あらすじ
十一歳で夭逝した天才作家の評伝を親友が書く。捨てられた遊園地、マンガ、アニメ映画、少女への恋……。ダークで狂熱的なコドモの世界を、幾重もの仕掛けで描いた傑作。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
描写力がすごい。キャッチャー・イン・ザ・ライみたいな多くの人がぶち当たるある時期の感情のもつれとかとは違ってターニングポイントにすらならずに忘れ去られた子供時代をよくあそこまで表現できるなと思った。
----ここからネタバレ----
エドウィンが撃つフリして目を開けたことによって安堵するよりも伝記を書くためのプロットを完成させることを厭わなかったジェフかなりやばい
あと表向きには多くの人が忘れ去ってしまった子供時代の感性を忘れることなく保ち続けたエドウィンの人生と作品話なんだろうけど、ジェフがそこから外れることを許さなかったという感じがするんだよなぁ
ローズ・ドーンやアーノルドからの影響を危惧してたり、恋に落ちたとなれば相手が誰かと気にしたり…
ジェフが、エドウィンがこの世を去ったあとも揶揄われ続けてるような気がするの、自分が書いた伝記をエドウィンにほらみろって見せられないからじゃないのか
途中途中に出てきたエドウィンが伝記を嘲笑する描写に本人の前じゃなくて作品のなかで反論してたからずっとモヤってるんやろ?
Posted by ブクログ
翻訳家の岸本佐知子さんは自分が翻訳した本はすべて「傑作だ!」と思いながら訳すそうだが、中でもイチ押しがこの本だとか。さもありなん‼︎こども時代、怖がりで移り気で(時に意地悪だった)自分自身の様々な遠い記憶が容赦なく掘り起こされたようで…今ここに居るのがふしぎに思える。
忘れられない一冊になりそうです。
(岸本佐知子さんの訳が素晴らしい‼︎)
Posted by ブクログ
私が読んだのは、単行本で「エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死」(2003/8)だったけど、文庫化にあたってタイトルが短くなったのが、エレンディラ同様に寂しい。
岸本佐知子は悪くない。
Posted by ブクログ
描写がくどくて読むのがつらい小説だった。
しかし、途中、エドウィンの死が決まり、これは小説を覆す反小説だと確信できたところ、全てがスルスルと飲み込めた。
なんと野心的な作品だろうか。
晦渋な小説内小説、小説内批評などを駆使しながら、死をも虚構する小説の見えざる虚構性を突き崩してしまっている。
Posted by ブクログ
ある天才少年が、夭折した親友の少年の伝記を書いた、という体裁。更には、その著者たる少年もどうやら行方不明になっているらしき導入部分があるんだけど、そこを二重にしている意義はちょっと不明(自分的に、最後までそこが気になったんだから仕方ない)。それはともかく、書かれているのはほんの10歳ちょいまでの短い一生なんだけど、内容はとても濃密。ちょっと気難しそうで、何を考えているのかも分かりづらいマルハウスくんだけど、そのせいで素っ頓狂な行動に出てしまう場面も多く、結構にシリアスな人生ながら、思わず微笑ましくなる部分もちらほら。マルハウスくんを悩ませる脇キャラも個性的で、読んでて飽きさせられない。評判通り、傑作の架空伝記小説でした。
Posted by ブクログ
すげえなこれ。いやまったく騙された。第一部 幼年期 がいまいちピンとこなかったので中断しそうになったが、あるキャラの登場から俄然おもしろくなり… 表紙はのほほんとしてるが、読後は印象が一変する。子供向けじゃない大人向けの本です。いやほんとにw
Posted by ブクログ
仕掛けが面白い。主人公つづった、親友にまつわる伝記がそのまま小説になっている。欧米の小説を読んでいて思うのは、「なぜこの語り手がこの話をするのか」の地固めが周到だ、ということ。マーガレット・アトウッドもそうだけど、大方の日本の作家のように「なんとなく一人称にしたかった」的な、ジャンルに寄っかかった書き方をしないところが、自立してていいなぁ、と思う。
ストーリーは、ダークサイド・スタンドバイミー、といった印象。
あるいは、月が月になろうとして、相手を自分の手で太陽にしてしまうような話。
神官が神官になろうとして、相手を自分の手で神にしてしまう、と言った方が近いのかな。
とにかく、そんな話。
わざとなんだろうけれど、冒頭からしばらくは読んでいてかなり辛かった。固有名詞の羅列だったり、むやみに長い情景描写だったりがたっぷり続いて、「いいからストーリー進めてよ!」という苛立ちで飛ばし読みした部分がかなりある。
読み応えが出てくるのは、ローズ・ドーンが登場するあたりから。主人公の粘着質な性格がこの辺りから露骨になってきて、加速度的に面白くなる。
そして、「信用できない語り手」が語る小説が大好きなのだけれど、これもやっぱり当たりだな、と思わせられるのは、主人公が周囲から見たらどんな子なのかは読み手が想像するしかないように作ってあって、しかもそれがおそらくかなりの部分、伝記執筆の動機になっているんだろうと思わせるところ。何せ、こんなに毎日、かなりの時間を友人の家に入り浸って過ごしている息子に対して親がどう関わっているのか一切の描写がないどころか、親が何をしている人なのかもわからない。わからないので、断片的な情報からあれこれ想像せざるを得ない。その辺りが、上手いなぁ、と思う。
Posted by ブクログ
子どもが子どもの伝記を書く。生まれた時から観察される者であるエドウィンと6カ月年長の観察する者であるジェフリー。純粋な子どもらしい興味や不思議や無邪気な残酷さに満ちた幼年期、悪魔に魅入られたような恋や友情の壮年期、そして作家としての苦悩と言っても9才から10才の事象だ。次第に伝記作家としてのジェフリーの存在が不気味に全体を侵食してくるかのようで怖かった。
リアリティーのある描写が目に見えるようでした。
Posted by ブクログ
おもちゃ箱と宝箱をひっくり返したような物語。その、ひっくり返して出てきたもの一つ一つに、まんべんなく焦点が当たるような。全部読み終わって、どこからがフィクションなんだっけ?としばらく考えてしまった。
Posted by ブクログ
初めは読みづらかったけど、後半になるにつれ止まらなくなった。
自分の子どもの頃の、湿った手のひらに匂い玉がくっつくことや額に張り付く髪の毛や、セーターが首にチクチク当たることや鼻水が出てくるのにティッシュもハンカチも持ってないと気付いたときのことや、そういった些細な、ネガティヴな記憶が蘇った。
終始熱に浮かされてるような感じ。訳者あとがきにもあるように、「天才作家」と呼びながらも実はこれっぽっちもそんな事思ってない主人公の自我が滲み出る仕組みになっている。
渦中ののシーンは、冗談で終わらせようとしてたのはエドウィンの方で、それを許さず天才作家の人生を完成させたかったのはジェフリーなのかなとか思うとぞっとした。
ラストの、マルハウス一家の後に越してきた家の少年に興味を抱いて終わるのも怖い。
Posted by ブクログ
なるほどね。エドウィンの伝記という形をとった主人公ジェフリーの小説なのね。最後にそれがわかったから読んだ甲斐があったものの、ここにこれがあって、これがあって、、という情景描写が多すぎるのと、特別なところがそれほどない人物エドウィンの普通の日常を大量に読むのに疲れてしまい、何度も途中で離脱したくなった。翻訳が読みやすかったので何とか頑張れた。
素直に感動する伝記小説を期待して読んだのがいけなかった。実験的な小説なのね。
Posted by ブクログ
#河出文庫 #ミルハウザー 著 「 #エドウィンマルハウス 」
ジェフリー著 の伝記「エドウィンマルハウス」を まるごと入れてしまう入れ子構造。「復刻版によせて」や「初版へのまえがき」も入れた遊び心のある構成
芸術家の人生が終わらなければ、芸術に結びつく 中間点や始点が定まらず、伝記作家は伝記が書けない一方で、芸術家を見出す伝記作家がいないと、芸術家が誕生しないという、芸術家と伝記作家の表裏一体性は なるほどと思う
著者は、子供の執着心に芸術性の萌芽を見出している
「何かに執着できる能力を天才と呼ぶ〜誰もかっては天才だった」
ジェフリー著の伝記は、予定調和的に出来事をプロットしていく狂気性がテーマであるように思う。エドウィンの死すらプロットとして捉えている
「この世の初めには沈黙があった。沈黙は あらゆる言葉の生みの母」
Posted by ブクログ
時系列で書かれているが乱雑な印象。文章は面白いのですが、盛り上がりどころに欠け、読んでいてやや苦痛。一般人の人生なんて実際はそんなものなのでしょうね。
Posted by ブクログ
これは… 最初ワクワクして読み始めたけど、正直一読しただけでは消化し切れなかった…。けど、すごい世界観、そして緻密な描写。子どもの世界がこれか、と言われれば否と思うけど、待てよ、実は自覚はなくてもハタから見ればそういうものだったのかもと、グルグル考えさせられる。簡単には底が知れない深さを持った作品であることは確か。
Posted by ブクログ
11歳で夭折した天才作家エドウィン・マルハウス。
その伝記を親友であるジェフリーが記した。
という設定の物語。
主人公が少年で、わたしが女性であるからエドウィンやジェフリーの気持ちがよくわからないのかもしれない。
エドウィンが魅力を感じた物事に、記憶に残る少女だったわたしは特に興味も無かったように思う。
ジェフリーはエドウィンを天才と言うが、エドウィンが感性豊かな少年だとは思うものの、だから天才というのとも違うように思う。
こういうところがわたしの平凡さなのかもしれない。
エドウィンが気に入った子の影響を受けすぎるところも自分に重ねられない。
好きになったローズやアーノルドに影響されるエドウィン。こういうところに感性の豊かさは感じられるが、独創的とも思えない。天才的な発想は模倣からはじまるという考え方もあるかもしれないけれど。
少年の物語であるが、健やかさや爽やかさは感じられず、同級生の死といった暗い出来事の多い、不穏な空気に満ちた作品だった。
ジェフリーがエドウィンについて離れない様子も奇異に感じられる。
こういったことを読者に感じさせるつもりで作者はこの作品を書いたとも考えられる。
なんというか、エドウィンもジェフリーも気味が悪い。
大人の気味が悪い描写は大丈夫だけれど、子供の気味が悪い描写は苦手なのかもしれない。
子供らしさというありきたりな物差しで、子供を計ろうとするツマラナイ大人になった自分に気づかされる一冊だった。
Posted by ブクログ
とある子どもの伝記作家がとある子どもの作家の人生を書いた物語。エドウィンの一生が生れた際から順を追って書かれているのかと思いきや、序盤のほうでは急に成長しているエドウィンとジェフリーが出てくる場面があって、少し混乱してしまう。でも、読み続けているうちに、「ああ、これはこういう意味のある場面だったのか!」と納得できるし、最初を読んでしまえば、あとは基本的には時間軸通りに物語が進んでいるので、読みやすくなる。
エドウィンは普通の子どもだと思う。ジェフリーはエドウィンを天才であるかのように扱っているけれど、どちらかというと天才というか非凡なのはジェフリーだと思う。でも、彼はあえてエドウィンの影に潜みながら、子どもとは思えない観察眼と筆致でもってその一生を書いている。所々に多すぎるほどの自分の意見や自分の身に降りかかった出来事を書いているところを見ると、ジェフリーはただ純粋にエドウィンの伝記を書きたかったのではなく、その平凡さを嘲笑するのが目的で書いたのではないかと疑ってしまう。そう思わざるを得ないほど、ジェフリーの目は、ただ尊敬する友達としてエドウィンを見ているようなものではないと思った。
最後の結末は夏の夜に相応しい、怖いオチだった。
それと、改行がほどんどなくびっしりと文章が書かれているため、読むのに苦労した。ミルハウザーを読んだことがなかったので、短編なんかを読んで、ある程度作者に興味を持ったうえでこの長編を読めば苦しまずにすんだかな、と少し後悔した。