岸本佐知子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
大人気、不条理日常エッセイ集4度目の襲来!
虚実のへだてを乗り越えてどこにも行かずにどこまでも行く。
PR誌『ちくま』名物連載「ねにもつタイプ」待望の第四弾!
「毎日びっくりするぐらい仕事がはかどらない。
それは毎日びっくりするぐらい集中力がないからで、なぜそんなに集中力がないかといえば、そんなびっくりするぐらい暑いからだ。
誰かが言っていたが、昔の仮面ライダーで、悪の組織が人工太陽を作って人類を滅ぼそうと企んだ回があり、そのときの設定温度が三十八度だったのだそうだ。ちょうど今の気温だ。私たちは悪の組織の想像力の限界を生きている。」(「エボシ」より)
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岸本佐知子による「ねにもつタイプ」シリーズの第4弾。ちなみに前3弾は「ねにもつタイプ(2000年)」「なんらかの事情(2012年)」「ひみつのしつもん(2019年)」。
内容は筑摩書房から出版されている月刊PR誌「ちくま」2019年3月号から2025年7月号に連載されたものから選ばれ、加筆修正を行ったものになる。
岸本佐知子さんは、僕にとって柴田元幸氏と並んで、もっとも信頼している翻訳者の一人。この「ねにもつタイプ」シリーズも全作読んでおり、他にも3冊ほど彼女のエッセイは既読。どれも虚実入り混じった面白い内容になっている。
本作もこれまで通り、虚実入り混じった内容となっているのだけれど、読み手である僕の方が彼女の作品に馴染んできたのか、今まで以上にすんなりと内容が入ってきた。最初は「あれ? これ、本当のこと?」「一体どこまでが実でどこからが虚なんだろう」といった戸惑いがあったのかもしれない。それが本作においては「いやいや岸本佐知子だぜ。こうくるに違いない」という事前情報に則って読み進めたため、この気持ちの良い“すんなり感”を味わうことができたのかもしれない。この虚実の混ざり方は、やや大げさに言えばマジック・リアリズム的とすら感じられる。もはや“エッセイ”という枠に収まらない作品集と言ってもいいのかもしれない。中には僕にはあまり響かなかったものもあったけれど、全体として「ねにもつタイプ」シリーズの中では最も楽しめた1冊だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者の作品は初めて読んだ。最初の火星から来た男からめちゃくちゃ面白く、これがずっと絶版だったのかと驚いた。
物語を読む中で、主人公の葛藤や迷い、自己肯定感の欠如が見えて来ると、自然と肩入れしてしまうが、そんな主人公が同時に他者に残酷な態度や考えを取る。その時の自分が揺さぶれる感覚がほぼ全ての短編で感じられる。「あなたもそうでしょう?」と言われているような。
「ベティ」は切なかった。最後のパラグラフを読むと著者が急に出てくるような気がして実体験を元にしているのかと思った。「旅行記事」のラスト、サンドイッチの白いプラスチックで目を隠し口紅で顔を赤く染めた人間たちと、燦々と輝く太陽と青い海のコントラストが、映像として頭に焼き付いた。恐ろしい。「ケツァール」も死産の事を思う妻の後半の語りも胸が苦しい。通勤時に止められなくなって二宮金次郎のように駅のコンコースを歩いてしまった。「訓練」も、自身のコンプレックスや葛藤を持つロブが見せる他者への慈しみの気持ちが、偽善や自分への慰めに裏返るラストの瞬間のグロテスクさも忘れられない。
全編漏れなくマスターピース。残りの未翻訳の短編も絶対に翻訳してほい。 -
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隅から隅まで面白かった。「“読む”は読む前から始まっている」という考えは、私もぼんやりと思っていたことではあるが、この四人のおかげで私の罪と罰読書も、読んでないけど始まったぞ!と感じた。
四人の自由で対等な雰囲気がまたとても良かった。罪と罰を読んでない者同士で話すという企画なんだから対等なのは当然だが、誰かの持っていた文学や歴史の知識がヒントになるときも、ガイド役の学者先生的な人の授ける解説を拝聴するみたいな空気は一切なく、プロ作家としての作劇的勘で何かを言い当てようとするときも、「ここできっと二人の対話が八十ページ続くんですよ」とか「結婚式で繰り広げられる七日七晩にわたるロシアの宴の描写でページ水増し作戦に違いない」とか、ただただ面白い。未読読書会の前に十五分の影絵版罪と罰を見たということで「私知ってるのよ、言っちゃっていいのこれ?」と誰よりも優位に立って発言していた浩美さん(矢部太郎さんの解説マンガでは、影絵原理主義者と呼ばれていた)による、後半の衝撃の告白には盛大にずっこけたし、なんて可愛い人なんだと思った。
四人が読んだあとに開催された読書会の様子も収められており、コロンボさながらの倒叙ミステリになっているという指摘と、彼女らによる脳内キャスティングで、松岡修造、スティーブ・ブシェミ、片岡愛之助(あと、私は知らなかったけど皆さんお気に入りの様子だったヴィゴ・モーテンセン)が登場したのも楽しかった。 -
Posted by ブクログ
いや、ちょっと。読み始めたのが失敗。一気読み
著者のベルリンは2004年に亡くなっているのだがこの短編集の原書は2015年、没後だ
現地米国ではさほどウケていなかったのにこの本の発行で話題になり2週間後に彼女の全ての本が売り切れたらしい。そう、この本で発見された私小説風の短編集(虚構もけっこうある)
重度のアルコール中毒で息子たちが眠るのを待ち
こっそり酒を買いに夜明けの開店に合わせてフラフラと外出し購入
これで酒が飲めると顔をあげた瞬間の街の朝日
この対比がすんばらしい、一発惚れ
壮絶な人生山あり谷あり
短編1つ1つ最後に特徴的なフレーズが来る
さすがの訳者、岸本さん
いやもうルシア・ベルリンという作者を知りたいと読後すぐさま他も買おうと思い調べると
76の短編を書いて生涯を終えているらしい
この本は24編
著作がす、すくない………
なんで今まで積んでたのだろう。はあ、良かった
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Posted by ブクログ
ネタバレやはり圧倒的な描写力で、美しいことも、醜いことも色鮮やかに描かれていて、惹き込まれる。
表題作も海で泳ぐ気持ちよさが、海中の美しさが、漁師宿のゴチャゴチャした中にも温かみが、肉体的な感覚を伴って感じられる。
体験しないとわからないこのような感覚が、これほどまでに鮮やかに描写できるこの作家の凄さを改めて感じた。
B.Fと私は、最晩年の作品とのこと。
美しく無いものをくっきりと描いているけれど、それでいて嫌な感じはしないのは、才能なのだと思う。
そしていつも感じるのは、どんなロマンスの中でも人は孤独であること。自立した女性ならではの感覚だと思う。
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Posted by ブクログ
『死ぬまでに行きたい海』で岸本さんのファンになったので読んだ。内容(登場するエピソード)は被っているものも少なくないが、友人と話している時の「それ以前にも聞いたことあるけどやっぱおもろい」話感があって嬉しかったです。
前述のエッセイよりもボリュームがあり、短編集ということで章が短く、読みやすかった。
日常のことをこんなに面白く、読者の共感や笑いや時に恐怖心(?)を誘う文章力が非常に羨ましかった。
最後の方に日記が掲載されているが、自分が知っている「日記」とは様子が異なり、こういったのもOKなんだな?! いや日記だからこそこんなに率直でいいんだ……!! という発見と驚きがありました。
手元に置いておきたい本です。