれを全く自覚していない、そんな感じ。読み手側からしたら、好き嫌いが明確に分かれるんだろうな、と思う。

    僕は気にならなかったのだけれど、レズビアンが結構な頻度で登場するし、時にストレートな性表現がでてくるので、そういうのが苦手は人にはちょっと辛いかも。

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    2024年09月22日