岸本佐知子のレビュー一覧
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純文学作家の発想
ひとつづつ評していく。
川上弘美。未来SF。
発想が陳腐だと思ふ。書きたいことを意識的に書いてはゐるが、予定調和的で凡庸から突き抜けない。
人間由来の人間を工場で作らず、多様な動物由来の人間どうしが結婚し合ふ未来観(近親交配によるホモ接合型を減らすためだらう)。そこでの恋愛。
厳密にいへば、人間と他種ではゲノムの相補性が少ないからありえない。遺伝子組換かもしれない。まあそこは目をつむることにしても妙だ。
未来でも入籍といふ制度は残ってゐる。人間に本能の性欲が残ってゐるんだらうけど。結婚しない人や、核家族がどうなったかも書いてない。
妙にSFが現実路線のわりには、ふはっとしてあいまいだ。雰囲気小説のたぐひか。さいきんの川上弘美には『大きな鳥にさらわれないよう』等、未来小説がある。
多和田葉子。
川上弘美より面白い。
純文学らしく突っかかる表現が冒頭から続く。生花で花の首をちょんぎるだの、乱暴な表現は筒井康隆を想起した。独特で考へ抜かれた奇妙さを意識して、多和田自身も意図しない効果が出るやうな浮揺感を狙ってゐる。言語にこだはるナショナリストぶりもあらはれて、いつもの社会諷刺もある。
全体としては普段の多和田の域をつかず離れず。 -
Posted by ブクログ
翻訳者としての岸本さんしか知らないので、はじめて本書エッセイを読んで、へー、こんな人だったのかと思った。
細かいこと、みんなが気にしないことがやたら気になるひとが言葉づくしで書いたエッセイである。
テイストは、昨年読んだ三浦しをんの昔のエッセイにちょっと似ている。
それは20年前のエッセイだったので、さすがに古いなと思った。
本書も初出は20年ほど前のもの。
三浦しをんほどの共時性ニーズはないものの、やはりこの手の本は出版されてから、5年以内に読まないと鮮度が落ちてしまう。
今回は00年代以降の倫理観価値観の変化を大きく感じた。
いまの岸本さんが同じ内容を書くなら、書き方がかなり変わるだろうと思った。
岸本さんの会社員時代の話がちらちら出てくるが、洋酒メーカー、カオスで自由な社風のようだったので、サ◯トリーだろうなと思って調べたら本当にそうだった。だよね〜。
それにしても子供の頃からずっと都会に住んできたひとの感覚だなあと思った。
そういう意味では私はあまり共感しなかった。
後半、吉田知子の話がでてきて嬉しくなった。
そうだ、私は岸本さんが編んだ本で吉田知子を知ったんだった。おおいに感謝したい。 -
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問題作。
あとがきにもあるが、ジョージ・オーウェルの「動物農場」を引き合い出されて書評が多く語られているそう。
家畜を擬人化して、独裁体制的な政治を批判しているが、こちらの擬人化されているものは、もっと過激で何が何だか分からない奇妙な物となっている。
ちなみに登場する大統領の姿は「小柄で貫録たっぷり、たくさんの腹、白い口髭、二重顎が小山のように積み重なり、細く頼りない三本脚で支えてる」だそうだ。
どんな生き物だか想像が出来ない。他の登場人物はもっと分からない。
何となく気が付かない内に、どんどん恐怖政治が実行されて行き、気が付くと理不尽な理由で自由が奪われ、ちょっとした事で殺される(物語では解体される)。
ともかく、とても恐い話。大人の寓話。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者の名前は存じ上げていたが、今回はじめて文章を読んだ。
きっかけはSNSで有名な人が好きだと言っていたから。
最初はよくある(?)自分の生活や老いを面白おかしく書くタイプのエッセイだ、と思ったら「羊羹」あたりからおや?となった。
短いテーマの文章を読み終えるたび、いろんな種類の不思議な気持ちになった。
エッセイというより創作の短編集を読んでいる気持ちになった。
小さい頃、今よりもっと世界が狭くて面白いものも少なかったとき、身の回りにあるものともっと距離が近くて、いろいろ考えていたことを思い出した。
著者はずっとずーっとその感覚を持って大人の頭で考えて唯一無二の感覚を磨いてきたんだな、と思った。
以下印象に残った話。
「エクストリーム物件」
「鼎」「凹」の文字の魅力的な間取り。「Q」「乙」の曲線に寄りかかって、ゆったり足を伸ばしてみたい。
→なんかわかる!!小学生くらいのときは文字そのものと距離が近くて、文字に対して好印象と悪印象あったよな〜と思い出した。
「羊羹」
夜が怖い。宇宙がダイレクトに感じられる。宇宙は何もないのではなく、まだ解明されていない物質で満たされている。それは羊羹のようなものかもしれず、夜はその羊羹が口や鼻や目からなだれこんでくる。
→夜からここまで感情と想像を広げられるものなのか。
「分岐点」
お店に忘れ物をとりに行った友達が帰ってこなかったので、おかしいなと思って帰ったら、友達の方は店から出たら著者がいなかったから帰ったという。そのときから世界線が分岐してしまったんじゃないか?
→決定的ではなくても、説明がつかないささないな不思議なことから世界の分岐は始まってるかもしれない…小さい頃はよくゲームの中のように自分の行動で世界線が変わると信じていたことを思い出した。そしてこれはある程度本当…
「夏」
夏にやりたいことを列挙。子供時代にしかできないようなこともあれば、これからできそうなこともある。
→エモくて印象に残った。
「ぬの力」
ヌテラという食べ物があり、口に入れた時の粘り気で上顎と舌がくっつく感じが見事に表現されている名前がすごい。これは「ぬ」の力ではないか。
→わたしは小学生の頃「ぬ」はなんか嫌いということにしていたけど、「ぬ」のなんともいえぬ力を感じ取っていたのかもしれない。