中山七里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ハングマンシリーズ2冊目。このシリーズは他の中山七里作品とあまり重なっていなくて、単独シリーズで楽しめます。でも、私刑執行人の話なので、全体的に重いです。私刑に至るまでの、ずっと苦い感じで終わる読み心地のシリーズになっています。今回は詐欺に引っかかって人生を踏み外す様々な人たちが短く積み重ねられました。また、指示役から上位の実行役として使われる人たちがいかに絡め取られているのかもわかります。闇バイト、オレオレ詐欺、投資詐欺、ホスト。そして、私刑を受ける側の、現実社会ではルフィと呼ばれていたようなトップの指示役が、人生を踏み外す契機になった犯罪(こっちは一昔前なので古典的なあれこれ)。
最後に闇バイトなどの指示役が海外でどのように逃亡生活をしているのかが語られるのですが、そちらは全く知らない世界だったので、投獄された生活を新鮮な知識として楽しめました。フィリピンのビクタン収容所という外国人抑留者収容施設が書かれています。
中山七里作品にしてはグロ少なめですが、内容的に高校以上。
主要登場人物
比米倉内記 城南大学生だがハッカーなど通信技術系に長ける。
春原瑠衣 警視庁捜査一課勤務 1巻の主人公
鳥海秋彦 元捜査一課の探偵 -
Posted by ブクログ
ネタバレ東京地裁に、中国で開発されたAI裁判官、法神2が試験導入された。
裁判官の仕事は激務で、なり手が伸びない割に職務は増えているという。証拠を調べたり、判決文を書くだけではない。例えばサイバー犯罪だったら界隈のことを知らなければ、適切な判断が下せない。そのためには勉強するしかない。
そんな中導入されたAIは劇的に作業量を減らしてくれるため裁判官たちに喜ばれていた。今まで、苦労して書き上げていた判決文も、AIは完全に同じ文章が再現できそうだ。だが、主人公の高遠寺円は人を裁くときにAIに頼ることに抵抗を感じる。
そんな時、一件の父親殺し事件が舞い込む。物証もあり、本人の証言もある。あとは量刑だけ、というところ、AIが出した判決は「死刑」。
裁判長も、裁判員も、AIが出したその判決に乗っかってしまおうとするが…。
巷で言われる「AIは間違ったことを言う時もある」「AIに偏ったデータを入れたら偏った答えを出す時がある」の究極形だと思った。AIのこの一言によって、被告の生命が左右される。AIの中身がブラックボックスであるなら、どんなデータからその結論が導かれたのか、誰にも分からない。
また、AIには過去のデータしか入っていないため、新しい発想は決して出てこない。
作品中では、親を殺したときに罰則が通常の殺人より重くなる「尊属殺人」が重要なテーマになった。
昭和48年、「尊属殺重罰規定違憲判決」である。要するに、「尊属殺人を重罪とする」という刑法自体が憲法違反のため無効、と判断した。これにより、それまであった法律は無効化された。このような判断は、前例から答えを出すAIには決してできない。
それが悪いと言っているのではないが、そういうことが必要になりうる現場にはAIは入るべきではなく、AIが活躍できる場には入ったらいい、と改めて感じる。
解説は、話題の「チームみらい」党首の安野貴博参議院議員。
著者の中山さんが提示したAIの瑕疵を見事にスルーして、「AIは合理的判断をするけど、人間が感情的に受け入れない」「納得しない」など、話のすり替えがひどい。結末まで読んだのか?
開発者が恣意的に不都合なデータを学習させない、ということが起こりうるという危険性は認識できたのか?
本編は面白いです。
AIに対する問題意識の一つを、「もし裁判所にAIが実装されたとしたら」という創作で表現している。
そして、みんなが「これいいじゃん!」となっている中の言語化できない違和感も、なんとなく持っている人は多いと思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレ千葉県で相次ぐ東トルキスタン人(ウイグル人)の不審な失踪事件と、日本で暮らしていた彼らの一人が殺害される事件が発生。日本の警察が被害者の友人やパートナーへ聞き込みを進めるうちに浮かび上がってきたのは、中国の公安局が国境を越えて日本国内で暗躍しているという恐るべき疑惑だった。そして、彼らが命を奪われた理由が「新疆ウイグル自治区の人間だから」という、あまりにも理不尽な理由であった。
本作を通じて最も心をえぐられたのは、背景に描かれる苛烈な人権弾圧の実態だ。2010年代という現代社会において、まるでナチスを再現したかのような強制収容所が実在し、民族浄化や女性から子どもを産む権利を強制的に奪うような非人道的な処置が行われているという。あまりにも酷い話に絶句すると同時に、「これが社会主義の国のスタンダードなのだろうか」と暗澹たる気持ちになった。
国として独立したいという気持ちが本当の意味で理解できる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
主人公の美智留自身が直接手を下して人を殺めるわけではない。彼女がするのは、人生に行き詰まったり、心に小さな歪みを持ったりしている人々に寄り添い、ほんの少しの「アドバイス」を与えることだけ。
借金に苦しむ人、承認欲求に飢えた人、容姿にコンプレックスを持つ人――。美智留は彼らの心の隙間を正確に見抜き、本人が心の奥底で望んでいる「悪意」や「欲望」を肯定して解放してあげるのだ。
美智留に背中を押された人々は、自らの意志で一線を越え、破滅の道を突き進んでいく。その姿を見て、私は「もし自分が人生のどん底にいる時に美智留に出会ったら、拒絶できただろうか」と考えずにはいられなかった。
彼女は悪魔のような存在だが、破滅へのトリガーを引いているのは、紛れもなく自分自身の弱さとエゴなのだ。
タイトルに含まれている「嗤う」という漢字には、あざ笑う、見下して笑うという意味がある。
中山氐はそこまで考えてたことに再度感動した。