ルシア・ベルリンのレビュー一覧
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いや、ちょっと。読み始めたのが失敗。一気読み
著者のベルリンは2004年に亡くなっているのだがこの短編集の原書は2015年、没後だ
現地米国ではさほどウケていなかったのにこの本の発行で話題になり2週間後に彼女の全ての本が売り切れたらしい。そう、この本で発見された私小説風の短編集(虚構もけっこうある)
重度のアルコール中毒で息子たちが眠るのを待ち
こっそり酒を買いに夜明けの開店に合わせてフラフラと外出し購入
これで酒が飲めると顔をあげた瞬間の街の朝日
この対比がすんばらしい、一発惚れ
壮絶な人生山あり谷あり
短編1つ1つ最後に特徴的なフレーズが来る
さすがの訳者、岸本さん
いやもうルシア -
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ネタバレやはり圧倒的な描写力で、美しいことも、醜いことも色鮮やかに描かれていて、惹き込まれる。
表題作も海で泳ぐ気持ちよさが、海中の美しさが、漁師宿のゴチャゴチャした中にも温かみが、肉体的な感覚を伴って感じられる。
体験しないとわからないこのような感覚が、これほどまでに鮮やかに描写できるこの作家の凄さを改めて感じた。
B.Fと私は、最晩年の作品とのこと。
美しく無いものをくっきりと描いているけれど、それでいて嫌な感じはしないのは、才能なのだと思う。
そしていつも感じるのは、どんなロマンスの中でも人は孤独であること。自立した女性ならではの感覚だと思う。
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ポットキャスト<翻訳文学試食会>で取り上げられたので。
評判通りすごい作家だなあ。色や光が感じられる。
作者は自分の経験を元にして、編集し、拡大したり縮小したりして、物語にしている。
解説や小説からは、精神的に幼いまま世界に出て、自由奔放、といえば聞こえは良いが無茶苦茶とか自堕落と言われるような生活で人生を渡ったみたい。
でも小説からは恨みも強がりも感じない。ただ、生きている。
長男によるあとがき「母の思い出」も小説のようで、ルシア・ベルリンが飲んで歌って踊っている姿が目に浮かんだ。
『オルゴールつき化粧ボックス』
五歳のルーチャ(ルシアのあだ名)とホープは、不良ティーンエイジャーたちの「 -
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いままで読んだことのないタイプの小説群だ。荒っぽく、むきだしで、パンク。しかも状況の把握がすぐにはできない。何度も行きつ戻りつして、読み進む。最後は、人生の理不尽さが出てくるものの、言いようのないふしぎな感動に襲われる。
鉱山技師の子としてアラスカに生まれ、子どもの頃はアメリカ各地やチリを転々とする。その後3度の結婚、4人の子ども。教師、掃除婦、電話交換手、看護助手、大学教員、そしてアルコール依存と慢性の肺疾患……作品の底流にあるのはこうしたキャリアと体験だ。
この本のラストの作品は「巣に帰る」。冒頭にカラス、終わりもカラスが登場。描かれているのは、人生と反実仮想。ルシア・ベルリンその人が少し -
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ネタバレ目次
・エンジェル・コインランドリー店
・ドクターH.A.モイニハン
・星と聖人
・掃除婦のための手引き書
・私の騎手(ジョッキ―)
・最初のデトックス
・ファントム・ペイン
・今を楽しめ(カルぺ・ディエム)
・いいと悪い
・どうにもならない
・エルパソの電気自動車
・セックス・アピール
・ティーンエイジ・パンク
・ステップ
・バラ色の人生(ラ・ヴィ・アン・ローズ)
・マカダム
・喪の仕事
・苦しみ(ドロレス)の殿堂
・ソー・ロング
・ママ
・沈黙
・さあ土曜日だ
・あとちょっとだけ
・巣に帰る
・物語(ストーリー)こそがすべて リディア・デイヴィス
初読みの作家でしたが、思った以上に楽し -
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ネタバレルシア・ベルリンの短編集、三冊目(これで最後かな)。やはりすごく良い。相変わらず酩酊とドラッグとセックスと死にまみれていて、それでいて繊細な描写でむせかえるようなにおい、音、色彩に包まれる感じにぐっと引き込まれ、読みだすと止まらなくなってしまう。
悲惨な境遇も破滅的な出来事もあっさりと、からからしたユーモアとともに書かれていてそこには同情や好奇の視線を寄せ付けない強さがある。彼女の小説をどう表現すればいいか難しいのだが、起こるできごとも町のたたずまいも感情も一人一人の生も全部まるごと、むきだしになっているのだ。読むとあまりにリアルに目の前に迫ってくるから、その存在感にはいつも圧倒させられてし -
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はじめは、フーンこれがなんか色んな人が大絶賛の本か。なるほどなかなか読ませますなという感じで読んでいたのに、一編読み終えるごとに夢中になっていった。
あれ?あの話の彼女はこの人?この体験はあの体験のこと?というか、これ全部繋がってる……?
短編集というよりは自由な章立ての長編のような……作家自身の体験と深く結びついた物語が、ひとつ、またひとつ自分の中で繋がるほどに引き込まれていく。印象的なメロディーを繰り返しながら盛り上がっていく音楽みたいに。
読み終えた時には、一人の女性の人生――痛みと喜び、幸と不幸、激しさと静けさ、深い傷と赦し――が、確かな色と、音と、匂いを持って立ち上がってきた。
そ -
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彼女が執筆した全76篇の短篇のうち65篇を岸本氏が訳したもののうち、19篇を収めた短編集。
順番としては「掃除婦のための手引き書」が先だったようだけど、私はこちらが先だった。まあ、短編集だし独立しているし、順番は関係ないか。
最初の2篇を読んだあたりでは「なるほど。おしゃれ。」程度で、少し時間が経つと思い出すのがしんどくなるくらいの印象でしかなかった。
そこからもう数篇読み、ルシア・ベルリンの語る語り口に慣れてくる頃になると、この作家のすごさが見えてくる。
表題作を読むあたりでは、岸本氏が後書きで「そして文庫の帯で」書いているように「一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにはいられ -
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目で文字で読んだのに、
映画をみたように思い出すのが、ルシア・ベルリンの小説だ。
どの話も匂いに満ちていて、息苦しくなるくらいなのにそれこそが生だし、人生だと思わさせてしまう。苦しいし苦いのに、どこか甘美なのだ。
「オルゴールつき化粧ボックス」の幼き日の犯罪まがいのこと。(最後、家に帰ってきて「メイミーがカスタードとココアを運んできた。病人や罪人に与える食べ物だ。」そんな風にこのできごとを振り返る。まだ未就学児なのに。
「リード通り、アルバカーキ」や「日干しレンガのブリキ屋根の家」で、若い妊婦や母がたくさんの植物や花を植え育てる様の異様さ。(もちろん話の主体は夫の振る舞いであり、隣人の苛 -
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『人が表立っては言わないことが世の中にはある。愛とか、そんな深刻なことではなく、もっと体裁のわるいことだ。たとえばお葬式はときどき面白いとか、火事で家が燃えるのを見るとぞくぞくするとか。マイケルのお葬式は最高だった』―『塵は廛に』
ルシア・ベルリンの三冊目の短篇集。三冊目の翻訳が出版されることはとても嬉しいことだけれども、これ以上翻訳される原本がないという淋しい気持ちも同時に去来する。読みたい、けれど読み終えたくない。届いた本を後回しにするべきか否か。結局手に取り、一つひとつ、いつも以上に丹念に読む。
岸本さんが言う通り、ルシア・ベルリンの文章は誰かに似ているという思いを抱かせない。いつも -
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著者ルシア・ベルリン自身の半世に材を取った短編集である本作は、「わたし」の一人称語りで、自身を取り巻く苛烈で過酷な環境や人物が描かれる。「わたし」視点の世界なのに、「わたし」の居場所はない。語り手は家族から不当な扱いを受け、学校のクラスメイトから無視され、孤独に浮いている。世界から拒絶されて、アウトサイダーとなっている。
その様子が独特の筆致で描かれる。訳がとても良いのだと思うが、原文が孕んでいるであろう特殊な「熱気」を感じる文体だ。荒々しく、ギラギラした勢いある近視的筆致のながれの中に、シニカルで冷徹な一文が時折、紛れ込んでくる。著者の説教くさい思想やじめじめした感想はほとんど出てこない