あらすじ
2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位。
第10回Twitter文学賞〔海外編〕第1位。
「アメリカ文学界最後の秘密」と呼ばれたルシア・ベルリン、初の邦訳作品集!
メディア、SNSで大反響!
朝日、日経、読売、毎日、東京、中日、北陸中日、北海道、河北新報、信濃毎日、京都、共同、週刊文春、週刊新潮、週刊朝日、文藝春秋、GINZA、MORE、FIGAR JAPON、VOGUE JAPAN、ELLE JAPON、クロワッサン、婦人公論、ミセス、本の雑誌、POPEYE、本の雑誌、mi-mollet、現代ビジネス、クーリエ・ジャポン、本の雑誌、図書新聞、週刊読書人、文藝、すばる、小説すばる、波、本、RKBラジオ、NHKラジオ深夜便、TOKYO FM。 J-WAVE……。「ダ・ヴィンチ」の「ひとめ惚れ大賞」受賞!
2013年にノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローや、短篇の名手レイモンド・カーヴァー、日本で近年人気が高まっているリディア・デイヴィスなどの名だたる作家たちに影響を与えながら、寡作ゆえに一部のディープな文学ファンにのみその名を知られてきた作家、ルシア・ベルリン。
2004年の逝去から10年を経て、2015年、短篇集A Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、The New York Times Book Reviewはじめ、その年の多くのメディアのベスト本リストに選ばれました。
本書は、同書から岸本佐知子がよりすぐった24篇を収録。
この一冊を読めば、世界が「再発見」した、この注目の作家の世界がわかります!
このむきだしの言葉、魂から直接つかみとってきたような言葉を、
とにかく読んで、揺さぶられてください
――岸本佐知子「訳者あとがき」より
彼女の小説を読んでいると、自分がそれまで何をしていたかも、
どこにいるかも、自分が誰かさえ忘れてしまう。
――リディア・デイヴィスによる原書序文「物語こそがすべて」(本書収録)より
毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。
夜明けにふるえる足で酒を買いに行くアルコール依存症のシングルマザー(「どうにもならない」)。
刑務所で囚人たちに創作を教える女性教師(「さあ土曜日だ」)。……
自身の人生に根ざして紡ぎ出された奇跡の文学。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
いや、ちょっと。読み始めたのが失敗。一気読み
著者のベルリンは2004年に亡くなっているのだがこの短編集の原書は2015年、没後だ
現地米国ではさほどウケていなかったのにこの本の発行で話題になり2週間後に彼女の全ての本が売り切れたらしい。そう、この本で発見された私小説風の短編集(虚構もけっこうある)
重度のアルコール中毒で息子たちが眠るのを待ち
こっそり酒を買いに夜明けの開店に合わせてフラフラと外出し購入
これで酒が飲めると顔をあげた瞬間の街の朝日
この対比がすんばらしい、一発惚れ
壮絶な人生山あり谷あり
短編1つ1つ最後に特徴的なフレーズが来る
さすがの訳者、岸本さん
いやもうルシア・ベルリンという作者を知りたいと読後すぐさま他も買おうと思い調べると
76の短編を書いて生涯を終えているらしい
この本は24編
著作がす、すくない………
なんで今まで積んでたのだろう。はあ、良かった
Posted by ブクログ
いままで読んだことのないタイプの小説群だ。荒っぽく、むきだしで、パンク。しかも状況の把握がすぐにはできない。何度も行きつ戻りつして、読み進む。最後は、人生の理不尽さが出てくるものの、言いようのないふしぎな感動に襲われる。
鉱山技師の子としてアラスカに生まれ、子どもの頃はアメリカ各地やチリを転々とする。その後3度の結婚、4人の子ども。教師、掃除婦、電話交換手、看護助手、大学教員、そしてアルコール依存と慢性の肺疾患……作品の底流にあるのはこうしたキャリアと体験だ。
この本のラストの作品は「巣に帰る」。冒頭にカラス、終わりもカラスが登場。描かれているのは、人生と反実仮想。ルシア・ベルリンその人が少しわかったような気がする。
岸本佐知子さんの訳のうまさにも脱帽(文庫版では、スペイン語の発音ミスが修正されていた)。
Posted by ブクログ
目次
・エンジェル・コインランドリー店
・ドクターH.A.モイニハン
・星と聖人
・掃除婦のための手引き書
・私の騎手(ジョッキ―)
・最初のデトックス
・ファントム・ペイン
・今を楽しめ(カルぺ・ディエム)
・いいと悪い
・どうにもならない
・エルパソの電気自動車
・セックス・アピール
・ティーンエイジ・パンク
・ステップ
・バラ色の人生(ラ・ヴィ・アン・ローズ)
・マカダム
・喪の仕事
・苦しみ(ドロレス)の殿堂
・ソー・ロング
・ママ
・沈黙
・さあ土曜日だ
・あとちょっとだけ
・巣に帰る
・物語(ストーリー)こそがすべて リディア・デイヴィス
初読みの作家でしたが、思った以上に楽しめました。
ほぼ作者の体験に根ざした作品らしいが、その経歴がまた想像以上。
貧困家庭で家族に顧みられないまま育ち、学校ではいじめに遭い…からの地理の上流階級へと跳ね上がり、女手一つで4人の息子を育てながらアル中になり、刑務所で創作を教え、最終的にはコロラド大学の准教授から、闘病生活へ。
家族を顧みない父、二人の娘を見守ることのないアル中の母、妹だけを可愛がる祖母、作者を可愛がるが性的虐待をも与えるアル中の祖父、家族の中で唯一作者の理解者であったアル中のジョン叔父。
悲惨ともいえる家庭生活以外では、学友たちにいじめられ、先生からは疎まれて、それでも親友ができた。
死期の近い妹の世話をするために仕事をやめてメキシコに立ち、クローゼットのように狭い小部屋に住んで、最後のひと時を家族の思い出話で過ごす。
妹は妹で、彼女のことを羨んでいた、と。
悲惨も絶望も残酷もあるのに、決して湿っぽくはない。
何ならクスッと笑えるところもある。
それは作者が、そうやって生きてきたからだろう。
日本の私小説は、自分の奥深くへ潜っていくような息苦しさがあるが、彼女の書く小説は世の中や時代に即して、ある。
どんなにつらいときでも目を、耳を、閉ざすことなく世の中とつながっている。
だから読者は、作者から拒絶されたと思わないで読み進めることができる。
最近読んだばかりのせいか、こうの史代みたいな読み心地に感じられた。
Posted by ブクログ
はじめは、フーンこれがなんか色んな人が大絶賛の本か。なるほどなかなか読ませますなという感じで読んでいたのに、一編読み終えるごとに夢中になっていった。
あれ?あの話の彼女はこの人?この体験はあの体験のこと?というか、これ全部繋がってる……?
短編集というよりは自由な章立ての長編のような……作家自身の体験と深く結びついた物語が、ひとつ、またひとつ自分の中で繋がるほどに引き込まれていく。印象的なメロディーを繰り返しながら盛り上がっていく音楽みたいに。
読み終えた時には、一人の女性の人生――痛みと喜び、幸と不幸、激しさと静けさ、深い傷と赦し――が、確かな色と、音と、匂いを持って立ち上がってきた。
その迫力。
それでいて読み心地には常に達観したような軽みがあるのだ。素晴らしい体験だった。
Posted by ブクログ
アメリカに芥川賞あったら獲れてたのではないかと思ふ。強烈、そして生き生きとした文章であった。
日本にはAAと断酒会、二つの組織があるからAAをいちがいに断酒会と訳すのはもしかしたら微妙かもしれない。でもなんて訳すの?と聞かれたらぶっちゃけAAとしか訳せない(訳せてない笑)
機能不全家族に育ち、アルコール依存となった作者の苦しみはもはや理解できない領域。でも、この文章を読んでしまうと、、、苦しみも悪いことじゃないのかも。さらけ出せる勇気と書くことの魔力に魅せられてしまった。
Posted by ブクログ
深いどん底のさらに底深くその奥にいても光の方へと顔を向け言葉を綴った人なのだと思う。1番上品なのは自分の過去を笑い話にできる人。ずっと手元に置いていたい一冊。
Posted by ブクログ
著者ルシア・ベルリン自身の半世に材を取った短編集である本作は、「わたし」の一人称語りで、自身を取り巻く苛烈で過酷な環境や人物が描かれる。「わたし」視点の世界なのに、「わたし」の居場所はない。語り手は家族から不当な扱いを受け、学校のクラスメイトから無視され、孤独に浮いている。世界から拒絶されて、アウトサイダーとなっている。
その様子が独特の筆致で描かれる。訳がとても良いのだと思うが、原文が孕んでいるであろう特殊な「熱気」を感じる文体だ。荒々しく、ギラギラした勢いある近視的筆致のながれの中に、シニカルで冷徹な一文が時折、紛れ込んでくる。著者の説教くさい思想やじめじめした感想はほとんど出てこない。描かれている内容は悲愴なものだが、文体からはそれにとどまらない、言い様のない熱気を感じる。「わたしはこのどうしようもない世界を生きてるし、生きてきたんだ」という、内から発散するパワーに当てられて、なんだか、いてもたってもいられなくなる。
一発目の「エンジェル・コインランドリー店」のコインランドリーという狭い空間で、「インディアン」「アパッチ」「レッドスキン」という異文化的なワードが頻出する異常な空間(「わたし」は己の手を見て「非インディアンの、落ち着きのない、孤独な手だ」と形容する。コインランドリーという日常的な空間からさえ、「わたし」は弾き出される)を読み、うっすらとワクワク感を覚えて、早くも次の「ドクターH.A.モイニハン」でのめりこんだ。祖父が完璧な入れ歯を完成させたので、幼い「わたし」に歯を全部抜かせるという頭のおかしい展開、祖父の絶叫や暴挙が凄絶に描かれる。
表題作「掃除婦のための手引き書」、「ファントム・ペイン」、「いいと悪い」は「わたし」の孤独と周囲からの断絶を描いた傑作。
「苦しみの殿堂」、「ソー・ロング」、「ママ」は母親や妹との思い出(だいたいよくないことばかり)、確執などがリアルに描かれる。
最後の方の「沈黙」は一つの短編として独立しながらも、それまで近視的に描かれてきた「わたし」の子供時代が、ダイジェスト的に語られ直すという位置付けでもある。「寄り」で見てきた物事を改めて「引き」で客観的にみることで、その異常性がよりリアルに感じられてくる。読み手は、ここにきて、「わたし」そのものの視座へと近づく。
Posted by ブクログ
原作はもちろんのこと、自分が読んだ邦訳が素晴らしいのだろう、リズムがとても心地よい。いつか原文にもチャレンジしてみたい。
知性と環境とユーモアと好奇心‥‥どれだけの幸運が重なったら、作者のような文章を紡げるようになるのだろう? 至福の時間でした。
Posted by ブクログ
彼女のそれまでの人生は毎日毎日退屈なレコードの繰り返しのようだったが、あっと言う間にレコードがひっくりかえされて音楽が始まった。マックスがそれを聞いて、わたしに向かってほほえみかけた。ほらね、愛する人(アモール)、僕らはいまB面なんだ。
Posted by ブクログ
どうすれば誤解されなかったのか、今持ってわからない。ー誤解ではなく、それが相手の見解
机がまだ木だった頃の音がする。
三ページもかかって女の人の着物を脱がせるミシマの小説みたいだ。
喧騒と倦怠の中、階段に腰掛けて飲む夜明けの珈琲
シュガー・レイが出てきた。
『マカダム』の様なのが書いてみたい。
月が恋しい 独りの時間が恋しい
何がどうあろうと自分の味方になってくれる人が一人でもいたら幸い。
Posted by ブクログ
とあるブログで激賞されていたので読んでみた。読み始めてみて,正直そこまでではないなと思ったが,途中から引き込まれることになった。
著者の波瀾万丈な人生と,観察眼が凄い。ドライな諦念が通底している。文体にも魅力があるようだが,これは原著で読まないと分からないなぁ。。。
短編だけ書いてて評価されるってのが,テッド・チャンと通じるものがある。日本にはあんまりいない気がする。星新一くらいか?
Posted by ブクログ
ルシア・ベルリンの24の短篇。
私は「すべての月・すべての年」に続いて2作目。
とりわけ変わった設定ではなく、1900年代半ばの普通の生活がベースになっている短篇。
一度に全部読んだらすぐに忘れちゃうかなと思いきや、随分とずっしりとした読後感。
軽くて面白い短編集はたくさんある。
しかしこれはずっしりと面白い短編集。
これは何に因るものなのかなあと考えてみたのだけれども、まずは空気の重さまで感じられるようなリアリティ。
実体験をベースにしているものが多いと聞いてなるほどと思うと同時に、実体験を扱えばすべてこのようなリアリティが出るかと言ったらそうはいかない。
場面、表情、行動の切り取り方が素晴らしいのだ。文章のひとつひとつ、そして文章の組み合わせによって意識的にこの雰囲気を作り出しているのだから、唸らされる。
私もメキシコにいて、当時を生活しているかのような気持ちにさせられる。楽しい。
そしてもう一点は、語り手の現在の行動に説得力を持たせる過去。
ほとんどすべての作品の語り手には、過去がある。そしてその過去が間違いなく現在に影響を与えている。
その過去があっての今なのだなという納得感は、物語を楽しむ上で重要なのだが、これが絶妙である。
短篇のなかで、限られた枠のなかで、端的に、かつ印象的に過去を記述する。
それが台詞だったり、行為だったり、景色だったり。とにかく過去を印象づける。絶妙に。
とにかく高い技術によって、日常の話が大勢の人間に絶賛される物語に昇華されているのは見物。
そしてそんな難しく考えなくても、楽しく読める。
「なんかよくわからないけど、おしゃれっぽいし楽しい」っていうのでも良い。手に取ってみて欲しい。
Posted by ブクログ
初読
坂口文庫。
坂口さん曰くまったく読み進められない本シリーズの2。
これはわたしもかなり難儀しました。なかなか手強い。最初いくつかサラっと読んだとき 全然サラっと行かなくてこれは困ったと思った。
短編集のうち いくつかは まぁまぁ読めるのがあって もうそれでいいかなと思ったケド 別の日にまたちょっと読んだら もういくつかホォと思うのもあり。その時思いついて解説先に読んでみたのがよかったのかも。でも解説のおかげで最初の時には気がつかなかった重いツライ感じもわかってきた。
フィクションとしたら 全然面白くないけど これがノンフィクションに近いとしたら それはちょっと興味あるというか ちょっと惹かれるなと。
多分に怖い物見たさの要素もあるけどね。
なんとかひと通りは読めた。
それにしても坂口さん これよく買ったなぁ。
全く坂口さんチョイスっぽくない。
星1.5
2回目以降 直近で数回読み返す 星4 ハマる
最初は無理だと思ったのに 読み返すつど惹かれていく この本にというより こんな人生を生きた人に惹かれるのかも。
表紙の人が作者みたいだ。すごいキレイな人だ
Posted by ブクログ
短編集とわかってはいても、一見バラバラな気がした。
それがいつしか作者の生い立ちとも重なって、太い束のようなまとまりに感じられてゆく。
若い無邪気さ、苦い経験、切羽詰まった状況、そしてごく日常の風景。
どれも書き手がそこにいて、「これがあたし」といっているよう。
けれどそこに押しつけがましさはなくて、静かに目の前に差し出す。
謙虚で辛辣でちょっとクール、そして皮肉とユーモアを忘れない。
フィクションのようにもノンフィクションのようにも見えたこの作品群。振れ幅の大きな彼女の人生の、ある意味伝記のように思えた。
また読みたい。
Posted by ブクログ
ハードな人生、タフな登場人物。軽やかに乾いた文章。ユーモアや余裕も絶妙に漂っていて。とてもカッコ良い短編小説たち。
何度目かに読んだときから、これは彼女の人生で体験してきた「あきらめ」の上で物語られているのではないか、というような気がしてきている。
不条理な世界、ままならない人生、過去のやり直せない過ちや消えない傷を受け入れる。「悔いるのをやめる。」一度あきらめる。そのうえで、それでも、ハードな人生をタフに生きていく、生きてきた。その人生から慎重に切り取られ、誇張を加え作り話混ぜ合わせ紡いでいく。そうやって書かれる短編小説は、きっと彼女と同じようにとても強い。そんな印象を受けた。
あきらめることで手に入れられるもの、そうすることでしか手に入れることが出来ない強さやしなやかさ、余裕が、ものにできない短編小説があるのだ。そんな風にも思った。「あきらめ」以外にも相応しい言葉があるかもしれないし、的外れかもしれないけれど、幾つものことをあきらめてしまった後にはそんな風に読んでいた。ああ、まだ大丈夫なのかもしれない、と思えた。わたしもこの強さや余裕を手に入れられるだろうか、手に入れたいと思った。
どの短編小説も素晴らしかったのだけれど、冒頭の初めて読んだ彼女の小説で、すぐに大好きだ、と思えた「エンジェル・コインランドリー店」。
これもJAZZだった。JAZZみたいにロマンチックだ、と思った「ソー・ロング」。オーネット・コールマンのファイブスポットでの初演奏の一文にビックリしつつ嬉しくなった。
刑務所での文章教室を舞台にした大好きな短編小説があるのだけれど、同じように文章教室を舞台にした「さあ土曜日だ」も素晴らしくて、同じように大好きになった。ここでは珍しく作家を思わせる登場人物は語られる側で、文章教室で習ったのか綺麗に哀しいオチもつくのだけれど、それでもやっぱり彼女の人生から物語られた素晴らしい短編小説だと思えた。が、特に好きでした。
「全ての月、全ての年」も近いうちに再読したい。
Posted by ブクログ
ごく個人的な、自分のためだけに書いた小説という雰囲気がある。それがとてもよい。そして、いい夢かな?と思ってたら悪夢だし、悪夢はやっぱり悪夢のまま。そして、悪夢なのにゲラゲラ声をあげて笑ってしまって、その自分の声に驚いて目覚めるみたいな感じ。あぁ夢でよかった、みたいな悪夢感。
訳者のインタビューを聞いて購入後、何度も開いて、読み始めてみるけど、全然頭に入ってこない。合わないのかな?と思ったけど、ひとつひとつは短いので、順不同に何度も読み返すうちに、物語というか、作者のことが好きになってきて、好きな人の話しは、聞こうとするというか、貴方を知りたい。という気持ちに変わった。そしたら、映像になって、夢みてるみたいになった。またいける。
Posted by ブクログ
すごい、すごいと聞いてはいたけど、やっぱりすごかった。歯切れのいいテンポと強烈な映像喚起力。短編それぞれがまるで映画を一本見たように世界にどっぷり浸り切ったような読後感を残す。最初数編読んで、すごいけど長編が無いのが残念だなと思ったけど、全て読み終えるとまるでルシア・ベルリンその人を主人公とした長編を読んだような気分になった。
Posted by ブクログ
異なる話が収められた短編集かと思ったら、先に読んだ話が主人公を変えてまた現れる。それによって1つの話の背景が次々と明らかになるのが面白かった。根底には、米国のおそらく多数を占めるいろいろな意味で精一杯の暮らしをせざるを得ない人たちのありよう。再読したくなる。
Posted by ブクログ
原文はわからないけど、端的でわかりやすい文章なのに、時折びっくりするようなスラング的な表現や思いつかないような(でもなんとなくわかるような)比喩が入って、読むのが面白い。
ストーリーは、ほとんどがアルコール中毒の話(笑)
作者自身も苦しんだらしいが、それ以上に波乱万丈な人生から、その描写は辛辣ながら優しさがある。
スヌーピーに気高いながらホコリを引き寄せてしまうビッグ・ベンというキャラクターがいるけど、一言でいうとそういう印象の作品。
人生の美しさも底辺も見たいなら、ぜひ。
Posted by ブクログ
正直、読み始めは状況を把握しづらく、入り込めなかった。
でも、読み進めるうちに、一つの人生が立ち上がってきた。
孤独な幼少期、虐待、アルコール依存、妹の病気、3回の離婚と結婚。
これら、すべて彼女の実人生から生まれたもの。
波乱万丈ではあるけれど、悲壮感がなく、カラリとした印象すらある。
ラストの「巣に返る」という話に、「私がここまで生きてきたのは、過去を全部捨ててきたからだ」という一文がある。
ルシアは、書くことで、昇華してきた人なのかもしれないな、って思った。
Posted by ブクログ
オシャレな雰囲気の表紙とは逆でオシャレ感はなく、只々現実があるのみ。おそらく1人の女性(作者?)の人生が時系列バラバラに短編集としてまとめられているのかなと思うんだけど、幼少期の虐待、学生時代のいじめやアル中の描写などがリアルすぎて未来にいい事があると思えず、子育て真っ只中の自分には読み進めるのがキツかった。人生積み重ねて50代ぐらいに読み返したら感じ方も変わっているかもしれない。
Posted by ブクログ
最初は読み慣れず休み休み読んでいたが、途中から一気に進み読み終わった。
劇的な展開があったわけではなくて、著者の文体のリズムに自分が合ってきたようだった。
犯罪、依存症と共存して酷く辛い生活なのかと同情を誘うのではなくて、それも含めてユーモアに変えて、すました顔でたばこを吸う著者の姿が浮かぶ。
Posted by ブクログ
3度の結婚と離婚を繰り返し、4人の子どもを育て、アルコール依存症にも陥った。そんな著者の壮絶な人生をベースにした「オートフィクション(自伝的虚構)」。とても評価の高い本だったけど、ついていけなかった…。いろんなエピソードが時系列でなくつづられていて、登場人物もそのたびに違うし…。楽しめてる人がなぜ楽しめているか知りたくてくらいついてみたのですが。コインランドリーで色とりどりの服がまわる描写など、端々にきらりと輝く表現がある感じはわかったけれど…。いつかもう一度チャレンジしてみたい。
Posted by ブクログ
人の歴史が駆け巡っていく。そして時々逆戻りして跳ね回る。短編ひとつひとつのエネルギーが凄くって読み終わるたびにどっと疲れる!きっと読んでいる間力が入っているんだと思う。それくらい力を入れないと読みきれない。
バス通り、人々の流れ、コインランドリー、etc
中古の本から時々タバコの匂いがした。本そのものかもしれないが、きっと話しのエネルギーがそうさせたのかもしれないと思わせた。
Posted by ブクログ
表紙の写真の影響もあると思いますが、どの短編もモノクロの映像が思い浮かぶような文だと感じました。
またどの物語もあらゆる形の疵(「傷」ではない字のきず)を描いているような印象を受けました。でも、暗さの中にも不思議な明るさも見え隠れして、独特な文体だと思います。
Posted by ブクログ
母からメルカリで売って欲しいと預かった本の一冊で、ずっと家事のマニュアル本かと思っていた。
なかなか売れないので、読んでみたら、めちゃ面白い。
小説なんだ!と思ったら、ほぼ事実の小説とのこと。
どこでも読んだことがないような刺激的な文章だった。
Posted by ブクログ
お嬢様学校に通う女学生と共産党員の先生とで貧民街にボランティアに行く話と、表題にもなっている掃除婦の話が好き♡
自分が資本主義の奴隷だから共産主義的動きを見ると唾吐きそうになる
Posted by ブクログ
短編集の2/3を読み終えるまでは、ひたすら、退屈で読みにくい本だと思った。
最初は、訳が下手くそなのかとも思ったけど、時々、ハッとする美しい表現が出てきて、そうではなさそうと思い直した。
喪の仕事まで来て、少し変わって、沈黙、さあ土曜日だ、巣に帰るの4編は良かった。
簡潔な文章で、特徴としては、周囲の状況を描くことで、主役について物語を紡ぐ。それが、若い頃の数編においては、私が村上春樹に感じる、それいらなくない?関係なくない?という感想。
そこから、どんどん、作者が歳を重ねていき、彼女の人生が酸素ボンベを離せない状態であることまでわかるうまいチョイスをしている短編集の構成になっている。
私は、たまたま、後半生の練れた作品の方が好みなのだろう。前半生は、本人の生活が無茶苦茶なように、アル中の貧乏なシングルマザーの底辺のリアルが描かれているので、好みが分かれると思う。不倫の話なども描かれていて、不快な人もいるだろう。私は、共感ははっきり言ってできない。
喪の仕事では、亡くなった人の遺産整理を手伝う掃除婦をしていた著者の目を通して、遺品を通して悲しむ家族の姿が描かれる静寂な話だ。
沈黙は、祖父から性的虐待(未遂?)を受ける著者を守ってくれる叔父。それを見て見ぬふりする祖母をしかる叔父。彼の留守中に、自分よりもかわいがられる妹が同じ目に遭うのを黙ってやりすごす著者に対して、祖母と同じだと怒る叔父。いじめを見て見ぬふりする罪と同じだ。
さあ土曜日だは、著者が刑務所内で文章の講師をしている時の話だ。何かのきらめきを感じさせる受刑者がいたが、出所前に現実と向き合うこと。もしくは、出所後の運命を知っていたからか、自分の殻に閉じこもってしまう。そして、出所翌日に殺されたニュースで終わり、世間の厳しさというか、どうにもならない感じが漂う作品。
最後の巣に帰るが、一番いい。
酸素ボンベを手放せなくなった作者。それがきっかけで、裏庭ポーチでなく、表のポーチで休むこととなった作者が、初めて木を埋め尽くすカラスに気づく。そこから、色々なことを見逃してきたのではないかと考え出す。もしも、表のポーチで休んでなかったら、酸素ボンベをつけてなかったら、と終盤の予感がする自分の人生のもしもを振り返る。
最後の一文は、「なんと私の人生は今とそっくり同じになっていただろう」と。変わらず、カラスを見ていると。