あらすじ
言葉と自在に戯れる、小説の可能性
「アメリカ文学の静かな巨人」のデビュー短編集。言葉と自在に戯れるデイヴィスの作風はすでに顕在。小説、伝記、詩、寓話、回想録、エッセイ……長さもスタイルも雰囲気も多様、つねに意識的で批評的な全34編。
ある女との短命に終わった情事を、男が費用対効果という観点から総括しようとする表題作「分解する」。救いのない不動産に全財産をつぎ込んだ男が、理想の家屋の設計の幻想を若い猟師と共有していくさまを描いて不思議に美しい「設計図」。語学講座のテキストの裏で不穏な自体が進行していく「フランス語講座その1――Le Meutre」。人生で何ひとつ成しえない男のオブローモフ的生活を描く「ワシーリィの生涯のためのスケッチ」。〈夫〉の喉にひっかかった小骨をめぐるどこかほのぼのとした「骨」や、長編『話の終わり』の原型とおぼしきファン必読の短編も。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
生活の断片を覗き込んでいるような細かな描写が魅力的だった。知らない人物だけれど、その不安や恐れなどを直に知ることで身近に感じるというか。文章でなければ得られない楽しさがあった。
特に後半に好きな話が多く「昔、とても愚かな男が」「メイド」「コテージ」「年寄り女の着るもの」が良かった。言葉の流れも美しく、繰り返して目で追いたくなる。泣き喚いたり必死に訴えかけてきたりしない、静かな絶望を一人で受け止めているような描写が好みだった。また他の作品も読みたい。
Posted by ブクログ
岸本さんのエッセイで薦めていたので。
もちろん、岸本訳。
不思議な盛りだくさんの短編集といった印象。
良くわからないけれど、なぜか止められない中毒性のあるお話ばかり。
あとがき解説を読んで、なるほどと更に読み返すものもあり(骨、フランス語講座その1・・・)。
また、著者の作品を読んでみたくなる。