中原尚哉のレビュー一覧
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陸軍検閲局大尉・石村紅功,通称ベンと特高課員・槻野昭子(作者的にはこっちが主人公らしい)は憲兵に追われる身となる。非合法ゲーム『USA』を制作し、アメリカ人レジスタンスの手助けをしているらしい六浦賀将軍の首級を挙げてこの窮地を脱することを目指す。向かう先はレジスタンスと激しい戦闘がなされ壊滅状態にあるサンディエゴ。
片腕マシンガンガール、命がけのゲーム対戦、巨大ロボ「メカ」戦、キッチュな展開が実に大まじめに進むところがすごい。
大日本帝国治下のアメリカはディストピアには違いなく、ところどころで滅びてしまったアメリカの「自由」の理念が語られるが、そのアメリカも日系人を強制収容所で人権蹂躙し -
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第二次世界大戦で日独が勝った世界。ディックの『高い城の男』の設定を頂いて、新たな物語を紡ぐ。作者は日本文化びいきの韓国系アメリカ人。ティエリャスと読みたくなる名前だが、本人がトライアスといっているようだ。
アメリカは東側がドイツに支配され、西側が大日本帝国の領地となっている。それは『高い城の男』と同様だが、本書ではこれがユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパンと呼ばれている。略してUSJ、ええと大阪にそのようなものがなかったっけか。
日本がアメリカに勝つためには戦前の天皇制にかこつけた無責任体制がどうにか変わっていなければ無理じゃないかと思うのだが、この世界の日本はむやみと戦端を拡大せず -
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今注目している作家の一人。SF作家さんだけど、学生時代は東アジア学を専攻し、経営コンサル経て、環境専門雑誌の編集をしながら執筆を続けているそう。
『ねじまき少女』から思っていたけど、場面の空気を描くのがすごくうまいと思う。『ポケットの中の法』や『イエローカードマン』なんかは読んでいると自分の周りすらジトジトしているような気になる。土地のにおいがしてきそう。
環境問題にも造詣が深く、そのせいか物語もディストピアが多くて若干気が滅入るかも。でも目が離せない。
SFをやっと数作読んできたけど、科学技術単品を軸に進む物語より、その技術で社会や人間がどう変わったか、みたいな部分の割合が多めの作品が好きみ -
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ネタバレ木星から小惑星帯に氷を運ぶカンタベリー号。途中救難信号を受けて救助に向かったカンタベリー号に仕掛けられた罠。副長ホールデン、ナオミ、エイモス、アレックス取り残された4人。火星の攻撃の可能性を示唆したホールデンの声明から起きる火星と小惑星帯の対立。月の大富豪の娘ジュリーの失踪事件を捜査中の小惑星ケレスのミラー刑事。カンタベリー号に救難信号を送ったスコピュリ号に乗り込んでいたジュリー。ケレスから消えた犯罪組織の謎。火星の戦艦に救助されるホールデン。ホールデンに接触したOPAの代表フレッド・ジョンソン。攻撃され撃沈された火星の戦艦。宇宙ステーション・エロス合流したホールデンとミラー。エロスで進行する
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ネタバレ※ネタバレ注意
以下、物語の結末・核心に触れます
自分が人間であることを、どうやって証明できるのだろう?
人間でありたいAIが人間らしさを獲得していく過程と、人が幼少期から他者との関わりの中で、協調性や倫理を身につけていく過程は、本当に決定的に違うのだろうか。
違いがあるとすれば、それは
有機物かそうでないか、肉体があるかないか、
その程度の差なのではないか。
作中で描かれる、体内に遺骨を抱え、歩くたびにカラカラと音を立てる描写は、その違和感を象徴しているように思えた。
医師であるサイラスは、最後まで患者の側に居続け、役割を全うする。
それは一般的に想像される「人間ら -
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サイラス・コードが船医を務める小型帆船デメテル号は、探検団や船員たちを乗せノルウェー沿岸地域にあると噂される古代の大建築物の捜索へと向かっていた。
そして噂されるフィヨルドの隙間にある道を見つけたことで大建築物へ向かうことに成功するが……。
というお話。
本作はほとんど情報を入れずに読み始めた。何か探検してたら何か見つかっちゃうんでしょ、くらいの雑なイメージで読み始めたが、それが逆に良かった。
少しずつ少しずつ情報が開示される度に「あー、こういう話ね」「そういう要素も入れてんだ」と、なんとなくこんな話なんだろうなって予想して読んでいたのだが、まあそんな予想は当たるはずもなくて、予想の遥か斜め -
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上下巻を読み終えて。面白かったんだけど、どうもDEI的要素が鼻につく。主要人物のほとんどが女性で、同性カップルや重婚が「ごく当たり前」の世界として描かれている。この世界での強者である「警備コンサルタント」もなぜか女性ばかりで、登場人物の誰かがそれに疑問を呈す場面も一切なし。「女性が強いのは一般的」という価値観を押し付けられているような気がしてならない。
また、上下巻を通して数々の女性が登場する中で、明確に「美人」と描写されているのは一人だけだったと思うが、その人はわざわざ「肌(の色)がとても濃い」と強調されている。黒人は美しいって言いたいのか?なんだかなぁ・・・
作者のマーサ・ウェルズ氏を調べ -
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時代は19世紀ごろか。外科医のサイラスが乗り込む帆船デメテル号は、ノルウェー沿岸を航行していた。目的地は、フィヨルドの奥にあるという未知の「大建造物」。どうやら古代に建築されたらしい。
そして、その「大建築物」を発見したのもののデメテル号は大破し、サイラスはマストの下敷きになり死亡するが…
最初はタイムループ物かと思わせながらも、物語が進行するにつれて謎が深まるばかりだ。そして、予想の斜め上を行く展開となっていく。ネタバレになるので、詳しくは書けないが、アイディア勝負の一遍である。
決して「あとがき」を先に読んではいけない。その旨の「注意書き」がある。