岸本佐知子のレビュー一覧

  • サミュエル・ジョンソンが怒っている

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    ネタバレ

    たった一行にも満たないものから数十ページになるもの、物語というよりは断片としか形容できないものや、特殊な形式のものまで、作者が『短編小説である』と断ずるこの作品集には一見どうやって読めばいいのか戸惑ってしまうような短編が多数収録されている。
    正直自分の知識と感性の未熟さで楽しみきれなかったものもあるけれど、全体としてすごくスリリングで、こちらが読もうとすればするほど冷静で淡々とした文章の奥から物語がとめどなく溢れてくるすごい本だった。
    比較的長めの作品なら、執拗なまでに細かい描写と事実を淡々と書き連ねた文章を追う内に胸が痛くなるほどの激しい感情が湧き上がってくるし、極端に短い作品ならば、そのた

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    2024年12月14日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    はじめは、フーンこれがなんか色んな人が大絶賛の本か。なるほどなかなか読ませますなという感じで読んでいたのに、一編読み終えるごとに夢中になっていった。
    あれ?あの話の彼女はこの人?この体験はあの体験のこと?というか、これ全部繋がってる……?
    短編集というよりは自由な章立ての長編のような……作家自身の体験と深く結びついた物語が、ひとつ、またひとつ自分の中で繋がるほどに引き込まれていく。印象的なメロディーを繰り返しながら盛り上がっていく音楽みたいに。

    読み終えた時には、一人の女性の人生――痛みと喜び、幸と不幸、激しさと静けさ、深い傷と赦し――が、確かな色と、音と、匂いを持って立ち上がってきた。

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    2024年12月13日
  • 十二月の十日

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    最初はん?という感じでしたが世界観が掴めてくるとグイグイ引き込まれました。小説のちから。最後電車の中で泣いてしまった。出会えてよかった本。

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    2024年11月09日
  • 楽園の夕べ ルシア・ベルリン作品集

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    「ルシア・ベルリンの書く文章はほかの誰とも似ていない。(中略)読んだときは文字であったはずのものが、本を閉じて思い返すと、色彩や声や匂いをともなった「体験」に変わっている」 (あとがきより)

    『掃除婦のための手引書』で度肝を抜かれて以降、
    『すべての月、すべての年』に続く3冊目の本書でも、まだ、ルシア・ベルリンの文章には驚かされることばかり。参りました。(好き)

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    2024年10月29日
  • すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集

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    彼女が執筆した全76篇の短篇のうち65篇を岸本氏が訳したもののうち、19篇を収めた短編集。
    順番としては「掃除婦のための手引き書」が先だったようだけど、私はこちらが先だった。まあ、短編集だし独立しているし、順番は関係ないか。

    最初の2篇を読んだあたりでは「なるほど。おしゃれ。」程度で、少し時間が経つと思い出すのがしんどくなるくらいの印象でしかなかった。
    そこからもう数篇読み、ルシア・ベルリンの語る語り口に慣れてくる頃になると、この作家のすごさが見えてくる。
    表題作を読むあたりでは、岸本氏が後書きで「そして文庫の帯で」書いているように「一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにはいられ

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    2024年10月27日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ほんのわずかな、まるで箱庭の中の出来事のようなお話
    こっけいで、ばかげていて、それでいて
    きっと世の中はそんなことばかりかもと思わせる
    可笑しいけれど、笑えない
    できれば、大ケラー国で暮らしたい
    いや、そのまた外の国のほうがいいかな

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    2024年10月24日
  • 楽園の夕べ ルシア・ベルリン作品集

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    目で文字で読んだのに、
    映画をみたように思い出すのが、ルシア・ベルリンの小説だ。

    どの話も匂いに満ちていて、息苦しくなるくらいなのにそれこそが生だし、人生だと思わさせてしまう。苦しいし苦いのに、どこか甘美なのだ。

    「オルゴールつき化粧ボックス」の幼き日の犯罪まがいのこと。(最後、家に帰ってきて「メイミーがカスタードとココアを運んできた。病人や罪人に与える食べ物だ。」そんな風にこのできごとを振り返る。まだ未就学児なのに。

    「リード通り、アルバカーキ」や「日干しレンガのブリキ屋根の家」で、若い妊婦や母がたくさんの植物や花を植え育てる様の異様さ。(もちろん話の主体は夫の振る舞いであり、隣人の苛

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    2024年10月20日
  • ひみつのしつもん

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    何かの記事で、ダ・ダ・恐山さんがこの本を「面白かった」と言っていた、と思う。あやふやな記憶で購入した。
    岸本佐知子さんの本は初めて読んだ。
    ユーモラスな文体で軽やかだけれど、自虐的な何かも大いに含んでいて、楽しく読む一方で自分の過去の恥ずかしいあれこれが呼び覚まされたりした。あんなことしなきゃよかった、『常識』って難しい、というような。ちょっと痛痒さを伴う共感を覚えつつ、私のあれこれも軽やかな文体で記録したら少し面白くなるかなと考えた。

    挿絵がかわいい。私が読んだのは文庫だけど、装幀・挿画をクラフト・エヴィング商會が担当していると知り「単行本買えばよかった…!」と思った。

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    2024年12月09日
  • 楽園の夕べ ルシア・ベルリン作品集

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    『人が表立っては言わないことが世の中にはある。愛とか、そんな深刻なことではなく、もっと体裁のわるいことだ。たとえばお葬式はときどき面白いとか、火事で家が燃えるのを見るとぞくぞくするとか。マイケルのお葬式は最高だった』―『塵は廛に』

    ルシア・ベルリンの三冊目の短篇集。三冊目の翻訳が出版されることはとても嬉しいことだけれども、これ以上翻訳される原本がないという淋しい気持ちも同時に去来する。読みたい、けれど読み終えたくない。届いた本を後回しにするべきか否か。結局手に取り、一つひとつ、いつも以上に丹念に読む。

    岸本さんが言う通り、ルシア・ベルリンの文章は誰かに似ているという思いを抱かせない。いつも

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    2024年10月17日
  • ねにもつタイプ

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    翻訳家、岸本佐知子先生のエッセイ集。
    緩やかに進む日常の中で挟まれる先生の珍奇な妄想に思わず笑顔になります。
    コアラ汁、割り込みおばさんとの決闘、踏むと地獄に落ちるタイル、そういえば自分もこういう妄想を子供の頃にしたなぁと楽しい気分になれる作品です。
    スルスル読める為、ふとした休憩のお供にピッタリなエッセイです。

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    2024年09月28日
  • すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集

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    1話1話の話を読み終えるたびに、その話に出て来た登場人物のその後を想ってしまう話ばかりでした。
    なんせ、なんの唐突もなく、バスッと終わらせられる話が殆どでしたから。最初はかなり戸惑いましたぜ。

    乾いた空気と広い空の下で、生活してる人々の一部分を切り取ったスクラップ集みたいな作品だと感じました。

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    2024年09月23日
  • なんらかの事情

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    めっっっっっちゃすき笑笑

    きっとこの人には全ての物にいのちを感じてるんだろうなあって感じ共感の嵐

    特に好きなのはひらがなの話笑笑
    たしかにお互いぴりぴりかもしれない、「ん」はめちゃめちゃプライドたかいかもしないって考えると面白かった~

    面白い人だなぁーこの人

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    2024年09月14日
  • なんらかの事情

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    本当に大好き。
    すごく面白いので、こんなことを言うのもおこがましいけど、自分の感覚に似ているから共感できることが多い。

    話を面白くするための文章がとてもうまいと思う。
    どんどん読める。どんどん読めるけど、何言ってるんだ?この人、と思うこともしばしば。それが楽しい。

    『ねにもつタイプ』に引き続き、読んでる最中に笑ってしまうような作品だった。

    瓶記とやぼうが好き。

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    2024年09月02日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    翻訳でも伝わる著者の文章力。盲信的、狂信的に破壊の道へと突き進むフィルの凶暴さが、ある種のアイロニーを伴って面白おかしく表現される。

    一番印象深いのは大統領のもうろくさ。人ごとではない。周囲の人間関係に当てはてめても、さらには自分ごとに鑑みてみても。

    他人がいる限り受け入れられない主義思想は生まれてしまう。そこには誤解や妄想が含まれようとも。相容れない対象に対する慈しみと寛容の心を。今一度噛み締めたい戒めですね。

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    2024年08月24日
  • 『罪と罰』を読まない

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    私が『罪と罰』を未読であること、そして岸本佐知子さんがメンバーの1人ということで、読み始めた。そしたら、メンバー4人であれこれ未読のまま推理した挙句、やっぱり一度読みますかーという話に。じゃあ、私も読むかと。
    断然、読んだ後の読書会の方が面白い!一緒になって、それ、私も思った!とか、なるほどねーそういう解釈もありか、とか。
    『罪と罰』もういっぺん読み返したらもっといろんな発見があって楽しめるかも、と思っちゃった(でも、きっと読まない 笑)。

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    2024年08月22日
  • なんらかの事情

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    前作『ねにもつタイプ』よりさらに妄想世界へのジャンプ幅が大きくなっている気がする今作。読んでいると世界がぐらつく。でも個人的には現実世界に軸足を置いている項が好きかなあ。たとえば「物言う物」「マシンの身だしなみ」「レモンの気持ち」「やぼう」など。

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    2024年08月11日
  • わからない

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    ネタバレ

    単行本未収録の文章を集大成したもの、ということでその雑多な感じが楽しかった。小さなメディアに寄稿したものまで網羅されていて、ファンには堪らない。

    ヤクルトの池山似だったというかつての飼い猫ちゃんの話。あのギプスだ!と前作のエッセイを引っ張り出して確認。同じ題材で他にも書いていらしたのね。滑稽な語り口なのにご本人やご家族、獣医師の暖かさが伝わってくる。その次の話と合わせて、しみじみと愛に溢れた良い話だった。収録に感謝。

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    2024年09月15日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    著者の小説を書く心意気を強く感じました。フィクションのはずなのに、著者の心がむき出しに感じられます。私は感電して、重傷を負いました。

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    2024年07月08日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ネタバレ

    予想に反してめちゃくちゃ面白かった。
    罪と罰を読まずに読む読書会。
    メンバーに三浦しをんもいて、家賃なんて踏み倒せ!とか、突拍子ももない推理とかめちゃくちゃ面白かった。
    と思ったら読書論とか小説家論も聞こえて、読み応えがすごかった。
    罪と罰は再読したくなってないけど、この本単体でとても面白かったです

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    2024年07月05日
  • ねにもつタイプ

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    読んでる間は至福です。
    エッセイ? ファンタジーというか「奇妙な味の小説」ではないの?。
    《気がついた時には、もうニグはニグだった。》p.11。
    ミシンはぼくも好きでよく遊んでました。
    気がつかない星人…
    「ジンカン」なぜこれがここにあるのだろう、この人がいるのだろうという感覚はぼくにも時折発生します。
    汚れの通販…
    《私の辞書に気分転換の文字はない。》p.144。

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    2024年06月27日