岸本佐知子のレビュー一覧

  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    日常の薄皮一枚がめくれて、別の世界が顔を出すような、不穏な違和感。胸騒ぎがずっとつづくのに、ぐいぐい読まされてしまった。ふだんは見ないように蓋をしているもの。暗渠をのぞきこむような、こわさやおもしろさやうしろめたさがあった。
    クラフト・エヴィング商會による装幀も最高。

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    2025年12月17日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    260頁に24編の作品があるため、短いモノは2、3頁で終わる。長くても10頁程度。何より、描写がきわめてクールでスタイリッシュ(体現止めが多い)。描かれている内容は極めて悲惨、残酷、無情な場合が多いのだが、なんてことのないわ、これが日常よ、という感じでサラっと美しく流して書かれているので読み手は暗鬱とした気分にならない。
    これは、限りなく詩ち近い小説だと思う。

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    2025年12月16日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    【火星から来た男 = The man from Mars】
    こういうタイトルだが、別に宇宙人は登場しない。大学に通う主人公が、西欧系ではない男性に出会って、友達認定される。無下にもしないで適当にあしらっていたら、家にまで訪問される。これまで男性に見向きもされない、男性とはお友達関係しか築けないと思われてきた主人公は、にわかにモテるようにもなるが。

     北と南という語句が登場するので、おそらく男性は朝鮮半島の出身。確かに、行くところ行くところどこにでも現れたら気持ち悪いかもしれないが、暴力をふるったわけではない。にもかかわらず、警察を呼ぶのは、彼の国籍が潜在的な差別意識に繋がったのでは。

    【ベ

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    2025年12月15日
  • 『罪と罰』を読まない

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    憶測で語り合う様子が面白い。私も読んだけれど忘れた一人なので再読したくなった。
    ちなみに私はラスコが寒いと言って外套を着ていたから冬の話だったと記憶していましたが実際には夏だったようで……

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    2025年12月07日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ネタバレ

     アメリカの小説家ジョージ・ソーンダーズの中編小説。原書は2005年に発行。本書は2011年に出版された単行本を、2021年に文庫化したもの。
     あらすじとしては、一人しか入れないほど小さい「内ホーナー国」と、それなりに広い「外ホーナー国」との間に起こるいざこざと、国境の監視役(自称)であるフィルが暴走し独裁者となる顛末を描いた「おとぎ話」となっている。軽快なユーモアはあるが、正直に言ってつまらないと思いながら読んでいたが、読後しばらく考えてみるとあることに気づく。確かに背筋が寒くなった。

     登場人物はどれも奇妙な造形をしており、脳がラックに入っているものや、枝や鹿の角が突き出たもの、シャベ

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    2025年12月02日
  • 気になる部分

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    初・岸本佐知子さんエッセイ。
    もうこれはクセになる。
    私もたいがい変人だけど、岸本さんも相当な変人なんだと思う。変人同士だからか、岸本ワールドが居心地が良すぎてずっとプカプカ浮いていたい感じ。

    気になる部分って人それぞれ違うのだけど、岸本さんの気になる部分はかなりマイノリティで、そもそも岸本さんにしか気にならない部分なんだろう。
    私は岸本佐知子という人が気になりすぎて、彼女が翻訳し、またエッセイにも登場させている、ニコルソン・ベイカーの「中二階」を勢いで購入してしまった。

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    2025年11月20日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    ネタバレ

    短編7作。
    1977年から時を経ているとは思えない
    技術や住環境は高度化しても、人の思考や偏見の構造は必ずしも進化していない
    本質を突く文学は数十年経っても古びず、むしろ心の停滞が及ぼす影響をあからさまに感じさせる
    この恐怖は、あとがきに記されていた通りである

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    2025年11月19日
  • 最初の悪い男

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    個性の強い主人公と妄想と現実のシームレス加減に始めはついていくのがやっとだったけれど、読む手は止まらず、いつのまにか主人公を心から応援していた。美しい文章がいくつも転がっていて、文字を拾うだけでもキュンとした。

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    2025年11月16日
  • 気になる部分

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     強烈なユーモアのセンスに度肝を抜かれました。瞬間的に気の利いたことが言えない私には、刺激的で、面白く読むことができました。
     私も、周りを和ませる冗談が言えるようになりたいです!

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    2025年11月16日
  • わからない

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    「技能の未熟な者がうかつに手を出せば、よくて空振り、悪くすればデッドボールとなり、手指の骨折や皿の破損、寿司ネタおよび酢飯の店内への飛散といった事態を招く結果となる。」
    p.110 ここ行ったことない①回転寿司 から引用

    行ったことのない回転寿司を勝手に想像してここまで書けるのがすごい。寿司のデッドボールって何なんだよ。おかげでカフェで1人で吹き出す羽目になった。好きだ、岸本佐知子。

    過去刊行されているエッセイ集はたぶんほぼ全部読んでいる。今回は20年以上前に寄稿されたもの、日記、書評などなどバラエティに富み様々な角度から岸本さんの文章が読めてお得。
    日記を読むと本当にたくさん映画や舞台

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    2025年11月12日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    ネタバレ

    あとがきにも書いてあったが、読後モヤモヤとした不安が残る話ばかりだった。
    他者とわかりあえない、自分が正義だと思いこんでいても見方を変えればそんなことはない、無自覚な差別、いつかすべてが崩壊する予感など。
    これが最初に日本で刊行されたのが1989年とのことだけど、現代のテーマでもおかしくない話が多かった。
    決して明るい気持ちになる話ではないけど、惹き込まれるものがあり、あっという間に読めた。

    『ベティ』の最後、「永遠に謎なのは、この世のベティたちなのだ」がすごく印象に残った。
    正直私もフレッドの気持ちのほうが理解できるし、フレッドは世の中に多くいると思う。

    『旅行記事』は、どうしても生きる

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    2025年11月09日
  • 気になる部分

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    万城目学さんが、エッセイが一瞬うまくなるドーピング、と称していたので手に取った。
    独特の妄想癖ある岸本さん、あぁ私とおんなじような謎なこと考えがちな人が他にもいるんだ!と思ったのもつかの間、岸本さんのは激しすぎて、こりゃちょっと違う、と思いに至る(笑)。
    面白く、すぐ読めた。

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    2025年11月06日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    岸本佐知子さん訳

    最初から最後まで漂う不穏な雰囲気。
    人間の矛盾や汚い部分、他者への無理解やすれ違いをとてもリアルに突きつけられるような短編集でした。
    上手く言えないけど、モヤっとしながらも他人事と思わせない引き込み方に美しさを感じる作品でした

    特に「訓練」と表題作がずっと心に残ってます...

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    2025年11月03日
  • なんらかの事情

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    この人のエッセイはやっぱり好きだなあ。1番好きかもしれない!多くの人が何となく感じつつも取るに足りないと無視してしまうような、些細な出来事や習慣を拾って膨らませていく。それを読んで、共感したりしなかったりするけれど、誰かの取り止めのない考えをなぞるのは、楽しいなと思う。著者の体感と自分の体感がうまいこと結びつくような感じがした。

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    2025年10月26日
  • なんらかの事情

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    笑ったわぁ。
    声出して笑った。
    自分の事の様なエピソード満載で「共感」なのか「あるある」なのか分からないけど。
    いやきっと「あるある」なんだろう。
    私は多分少数派ではなかった。

    それから著者の記憶力の凄さたるや。
    おかげで私の忘れていた記憶も呼び覚まされた。
    思い出したところでしょーもない話だっりするのだが。

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    2025年10月16日
  • なんらかの事情

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    ハリセンボンのはるかさんが読売新聞でおススメされていたエッセイ。

    笑いが込み上げてくる。

    中でも、「雪強盗」に出てくるタバコ盗人の「値上げされる前に盗んでおきたかった」というコメントはじわじわ来た。

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    2025年09月30日
  • 『罪と罰』を読まない

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    ドストエフスキー「罪と罰」を読まずに4人の作家が読書会を開き内容を推測し合う話

    4人の作家たちがヒントを手掛かりに自由に推測、思ったままを言い合うのがこの本の面白さ

    ほんの少しの話の断片のヒントから作家流に「わたしならこういう筋書き、こういう流れにする」とか想像力が半端なく広がる

    いったいどんな物語なのか
    期待に胸を膨らませ、夢中になって「ああでもない、こうでもない」と語り合う

    そして読んだあとにまた集まって
    読後座談会

    私は読んだあとにこの本を手にしたが、作家たちの当たらずとも遠くなく、話が横道にそれることもしばしばあるにもかかわらず、ちょっとのヒントで軌道修正してくる様子に感嘆し

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    2025年08月26日
  • すべての月、すべての年 ――ルシア・ベルリン作品集

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    相変わらず独特。なかなか入り込めないんだけど,壁を越えて向こう側に行けると,情景がビビッドに浮かんでくる。しかし,訳は悪くないと思うんだけど,原著で読まないと本当のリズムとか手触りみたいな物は理解できないんだろうな。ある意味では私小説で,想像で書いている部分は少ないのではなかろうかと思わされる。中南米での貴族的生活からアルコール依存症のどん底まで,まさに波瀾万丈の人生。ひとりの人間がこれほど多様な経験をする例はあまりないだろう。それが小説家としての財産になっている。

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    2025年08月18日
  • ねにもつタイプ

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    これがキシモトワールドなのか!?
    初読のためワールドに没入するのに時間を要した。どこから現実でどこから妄想なのか?現実と妄想の往復に目が回る!後半になって慣れてくるとするめのように味が出てきた。挿絵もキシモトワールドをシュールに醸していて素敵。

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    2025年07月25日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    とあるブログで激賞されていたので読んでみた。読み始めてみて,正直そこまでではないなと思ったが,途中から引き込まれることになった。
    著者の波瀾万丈な人生と,観察眼が凄い。ドライな諦念が通底している。文体にも魅力があるようだが,これは原著で読まないと分からないなぁ。。。
    短編だけ書いてて評価されるってのが,テッド・チャンと通じるものがある。日本にはあんまりいない気がする。星新一くらいか?

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    2025年06月28日