岸本佐知子のレビュー一覧

  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    本当に…うんざりとした気持ちで昨日から今日にかけて読んだ。さまざまな部品により構成される内ホーナー国、外ホーナー国のみなさん。フィルは脳が外れる仕様により、これまで脳=良識のもとに判断を重ねてある程度の地位をキープしてきた彼も、全能感を感じることの気持ちよさゆえに脳を故意に外して暴走するのだなと感じた。逆にこの作品が独裁者を生むための教科書になってないか心配だ。

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    2026年02月10日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ネタバレ

    独裁を行うためのメソッドが満載。
    ・内をまとめるために敵を作る
    ・大きな声と断定的な口調で一目置かせる
    ・自分に従う者の自尊心をくすぐる
    ・マスコミを抱き込む
    ・中身が不明な全面委任を信頼(忠誠)の証とする(踏み絵的な活用でもある)
    ・時に武力行使も辞さない(刃向かうとこうなる、を早々に示す)

    現在の国内外の政治にも通じて、薄寒いものを感じます。
    最後フィルは自滅したようなものだけど、このまま独裁が続いていたらどうなったのか。独裁下での一時的な治安維持がしばらく続いていくのだろうか。
    現代でもこのまま自然破壊が続いたら、「創造主」が天災という形で粛清してくるかもしれない、と想像しました。

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    2026年02月08日
  • ねにもつタイプ

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    幼少期の、少し不思議な世界の捉え方の話が多い。文章も心地よく、リズムよくさらりと読める。

    自分の幼い頃の気持ちを思い出して、よく頑張っていたねと自分を労いたくなる。うちの子どもも、今まさに同じような世界に生きているんだろうなと愛おしくなる。願わくばその世界が少しでもご機嫌なものになりますように。

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    2026年02月05日
  • ひみつのしつもん

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    頭くらくら、胸どきどき、腰がくがく、おどる言葉、はしる妄想、ゆがみだす世界は、なんだか愉快。 奇想天外 抱腹絶倒のキシモトワールド。                 ――帯より拝借――
    岸本さんはまた多少自虐的に面白い日常を話してくれる。そこのところが同病持ちの私にグッとくる、思い当たる節々が多い。
    博識でエピソードが笑える。読者にはそういう所がうけるのかも。読めば読むほど妙に嬉しくなり、相憐れむ心地よい気分になる。

    あるあるぅ~という日常の出来事に、えへへ笑いを隠して読む。
    時々読み返すように机の隅に置いてある岸本本も四冊目。これを読んで納得したり同じ世界に行ってみて煙に巻かれたり、日ごろ

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    2026年02月04日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    ずっと気になっていた本。
    なんだかすごいものを読んだぞ!という読後感。
    不安が残る感じ。

    訳者あとがきを見ると、元の本は14作品収録されているが、今回日本で出たものはボリュームの都合上7作品とのこと。
    残り7作品もいつか読みたい!

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    2026年02月02日
  • ひみつのしつもん

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    素晴らしい翻訳家さん(本日(令和8年1月17日)の日経新聞朝刊の書評欄でも同業者の方に激賞されていました)によるあまりにも卑屈なエッセイ。
    俳優の名前がどうしても思い出せない、あまりにも運動不足、自分が話した内容がみんなに信用されないが別の人が同じことを話すとあっさり信用される、などのエピソードが面白おかしく展開される。
    日常の些細なことに、あまりにも豊かな想像力を働かせてしまうところも素敵です。

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    2026年01月17日
  • 最初の悪い男

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    8章までは妄想が続き気色が悪い。
    9章からは現実が押し寄せてくる。現実は不思議と気持ち悪くない。
    13章からは、嫌な予感がしてくる。

    赤ちゃんと淡々と日常をこなすシェリルは、地に足がついていき、世界を俯瞰し、他者を赦していく。最初は、すごくキモくて、なかなか進まず、読み終えられるか不安になったけど、本当に愛の物語に発展して、余韻は最高だった。

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    2026年01月11日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    一度に1人しか入ることのできない『内ホーナー国』と、その国を取り囲む大きな『外ホーナー国』の話。内ホーナー国に1人が入っている間、他の住人は外ホーナー国の領土内にある『一時滞在ゾーン』で身を寄せ合って立って待っている…。
    両国の住民として登場するのは、機械の部品や植物を組み合わせたような何とも形容し難い生き物たち。
    お互いに睨み合いながら暮らしていたが、ある日、一時滞在ゾーンからはみ出してしまったことがきっかけで騒動に。
    そこにフィルが出てきて税を取ると言い出し…。

    まさに近代の戦争やジェノサイドを表現していて、それが不変的であることに悲しみを覚える。ちょっと頭の回転が速くて声が大きく、もっ

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    2026年01月06日
  • ひみつのしつもん

    購入済み

    文章のリズム感が心地よくてスルスルと読んでしまった。日常のちょっとした不思議から自身の自虐的な話やらとても楽しく読めました。

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    2026年01月05日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    オートフィクション(自伝的小説)の連作短編または掌編小説集(一番短い「わたしの騎手」は2ページと4行)。
    どれも、自身の家族のことや、職業遍歴や、アルコール依存や、肺がんで死期の迫る妹を看取った経験など、重苦しい実体験をベースにしながらも、文章は軽妙な印象。
    また、話の終わらせ方がどれも秀逸。p.34の「大っきらいよ」とか、p.147の「コリント!」とか…これだけを読んでも何のことやら判らないけれど、良い。

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    2025年12月31日
  • わからない

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    2000年ごろからの、あちこちに書いたものをまとめた、というエッセイ。今年は『死ぬまでに行きたい海』に続いて2冊目になるが、それまでの5年間はエッセイの出版はなかった・・・。なしたの?(調べたら、キシモトさんはこのペースでしかエッセイを出していなかった。「それでいい」とまで書いていた、自分・・・)
    それにほら、まとめて出すから、370ページにもなっちゃって。半分ずつ、2冊でもよかったのに。でも、ボリュームの割に2300円(本体)でお値打ちかな?
    中身を読みはじめたら、たいへんお買い得でした。

    1ページと少しくらいの文章が多いので、他の本を読みながら、ちょっとお菓子をつまむように、ひとつ、ふた

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    2025年12月27日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    最初はなんだかよくわからず、途中で読むのをやめてしまった。
    ルシア・ベルリンについて調べてから、あらためて最初から読み直すと急に色鮮やかに情景が浮かんで驚いた。
    時系列もバラバラの人生のカケラを拾い集め、彼女の人生をおもいながら読む。

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    2025年12月24日
  • 十二月の十日

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    ネタバレ

    12月になったら読もうと思っていたけどあえてクリスマスシーズンに読む本ではなかったかも…(汗)原書刊行は2013年。短篇集。

    バッドエンドの中に少しのハッピーエンド、それはまさに人生じゃないだろうか。

    個人的に気になった作品↓
    子犬
    救いたい形をしていない人の話。

    センプリカ・ガール日記
    「読み落とした?」って混乱しました。調べちゃいますよね、SG。普通の格差のある生活の中のディストピア。

    わが騎士道、轟沈せり
    途中までは面白く読んでいたらあっという間に社会的に死んでいた、怖い

    十二月の十日
    読み終わって少しホッとした。本書の最後がこの作品で良かった。

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    2025年12月18日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    日常の薄皮一枚がめくれて、別の世界が顔を出すような、不穏な違和感。胸騒ぎがずっとつづくのに、ぐいぐい読まされてしまった。ふだんは見ないように蓋をしているもの。暗渠をのぞきこむような、こわさやおもしろさやうしろめたさがあった。
    クラフト・エヴィング商會による装幀も最高。

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    2025年12月17日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    260頁に24編の作品があるため、短いモノは2、3頁で終わる。長くても10頁程度。何より、描写がきわめてクールでスタイリッシュ(体現止めが多い)。描かれている内容は極めて悲惨、残酷、無情な場合が多いのだが、なんてことのないわ、これが日常よ、という感じでサラっと美しく流して書かれているので読み手は暗鬱とした気分にならない。
    これは、限りなく詩ち近い小説だと思う。

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    2025年12月16日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    【火星から来た男 = The man from Mars】
    こういうタイトルだが、別に宇宙人は登場しない。大学に通う主人公が、西欧系ではない男性に出会って、友達認定される。無下にもしないで適当にあしらっていたら、家にまで訪問される。これまで男性に見向きもされない、男性とはお友達関係しか築けないと思われてきた主人公は、にわかにモテるようにもなるが。

     北と南という語句が登場するので、おそらく男性は朝鮮半島の出身。確かに、行くところ行くところどこにでも現れたら気持ち悪いかもしれないが、暴力をふるったわけではない。にもかかわらず、警察を呼ぶのは、彼の国籍が潜在的な差別意識に繋がったのでは。

    【ベ

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    2025年12月15日
  • 『罪と罰』を読まない

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    憶測で語り合う様子が面白い。私も読んだけれど忘れた一人なので再読したくなった。
    ちなみに私はラスコが寒いと言って外套を着ていたから冬の話だったと記憶していましたが実際には夏だったようで……

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    2025年12月07日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ネタバレ

     アメリカの小説家ジョージ・ソーンダーズの中編小説。原書は2005年に発行。本書は2011年に出版された単行本を、2021年に文庫化したもの。
     あらすじとしては、一人しか入れないほど小さい「内ホーナー国」と、それなりに広い「外ホーナー国」との間に起こるいざこざと、国境の監視役(自称)であるフィルが暴走し独裁者となる顛末を描いた「おとぎ話」となっている。軽快なユーモアはあるが、正直に言ってつまらないと思いながら読んでいたが、読後しばらく考えてみるとあることに気づく。確かに背筋が寒くなった。

     登場人物はどれも奇妙な造形をしており、脳がラックに入っているものや、枝や鹿の角が突き出たもの、シャベ

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    2025年12月02日
  • 気になる部分

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    初・岸本佐知子さんエッセイ。
    もうこれはクセになる。
    私もたいがい変人だけど、岸本さんも相当な変人なんだと思う。変人同士だからか、岸本ワールドが居心地が良すぎてずっとプカプカ浮いていたい感じ。

    気になる部分って人それぞれ違うのだけど、岸本さんの気になる部分はかなりマイノリティで、そもそも岸本さんにしか気にならない部分なんだろう。
    私は岸本佐知子という人が気になりすぎて、彼女が翻訳し、またエッセイにも登場させている、ニコルソン・ベイカーの「中二階」を勢いで購入してしまった。

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    2025年11月20日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    ネタバレ

    短編7作。
    1977年から時を経ているとは思えない
    技術や住環境は高度化しても、人の思考や偏見の構造は必ずしも進化していない
    本質を突く文学は数十年経っても古びず、むしろ心の停滞が及ぼす影響をあからさまに感じさせる
    この恐怖は、あとがきに記されていた通りである

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    2025年11月19日