岸本佐知子のレビュー一覧

  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ネタバレ

    横からぽっと現れた口の達者な人物によってあっという間に国が乗っ取られ、逆らう者を手にかける様子が恐ろしかった。登場人物が人間ではなく、色んなパーツのより合わせで動いているため生々しさは少ないはずだけれど、ある日突然権力者の決定によって殺されてしまうことに変わりはないのだった。
    言葉を利用して鼓舞し、揚げ足をとり、押し切り、隙をついて場を支配するフィル。ちょっとしたアイデアから始まったはずなのに、気付けば全員従わざるを得ない状況になっていて、日に日に力関係の変化していく様子が面白かったし同時に怖かった。
    長い物に巻かれて自分可愛さに保身に走る者たちや、それとは逆に、おかしいことをおかしいと言える

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    2024年03月21日
  • ほとんど記憶のない女

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    狐に摘まれたようなとはこの読後感にピッタリの感想だろう。物語があるわけではないが、作品ごとに読者である私が受け取り紡ぐ、あるいは想起される出来事が不思議と湧き起こる。ここまで読者に意図的に委ねられている小説は初めて出会ったと思う。

    特に今の自分に印象深いのは、「肉と夫」の夫への諦観と突き放し、「私たちの優しさ」の夫の矮小さ、甲斐性なさ、「グレン・グルード」の妻の焦燥感、輝かしい過去への憧憬といったところかな。自分の心情や状況にリンクしてしまう。

    読む年代や置かれている状況によって一番刺さる作品は違ってくるに違いない、それほどまでに懐の広い作品群になっている。たった数ページで人間、社会の本質

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    2024年02月13日
  • ひみつのしつもん

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    岸本さんのエッセイは文庫化したものは大体読んでるくらいのファンです。
    今回もしっかり岸本節が炸裂していてほっこり、ニヤニヤ。

    "いつか『グズな人には理由がある、ただしグズは魂と直結しているのでグズを矯正すれば魂も死ぬ』というタイトルの本を書くのが夢だ。"(本文より)

    切れ味鋭い文章が最高。
    時々読んでてエ…?となるようなトリッキーな文章も味です。

    それにしてもよくこんなに様々なことを読み手に面白いように(もしかするとご本人はそんな意図は無いのかもしれないけど…)書き留められるものだなあと感心する。

    次作も心待ちにしています。

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    2024年01月19日
  • ねにもつタイプ

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    めちゃめちゃに面白かった。
    妄想の世界で生きてる人だなあと思った。
    まるで現実世界のアメリみたいな、いつまでも心が少女な感じで読んでいて楽しいしふふっと笑える。

    何かしなきゃいけないことがあるのに、それにはお構いなしにもう一人の自分がひたすらどうでも良い質問をしてきて、答えないぞと思っても結局それについて熟考しちゃうの、共感した。
    ツクツクボウシの鳴き声に集中してしまって「間違えるぞ間違えるぞ間違えるぞほうら間違えた」とか考えてるのもわかる。人の妄想って本当に面白い。頭をパカってあけて直接脳を覗いているようなエッセイ。思考のままに文章を書いているような感じ。だけど読みやすい。

    1日中妄想し

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    2024年01月18日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    示唆に富んだ話だった
    独裁者と言われる人がモデルかなと思うと同時に、もっと身近な問題としても捉えられる気がした
    1人の横暴な人に逆らえない状況や、正しい人を正しいと言えずに自分を正当化してしまう所など自戒の念を込めてありがちだと思った

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    2024年01月11日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    アメリカに芥川賞あったら獲れてたのではないかと思ふ。強烈、そして生き生きとした文章であった。

    日本にはAAと断酒会、二つの組織があるからAAをいちがいに断酒会と訳すのはもしかしたら微妙かもしれない。でもなんて訳すの?と聞かれたらぶっちゃけAAとしか訳せない(訳せてない笑)

    機能不全家族に育ち、アルコール依存となった作者の苦しみはもはや理解できない領域。でも、この文章を読んでしまうと、、、苦しみも悪いことじゃないのかも。さらけ出せる勇気と書くことの魔力に魅せられてしまった。

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    2024年01月09日
  • ひみつのしつもん

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    ネタバレ

    文庫化に伴い11編もエッセイが追加されたというので再読することに。

    単行本は3年以上前に読んでいるが、細部まで覚えていない。
    前回は急いで読んだので、今回は結局全編じっくりと読んでしまった。
    何度読んでも面白さは変わらない。

    エッセイごとにクラフト・エヴィング商會のイラストがあるのだが、これも全く覚えていなかった。
    このイラストが実にいい味を出していて、眺めるのが楽しみになります。

    「じゃむぱんの日」からさほど日数を空けず、岸本ワールドを満喫できてラッキー(^O^)
    レビューは、単行本でしているので省略です m(_ _)m

    追加分のエッセイはまとまっていなくて、バラバラに挟み込まれてい

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    2024年01月03日
  • いちばんここに似合う人

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    半泣きのような、半笑いのような。一編を読むごとに、きっとヘンな顔になっている。
    ゾクゾク、ゾワゾワして、しんとする。僕の中の埃が溜まったへこみを押し開けて、入り組んで届きにくいカーブに指をぴたっと添わせてグイグイ突いてくる。
    なんともイタ気持ちいい読後感。しばらく動けない。

    ギュッと腕を身体に巻き付けて、バラバラに解けてしまいそうな自分の形を保つのに必死なとき。一緒にベッドに潜り混んでいる人の寝顔が、見知らぬ他人だと思うとき。バスタブの中で息を止めて、「ねぇ、私は悪くないよね」って呟くとき。
    そんな危うい瞬間を潜り抜けて、残念な今日とウンザリな明日を生きていく誰かさんに、奇妙な回線で、接続し

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    2023年10月28日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    深いどん底のさらに底深くその奥にいても光の方へと顔を向け言葉を綴った人なのだと思う。1番上品なのは自分の過去を笑い話にできる人。ずっと手元に置いていたい一冊。

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    2023年09月28日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    理想的本箱の紹介を受けて。おとぎ話。表現されている登場者は、人と同じ。人に例えると残虐といえる行為をするため、理屈をつけて正当化。おとぎ話のようなので客観的に見ることができる。自分のまわりの人に似た光景も見られるし、自分もそうなんだとの自戒にもなる。

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    2023年08月11日
  • 話の終わり

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    トゥーサンが好きなら好き、と誰かが書いていたが本当にそう。奇妙で大好き。
    全ての失恋した人に渡したいし、彼女のような目線で世界をみたい。というか、この本を読むと主人公の目線で世界をみている。本のインパクトの強さよ。

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    2023年08月10日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    原作はもちろんのこと、自分が読んだ邦訳が素晴らしいのだろう、リズムがとても心地よい。いつか原文にもチャレンジしてみたい。
    知性と環境とユーモアと好奇心‥‥どれだけの幸運が重なったら、作者のような文章を紡げるようになるのだろう? 至福の時間でした。

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    2023年07月14日
  • 気になる部分

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    初っ端から心を鷲掴み。著者の頭の中を覗かせてもらっている感じが楽しい。「あ、そういうふうに感じます?」ってのが随所にあって面白い。ぷぷっと笑いつつ、共感しつつの、めっちゃ好みのエッセイだった。個人的に著者にとっても親近感で、私、岸本先生が好きです。

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    2023年07月13日
  • ねにもつタイプ

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    た〜のしかった!私は現実より空想の方が好きだから、現実の続きで空想の世界があるのがとても心地よくておもしろかった。

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    2023年05月23日
  • ほとんど記憶のない女

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    なんとかっこよく、へんてこで、小気味がよいのか。
    世界の切り取り方、唐突な出だし、とてもいい。
    一番好きなのは、フーコーとエンピツでした。

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    2023年05月21日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    めちゃくちゃおもしろかった。

    ・疑心暗鬼から虐殺までの過程
    ・悪の陳腐さについて
    ・悪事は属人として押し着せられ構造的には何も反省されない
    ・そして繰り返す(多分)

    という示唆深ポイントばかりだった。
    何かにむすびつけずにフラットに読むのもアリ。

    鈴木久美さんの装丁も素敵。

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    2023年05月16日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ここ最近のヒット。いや〜みんなの言い放題っぷりが気持ちが良い。ドスコ?馬かな?って冒頭の辺りから爆笑。
    ちょっととっつきにくそうだな〜と避けていた外国文学だけど、やはりキリスト教とかの影響はありつつも、こんなふうに面白がって読めるんだ!っていう大発見だよね。
    後書きでもお話されているように、読む前から読むことは始まっている。あらすじとか見ながら選んでる時、わくわくするあの感じ。そして読んだ後も読書は続く。本はなにより待ってくれるから、良い。その通りだなと。
    誰かと読書会できたら楽しそう!

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    2023年04月16日
  • ねにもつタイプ

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    本屋さんでオリンピックの章を読んで即、購入を決めた。間違ってなかった。 思考が似てる気がして、終始くすくす、楽しかった〜
    「このときのこと、この先も覚えてるんだろうな」って思ったこと、私もある。いろんな記憶が薄れていく中でずっと鮮明なもの。
    読んでいると自分も文章書きたくなるような一冊でした、幸せ。

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    2023年04月05日
  • エドウィン・マルハウス

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    ネタバレ

    描写力がすごい。キャッチャー・イン・ザ・ライみたいな多くの人がぶち当たるある時期の感情のもつれとかとは違ってターニングポイントにすらならずに忘れ去られた子供時代をよくあそこまで表現できるなと思った。

    ----ここからネタバレ----

    エドウィンが撃つフリして目を開けたことによって安堵するよりも伝記を書くためのプロットを完成させることを厭わなかったジェフかなりやばい

    あと表向きには多くの人が忘れ去ってしまった子供時代の感性を忘れることなく保ち続けたエドウィンの人生と作品話なんだろうけど、ジェフがそこから外れることを許さなかったという感じがするんだよなぁ
    ローズ・ドーンやアーノルドからの影響

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    2022年12月03日
  • 気になる部分

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    ネタバレ

    岸本佐知子さんが某洋酒メーカーを辞めて翻訳家となり何年か経った33~39歳の時のエッセイで、最初のエッセイ集がこの本です。
    しょっぱなから、「リニアモーターカーは根性とか念力で動いている」と密かに感じているとのたまう岸本佐知子さん。
    最初のエッセイを最後に読むことになってしまったが、この本も、岸本ワールドが期待できそう♪と確信。

    とは言え、遠慮して抑えている感も伝わってきて、円熟した岸本ワールドをさらけ出すまでには至っていない。
    一番面白かったのは、新書版で追加された最後のエッセイで、これだけが2006年(46歳)に書かれたものだから遠慮なく自由だ。
    一度も会ったことのない川上弘美さんとの思

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    2022年10月15日