岸本佐知子のレビュー一覧
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天才、岸田さんワールド。
でも時々共感めちゃくちゃするものがあって、わたしのこの謎思考だとおもってたものが岸田さんと一緒なんてちょっと嬉しくなっちゃったり
1番の共感は『グルメ・エッセイ』
食べ物は、変だ。食べ物は不気味だ。でも好き。
『ある夜の思い出』
どうってことないのに忘れられない瞬間がある。
たぶん10歳の時、母とスキーに行った帰りの車の中、晴れた雪道を母の車の助手席に座ってなぜか「この瞬間大人になった時も思い出しそう」と思った。母が亡くなって20年、思った瞬間からも26年、なぜか今も時々この時間を思い出す。
『桃』
ただただおもしろすぎる。電車で読んで肩ふるわすやつ。
『夏の -
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[1]今回も笑うのを抑えようとして「ぶひっ!!」という音を立ててまう一冊。他人がいる場所で読むのはとっても危険です。ホンマ、マジで。
[2]なんやろう、このヘンな気持ち。人生の参考にはまったくなりそうにないんやけど、生きていくうえですごく大切な何かが書かれているんやという妙な確信。
[3]もちろん、笑えるという点では人生の役にすごく立っているとは思うんやけど、それとは別に。
■簡単なメモ
《もしもこの世にレジで一番遅い列に並んだ人が優勝する競技があったら、私は確実に国体レベルで優勝する自信がある。ひょっとしたらオリンピックでもメダルを狙えるくらいの才能ではないかと思う。》p.11。おそらく -
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ネタバレNHK「理想的本箱」、「戦争が近づいた時に読みたい本」の回で初めて知り、今日ようやく読むことができた。
中編程度の長さで、文章も決して難しくなく、児童文学のような雰囲気もあるので、活字に慣れていない人でも読みやすいのではないだろうか。
登場人物たちは機械の部品や植物、触手などで出来ている不思議な生物たち。
しかしその発言内容や行動は、人間にとても近く、特にSNSを見ていると差別主義者やヘイターがよく口にするような言い分のオンパレード。
そして完全に「善人」と言える人物はいないし、完全に「悪人」と言える人物も存在しない。
見たこともない不思議な生物たちの滑稽とも言えるような争いの話なのだが -
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一行で終わる小説を含む、ブラックジョークと妄想力に溢れた短篇集。
小川洋子の『原稿零枚日記』みたいな小説を読みたくて、久しぶりにリディア・デイヴィスを手に取った。『原稿零枚日記』は根暗の奇行と妄想が炸裂して岸本佐知子のエッセイを思わせるのだが、岸本さんの訳業のなかでも特に岸本エッセイに近しい世界観を持っているのがデイヴィス(とニコルソン・ベイカー)じゃないだろうか。
思惑は見事的中した。特に「甲状腺日記」は気分にぴったりだった!このマシンガントーク。かかりつけの歯科医との変な関係。病気から広がる妄想。物忘れは酷くなるばかりなのに、不謹慎な連想は止まらない。『分解する』を読んだときよりずっと -
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[1]初めて読んだ著者ですが、愛してしまいました。破壊的で危険です。ときおり吹き出すのを止めようとして「ふひっ!」とかいう音が出てきて周りに誰もいないのにキョロキョロしたり「く、く、く、く、く、く、く」となって苦しかったり。こんなふうになったのは昔、ジェラール・ダレルの『虫とけものと家族たち』を読んで以来かなあ。
[2]ものすごい才能です。素晴らしい妄想力です。ぼくも妄想しますがなかなかここまではいけないので妄想の神様として崇めることにしました。
[3]挿絵がクラフト・エヴィング商會というのに惹かれて読み始めたのですが大当たりで初めて読んだわけなのでまだ何冊も楽しめると思うと嬉しい。
■心覚 -
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ネタバレ横からぽっと現れた口の達者な人物によってあっという間に国が乗っ取られ、逆らう者を手にかける様子が恐ろしかった。登場人物が人間ではなく、色んなパーツのより合わせで動いているため生々しさは少ないはずだけれど、ある日突然権力者の決定によって殺されてしまうことに変わりはないのだった。
言葉を利用して鼓舞し、揚げ足をとり、押し切り、隙をついて場を支配するフィル。ちょっとしたアイデアから始まったはずなのに、気付けば全員従わざるを得ない状況になっていて、日に日に力関係の変化していく様子が面白かったし同時に怖かった。
長い物に巻かれて自分可愛さに保身に走る者たちや、それとは逆に、おかしいことをおかしいと言える -
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狐に摘まれたようなとはこの読後感にピッタリの感想だろう。物語があるわけではないが、作品ごとに読者である私が受け取り紡ぐ、あるいは想起される出来事が不思議と湧き起こる。ここまで読者に意図的に委ねられている小説は初めて出会ったと思う。
特に今の自分に印象深いのは、「肉と夫」の夫への諦観と突き放し、「私たちの優しさ」の夫の矮小さ、甲斐性なさ、「グレン・グルード」の妻の焦燥感、輝かしい過去への憧憬といったところかな。自分の心情や状況にリンクしてしまう。
読む年代や置かれている状況によって一番刺さる作品は違ってくるに違いない、それほどまでに懐の広い作品群になっている。たった数ページで人間、社会の本質 -
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めちゃめちゃに面白かった。
妄想の世界で生きてる人だなあと思った。
まるで現実世界のアメリみたいな、いつまでも心が少女な感じで読んでいて楽しいしふふっと笑える。
何かしなきゃいけないことがあるのに、それにはお構いなしにもう一人の自分がひたすらどうでも良い質問をしてきて、答えないぞと思っても結局それについて熟考しちゃうの、共感した。
ツクツクボウシの鳴き声に集中してしまって「間違えるぞ間違えるぞ間違えるぞほうら間違えた」とか考えてるのもわかる。人の妄想って本当に面白い。頭をパカってあけて直接脳を覗いているようなエッセイ。思考のままに文章を書いているような感じ。だけど読みやすい。
1日中妄想し -