あらすじ
2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位。
第10回Twitter文学賞〔海外編〕第1位。
「アメリカ文学界最後の秘密」と呼ばれたルシア・ベルリン、初の邦訳作品集!
メディア、SNSで大反響!
朝日、日経、読売、毎日、東京、中日、北陸中日、北海道、河北新報、信濃毎日、京都、共同、週刊文春、週刊新潮、週刊朝日、文藝春秋、GINZA、MORE、FIGAR JAPON、VOGUE JAPAN、ELLE JAPON、クロワッサン、婦人公論、ミセス、本の雑誌、POPEYE、本の雑誌、mi-mollet、現代ビジネス、クーリエ・ジャポン、本の雑誌、図書新聞、週刊読書人、文藝、すばる、小説すばる、波、本、RKBラジオ、NHKラジオ深夜便、TOKYO FM。 J-WAVE……。「ダ・ヴィンチ」の「ひとめ惚れ大賞」受賞!
2013年にノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローや、短篇の名手レイモンド・カーヴァー、日本で近年人気が高まっているリディア・デイヴィスなどの名だたる作家たちに影響を与えながら、寡作ゆえに一部のディープな文学ファンにのみその名を知られてきた作家、ルシア・ベルリン。
2004年の逝去から10年を経て、2015年、短篇集A Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、The New York Times Book Reviewはじめ、その年の多くのメディアのベスト本リストに選ばれました。
本書は、同書から岸本佐知子がよりすぐった24篇を収録。
この一冊を読めば、世界が「再発見」した、この注目の作家の世界がわかります!
このむきだしの言葉、魂から直接つかみとってきたような言葉を、
とにかく読んで、揺さぶられてください
――岸本佐知子「訳者あとがき」より
彼女の小説を読んでいると、自分がそれまで何をしていたかも、
どこにいるかも、自分が誰かさえ忘れてしまう。
――リディア・デイヴィスによる原書序文「物語こそがすべて」(本書収録)より
毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。
夜明けにふるえる足で酒を買いに行くアルコール依存症のシングルマザー(「どうにもならない」)。
刑務所で囚人たちに創作を教える女性教師(「さあ土曜日だ」)。……
自身の人生に根ざして紡ぎ出された奇跡の文学。
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Posted by ブクログ
目次
・エンジェル・コインランドリー店
・ドクターH.A.モイニハン
・星と聖人
・掃除婦のための手引き書
・私の騎手(ジョッキ―)
・最初のデトックス
・ファントム・ペイン
・今を楽しめ(カルぺ・ディエム)
・いいと悪い
・どうにもならない
・エルパソの電気自動車
・セックス・アピール
・ティーンエイジ・パンク
・ステップ
・バラ色の人生(ラ・ヴィ・アン・ローズ)
・マカダム
・喪の仕事
・苦しみ(ドロレス)の殿堂
・ソー・ロング
・ママ
・沈黙
・さあ土曜日だ
・あとちょっとだけ
・巣に帰る
・物語(ストーリー)こそがすべて リディア・デイヴィス
初読みの作家でしたが、思った以上に楽しめました。
ほぼ作者の体験に根ざした作品らしいが、その経歴がまた想像以上。
貧困家庭で家族に顧みられないまま育ち、学校ではいじめに遭い…からの地理の上流階級へと跳ね上がり、女手一つで4人の息子を育てながらアル中になり、刑務所で創作を教え、最終的にはコロラド大学の准教授から、闘病生活へ。
家族を顧みない父、二人の娘を見守ることのないアル中の母、妹だけを可愛がる祖母、作者を可愛がるが性的虐待をも与えるアル中の祖父、家族の中で唯一作者の理解者であったアル中のジョン叔父。
悲惨ともいえる家庭生活以外では、学友たちにいじめられ、先生からは疎まれて、それでも親友ができた。
死期の近い妹の世話をするために仕事をやめてメキシコに立ち、クローゼットのように狭い小部屋に住んで、最後のひと時を家族の思い出話で過ごす。
妹は妹で、彼女のことを羨んでいた、と。
悲惨も絶望も残酷もあるのに、決して湿っぽくはない。
何ならクスッと笑えるところもある。
それは作者が、そうやって生きてきたからだろう。
日本の私小説は、自分の奥深くへ潜っていくような息苦しさがあるが、彼女の書く小説は世の中や時代に即して、ある。
どんなにつらいときでも目を、耳を、閉ざすことなく世の中とつながっている。
だから読者は、作者から拒絶されたと思わないで読み進めることができる。
最近読んだばかりのせいか、こうの史代みたいな読み心地に感じられた。