岸本佐知子のレビュー一覧

  • ひみつのしつもん

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    素晴らしい翻訳家さん(本日(令和8年1月17日)の日経新聞朝刊の書評欄でも同業者の方に激賞されていました)によるあまりにも卑屈なエッセイ。
    俳優の名前がどうしても思い出せない、あまりにも運動不足、自分が話した内容がみんなに信用されないが別の人が同じことを話すとあっさり信用される、などのエピソードが面白おかしく展開される。
    日常の些細なことに、あまりにも豊かな想像力を働かせてしまうところも素敵です。

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    2026年01月17日
  • 最初の悪い男

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    8章までは妄想が続き気色が悪い。
    9章からは現実が押し寄せてくる。現実は不思議と気持ち悪くない。
    13章からは、嫌な予感がしてくる。

    赤ちゃんと淡々と日常をこなすシェリルは、地に足がついていき、世界を俯瞰し、他者を赦していく。最初は、すごくキモくて、なかなか進まず、読み終えられるか不安になったけど、本当に愛の物語に発展して、余韻は最高だった。

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    2026年01月11日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    一度に1人しか入ることのできない『内ホーナー国』と、その国を取り囲む大きな『外ホーナー国』の話。内ホーナー国に1人が入っている間、他の住人は外ホーナー国の領土内にある『一時滞在ゾーン』で身を寄せ合って立って待っている…。
    両国の住民として登場するのは、機械の部品や植物を組み合わせたような何とも形容し難い生き物たち。
    お互いに睨み合いながら暮らしていたが、ある日、一時滞在ゾーンからはみ出してしまったことがきっかけで騒動に。
    そこにフィルが出てきて税を取ると言い出し…。

    まさに近代の戦争やジェノサイドを表現していて、それが不変的であることに悲しみを覚える。ちょっと頭の回転が速くて声が大きく、もっともらしく喋ることができるそんな人物に流されていく。世の中がうねりだすと、それを止めるのはとても難しい。
    少しでも声を上げたものは粛清され、小さいうちにその芽を引っこ抜かれてしまう。

    ジョージオーウェルの動物農場に通じるところのある、この世界を風刺した物語。滑稽なキャラクターと嘘だらけの政治。読みやすくわかりやすい。身につまされる思いだ。

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    2026年01月06日
  • ひみつのしつもん

    購入済み

    文章のリズム感が心地よくてスルスルと読んでしまった。日常のちょっとした不思議から自身の自虐的な話やらとても楽しく読めました。

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    2026年01月05日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    オートフィクション(自伝的小説)の連作短編または掌編小説集(一番短い「わたしの騎手」は2ページと4行)。
    どれも、自身の家族のことや、職業遍歴や、アルコール依存や、肺がんで死期の迫る妹を看取った経験など、重苦しい実体験をベースにしながらも、文章は軽妙な印象。
    また、話の終わらせ方がどれも秀逸。p.34の「大っきらいよ」とか、p.147の「コリント!」とか…これだけを読んでも何のことやら判らないけれど、良い。

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    2025年12月31日
  • わからない

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    2000年ごろからの、あちこちに書いたものをまとめた、というエッセイ。今年は『死ぬまでに行きたい海』に続いて2冊目になるが、それまでの5年間はエッセイの出版はなかった・・・。なしたの?(調べたら、キシモトさんはこのペースでしかエッセイを出していなかった。「それでいい」とまで書いていた、自分・・・)
    それにほら、まとめて出すから、370ページにもなっちゃって。半分ずつ、2冊でもよかったのに。でも、ボリュームの割に2300円(本体)でお値打ちかな?
    中身を読みはじめたら、たいへんお買い得でした。

    1ページと少しくらいの文章が多いので、他の本を読みながら、ちょっとお菓子をつまむように、ひとつ、ふたつと読んでいる。このボリュームなら長いこと楽しめる。
    「読み終わった」設定にしないとメインの本棚に並ばないので、そうしたけれど、じつはまだまだお楽しみの最中なのだ。

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    2025年12月27日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    最初はなんだかよくわからず、途中で読むのをやめてしまった。
    ルシア・ベルリンについて調べてから、あらためて最初から読み直すと急に色鮮やかに情景が浮かんで驚いた。
    時系列もバラバラの人生のカケラを拾い集め、彼女の人生をおもいながら読む。

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    2025年12月24日
  • 十二月の十日

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    ネタバレ

    12月になったら読もうと思っていたけどあえてクリスマスシーズンに読む本ではなかったかも…(汗)原書刊行は2013年。短篇集。

    バッドエンドの中に少しのハッピーエンド、それはまさに人生じゃないだろうか。

    個人的に気になった作品↓
    子犬
    救いたい形をしていない人の話。

    センプリカ・ガール日記
    「読み落とした?」って混乱しました。調べちゃいますよね、SG。普通の格差のある生活の中のディストピア。

    わが騎士道、轟沈せり
    途中までは面白く読んでいたらあっという間に社会的に死んでいた、怖い

    十二月の十日
    読み終わって少しホッとした。本書の最後がこの作品で良かった。

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    2025年12月18日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    日常の薄皮一枚がめくれて、別の世界が顔を出すような、不穏な違和感。胸騒ぎがずっとつづくのに、ぐいぐい読まされてしまった。ふだんは見ないように蓋をしているもの。暗渠をのぞきこむような、こわさやおもしろさやうしろめたさがあった。
    クラフト・エヴィング商會による装幀も最高。

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    2025年12月17日
  • 掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集

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    260頁に24編の作品があるため、短いモノは2、3頁で終わる。長くても10頁程度。何より、描写がきわめてクールでスタイリッシュ(体現止めが多い)。描かれている内容は極めて悲惨、残酷、無情な場合が多いのだが、なんてことのないわ、これが日常よ、という感じでサラっと美しく流して書かれているので読み手は暗鬱とした気分にならない。
    これは、限りなく詩ち近い小説だと思う。

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    2025年12月16日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    【火星から来た男 = The man from Mars】
    こういうタイトルだが、別に宇宙人は登場しない。大学に通う主人公が、西欧系ではない男性に出会って、友達認定される。無下にもしないで適当にあしらっていたら、家にまで訪問される。これまで男性に見向きもされない、男性とはお友達関係しか築けないと思われてきた主人公は、にわかにモテるようにもなるが。

     北と南という語句が登場するので、おそらく男性は朝鮮半島の出身。確かに、行くところ行くところどこにでも現れたら気持ち悪いかもしれないが、暴力をふるったわけではない。にもかかわらず、警察を呼ぶのは、彼の国籍が潜在的な差別意識に繋がったのでは。

    【ベティ = Betty】
    姉妹の妹視点で描かれる、魅力的な夫フレッドに対して、なんとも冴えない妻ベティのカップル。他の女性に色目を使うフレディに、段々おかしくなっていくベティ。

    幼い頃と大人になった後では、ベティに対する見方が全く変わってしまったことを述懐するも、自身はやはりフレッドのような男性にちやほやされたい面があることを認める妹。

    【キッチン・ドア = When it happens】
    これは最初主婦の妄想?と思っていたが、次第に描かれる異変が真に迫ってくるため、現実に起こっていること?と不安が過る。

    【旅行記者 = A travel piece】
    旅行記事を書いている記者が乗った飛行機が、ある日不時着。ボートに乗って逃げ出すが、集団生活の常として、起こるべき事が起こってしまう。

    こういう不測の事態が起こった際に、精神的に強い者が最終的に生き残るのだなとしみじみ。これかた大変恐ろしい事が起こるだろうことを予測させる気になる所で短編はオープンエンド。

    【ケツァール=The Resplendent Quetzal】
    メキシコ旅行に来ているサラとエドワードはいわゆる倦怠期夫婦。エドワードが関心のある鳥のことなんか全然気にもしていないサラ視点から物語は始まる。サラは死産となった子供の事が気になって、イエスの人形の万引きをしていた。今度はそんなサラの心のうちなどお見通しなエドワードの視点で語られる。しかしエドワードはサラの子供への執着には気が付いていない。サラのある行動が、まるで滝に飛び込むかのように見えてしまい。

    既に破綻している夫婦がこのまま生活を続けるのか、それとも何か決断するのか。こちらもオープンエンド。

    他【訓練 (トレーニング) = Training】【ダンシング・ガールズ = Dancing girls】収録。

    初期短編集の復刊。今回は【ケツァール=The Resplendent Quetzal】が追加。

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    2025年12月15日
  • 『罪と罰』を読まない

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    憶測で語り合う様子が面白い。私も読んだけれど忘れた一人なので再読したくなった。
    ちなみに私はラスコが寒いと言って外套を着ていたから冬の話だったと記憶していましたが実際には夏だったようで……

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    2025年12月07日
  • 短くて恐ろしいフィルの時代

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    ネタバレ

     アメリカの小説家ジョージ・ソーンダーズの中編小説。原書は2005年に発行。本書は2011年に出版された単行本を、2021年に文庫化したもの。
     あらすじとしては、一人しか入れないほど小さい「内ホーナー国」と、それなりに広い「外ホーナー国」との間に起こるいざこざと、国境の監視役(自称)であるフィルが暴走し独裁者となる顛末を描いた「おとぎ話」となっている。軽快なユーモアはあるが、正直に言ってつまらないと思いながら読んでいたが、読後しばらく考えてみるとあることに気づく。確かに背筋が寒くなった。

     登場人物はどれも奇妙な造形をしており、脳がラックに入っているものや、枝や鹿の角が突き出たもの、シャベルのような尻尾など、イメージを寄せ集めただけで悪意すら感じる。登場人物は少ない上に個性に乏しく恐ろしく愚鈍で、情景描写さえも「小川が流れてりんごの木が生えている」など、小学生でももう少し上手に描けそうなほどお粗末だ。ストーリーも行き当たりばったりで、まるで子どもの人形遊びのようだ。しかし、それこそが作者の意図なのだ。

     男の子なら玩具を戦わせたことがあるだろう。著者のソーンダーズは独裁者の理論と無邪気な人形遊びを繋げている。本書は戦争に至る政治家の滑稽さを描いているのではなく、男性性の中にある無意識な暴力性と、誰でも独裁者になる可能性を鮮やかに描いて見せている。最後に登場する巨大な手の正体は我々なのだ。独裁者は誰の中にもいる。
    更に言うと、自分の子どもが人形の手足と文房具を付け替えて、本書にあるような残虐なストーリーを考え出したとするとどうだろうか。恐ろしくなってこないだろうか(私は恐ろしい!)。あとがきで以下のような著者の言葉が引用されている。「この本は、世界を過度に単純化し、〈他者〉とみなしたものを根絶やしにしたがる人間のエゴにまつわる物語なのです。私たち一人ひとりの中に、フィルはいます」

     あとがきによると、執筆中のアメリカで9.11が起こっている。ソーンダーズが時代をどのように捉えたかはわからないが、本作のメッセージは政治的なことではなく、人間の根源的な欲求に根ざしているのではないか。つまり男の子の人形遊びが加熱していく姿に、人類の悲惨な歴史をぴたりと重ねたのだ。自分のお気に入りの人形があれば、都合よく強くする。カッコ悪いオモチャは倒すか破壊する。それに飽きたら捨てる。あの巨大な手のようにである。フィルは私が飽きて捨ててきたオモチャ達だった。

     ジョージ・オーウェルの『動物農場』が引き合いに出されるらしいが、少しお門違いであると思う。『動物農場』は人間社会への確かな観察があり、コミュニティの理想が没落していく様をありありと描いているので良くできた「寓話」となっている。しかし本作には社会を観察しようという気はさらさらない。ステレオタイプな独裁者のイメージは、社会批判というにはあまりも稚拙だ。本作は、生活は豊かになっても歴史から何も学ぼうとせず、無知を安っぽいストーリーに埋められてしまう人類の写し鏡なのだ。
     作品の批評をするときに、資本主義対共産主義、右翼対左翼、男対女、愛国心対反日などなど単純な二項対立に落としこむことが間々見られるが、それこそ子どものごっこ遊びである。結局、「善対悪」の構図にすり替えられ、〈他者〉はいつも「悪」にされる。そこには建設的な対話はなく、気まぐれなヒーローの勝利しかない。ありとあらゆるところで「分断」が起こっている今、脳のないフィルの暴走は、既にはじまっている。

     とはいえ以上の感想こそお門違いかもしれない。あとがきにあるように、(裏読みばかりしてないで)この軽快でグロテスクな物語をゆっくり楽しむこともできる。不思議ともう一度読み返したくなるような、真似のできない魅力があるように感じた。

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    2025年12月02日
  • 気になる部分

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    初・岸本佐知子さんエッセイ。
    もうこれはクセになる。
    私もたいがい変人だけど、岸本さんも相当な変人なんだと思う。変人同士だからか、岸本ワールドが居心地が良すぎてずっとプカプカ浮いていたい感じ。

    気になる部分って人それぞれ違うのだけど、岸本さんの気になる部分はかなりマイノリティで、そもそも岸本さんにしか気にならない部分なんだろう。
    私は岸本佐知子という人が気になりすぎて、彼女が翻訳し、またエッセイにも登場させている、ニコルソン・ベイカーの「中二階」を勢いで購入してしまった。

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    2025年11月20日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    ネタバレ

    短編7作。
    1977年から時を経ているとは思えない
    技術や住環境は高度化しても、人の思考や偏見の構造は必ずしも進化していない
    本質を突く文学は数十年経っても古びず、むしろ心の停滞が及ぼす影響をあからさまに感じさせる
    この恐怖は、あとがきに記されていた通りである

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    2025年11月19日
  • 最初の悪い男

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    個性の強い主人公と妄想と現実のシームレス加減に始めはついていくのがやっとだったけれど、読む手は止まらず、いつのまにか主人公を心から応援していた。美しい文章がいくつも転がっていて、文字を拾うだけでもキュンとした。

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    2025年11月16日
  • 気になる部分

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     強烈なユーモアのセンスに度肝を抜かれました。瞬間的に気の利いたことが言えない私には、刺激的で、面白く読むことができました。
     私も、周りを和ませる冗談が言えるようになりたいです!

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    2025年11月16日
  • わからない

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    「技能の未熟な者がうかつに手を出せば、よくて空振り、悪くすればデッドボールとなり、手指の骨折や皿の破損、寿司ネタおよび酢飯の店内への飛散といった事態を招く結果となる。」
    p.110 ここ行ったことない①回転寿司 から引用

    行ったことのない回転寿司を勝手に想像してここまで書けるのがすごい。寿司のデッドボールって何なんだよ。おかげでカフェで1人で吹き出す羽目になった。好きだ、岸本佐知子。

    過去刊行されているエッセイ集はたぶんほぼ全部読んでいる。今回は20年以上前に寄稿されたもの、日記、書評などなどバラエティに富み様々な角度から岸本さんの文章が読めてお得。
    日記を読むと本当にたくさん映画や舞台、書籍、食事に日々触れていることがわかり、それがこの岸本ワールドを作っているのか…と思うなどした。

    「意味がわからなくて怖い」と「面白い」って同時に成立するんだ。まあ、大抵は怖いです。

    怖いのに、ときどき急にふわっと投げられる岸本さんの温かい文章がこれまた大好きで。

    「ドラえもんは、べつに何もしてくれなくていい。四次元ポケットから便利なものをだして、私たちを助けてくれるんでなくていい。ただ未来から来てくれるだけでいい。そうすれば、私たちに未来があるとわかるから。」
    p.44 オバQ、あるいはドラえもん より引用

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    2025年11月12日
  • ダンシング・ガールズ:マーガレット・アトウッド短編集

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    ネタバレ

    あとがきにも書いてあったが、読後モヤモヤとした不安が残る話ばかりだった。
    他者とわかりあえない、自分が正義だと思いこんでいても見方を変えればそんなことはない、無自覚な差別、いつかすべてが崩壊する予感など。
    これが最初に日本で刊行されたのが1989年とのことだけど、現代のテーマでもおかしくない話が多かった。
    決して明るい気持ちになる話ではないけど、惹き込まれるものがあり、あっという間に読めた。

    『ベティ』の最後、「永遠に謎なのは、この世のベティたちなのだ」がすごく印象に残った。
    正直私もフレッドの気持ちのほうが理解できるし、フレッドは世の中に多くいると思う。

    『旅行記事』は、どうしても生きる実感が持てなかった主人公が飛行機の海への不時着を体験し、生きる意味を望んだことを後悔する話。
    私もつい生きてる実感が希薄になることがあるけど、幸せで何不自由なく生きていられるからこその虚無感なんだろうと思う。

    『ケツァール』は、お互いがお互いを理解できないままでいる夫婦の話。それぞれの視点から書かれていて、妻の視点からだと夫が理解不能だし、夫の視点からだと妻が理解不能。
    結局他人の気持ちなんてわからないし、自分が正しくて相手がおかしいと思ってみんな生きているんだろうな。

    『訓練』は、特に最後に胸が締め付けられた。心理描写がとにかくすごい。
    医者の家系で、ふたりの兄はハンサムで医者としてもうまくやっていけそうなのに、自分はハンサムでもなく医者にも向いておらず落ちこぼれだと思っている主人公が、障害を持つ子どもたちが集まるサマーキャンプで働く話。
    そこで出会ったジョーダンに肩入れしていくが……。
    無自覚な差別や、善意でやったつもりが悪い結果になったり、憐れまれる側からの攻撃性、自分がやっていることも周りが頑張っていることもグロテスクで惨めであること……などなど辛くなる要素がなかなかに多かったけど、とても印象に残った話だった。

    表題作『ダンシング・ガールズ』は相手が理解できないまますれ違い、各々が自分が正しいと思ったり、永遠に叶うことのない理想郷だったりと、これも読後切なさが残る話だった。

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    2025年11月09日
  • 気になる部分

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    万城目学さんが、エッセイが一瞬うまくなるドーピング、と称していたので手に取った。
    独特の妄想癖ある岸本さん、あぁ私とおんなじような謎なこと考えがちな人が他にもいるんだ!と思ったのもつかの間、岸本さんのは激しすぎて、こりゃちょっと違う、と思いに至る(笑)。
    面白く、すぐ読めた。

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    2025年11月06日