岸本佐知子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ずっとじわじわと感じていたのは恐怖だった。
今わたしは主人公たちの孤独を想像出来ないほど子供でもなく、人生楽しいから大丈夫!と笑い飛ばせるほど「将来」の近くにもいない。
大人になっていくということが、今の孤独をより深めていくことだとしたら?
そんな恐怖で、読むペースはいつもより遅かったように思う(純粋に表現が好きで読み込んでいたこともある)。
読み終わった今、どんな話か一言で、と言われたら
「泣き疲れて眠るような」と答えたい。
救いはないとしても、明日が来て何が変わる訳でもないとしても、今夜はとりあえず、おやすみ。
そんな小説だと思った。
朝寝坊して、致命的ではないけど初歩的で鈍臭いミ -
Posted by ブクログ
スティーブン・ミルハウザーやニコルソン・ベイカーの翻訳で知られる岸本佐知子女史のエッセイ集。
1993年から1999年にかけて、色々な雑誌に掲載されたものを集めたとのこと。
テンポがよく、押しつけがましいところがなく、とにかく面白い。
ちょっと話を盛っているなと思えるもの、虚実が入り混じっているもの、それどころか虚しかないもの、と内容は色々だが、どれをとっても面白い。
この方の好きな作家や好きな作品などが、僕の嗜好と重なることが多く、まるで昔から知っているちょっと変わり者の女友達と会話しているような気分にさえなった。
この方の他のエッセイもぜひ読んでみたいと思う。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ初めは読みづらかったけど、後半になるにつれ止まらなくなった。
自分の子どもの頃の、湿った手のひらに匂い玉がくっつくことや額に張り付く髪の毛や、セーターが首にチクチク当たることや鼻水が出てくるのにティッシュもハンカチも持ってないと気付いたときのことや、そういった些細な、ネガティヴな記憶が蘇った。
終始熱に浮かされてるような感じ。訳者あとがきにもあるように、「天才作家」と呼びながらも実はこれっぽっちもそんな事思ってない主人公の自我が滲み出る仕組みになっている。
渦中ののシーンは、冗談で終わらせようとしてたのはエドウィンの方で、それを許さず天才作家の人生を完成させたかったのはジェフリーなのかなとか -
Posted by ブクログ
ちょっと奇妙な日常を舞台にした16編の短編集。
人はあまりに長く孤独でいるとおかしなことをしてしまう。トンチンカンな挙動をしたり、そうでなければ思いに捕らわれて固まってしまったり。そんな日々の些細なことを連ねて物語の骨格ができている。個々の出来事はたいしたことではないけれど、反応としての行動から、本人にも無自覚に心の動きが語られていく。どんなふうに物語をまとめ上げているのか不思議に思える作家の技。ああ、あるあるこういうこと……と共感するところ大なのだけれど、いかに孤独すぎる人の挙動を熟知しているかがバレるので、人に読んだ読んだと言うのは恥ずかしかったりする。
しかし、孤独な人は絶望の淵に沈んで -
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Posted by ブクログ
ある日の午後,車でFMラジオをつけると,作家と翻訳家の会話が流れてきて,翻訳の苦労話などとてもおもしろくて聴き入ってしまった.あとで番組表を調べて見ると,作家は西加奈子さん,翻訳家は岸本佐知子さんだった.
というわけで岸本さんのエッセイを読んでみた.本を読んでこんなに笑ったのは久しぶり.この方の周りでは常に何か変なことが起こっているような錯覚を引き起こす.ほとんど自虐ネタで,妄想の虜になって,一般世間とずれが生じるというパターン.それと言葉の音に対する感覚が独特で,これまた妄想のネタになる.私はこれを電車の中で読み始めてしまい笑いをかみ殺すあやしいおじさんになってしまった.こういうハチャメチ -
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Posted by ブクログ
こんなに笑えて、こんなに寂しく苦しい物語は初めて
ミランダ・ジュライの短篇は、出来る事なら気づかないふりをしていたいような、心の奥底の孤独感や悲しさを、笑いながら軽やかに、残酷なくらい鋭く、容赦なく掘り出していく。
とぼけているような、ユーモアたっぷりの軽やかな語り。でも絶望的に悲しいのだ。
独り言のような面白い独特の文章なので、原文が気になってそちらも読んでみた。ストレートで乱暴な性描写や表現も、よりサラッと乾いた印象。語りも、よりクールでシュールな肌触りがする。全編を通して、訳文のほうが女性的な感じかな。どちらもいいので、どちらもお勧め。