岸本佐知子のレビュー一覧
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翻訳家でエッセイストでもある著者の読書感想文 + 翻訳小説食わず嫌いへの読書案内(初心者向け、上級者向け)+ 業界日記&メモ。視点や発想が日本人としてはユニークなので、分厚い本でも飽きずに読めた。
谷川俊太郎の『ことばあそびうた』に関する部分で、「言葉を発するということは、それ自体が音楽を奏でるようなもので、意味なんかなくたって、ただもう楽しいということだってある」とあり、著者の訳書もきっとリズム感にあふれているに違いないと確信した。
AIアシスタントに著者の翻訳本を何から読めばよいか尋ねると、ルシア・ベルリン作品集かミランダ・ジュライ作品集のどちらかの短編集から入るのがよいとのこと。それ -
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普通にエッセイという心構えで読んでいくと、不思議な常識を知らないうちに飲み込まされていて、話を読み終わった後で、それがおかしかったことに気付かされるおそろしい文章群だった。
夢十夜に近いと思う。
作者岸本さんは、女性で現在64歳らしいのだが、本全体を通して、年齢や性別を特段感じなかった。
たしかに老いに関するエピソードや、話にあげられる俳優などには年齢が反映されているとは思う。しかし出来事に対して過去の体験や事件をあまりもちださずに、空想の論理をコロコロと転がしていく話の展開がとても柔軟だからだろうか。
小さなお婆さんの話が一番好きかも -
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ルシア・ベルリンの24の短篇。
私は「すべての月・すべての年」に続いて2作目。
とりわけ変わった設定ではなく、1900年代半ばの普通の生活がベースになっている短篇。
一度に全部読んだらすぐに忘れちゃうかなと思いきや、随分とずっしりとした読後感。
軽くて面白い短編集はたくさんある。
しかしこれはずっしりと面白い短編集。
これは何に因るものなのかなあと考えてみたのだけれども、まずは空気の重さまで感じられるようなリアリティ。
実体験をベースにしているものが多いと聞いてなるほどと思うと同時に、実体験を扱えばすべてこのようなリアリティが出るかと言ったらそうはいかない。
場面、表情、行動の切り取り方が素晴 -
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独裁者の誕生と破滅、人と国の破壊を描いた寓話。玩具のようなロボットのようなキャラクターが住む国のお話、絵をイメージすればユーモラスなはずなのに、読むのがしんどくて参った。国土を削られ、財産を奪われ、生き残るすべがどんどんなくなっていく。きつい。独裁者の方もどんどん脳が壊れてまともじやなくなっていって、こちらもきつい。
きついきついばかり言っているけど、ほんとに、ユーモアがユーモアに見えないくらいしんどかった。どこかで「抱腹絶倒」と紹介されていたけど、うそでしょ?ってくらい全然笑えなかった…
ディストピアものは若いうち、あと平和な時代に読んだ方がいいと痛感。今はリアルの世界が過酷すぎる。あと -
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初読
坂口文庫。
坂口さん曰くまったく読み進められない本シリーズの2。
これはわたしもかなり難儀しました。なかなか手強い。最初いくつかサラっと読んだとき 全然サラっと行かなくてこれは困ったと思った。
短編集のうち いくつかは まぁまぁ読めるのがあって もうそれでいいかなと思ったケド 別の日にまたちょっと読んだら もういくつかホォと思うのもあり。その時思いついて解説先に読んでみたのがよかったのかも。でも解説のおかげで最初の時には気がつかなかった重いツライ感じもわかってきた。
フィクションとしたら 全然面白くないけど これがノンフィクションに近いとしたら それはちょっと興味あるというか ちょっと惹 -
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人ひとりしか居られない程小さな国、内ホーナー国
それを取り囲む外ホーナー国
内ホーナー国民は7人おり、両国の境、外ホーナー国内の一時滞在エリアで常に6人が入国を待っている
国民の姿形は無機物と生物のツギハギ
この奇妙で童話のような世界観で語られるのは国同士・人同士の争い
きっかけは外ホーナー人であるフィルによる内ホーナー国批判の演説
フィルの演説は力強く煽動的であるのだが、興味深いのは、脳が外れてしまった時に為されることが多い、ということ
本書は2011年に刊行されているが、フィルの語りにはドナルド・トランプ氏であったり、小泉進次郎氏であったり、多くの政治家の姿が重なる…
この物語は政治家批判 -
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ルシア・ベルリンなどの翻訳家岸本佐知子さんの、エッセイや書評、日記などを集めた本。いままで本に収録されていないものを集めたとのことで、初めて読む岸本さんのエッセイにはちょっともったいなかったかもしれない。
思考も言葉もコロコロと転がっていくような文章が面白い。思考は浮かび上がって飛躍して妄想に突入するし、言葉遊びも抜群に冴えている。
ビジネスや自己啓発系のベストセラーを読んだ感想を率直に書き、挫折を語り、ツッコミをいれ……と自由すぎる書評(勧める気がなさすぎる)もすごかった。
「わからない」「イエス脳」がお気に入りで、エッセイの部分が一番面白かったのでもっとたくさん読みたくなる。他の本も読んで -
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ネタバレ誰もがここで書かれている彼女のことを好きになってしまったり、そうでなくても嫌いにはなれないんじゃないかと思った。賢くて繊細で、情熱と愛があり時に弱く、悲しみと喜びに満ちた人生を送る女性。彼女の言動には優しいぬくもりを感じるし、言外に親密な空気が漂うところが好きだ。
「カルメン」や「ミヒート」で描かれている、悲惨な状況に陥ってしまった女性や子どもの話がとてもつらかった。あまりにも克明でハラハラしながら読むことになったが、決して同情的には書かれておらず、作者の冷静な目線をいつも感じた。
姉妹のバカンスを描いた「哀しみ」が特に心に残った。少しの嘘だって、すべて妹への愛にほかならない。誰の視点かによっ