岸本佐知子のレビュー一覧

  • 十二月の十日

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    どの短編も、登場人物が(設定も)常軌を逸しています。心情的に寄り添うのがとても難しくて、戸惑いながら読み続けました。が、最後まで読んで、なぜか晴れやかな気持ちになっています。私みたいなポンコツも、生きてていいんだ…的な。まだ頑張れそうです、私。

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    2024年01月12日
  • 分解する

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    ネタバレ

    生活の断片を覗き込んでいるような細かな描写が魅力的だった。知らない人物だけれど、その不安や恐れなどを直に知ることで身近に感じるというか。文章でなければ得られない楽しさがあった。
    特に後半に好きな話が多く「昔、とても愚かな男が」「メイド」「コテージ」「年寄り女の着るもの」が良かった。言葉の流れも美しく、繰り返して目で追いたくなる。泣き喚いたり必死に訴えかけてきたりしない、静かな絶望を一人で受け止めているような描写が好みだった。また他の作品も読みたい。

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    2023年12月04日
  • 『罪と罰』を読まない

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    声を出して笑いました。ドストとかラスコとか 、そもそも読んでいないのに読書会って?! 4人の推理や想像力が楽しかったです。漫画でザックリと済ませていましたが 自分でも突っ込みながら読んでみたくなりました。

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    2023年11月27日
  • 話の終わり

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    序盤は慣れない言葉のリズム感を楽しみ、〜中盤までは慣れなさによる酔いと停滞感で気怠く読み進めていたが
    中腹辺りの展開から急に、血肉を持ったような生々しい不規則さで飲み込まれ、そこからは一気に読み上げた。

    視点としては全く変わらない軸があって、章を跨がない限りはシチュエーションが大きく移らないのに
    徹底したディティールの描写によってこんなにも得られる没入感が変わるものかと驚いた。

    その一貫性に嫌悪感を抱く場合もありそうだが、何故そう過ぎるのか理由を探すと
    自分の感覚を、自分のフィルターだけを通して発しているようなその浮世離れ感で。
    それはわがままでも物知らずな訳でもなくて、ただ「ひとりが暮らしていく」という事を表しているだけという気がした。
    外界との境界線が曖昧な訳ではなく、むしろありありと感じていく程に他者と自分と世が混在していくのなんて、まさに生活だ。

    様々なことを横切らざるを得ない日々の中で策を練るのも動くのもこの身なので、そりゃそうだよなと思い始めたところからがこの小説のスタートなのかもしれない。

    なんとなく避けていた理由がそのまま文章の中にあったので少し怯んだが、読めて良かったなと清々しく頼もしい気持ちでいる。

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    2023年09月21日
  • なんらかの事情

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    ドスト本を読んで、久しぶりに著者のエッセイ集が読んでみたくなったもの。相変わらずの突拍子もなさで、いと面白き。

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    2023年07月21日
  • 『罪と罰』を読まない

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    タイトルからして面白そうだけど、実際面白いのが凄い。クラフトエヴィングさんの著作は未体験だけど、いかにも面白そうなメンツだもんな。何よりも、エッセイが最高な岸本さんが、本座談会でも本領を遺憾なく発揮してるのも良い。物書きを仕事にしているとはいえ、殆ど情報ゼロの状態から、わずかな手掛かりを元に、よくぞここまで想像を広げられるものだな、と。そして、”カラマーゾフ”を読んだとき、名前の長さや難しさ、その圧倒的なボリューム感にかなりの根気を要したから、ドストの他の著作にはなかなか手が出せないと思ってたけど、本書を読んで、またちょっと読みたくなりました。

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    2023年07月18日
  • 最初の悪い男

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    ネタバレ

    すごストーリーだ…

    いろんな人間のいろんな面に笑わないで向き合うことが得意なのか…?

    フィクションだからアレなんだけど、みんな外面普通でも案外己の「システム」を大事にしながらズレながらヒステリー球かかえて生きてるんだろうな~というちょっとした救いみたいなものをかんじたり

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    2023年07月13日
  • 気になる部分

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    翻訳家の岸本佐知子さんによる、エッセイ集。90年代に書かれたもの。
    著者はクセが強く変わり者という印象だが、普遍的にみんなが感じているだろうこともたくさん言葉にしており、共感できる部分もある。翻訳の苦労話のようなものはほとんど書いていない。子ども時代に不思議に思っていたことや、会社勤めをしていたころの話などが中心である。
    かなりたくさんの本を訳しているようだが、彼女の翻訳書は読んだことがない。売れているのだろうか。

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    2023年05月12日
  • なんらかの事情

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    エッセイであろう、ということ以外、前情報が全くない状態で読み始めてしまったら・・・見事にツボッた。
    これは1人で電車などでは読んではいけないヤツです。どうしても笑ってしまう。
    出だしは何てことはない、些細な話なのに、徐々にスピードを上げて壮大なスケールの妄想の世界へ放り込まれて、気がついたら、その渦の中でグルングルンに翻弄されている感じ。そして突然ポイッと現実世界に引き戻されているのだ。
    本当に体感したのか、夢の世界での話なのか、思い出が膨らみすぎたのか、物事を掘り下げすぎて深みにはまってしまったのか、はたまた妄想なのか、境界線の曖昧さが不思議な世界観を醸し出していると思う。
    肩を震わせて笑いながら、まんまとその世界で泳がされてしまった。

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    2023年04月23日
  • エドウィン・マルハウス

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    ネタバレ

    子どもが子どもの伝記を書く。生まれた時から観察される者であるエドウィンと6カ月年長の観察する者であるジェフリー。純粋な子どもらしい興味や不思議や無邪気な残酷さに満ちた幼年期、悪魔に魅入られたような恋や友情の壮年期、そして作家としての苦悩と言っても9才から10才の事象だ。次第に伝記作家としてのジェフリーの存在が不気味に全体を侵食してくるかのようで怖かった。
    リアリティーのある描写が目に見えるようでした。

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    2023年04月14日
  • 話の終わり

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    別れた12歳年下の彼から手紙が届き、返事をどうすればよいか考えあぐねてると、小説にしようと思い立った。記憶があいまいで思い出すのも順不同なのように、お話はとりとめもなく順不同に流れていく。

    何も起こらないしどうなってるかよく分からない。でも、わからなくていいんだと思う小説だった。読んでいるうちに私自身も小説の中の彼を求める「私」になった気分だった。彼に会いたいのに、パーティに来て欲しいのに彼の言葉を聞くとめちゃくちゃ怒るという、なんと矛盾した行動とる私。彼の働くガソリンスタンドまで行っちゃう私。当初はお金を返さないダメ男の彼かと思ったけど、そうでもなさそうだと思った。

    はっきり言ってこの小説では何も起こらない。
    何も起こらないのに、けだるさが漂うお話に引き込まれてしまう。メランコリックでただぷかぷか浮いてるだけ(ときに激しく浮き沈みしてきるが)のような、そんなお話も好きだと感じた。

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    2023年04月04日
  • いちばんここに似合う人

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    孤独は孤独なりに繋がろうと、不器用に生きる人たち。この本が人気ってことは不器用に生きていて慰めを必要としている人が多いってことだ。この事実が、私をまた慰めてくれる。私はこの辺のバランスをうまくとれる方だと思うし慣れてしまったからさほどこの本を必要としていない。でも、この本を読むべき人はもっと多くいるはずだ。諦めたからこその光。

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    2023年03月19日
  • 話の終わり

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    これは私の話だ、と思った。
    好きな人の髪の色や服、コーンチップとトランプ、安くて苦い紅茶の味。事実を並べているだけなのに、そこからいろんな感情が連想されるところが素敵だった。
    誰かのことを好きになって、愛して、深い悦びを知ったとしても、別れがこんなにも辛いのなら、最初から何もしなければいい、そうやって人と距離を置いて暮らしたら楽なのかなと思った。

    あんなに好きだったのに、一緒にいる時間が耐え難くなる。でも別れたらその姿を求めてやまない。なんでこんなに矛盾していちいち喜んだり倦んだり悲しんだりするんだろう。

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    2023年03月05日
  • いちばんここに似合う人

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    孤独で優しく不穏な短編集。何と表現したらよいか迷う短編ばかりですが不器用で純粋な登場人物たちにはどこか共感してしまいます。時折挿入される愛のシーンも寂しい気持ちになります。

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    2023年01月04日
  • 最初の悪い男

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    43歳独身女性の妄想強めの現実世界。
    20歳の居候が入り込んできて、日常がどんどん変わってしまう。
    妄想がリアルだけど、現実がそれを超えて広がっていく。

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    2023年01月03日
  • なんらかの事情

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    岸本佐知子の妄想という名の暴走エッセイ第二弾

    気楽に読めてクスッと笑える。
    ホントに不思議な方です。

    「やぼう」に爆笑しました\(//∇//)


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    2022年12月13日
  • 気になる部分

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    予想を超えて面白かった。
    収録されているエッセイの初出は、一番古いものだと1993年。だけど、時代を感じさせるものは少なく、普遍的な日常や記憶の中からお題を取り上げて深く考える過程が、上手く、面白く文章化されている、と感じる。
    元々人間的にも魅力を感じていて、この本を読んで言語感覚も好きなことを確認できた。

    岸本さんは、元々はショーン・タンの絵本の訳者として知り、その後、アトロクで翻訳者のお仕事の話だったか日本翻訳大賞の審査員としてだったか、とにかく出演し話しているのを聞き、話し方や話す内容、会話の反応から「この人、なんかちょっと気になるな……」と思っていた(そのとき一緒に出演していた柴田元幸さんも斎藤真理子さんも、みんな翻訳した本を読んでいたので、すごく面白い話を聞けたという記憶がある)。

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    2022年08月31日
  • 変愛小説集 日本作家編

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    ネタバレ

    12編のアンソロジー。
    どの作品も変愛の名に相応しかった。この一冊に密度濃く詰め込まれたそれぞれの変愛。愛と一口に言っても当たり前ながら1つも同じものはない。
    その中でも特に好みだった2つについて書きたい。

    『藁の夫』
    2人の間に嫌な空気が流れる、その始まりはいつも些細なことなのだと思い出させる自然な流れだった。あんなに幸福そうだったのに、藁に火をつけることを想像させる経緯、鮮やかな紅葉にその火を連想させるところがたまらなく良かった。

    『逆毛のトメ』
    シニカルでリズムのいい言葉選びが癖になる。小説ってこんなに自由でいいんだと解放して楽しませてくれた。躊躇なく脳天にぶっ刺す様が爽快だし、愚かな人間の頭に邪鬼の形相のトメがいることを想像してそのコミカルさに取り憑かれる。気づけばトメのことが好きになっていた。

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    2022年04月21日
  • いちばんここに似合う人

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    80歳を過ぎた老人に海もプールもない土地で泳ぎを教えた経験を語る女性の話とか、あり得ないようでいていや、あるのかもしれんな…と思わせるようなユーモアと魅力があって、息抜きに読むにはちょうどいい。比較するにはポップ過ぎるけど『ワインズバーグ・オハイオ』を思い出した。

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    2022年04月15日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    「小説のような人生、ではなく人生は小説」なのかなと思った。

    入り込むまでに時間がかかったけど、途中で↑に気づいて没頭して読めた。目まぐるしく変わる生活と荒々しい感情の揺れに眩暈がした。比喩表現の鬼だな、と(とてもいい意味で)。

    タイトルにもなった「掃除婦のための手引き書」もよかったけど、「ソー・ロング」「ママ」「沈黙」「さあ土曜日だ」の流れがとても好きだった。中毒性が高く、まんまと他の本も読みたくなった。

    【アメリカ】

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    2026年04月05日