ルシア・ベルリンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ルシア・ベルリンの24の短篇。
私は「すべての月・すべての年」に続いて2作目。
とりわけ変わった設定ではなく、1900年代半ばの普通の生活がベースになっている短篇。
一度に全部読んだらすぐに忘れちゃうかなと思いきや、随分とずっしりとした読後感。
軽くて面白い短編集はたくさんある。
しかしこれはずっしりと面白い短編集。
これは何に因るものなのかなあと考えてみたのだけれども、まずは空気の重さまで感じられるようなリアリティ。
実体験をベースにしているものが多いと聞いてなるほどと思うと同時に、実体験を扱えばすべてこのようなリアリティが出るかと言ったらそうはいかない。
場面、表情、行動の切り取り方が素晴らしいのだ。文章のひとつひとつ、そして文章の組み合わせによって意識的にこの雰囲気を作り出しているのだから、唸らされる。
私もメキシコにいて、当時を生活しているかのような気持ちにさせられる。楽しい。
そしてもう一点は、語り手の現在の行動に説得力を持たせる過去。
ほとんどすべての作品の語り手には、過去がある。そしてその過去が間違いなく現在に影響を与えている。
その過去があっての今なのだなという納得感は、物語を楽しむ上で重要なのだが、これが絶妙である。
短篇のなかで、限られた枠のなかで、端的に、かつ印象的に過去を記述する。
それが台詞だったり、行為だったり、景色だったり。とにかく過去を印象づける。絶妙に。
とにかく高い技術によって、日常の話が大勢の人間に絶賛される物語に昇華されているのは見物。
そしてそんな難しく考えなくても、楽しく読める。
「なんかよくわからないけど、おしゃれっぽいし楽しい」っていうのでも良い。手に取ってみて欲しい。 -
Posted by ブクログ
初読
坂口文庫。
坂口さん曰くまったく読み進められない本シリーズの2。
これはわたしもかなり難儀しました。なかなか手強い。最初いくつかサラっと読んだとき 全然サラっと行かなくてこれは困ったと思った。
短編集のうち いくつかは まぁまぁ読めるのがあって もうそれでいいかなと思ったケド 別の日にまたちょっと読んだら もういくつかホォと思うのもあり。その時思いついて解説先に読んでみたのがよかったのかも。でも解説のおかげで最初の時には気がつかなかった重いツライ感じもわかってきた。
フィクションとしたら 全然面白くないけど これがノンフィクションに近いとしたら それはちょっと興味あるというか ちょっと惹かれるなと。
多分に怖い物見たさの要素もあるけどね。
なんとかひと通りは読めた。
それにしても坂口さん これよく買ったなぁ。
全く坂口さんチョイスっぽくない。
星1.5
2回目以降 直近で数回読み返す 星4 ハマる
最初は無理だと思ったのに 読み返すつど惹かれていく この本にというより こんな人生を生きた人に惹かれるのかも。
表紙の人が作者みたいだ。すごいキレイな人だ -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰もがここで書かれている彼女のことを好きになってしまったり、そうでなくても嫌いにはなれないんじゃないかと思った。賢くて繊細で、情熱と愛があり時に弱く、悲しみと喜びに満ちた人生を送る女性。彼女の言動には優しいぬくもりを感じるし、言外に親密な空気が漂うところが好きだ。
「カルメン」や「ミヒート」で描かれている、悲惨な状況に陥ってしまった女性や子どもの話がとてもつらかった。あまりにも克明でハラハラしながら読むことになったが、決して同情的には書かれておらず、作者の冷静な目線をいつも感じた。
姉妹のバカンスを描いた「哀しみ」が特に心に残った。少しの嘘だって、すべて妹への愛にほかならない。誰の視点かによって物事の見え方がまったく変わるところが良い。 -
Posted by ブクログ
ハードな人生、タフな登場人物。軽やかに乾いた文章。ユーモアや余裕も絶妙に漂っていて。とてもカッコ良い短編小説たち。
何度目かに読んだときから、これは彼女の人生で体験してきた「あきらめ」の上で物語られているのではないか、というような気がしてきている。
不条理な世界、ままならない人生、過去のやり直せない過ちや消えない傷を受け入れる。「悔いるのをやめる。」一度あきらめる。そのうえで、それでも、ハードな人生をタフに生きていく、生きてきた。その人生から慎重に切り取られ、誇張を加え作り話混ぜ合わせ紡いでいく。そうやって書かれる短編小説は、きっと彼女と同じようにとても強い。そんな印象を受けた。
あきらめることで手に入れられるもの、そうすることでしか手に入れることが出来ない強さやしなやかさ、余裕が、ものにできない短編小説があるのだ。そんな風にも思った。「あきらめ」以外にも相応しい言葉があるかもしれないし、的外れかもしれないけれど、幾つものことをあきらめてしまった後にはそんな風に読んでいた。ああ、まだ大丈夫なのかもしれない、と思えた。わたしもこの強さや余裕を手に入れられるだろうか、手に入れたいと思った。
どの短編小説も素晴らしかったのだけれど、冒頭の初めて読んだ彼女の小説で、すぐに大好きだ、と思えた「エンジェル・コインランドリー店」。
これもJAZZだった。JAZZみたいにロマンチックだ、と思った「ソー・ロング」。オーネット・コールマンのファイブスポットでの初演奏の一文にビックリしつつ嬉しくなった。
刑務所での文章教室を舞台にした大好きな短編小説があるのだけれど、同じように文章教室を舞台にした「さあ土曜日だ」も素晴らしくて、同じように大好きになった。ここでは珍しく作家を思わせる登場人物は語られる側で、文章教室で習ったのか綺麗に哀しいオチもつくのだけれど、それでもやっぱり彼女の人生から物語られた素晴らしい短編小説だと思えた。が、特に好きでした。
「全ての月、全ての年」も近いうちに再読したい。 -
Posted by ブクログ
・『アメリカ文学最後の秘密』と言われるルシアベルリン
・昔、本好きの同僚のお勧めで購入した『掃除婦のための手引書』が切っ掛けで知り、数年経って改めて読みたくなりこちらを購入
・彼女の人生は、経験の幅広さと苦労に特徴付けられると思う
>1936年アラスカ生まれ、2004年に亡くなる
>鉱山技師の父親の元各地を転々とした幼少期
>教師、掃除婦、電話交換手、看護助手など多くの仕事を経験
>アルコール依存症、脊柱側弯症に苦しむ、など
・10~40ページ程度の短編集、全19編
・①電話交換士、教師など自身の経験に基づくと思われる題材 x 純文学的ストーリー、②寄り添い/暖かさと突き放し/冷たさの共存、③独自の比喩表現、が彼女の唯一無二さの根源かなと思う
>「彼はひどくゆっくりエンピツ削りをまわし、ドラムをブラシで撫でるような音を立てた。」
>「エロイーズはそれを自然界の現象のように思い出した。小さな地震や、夏の日に吹きすぎる風のように。」
>・・・思いつきそうで思いつかない、ありそうでなかった輝く様な素敵な表現が沢山
・自分の世界観が優しくリセットされる様な読後感・・・という感じかな -
Posted by ブクログ
ルシア・ベルリン(1936-2004)は米国の短編作家で、存命中に大きな評価は得られず、没後10年を経て米国版『掃除婦のための手引き書』(43編収録)が再評価につながったとのこと。
邦訳が岸本佐知子さん。日本では分冊発行され、日本版同書(24編収録)未収録の19編を、別タイトルで刊行したのが本作だそう…。またやっちまいました泣、第2弾から読むヤツ!
北米や南米を転々とし、3度の結婚・離婚、4人の息子を単身で育て、職業も教師、掃除婦、電話交換手、看護助手などを経験。アルコール依存症に苦しむなど、波瀾万丈で濃い人生だったようです。
作品と著者の経歴は無関係でしょうが、経験は大きく影響を与えるでしょう。彼女の多くの短編小説の大半は、自身の体験に根ざした小説とのこと。
なるほど主人公の職種を始め、内容は自伝と創作の境界が曖昧で、それ故か人物像や情景がリアルに立ち上がります。作りものではない人間の性(さが)や生きることの過酷さが凝縮され、熱量が直に突き刺さる印象です。
飾らない言葉や筆致…孤独や病気や死が身近、湿り気のない乾いた土地の匂いを中心に、文体の簡潔明瞭さ、ユーモアセンスが(良い意味で)特異で、不思議な余韻を実感するも、個人的な好みで評価を下げてしまいました。