岸本佐知子のレビュー一覧

  • なんらかの事情

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    前作『ねにもつタイプ』よりさらに妄想世界へのジャンプ幅が大きくなっている気がする今作。読んでいると世界がぐらつく。でも個人的には現実世界に軸足を置いている項が好きかなあ。たとえば「物言う物」「マシンの身だしなみ」「レモンの気持ち」「やぼう」など。

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    2024年07月18日
  • わからない

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    単行本未収録の文章を集大成したもの、ということでその雑多な感じが楽しかった。小さなメディアに寄稿したものまで網羅されていて、ファンには堪らない。

    ヤクルトの池山似だったというかつての飼い猫ちゃんの話。あのギプスだ!と前作のエッセイを引っ張り出して確認。同じ題材で他にも書いていらしたのね。滑稽な語り口なのにご本人やご家族、獣医師の暖かさが伝わってくる。その次の話と合わせて、しみじみと愛に溢れた良い話だった。収録に感謝。

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    2024年09月15日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    著者の小説を書く心意気を強く感じました。フィクションのはずなのに、著者の心がむき出しに感じられます。私は感電して、重傷を負いました。

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    2024年07月08日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ネタバレ

    予想に反してめちゃくちゃ面白かった。
    罪と罰を読まずに読む読書会。
    メンバーに三浦しをんもいて、家賃なんて踏み倒せ!とか、突拍子ももない推理とかめちゃくちゃ面白かった。
    と思ったら読書論とか小説家論も聞こえて、読み応えがすごかった。
    罪と罰は再読したくなってないけど、この本単体でとても面白かったです

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    2024年07月05日
  • ねにもつタイプ

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    読んでる間は至福です。
    エッセイ? ファンタジーというか「奇妙な味の小説」ではないの?。
    《気がついた時には、もうニグはニグだった。》p.11。
    ミシンはぼくも好きでよく遊んでました。
    気がつかない星人…
    「ジンカン」なぜこれがここにあるのだろう、この人がいるのだろうという感覚はぼくにも時折発生します。
    汚れの通販…
    《私の辞書に気分転換の文字はない。》p.144。

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    2024年06月27日
  • ねにもつタイプ

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    天才、岸田さんワールド。
    でも時々共感めちゃくちゃするものがあって、わたしのこの謎思考だとおもってたものが岸田さんと一緒なんてちょっと嬉しくなっちゃったり

    1番の共感は『グルメ・エッセイ』
    食べ物は、変だ。食べ物は不気味だ。でも好き。

    『ある夜の思い出』
    どうってことないのに忘れられない瞬間がある。
    たぶん10歳の時、母とスキーに行った帰りの車の中、晴れた雪道を母の車の助手席に座ってなぜか「この瞬間大人になった時も思い出しそう」と思った。母が亡くなって20年、思った瞬間からも26年、なぜか今も時々この時間を思い出す。

    『桃』
    ただただおもしろすぎる。電車で読んで肩ふるわすやつ。

    『夏の

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    2024年06月22日
  • ねにもつタイプ

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    激しく同意!そして吹き出す!こんなにおもしろく読めたエッセイは初めて。「作法」とか「奥の小部屋」とか脳内の発想が面白すぎる。思えば自分もそうだったかも。

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    2024年06月11日
  • なんらかの事情

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    [1]今回も笑うのを抑えようとして「ぶひっ!!」という音を立ててまう一冊。他人がいる場所で読むのはとっても危険です。ホンマ、マジで。
    [2]なんやろう、このヘンな気持ち。人生の参考にはまったくなりそうにないんやけど、生きていくうえですごく大切な何かが書かれているんやという妙な確信。
    [3]もちろん、笑えるという点では人生の役にすごく立っているとは思うんやけど、それとは別に。

    ■簡単なメモ

    《もしもこの世にレジで一番遅い列に並んだ人が優勝する競技があったら、私は確実に国体レベルで優勝する自信がある。ひょっとしたらオリンピックでもメダルを狙えるくらいの才能ではないかと思う。》p.11。おそらく

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    2024年06月10日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    NHK「理想的本箱」、「戦争が近づいた時に読みたい本」の回で初めて知り、今日ようやく読むことができた。

    中編程度の長さで、文章も決して難しくなく、児童文学のような雰囲気もあるので、活字に慣れていない人でも読みやすいのではないだろうか。

    登場人物たちは機械の部品や植物、触手などで出来ている不思議な生物たち。
    しかしその発言内容や行動は、人間にとても近く、特にSNSを見ていると差別主義者やヘイターがよく口にするような言い分のオンパレード。
    そして完全に「善人」と言える人物はいないし、完全に「悪人」と言える人物も存在しない。

    見たこともない不思議な生物たちの滑稽とも言えるような争いの話なのだが

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    2024年06月03日
  • サミュエル・ジョンソンが怒っている

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    一行で終わる小説を含む、ブラックジョークと妄想力に溢れた短篇集。


    小川洋子の『原稿零枚日記』みたいな小説を読みたくて、久しぶりにリディア・デイヴィスを手に取った。『原稿零枚日記』は根暗の奇行と妄想が炸裂して岸本佐知子のエッセイを思わせるのだが、岸本さんの訳業のなかでも特に岸本エッセイに近しい世界観を持っているのがデイヴィス(とニコルソン・ベイカー)じゃないだろうか。
    思惑は見事的中した。特に「甲状腺日記」は気分にぴったりだった!このマシンガントーク。かかりつけの歯科医との変な関係。病気から広がる妄想。物忘れは酷くなるばかりなのに、不謹慎な連想は止まらない。『分解する』を読んだときよりずっと

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    2024年05月19日
  • ひみつのしつもん

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    大地の歌と爆心地で大爆笑
    ちょっとした空き時間に読むのに最高なんだけど面白すぎて何回電車で笑いこらえたか、、、、
    初めての岸本さんエッセイ、大好きになりました

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    2024年04月25日
  • ひみつのしつもん

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    [1]初めて読んだ著者ですが、愛してしまいました。破壊的で危険です。ときおり吹き出すのを止めようとして「ふひっ!」とかいう音が出てきて周りに誰もいないのにキョロキョロしたり「く、く、く、く、く、く、く」となって苦しかったり。こんなふうになったのは昔、ジェラール・ダレルの『虫とけものと家族たち』を読んで以来かなあ。
    [2]ものすごい才能です。素晴らしい妄想力です。ぼくも妄想しますがなかなかここまではいけないので妄想の神様として崇めることにしました。
    [3]挿絵がクラフト・エヴィング商會というのに惹かれて読み始めたのですが大当たりで初めて読んだわけなのでまだ何冊も楽しめると思うと嬉しい。

    ■心覚

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    2024年04月14日
  • 『罪と罰』を読まない

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    挫折しそうな名作長編を読む前に、みんなで妄想討論するのは最高に楽しそう。私も気になって、漫画版を読んだ。カウリスマキの映画版も再見しようかな。

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    2024年03月26日
  • 話の終わり

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    その女だけがもつ体のパーツの一つひとつが、それが愛する女のものであれば、彼にとってはかけがえのないものになった。持ち主にとってよりも大切なものだった。

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    2024年03月26日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    横からぽっと現れた口の達者な人物によってあっという間に国が乗っ取られ、逆らう者を手にかける様子が恐ろしかった。登場人物が人間ではなく、色んなパーツのより合わせで動いているため生々しさは少ないはずだけれど、ある日突然権力者の決定によって殺されてしまうことに変わりはないのだった。
    言葉を利用して鼓舞し、揚げ足をとり、押し切り、隙をついて場を支配するフィル。ちょっとしたアイデアから始まったはずなのに、気付けば全員従わざるを得ない状況になっていて、日に日に力関係の変化していく様子が面白かったし同時に怖かった。
    長い物に巻かれて自分可愛さに保身に走る者たちや、それとは逆に、おかしいことをおかしいと言える

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    2024年03月21日
  • ほとんど記憶のない女

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    狐に摘まれたようなとはこの読後感にピッタリの感想だろう。物語があるわけではないが、作品ごとに読者である私が受け取り紡ぐ、あるいは想起される出来事が不思議と湧き起こる。ここまで読者に意図的に委ねられている小説は初めて出会ったと思う。

    特に今の自分に印象深いのは、「肉と夫」の夫への諦観と突き放し、「私たちの優しさ」の夫の矮小さ、甲斐性なさ、「グレン・グルード」の妻の焦燥感、輝かしい過去への憧憬といったところかな。自分の心情や状況にリンクしてしまう。

    読む年代や置かれている状況によって一番刺さる作品は違ってくるに違いない、それほどまでに懐の広い作品群になっている。たった数ページで人間、社会の本質

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    2024年02月13日
  • ひみつのしつもん

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    岸本さんのエッセイは文庫化したものは大体読んでるくらいのファンです。
    今回もしっかり岸本節が炸裂していてほっこり、ニヤニヤ。

    "いつか『グズな人には理由がある、ただしグズは魂と直結しているのでグズを矯正すれば魂も死ぬ』というタイトルの本を書くのが夢だ。"(本文より)

    切れ味鋭い文章が最高。
    時々読んでてエ…?となるようなトリッキーな文章も味です。

    それにしてもよくこんなに様々なことを読み手に面白いように(もしかするとご本人はそんな意図は無いのかもしれないけど…)書き留められるものだなあと感心する。

    次作も心待ちにしています。

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    2024年01月19日
  • ねにもつタイプ

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    めちゃめちゃに面白かった。
    妄想の世界で生きてる人だなあと思った。
    まるで現実世界のアメリみたいな、いつまでも心が少女な感じで読んでいて楽しいしふふっと笑える。

    何かしなきゃいけないことがあるのに、それにはお構いなしにもう一人の自分がひたすらどうでも良い質問をしてきて、答えないぞと思っても結局それについて熟考しちゃうの、共感した。
    ツクツクボウシの鳴き声に集中してしまって「間違えるぞ間違えるぞ間違えるぞほうら間違えた」とか考えてるのもわかる。人の妄想って本当に面白い。頭をパカってあけて直接脳を覗いているようなエッセイ。思考のままに文章を書いているような感じ。だけど読みやすい。

    1日中妄想し

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    2024年01月18日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    示唆に富んだ話だった
    独裁者と言われる人がモデルかなと思うと同時に、もっと身近な問題としても捉えられる気がした
    1人の横暴な人に逆らえない状況や、正しい人を正しいと言えずに自分を正当化してしまう所など自戒の念を込めてありがちだと思った

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    2024年01月11日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    アメリカに芥川賞あったら獲れてたのではないかと思ふ。強烈、そして生き生きとした文章であった。

    日本にはAAと断酒会、二つの組織があるからAAをいちがいに断酒会と訳すのはもしかしたら微妙かもしれない。でもなんて訳すの?と聞かれたらぶっちゃけAAとしか訳せない(訳せてない笑)

    機能不全家族に育ち、アルコール依存となった作者の苦しみはもはや理解できない領域。でも、この文章を読んでしまうと、、、苦しみも悪いことじゃないのかも。さらけ出せる勇気と書くことの魔力に魅せられてしまった。

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    2024年01月09日