中山七里のレビュー一覧
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冤罪を扱った作品は数あれど、「冤罪を生み出してしまった側」の苦悩にここまで踏み込む物語はなかなかない気がします。昭和の取調室の空気感は容赦なく、暴力も恫喝も証拠捏造も“当たり前”に行われていた時代。その積み重ねがどれほど取り返しのつかない結果を生むのか、胸がざわつくような描写が続きます。
特に、逮捕の起点となった刑事と、最終的に判決を下した高遠寺判事が向き合う場面は印象的でした。彼女の静かで凛とした佇まいが、作品全体の緊張感の中でひときわ美しく感じられます。
どんでん返しはさすが中山七里、という面白さ。ただ、あまりに巧妙で“ひねりすぎでは…?”と突っ込みたくなる瞬間もありつつ、それも含めて一気読みしてしまう力があります。
重厚な社会派ミステリーとエンタメ性のバランスが絶妙で、読後はしばらく余韻というより“圧”が残る一冊でした。 -
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岬洋介シリーズ3作目。
ショパンコンクールに出場した岬が
テロに巻き込まれるポーランドでまた謎を解き明かす。ピアニストと呼ばれるは殺人犯の正体は……?
今回はミステリー要素と音楽の描写か4対6くらい。音楽描写多め。それぞれの演奏者の演奏が描かれているが、他のとは違い美しい描写ではなく、想像できる写実という感じ。音楽を文字にしたらこうなんじゃないかと思わせられる描写は相変わらず。音楽を知らなくても、あの曲かなと想像し、実際に調べて見ようと思わせる力がある。
ミステリーとしては、どちらかと言うとテロ要素が強くてているため、こちらの印象は動悸や方法や犯人という視点に着目するのが少なかったかもしれない。
今回の視点人物であるヤンも、もがいて掴み取るタイプの人で良かった…… -
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『護られなかった者たちへ』の宮城県警シリーズ、
第二弾となるヒューマンミステリー。
『境界線』というタイトルがまさにピッタリだった。
東日本大震災を機に人生観が変わった人、被害の程度差から、失った人や物の大小、置かれる立場や境遇の違いなど、本当にたくさんの目には見えない境界線があるのだと思う。それらが一つ一つ丁寧に描かれている本作。
ラストまで一気読みしたが、とても物悲しい余韻だった。自然の猛威は時として人の夢や希望を飲み込み、生き方まで変えてしまう。
結局、本当に悪い人間は居なかったのだと思う。
五代と鵜沼の友情は、これからも続いて欲しい。
今年は東日本大震災から15年
節目になると報道されるが、復興が進む一方で、毎日震災の爪痕と向き合って暮らしている方々がいる。
同じ時に生きる者としてなにができるか。
これからも忘れずに暮らしていこうと思った。
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ネタバレハングマン 鵜匠殺し
中山七里の長編ミステリー。
前作「祝祭のハングマン」がとても面白く、過去にアンソロジーで取り上げられていた物語もとても良くて(今作の第一章)長編続編を心待ちににしていた次第だ。
今回は詐欺グループがテーマになっており、敵の概要が全く見えてこない不気味さがある。悪には悪の人生がある、それを鵜飼と重ねて進められるストーリーはとても重厚だ。
途中、詐欺グループのリーダーに感情移入してしまう場面がある。どんな人達にも幼少期があり、親がいる。そして彼らには現在、お互いに信用している親友がいる。もちろん、彼らは最低辺の人物達なのだろうが、本人達の描写にもっと怖さや醜さが滲み出る様な描写が見たかった。彼らの印象は過去の階層と被害者側からの目線でしか語られていないため、少し物足りなかった印象がある。
鳥海のチームメンバーもそれぞれに詐欺事件に関わっており、友人や知人家族が被害者になってしまう。その中で「シュウ」なる人物への足掛かりをきっかけに黒幕への壮大な復讐が始まる。
詐欺に遭った人達が悪いとは言わないが、人間の心の隙間に潜り込む手口は巧妙。絶対自分は大丈夫と思っている人達が被害者になり、加害者であっても重責や良心に耐えきれずに自死してしまう。不幸が不幸を呼ぶ連鎖だ。
鳥海達の決心、「シュウ」を殺すという決意はわからないでもないが、人を殺害する、正義を振りかざしての部分では動機が弱い気がする。相手は秀逸で絶対に捕まらない状態にあるが、復讐を果たす場面は坦々としすぎていた。もっと加害者に後悔というか恐怖心を煽る様な描写が見たかった。
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「知識が偏って社会的常識にも疎くなった人間が最初にする行為は、部外者の排斥だ。自分たちのしている行為が正義だと思い込んでいるから、何をしても正当化できると信じている。人間っていうのは、それほど馬鹿じゃないけど、それほど賢くもない。」
そんなことないって思いたいのに、
関東大震災の朝鮮半島出身者の虐殺事件とか、
甲府のサリン事件とか、
何よりコロナ禍で自分自身がマスク警察化した瞬間がひとときもなかったかと言われたら黙り込む。
「ワルツを踊ろう」と「犬神家の一族」のミックスっぽい冒頭は少し読み辛かったけど、一気読みに近かった。
裕也くん、いい子なんだけどな。
これからどうやって生きていくのだろう。
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どんでん返しという訳ではないが、そこに繋がるの!?という驚きがあった。
前作では御子柴がもしかしたら猟奇的な男なのかという疑惑があったので、穿ちながら読み、結果いい意味で印象が変わった。
今作はただの冷淡な男として読んでいたので、この事件を担当した理由が分かった瞬間時にはすごい芯がある男だったんだと少し感動すらした。
岬検事の話も、息子の件が出てきた時になんだか聞いた事がある...と思ってびっくりした。
御子柴シリーズは、「嗤う淑女」から興味を持ったので、色んな話が同じ世界線であることがわかると、かなりテンションが上がる。
こうやってまんまと中山七里先生の作品に手を出してしまうんだなと思った。