岸本佐知子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレめっちゃネタバレです。
翻訳小説ひさしぶりに読んだけど、読みやすかったなあ。岸本さんの訳、すごく身近な言葉でいい…。「肩がバキバキ」とか「ぜんぜんオッケーです」とかそういう微妙にリアルな言い回し。岸本さんのエッセイも大好きなのでたぶん自分的に肌に合ってるのかも。
んで、これ最初孤独な独身中年女性の狂気、みたいな感じで進んでいくのかとちょっと警戒した。いや杞憂でした。
クリーと同居しはじめて、傍若無人に搾取されるだけだったのが反撃をはじめて、バトルになり、だんだんその関係性が変わって来る、そのあたりでもうぐいぐい話の中に引っ張り込まれる。
主人公がややこしい妄想にとりつかれて、ファック、とし -
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Posted by ブクログ
ある天才少年が、夭折した親友の少年の伝記を書いた、という体裁。更には、その著者たる少年もどうやら行方不明になっているらしき導入部分があるんだけど、そこを二重にしている意義はちょっと不明(自分的に、最後までそこが気になったんだから仕方ない)。それはともかく、書かれているのはほんの10歳ちょいまでの短い一生なんだけど、内容はとても濃密。ちょっと気難しそうで、何を考えているのかも分かりづらいマルハウスくんだけど、そのせいで素っ頓狂な行動に出てしまう場面も多く、結構にシリアスな人生ながら、思わず微笑ましくなる部分もちらほら。マルハウスくんを悩ませる脇キャラも個性的で、読んでて飽きさせられない。評判通り
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Posted by ブクログ
目の前にゴツゴツした石塊がある。
なんだか殺風景に見えるが、それをハンマーで叩いて割ると、キラキラと輝く断面が現れる。宝石の原石だ。しかも割るたびに様々な色合いの光を放つ不思議な石。
この短編小説集を読み終わって頭に浮かんだのは上記のようなイメージだ。
本書には22の短編が収められている。
最初は、突然ざっくりと切り取られた日常の断片が目の前に無造作にボン、と放り投げられたような印象で、面食らった。
次の短編、またその次…と読むうちに気づく。
場所も時代も、語り手の職業も年齢も全然バラバラだが、なんとこれは同一人物の物語だ。
著者のルシア・ベルリンは、アラスカで鉱山技師の家庭の生まれ。鉱 -
Posted by ブクログ
ネタバレジョージ・ソーンダーズ、またイカれた本である…面白かったです。
〈内ホーナー国〉〈外ホーナー国〉〈大ケラー国〉、どの国民も意味わからない形態をしているので寓話的になってますが、
フィルがこうなった原因がほとんど逆恨みみたいなものだということ、フィル以外は内も外も善悪ハッキリ付けられないくらいに流されてる人たちということ、引っ掻き回すマスコミと中途半端に介入し満足して去っていく第三者の国〈大ケラー国〉がいること…はやけに現実的でした。
悪い夢みたい。
元々全員が〈異形の者〉だったはずが、それはもう「フィルの体」に付けられた名前でしかなくなった。
でも、分断の気配が残り続けてるという終わり方なの -
Posted by ブクログ
これは、どこかの世界の独裁政権者のおとぎ話。
……と考えられたら、どれだけよかっただろう。
2026年の今この本を読むと、
某国の大統領の顔がちらついてしまって、背筋が寒くなった。
『短くて恐ろしいフィルの時代』ジョージ・ソーンダーズ
独裁政権をコミカルに描いた寓話の代表格といえば
言わずもがな、ジョージ・オーウェルの『動物農場』。
登場人物は動物たち。
けれど、誰が権力を握ろうとも、
結局また次の独裁者が生まれる…
そんな痛烈な風刺を描いた作品だ。
そして本書『短くて恐ろしいフィルの時代』でも、
権力の座についた人物は独裁へと傾き、
やがてジェノサイドを始める。
まさに、この時 -
Posted by ブクログ
短編集という形になっているが、作家自身がモデルと思われる主人公の人生が断片的に描かれている。
語られるのはなんとも不条理な人生。生まれ持った障害、虐待、アルコール依存症、貧困、差別。それを淡々と語る。ユーモアも淡々と。その淡々と語られる言葉がなぜだかとてもきらきらしていて、目の前にぱっと情景が現れる。そしていつの間にかどっぷり嵌っているのだ。ただ、どんどん読めるという作品ではない。ストーリーというよりは言葉を味わう作品のように思う。
訳者の岸本佐知子さんの力も当然あるとは思うが、ルシア・ベルリンが生前に見出されなかったのが信じられないくらい。