上、中巻まで楽しく読めていたはずなのに下巻になっていつのまにか読んでいて苦しくなった。しかし、どんどん読み進めるスピードは早まった。
「他人がどう思うか」を考えて生きる主人公の歩と、「自分がどう思うか」を考えて生きる姉の貴子。
小さい頃から相手を気遣える性格だった歩は、大人になるまで男女問わず人
...続きを読むから好かれる人間だった。一方、主張が強く自分勝手な貴子は常に敵を作ってしまう人間だった。
そのため、この物語を読んでいる途中までは、歩のような生き方を理想的だと思った人は少なくないと思う。僕もその1人であり、またどちらかというと歩と似たようなタイプだった。
「僕はいつでも受け身でいたかった。勝手に怒り、さらにヒートアップしているのは、そっちだけだよ、という態度でいたかった。」
「僕は何かことが起きると、いつも自分がそれにどれだけ関与しているか確認した。そして、「僕は悪くない」と安心していた。」
上記の文章を読んだとき、自分の中で信じていた何かがグラッときた。他人のことを考えて行動していると同時に、他人に責任を押しつけるという考え方も成り立っていた。
僕は、中立であることは良いことだと考えていた。
「両者とも良い部分と悪い部分を持ち合わせている。だから、どっちが正解だとかそういうのはない。」
しかし、その考えを持っている僕には同時に、「巻き込まれたくない」という心理も働いている。
しかし、そんな歩にも、最終的には自分にとっての神様、言い換えれば「芯」ができた。
SNSが活発になり、昔よりも嫌われることに対しての恐怖心が強まった現代社会で、自分だけの芯を持ちそれを曲げないことはすごく難しいことだと思うが、歩のような変化は絶対必要だと感じた。
この作品を読んで、自分にとっての「すくいぬし」は何か改めて考えようと思った。
★印象に残ったフレーズ
「ものが増えるのが恥ずかしいんです。」