岸本佐知子のレビュー一覧
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これは、どこかの世界の独裁政権者のおとぎ話。
……と考えられたら、どれだけよかっただろう。
2026年の今この本を読むと、
某国の大統領の顔がちらついてしまって、背筋が寒くなった。
『短くて恐ろしいフィルの時代』ジョージ・ソーンダーズ
独裁政権をコミカルに描いた寓話の代表格といえば
言わずもがな、ジョージ・オーウェルの『動物農場』。
登場人物は動物たち。
けれど、誰が権力を握ろうとも、
結局また次の独裁者が生まれる…
そんな痛烈な風刺を描いた作品だ。
そして本書『短くて恐ろしいフィルの時代』でも、
権力の座についた人物は独裁へと傾き、
やがてジェノサイドを始める。
まさに、この時 -
Posted by ブクログ
短編集という形になっているが、作家自身がモデルと思われる主人公の人生が断片的に描かれている。
語られるのはなんとも不条理な人生。生まれ持った障害、虐待、アルコール依存症、貧困、差別。それを淡々と語る。ユーモアも淡々と。その淡々と語られる言葉がなぜだかとてもきらきらしていて、目の前にぱっと情景が現れる。そしていつの間にかどっぷり嵌っているのだ。ただ、どんどん読めるという作品ではない。ストーリーというよりは言葉を味わう作品のように思う。
訳者の岸本佐知子さんの力も当然あるとは思うが、ルシア・ベルリンが生前に見出されなかったのが信じられないくらい。 -
Posted by ブクログ
2026.20
本屋さんに行く度に表紙とタイトルに惹かれて
毎回買うか悩んで買わない
それを10回くらい繰り返したあたりで買った
読んで良かった
前半の「火星から来た男」「キッチンドア」が
ものすごく印象に残っている
とくにキッチンドアで感じる
恐ろしい戦争の足音のようなものが
今の不安な気持ちとリンクしてゾワゾワした
差別や蔑視について考え
じんわりとした痛みを感じる短編集だった
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P43 何年かが過ぎ、新聞や雑誌の紙面が戦争の記事で埋めつくされるようになって、クリスティーは初めて彼の来た国がアジアのどこにあるのかを知った。その国の名は知ってはいたが、気にも留めていなかった -
Posted by ブクログ
優れた社会風刺の小説であることは、言うまでもない。
本筋のテーマより、むしろ、わたしが興味を惹かれたのは、「小説を読んだ時に、イメージされるもの」の謎である。
実は、それは「読書の快楽」の根幹ではなかろうか?
そして、さらには、人間の認知に関する重要な謎ではなかろうか?
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本作の情景や登場人物を、頭に「正確に描く」ことは、極めて難しい、というより不可能である。
(想い描くことが難しい文章を、読者に次々と投げかけることが、ジョークであり、コメディとして機能しているのだが)
だが、「なんとなく描く」ことはできる。
というより、あきらかに正確ではないが(細部や、空間的な連続性はないが -
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ネタバレ独裁を行うためのメソッドが満載。
・内をまとめるために敵を作る
・大きな声と断定的な口調で一目置かせる
・自分に従う者の自尊心をくすぐる
・マスコミを抱き込む
・中身が不明な全面委任を信頼(忠誠)の証とする(踏み絵的な活用でもある)
・時に武力行使も辞さない(刃向かうとこうなる、を早々に示す)
現在の国内外の政治にも通じて、薄寒いものを感じます。
最後フィルは自滅したようなものだけど、このまま独裁が続いていたらどうなったのか。独裁下での一時的な治安維持がしばらく続いていくのだろうか。
現代でもこのまま自然破壊が続いたら、「創造主」が天災という形で粛清してくるかもしれない、と想像しました。
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Posted by ブクログ
頭くらくら、胸どきどき、腰がくがく、おどる言葉、はしる妄想、ゆがみだす世界は、なんだか愉快。 奇想天外 抱腹絶倒のキシモトワールド。 ――帯より拝借――
岸本さんはまた多少自虐的に面白い日常を話してくれる。そこのところが同病持ちの私にグッとくる、思い当たる節々が多い。
博識でエピソードが笑える。読者にはそういう所がうけるのかも。読めば読むほど妙に嬉しくなり、相憐れむ心地よい気分になる。
あるあるぅ~という日常の出来事に、えへへ笑いを隠して読む。
時々読み返すように机の隅に置いてある岸本本も四冊目。これを読んで納得したり同じ世界に行ってみて煙に巻かれたり、日ごろ -