岸本佐知子のレビュー一覧
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ネタバレ誰もがここで書かれている彼女のことを好きになってしまったり、そうでなくても嫌いにはなれないんじゃないかと思った。賢くて繊細で、情熱と愛があり時に弱く、悲しみと喜びに満ちた人生を送る女性。彼女の言動には優しいぬくもりを感じるし、言外に親密な空気が漂うところが好きだ。
「カルメン」や「ミヒート」で描かれている、悲惨な状況に陥ってしまった女性や子どもの話がとてもつらかった。あまりにも克明でハラハラしながら読むことになったが、決して同情的には書かれておらず、作者の冷静な目線をいつも感じた。
姉妹のバカンスを描いた「哀しみ」が特に心に残った。少しの嘘だって、すべて妹への愛にほかならない。誰の視点かによっ -
Posted by ブクログ
仕掛けが面白い。主人公つづった、親友にまつわる伝記がそのまま小説になっている。欧米の小説を読んでいて思うのは、「なぜこの語り手がこの話をするのか」の地固めが周到だ、ということ。マーガレット・アトウッドもそうだけど、大方の日本の作家のように「なんとなく一人称にしたかった」的な、ジャンルに寄っかかった書き方をしないところが、自立してていいなぁ、と思う。
ストーリーは、ダークサイド・スタンドバイミー、といった印象。
あるいは、月が月になろうとして、相手を自分の手で太陽にしてしまうような話。
神官が神官になろうとして、相手を自分の手で神にしてしまう、と言った方が近いのかな。
とにかく、そんな話。
わざ -
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ハードな人生、タフな登場人物。軽やかに乾いた文章。ユーモアや余裕も絶妙に漂っていて。とてもカッコ良い短編小説たち。
何度目かに読んだときから、これは彼女の人生で体験してきた「あきらめ」の上で物語られているのではないか、というような気がしてきている。
不条理な世界、ままならない人生、過去のやり直せない過ちや消えない傷を受け入れる。「悔いるのをやめる。」一度あきらめる。そのうえで、それでも、ハードな人生をタフに生きていく、生きてきた。その人生から慎重に切り取られ、誇張を加え作り話混ぜ合わせ紡いでいく。そうやって書かれる短編小説は、きっと彼女と同じようにとても強い。そんな印象を受けた。
あきらめるこ -
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岸本佐知子さんの編んだ書き下ろしアンソロジー、タイトルに惹かれてまず読んだ津島佑子の短編「ニューヨーク、ニューヨーク」が素晴らしかった。読みながら、読み終わってから、幾つものことを思った。
「ニューヨークのことなら、なんでもわたしに聞いて。それがトヨ子の口癖だった、という」冒頭のセンテンスを読んで、わたしも数年前の夏に数冊の本を読むことで行ったことのない「ニューヨークのことはもう分かった」と嘯いたことを思い出す。そこには彼女がニューヨークを思うのと同じように個人的で特別な理由があったのだけど。
その後に元夫と息子がこの世にいない彼女について語り合うことで明らかになり“発見”される、今まで知り得 -
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Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
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けったいな一冊、って印象。奇談、というわけでもなく、前衛的ってわけでもなく、虚実入り混じった印象でもなく。荒唐無稽な話でもなく、あくまでも現実に即した話なのだけれ -
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先日読んだ吉田篤弘さんの『おかしな本棚』に登場した1冊。
翻訳家でありエッセイストということでありますが、面白すぎて声出して笑ってしまいました。中でも岸本さんが洋酒メーカーでPR誌の仕事をしていた時のライターさんの事をかいた『ヨコスカさんのこと』と『「国際きのこ会館」の思い出』は爆笑でした。これを読んだら国際きのこ会館に宿泊してみたい!と思って検索したら今はもう閉館しているようでショック(TT)
このエッセイの中にも気になる作家さんと小説が紹介されていました。吉田知子さんの短編集『箱の夫』。そして村田喜代子、奥泉光さんなど私の存じ上げない作家さんもいつか読んでみたいです。
岸本さん