岸本佐知子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いままで読んだことのないタイプの小説群だ。荒っぽく、むきだしで、パンク。しかも状況の把握がすぐにはできない。何度も行きつ戻りつして、読み進む。最後は、人生の理不尽さが出てくるものの、言いようのないふしぎな感動に襲われる。
鉱山技師の子としてアラスカに生まれ、子どもの頃はアメリカ各地やチリを転々とする。その後3度の結婚、4人の子ども。教師、掃除婦、電話交換手、看護助手、大学教員、そしてアルコール依存と慢性の肺疾患……作品の底流にあるのはこうしたキャリアと体験だ。
この本のラストの作品は「巣に帰る」。冒頭にカラス、終わりもカラスが登場。描かれているのは、人生と反実仮想。ルシア・ベルリンその人が少し -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・エンジェル・コインランドリー店
・ドクターH.A.モイニハン
・星と聖人
・掃除婦のための手引き書
・私の騎手(ジョッキ―)
・最初のデトックス
・ファントム・ペイン
・今を楽しめ(カルぺ・ディエム)
・いいと悪い
・どうにもならない
・エルパソの電気自動車
・セックス・アピール
・ティーンエイジ・パンク
・ステップ
・バラ色の人生(ラ・ヴィ・アン・ローズ)
・マカダム
・喪の仕事
・苦しみ(ドロレス)の殿堂
・ソー・ロング
・ママ
・沈黙
・さあ土曜日だ
・あとちょっとだけ
・巣に帰る
・物語(ストーリー)こそがすべて リディア・デイヴィス
初読みの作家でしたが、思った以上に楽し -
Posted by ブクログ
翻訳家、岸本佐知子のエッセイ、本の書評、実録日記。
この方を存じ上げないまま、タイトルと表紙の絵が気になり、パラパラと流し読みして面白そうだと思い読みました。
どこでとははっきり分からないけれど、読んでいるうちにだんだんと、この人って魚座っぽいな〜と思っていたら魚座だというフレーズがあり、やはりと思いました。
取り上げる題材、書き方、時折り挟まれる夢の話や荒唐無稽な話、それに対する著者の感じ方とその描き方などから、畏れ多いながらシンパシーを感じました(私と同じ!というわけでは決してなく、捉え方に親近感がわくところに)。
実際はきっともっときちんとされている方なのでしょうが、いい加減さ -
Posted by ブクログ
ネタバレルシア・ベルリンの短編集、三冊目(これで最後かな)。やはりすごく良い。相変わらず酩酊とドラッグとセックスと死にまみれていて、それでいて繊細な描写でむせかえるようなにおい、音、色彩に包まれる感じにぐっと引き込まれ、読みだすと止まらなくなってしまう。
悲惨な境遇も破滅的な出来事もあっさりと、からからしたユーモアとともに書かれていてそこには同情や好奇の視線を寄せ付けない強さがある。彼女の小説をどう表現すればいいか難しいのだが、起こるできごとも町のたたずまいも感情も一人一人の生も全部まるごと、むきだしになっているのだ。読むとあまりにリアルに目の前に迫ってくるから、その存在感にはいつも圧倒させられてし -
Posted by ブクログ
ネタバレたった一行にも満たないものから数十ページになるもの、物語というよりは断片としか形容できないものや、特殊な形式のものまで、作者が『短編小説である』と断ずるこの作品集には一見どうやって読めばいいのか戸惑ってしまうような短編が多数収録されている。
正直自分の知識と感性の未熟さで楽しみきれなかったものもあるけれど、全体としてすごくスリリングで、こちらが読もうとすればするほど冷静で淡々とした文章の奥から物語がとめどなく溢れてくるすごい本だった。
比較的長めの作品なら、執拗なまでに細かい描写と事実を淡々と書き連ねた文章を追う内に胸が痛くなるほどの激しい感情が湧き上がってくるし、極端に短い作品ならば、そのた -
Posted by ブクログ
はじめは、フーンこれがなんか色んな人が大絶賛の本か。なるほどなかなか読ませますなという感じで読んでいたのに、一編読み終えるごとに夢中になっていった。
あれ?あの話の彼女はこの人?この体験はあの体験のこと?というか、これ全部繋がってる……?
短編集というよりは自由な章立ての長編のような……作家自身の体験と深く結びついた物語が、ひとつ、またひとつ自分の中で繋がるほどに引き込まれていく。印象的なメロディーを繰り返しながら盛り上がっていく音楽みたいに。
読み終えた時には、一人の女性の人生――痛みと喜び、幸と不幸、激しさと静けさ、深い傷と赦し――が、確かな色と、音と、匂いを持って立ち上がってきた。
そ -
Posted by ブクログ
彼女が執筆した全76篇の短篇のうち65篇を岸本氏が訳したもののうち、19篇を収めた短編集。
順番としては「掃除婦のための手引き書」が先だったようだけど、私はこちらが先だった。まあ、短編集だし独立しているし、順番は関係ないか。
最初の2篇を読んだあたりでは「なるほど。おしゃれ。」程度で、少し時間が経つと思い出すのがしんどくなるくらいの印象でしかなかった。
そこからもう数篇読み、ルシア・ベルリンの語る語り口に慣れてくる頃になると、この作家のすごさが見えてくる。
表題作を読むあたりでは、岸本氏が後書きで「そして文庫の帯で」書いているように「一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにはいられ -
-
Posted by ブクログ
目で文字で読んだのに、
映画をみたように思い出すのが、ルシア・ベルリンの小説だ。
どの話も匂いに満ちていて、息苦しくなるくらいなのにそれこそが生だし、人生だと思わさせてしまう。苦しいし苦いのに、どこか甘美なのだ。
「オルゴールつき化粧ボックス」の幼き日の犯罪まがいのこと。(最後、家に帰ってきて「メイミーがカスタードとココアを運んできた。病人や罪人に与える食べ物だ。」そんな風にこのできごとを振り返る。まだ未就学児なのに。
「リード通り、アルバカーキ」や「日干しレンガのブリキ屋根の家」で、若い妊婦や母がたくさんの植物や花を植え育てる様の異様さ。(もちろん話の主体は夫の振る舞いであり、隣人の苛 -
Posted by ブクログ
何かの記事で、ダ・ダ・恐山さんがこの本を「面白かった」と言っていた、と思う。あやふやな記憶で購入した。
岸本佐知子さんの本は初めて読んだ。
ユーモラスな文体で軽やかだけれど、自虐的な何かも大いに含んでいて、楽しく読む一方で自分の過去の恥ずかしいあれこれが呼び覚まされたりした。あんなことしなきゃよかった、『常識』って難しい、というような。ちょっと痛痒さを伴う共感を覚えつつ、私のあれこれも軽やかな文体で記録したら少し面白くなるかなと考えた。
挿絵がかわいい。私が読んだのは文庫だけど、装幀・挿画をクラフト・エヴィング商會が担当していると知り「単行本買えばよかった…!」と思った。 -
Posted by ブクログ
『人が表立っては言わないことが世の中にはある。愛とか、そんな深刻なことではなく、もっと体裁のわるいことだ。たとえばお葬式はときどき面白いとか、火事で家が燃えるのを見るとぞくぞくするとか。マイケルのお葬式は最高だった』―『塵は廛に』
ルシア・ベルリンの三冊目の短篇集。三冊目の翻訳が出版されることはとても嬉しいことだけれども、これ以上翻訳される原本がないという淋しい気持ちも同時に去来する。読みたい、けれど読み終えたくない。届いた本を後回しにするべきか否か。結局手に取り、一つひとつ、いつも以上に丹念に読む。
岸本さんが言う通り、ルシア・ベルリンの文章は誰かに似ているという思いを抱かせない。いつも