作品一覧 2022/04/21更新 すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集 試し読み フォロー 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> ルシア・ベルリンの作品をすべて見る
ユーザーレビュー すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン / 岸本佐知子 ルシア・ベルリンの第二集、前作に引き続き凄まじい。前作はユーモラスな作品が多め、本作は暴力ドラッグセックスの退廃的な70年代の描写が目立つ。どの作品も孤独さが張り付くがそれを前提として生きている様に引き込まれる。一編ごとに本を閉じ、息を吐いて天井を眺めた。 "だがそれほどににぎやかに人物たち彩られ...続きを読むていながら、彼女の書くものにはつねに孤独がぴったりと張りついている。" "だが作者はそれを寂しいとも悲しいとも書かない。独りであることはすでに人生の前提だとでもいうように。" あとがきからの引用。未だ孤独を受け止め生きられないぼくには刺さるのだ。 Posted by ブクログ 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン / 岸本佐知子 アメリカに芥川賞あったら獲れてたのではないかと思ふ。強烈、そして生き生きとした文章であった。 日本にはAAと断酒会、二つの組織があるからAAをいちがいに断酒会と訳すのはもしかしたら微妙かもしれない。でもなんて訳すの?と聞かれたらぶっちゃけAAとしか訳せない(訳せてない笑) 機能不全家族に育ち、ア...続きを読むルコール依存となった作者の苦しみはもはや理解できない領域。でも、この文章を読んでしまうと、、、苦しみも悪いことじゃないのかも。さらけ出せる勇気と書くことの魔力に魅せられてしまった。 Posted by ブクログ 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン / 岸本佐知子 深いどん底のさらに底深くその奥にいても光の方へと顔を向け言葉を綴った人なのだと思う。1番上品なのは自分の過去を笑い話にできる人。ずっと手元に置いていたい一冊。 Posted by ブクログ 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン / 岸本佐知子 著者ルシア・ベルリン自身の半世に材を取った短編集である本作は、「わたし」の一人称語りで、自身を取り巻く苛烈で過酷な環境や人物が描かれる。「わたし」視点の世界なのに、「わたし」の居場所はない。語り手は家族から不当な扱いを受け、学校のクラスメイトから無視され、孤独に浮いている。世界から拒絶されて、アウト...続きを読むサイダーとなっている。 その様子が独特の筆致で描かれる。訳がとても良いのだと思うが、原文が孕んでいるであろう特殊な「熱気」を感じる文体だ。荒々しく、ギラギラした勢いある近視的筆致のながれの中に、シニカルで冷徹な一文が時折、紛れ込んでくる。著者の説教くさい思想やじめじめした感想はほとんど出てこない。描かれている内容は悲愴なものだが、文体からはそれにとどまらない、言い様のない熱気を感じる。「わたしはこのどうしようもない世界を生きてるし、生きてきたんだ」という、内から発散するパワーに当てられて、なんだか、いてもたってもいられなくなる。 一発目の「エンジェル・コインランドリー店」のコインランドリーという狭い空間で、「インディアン」「アパッチ」「レッドスキン」という異文化的なワードが頻出する異常な空間(「わたし」は己の手を見て「非インディアンの、落ち着きのない、孤独な手だ」と形容する。コインランドリーという日常的な空間からさえ、「わたし」は弾き出される)を読み、うっすらとワクワク感を覚えて、早くも次の「ドクターH.A.モイニハン」でのめりこんだ。祖父が完璧な入れ歯を完成させたので、幼い「わたし」に歯を全部抜かせるという頭のおかしい展開、祖父の絶叫や暴挙が凄絶に描かれる。 表題作「掃除婦のための手引き書」、「ファントム・ペイン」、「いいと悪い」は「わたし」の孤独と周囲からの断絶を描いた傑作。 「苦しみの殿堂」、「ソー・ロング」、「ママ」は母親や妹との思い出(だいたいよくないことばかり)、確執などがリアルに描かれる。 最後の方の「沈黙」は一つの短編として独立しながらも、それまで近視的に描かれてきた「わたし」の子供時代が、ダイジェスト的に語られ直すという位置付けでもある。「寄り」で見てきた物事を改めて「引き」で客観的にみることで、その異常性がよりリアルに感じられてくる。読み手は、ここにきて、「わたし」そのものの視座へと近づく。 Posted by ブクログ 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 ルシア・ベルリン / 岸本佐知子 原作はもちろんのこと、自分が読んだ邦訳が素晴らしいのだろう、リズムがとても心地よい。いつか原文にもチャレンジしてみたい。 知性と環境とユーモアと好奇心‥‥どれだけの幸運が重なったら、作者のような文章を紡げるようになるのだろう? 至福の時間でした。 Posted by ブクログ ルシア・ベルリンのレビューをもっと見る