岸本佐知子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
こんな不思議な文章は初めて読んだ。
現実と空想と妄想とがぐるぐると入り混じったような読書時間は、風邪の時に熱に魘されてみる夢の感覚に近い。
三浦しをん氏がご自身のエッセイで絶賛されていたので、興味を持って手に取った。
岸本氏の感性に底はかとない恐れを感じたり、害虫との戦記に深く共感したり。
これは本当にエッセイ?と首を傾げつつも、不思議と夢中になってあっという間に読み終えてしまう中毒性がある。
作品に没頭することは多々あれど、脳内が異空間にトリップしているような文章には初めて出会った。
この感覚は癖になる。著者の他のエッセイにも挑戦してみたい。 -
Posted by ブクログ
面白い短編集だった。ただどこがどう良いかと説明するのが難しくて好みは分かれそうな作品だなあと思いながら読んでいた。特に良かったと思ったのは表題作の「五月」。他は「普遍的な物語」「スコットランドのラブソング」「物語の温度」も良かった。好みで言うと「物語の温度」みたいなのはすごく好き。全編通して急に場面が変わったり、あなたとわたしが変わったり、今の話かと思ったら前の話だったり。その自由さ?みたいなものが物語の拡がりを作っているように思う。
「侵食」という短編では、ある日全てのものに対して愛が溢れ(アリやアブラムシでさえも)世界が輝いてるのに、その後突然アリやアブラムシを潰していくという意味のわか -
Posted by ブクログ
奇妙で寓話めいた話なのに、読み進めるほどにだんだん笑えなくなってくる感覚がありました。
最初はどこか軽くて風変わりな世界観だと思っていたのに、気づけば人間の弱さや集団の怖さをかなり露骨に突きつけられています。
このブラックユーモアの効かせ方は見事で、短い作品なのに妙に引っかかり続けます。
ただ、語り口や設定の癖はかなり強く、素直に物語に没入したい人には少し距離を感じるかもしれません。
それでも、その読みにくさすら作品の不穏さに繋がっていて、読み終えたあとにじわっと残る違和感と苦味が印象的でした。
軽い読み心地の割に、意外と深く刺さる一冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエッセイというよりは、妄想が羽ばたきすぎて空想小説のようになっているエッセイ集。この人のエッセイは前にも読んだが、前の本より面白かった。
ちょっとしたきっかけからめくるめく岸本ワールドが始まり、干支は総とっかえされ、心臓は休みを取り、からざを捨て続けた人間がからざ地獄に落ち、ニシンは人生相談をする。読んでいると浮遊感があり、いちいちくすっと笑ってしまう。一番好きなのは、「でも地獄をうろついている仏ってなんなのだろう。どう考えてもまともな仏ではない。詐欺の可能性が高い」のくだり。確かにそう。そうだけど、考えたこともなかった(笑)。著者は若干不便そうにしているが、これくらい空想が暴れている脳みそで -
Posted by ブクログ
「罪と罰」を読んだことのない作家4人が、最初と最後のページ、間の数ページ、登場人物表など数少ないヒントを参考に物語を考察していく。もう超面白かった。笑った。
登場人物名がおぼえられないといい勝手に省略したり、松岡修造だと呼んでみたり。
元々同人誌でのみ出版予定だったということで、かなり自由に好き勝手やっており、それが最高だった。
けどやっぱり作家を生業としてる人達はすごい。数少ないヒントから当たらずも遠からずな考察したり、文脈を整理し読み取る能力に長けすぎている。
こんなにこの企画が面白くなるのも個々の能力がしっかりある人達が集まったからこそなんだろうなと思った。
私は「罪と罰」本編を読 -
Posted by ブクログ
『ねにもつタイプ』面白っ!と思ったのに、なぜか第2・3を飛び越し第4弾を手にしました。本エッセイの『ちくま』連載は現在も(20年以上)続き、挿画・装幀が変わらずクラフト・エヴィング商會なのもうれしい限りです。
岸本佐知子さんは、「私の頭の中には種々雑多な考えが詰まっている」と述べ、日々の生活で何かがきっかけとなって疑問や気付きがもたげ…。そこからの連想が連想を呼び、どこまでも飛躍します。
妄想のスイッチがすぐに入るのは、感性の網目が細かいというかアンテナが高いので、他の人がスルーするようなことも引っかかるのでしょうね。
目を閉じて瞑想し、頭の中の虚無のスクリーンを無心に見つめても… -
Posted by ブクログ
かなり面白かった。エンデの『モモ』や太宰治の『トカトントン』がしれっと出てくるあたりも、個人的には妙に信頼できた。
岸本さんは、なんだか生きづらさを抱えやすいタイプな気がする。でも、その生きづらさを太宰みたいに重苦しく見つめるのではなく、ユーモアや想像力(妄想?)で遊びに変えてしまう。
「書くことなんて何もない。頭の中をひっかき回し、苦しまぎれに壺の蓋を開けてみたら、何十年にもわたって“なかったこと”にしてあったものがどろどろに発酵していた」
(あとがき)
まさにその言葉どおりのエッセイ集。
「なんかよくわからんけどこの人楽しそうでいいなw」と思わせてくれるのがすごい。 -
Posted by ブクログ
面白かった。有名な古典小説「罪と罰」をネタにした対談集。
前半は、この小説を読んでいないメンバーが読まないままに語り合う座談会。最初はこれまで知っていた断片的な知識を元に内容をあれこれと内容を想像し、途中から各章ごとに数ページを抜き出して読み、それを元に内容を「推理」する。これらが面白い。断片から空想を広げていくわけだが、その過程がとてもファンタスティックである。新しい断片を読む度に、これまでの想像が更に飛躍していったり、ひっくり返されていったりするさまもスリリングである。
いったん座談会が終わってから各自が「罪と罰」を読み、そのあとで語り合うのが後半の座談会。読む前の座談会の答え合