岸本佐知子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことのない四人が、断片的な情報を手がかりに、その内容についての憶測を語りあった本です。最後に、四人がじっさいに『罪と罰』を読み、その感想について話しあっています。
「教養の崩壊」が論じられるようになって久しく、本書のタイトルを目にしたときには、教養主義の逆張りのようなネタで、はたしてどれだけおもしろく料理できるのだろうかと、あまり期待はせずに読みはじめたのですが、予想以上にたのしく読むことができました。
とりわけ、三浦しをんが現代の小説家としての観点から、次々に彼女なりのストーリーを展開していくのがおもしろくて、現代の小説と19世紀のロシア文学のちがいが -
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Posted by ブクログ
暫く前から、マグリットの≪マック・セネットの想い出に≫が表紙になっているこの本が気になっていた。
51篇の短編が詰め込まれているこの本の最初の物語の冒頭はこうだ。
---十二人の女が住む街に、十三人目の女がいた。---『十三人めの女』より
この不可思議な矛盾はルネ・マグリットが何枚も描いた≪光の帝国≫にみられる 昼間の晴天の真下の夜と似ている。
51篇の作品の中には、30ページ近くの長いものからたったニ行のものもある。
寓話的なものやマグリットのような一見自然にみえるがよく読むと矛盾を孕んでいるというような文章や順番をふられたもの同じ名詞や動詞を多用するもの さまざまなパターンの散文が -
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Posted by ブクログ
これもまた奇書。
前半は空回りが激しいイタイ中年女性のひとりコメディ。
しかし、中盤以降物語の性質が一気にかわる。
本当に同じ主人公なんだろうか、同じ物語なんだろうかと不思議な感覚になる。
中学生が一気に大人になる様を見ているようだ。
孤独、親、妊娠と出産、子育て、そして死の物語なんだろうとは思う。
しかしこの物語に重みはなく、どこか軽薄なところが好みが分かれるところなんだろうか。
中盤、物語の転換場面で思わず、えっ、と声が出てしまったけれど、その他の部分で面白みはあまりないかもしれない。
その他、胡散臭いセラピーやら主人公が勤務する存在意義不明の財団(税金控除対策なんだろうけど -