中原尚哉のレビュー一覧
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パワードスーツ、強化服といえば、真先にハインラインの「宇宙の戦士」が思い浮かぶ。#日本SF読者クラブ
そのパワードスーツが登場する作品を集めた短編集。表題作は「宇宙の戦士」の流れを汲むミリタリーSFだが、ミリタリー色の強い作品ばかりではない。設定も未来や異星に限らず、19世紀のアメリカやスペイン内戦が舞台となっているものもある。テクノロジー的にも装甲や兵装の有無、AI、ハイテクから、内燃機関といったローテクまで様々あり。
その中でも、巻末に収められた「猫のパジャマ」は良い。巻頭の表題作との対比で、ほんのり感がたまらない。それから表題作は直訳すると、「地獄の半エーカー」となるが、和訳は有名なアニメ・コミックから来ているのだろうか。 -
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ゲームをテーマにしたSF短篇アンソロジー。
ゲームを扱った作品と言っても様々なパターンがあり、ゲームをやることがストーリーの基軸となるもの、ゲームの中の世界が書かれたもの、ゲームのような展開があるもの、などなど。それぞれゲームに対するアプローチが違っており、こんな風に扱うこともできるのかと驚かされるアンソロジーでした。
死んだ時に近くの人間に乗り移ってしまう男、友が残したゲームには友の死の真相が隠されている、脳の障害による病気の治療に効果があるというシミュレーションゲーム、命を懸けたパズルゲームの行方、FPSゲームの私ならではのプレイ法、MMORPG内のミッションでリアルマネーが手に入る理由とは。
どれもゲームの魅力と小説の魅力が融合し、思いもがけない展開に目を見張ります。
ゲームは元々大好きでずっとやっていたのですが、ここ15年くらいはご無沙汰しているんです。その間に様々な新しいゲームが現れ、新しい世界が広がり、新しい遊び方が増えてきました。
このアンソロジーに出てくるゲームにも驚かされることしきり。そうか今はこんな楽しみ方もあるのかと、ゲーム熱も再熱させられそうでした。
実に贅沢で満足度の高いアンソロジーです。 -
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ネタバレ宇宙海賊キャプテンブラック参上。狙うは月から輸送されてくるヘリウム3!(ただし、高級リゾートホテルのスイートルームが仕事場)
原題の「コルセア」というのがとても良い。ダブルミーニングでとても良い。そして、黒幕の狙いも良い。ただし、供給が無くなった場合、先物の扱いはどうなるのだろう?と言う疑問はある(現物を買い占めた上で供給を絶つというのは二重三重の罠で良いと思うが)軌道上の管轄について、実働戦力の保有を断念した軍が法執行機関(FBI)に責任をぶん投げるというのは、もの凄いパラドックスだが、確かに筋は通っている。(相手が他国の政府機関では無いし)将来的には、軌道上のみを管轄とする、『軌道保安庁』的な法執行機関(準軍事組織)ができるのかもしれない。エピローグで示唆された『軌道私掠船時代』の先の話として・・・(それはまた別の別のお話 -
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敵がナチスなら軍国日本はまだましってことか、とくに皇国の正義のためにつくそうとする誠の目からすると、USJの体制がいかに抑圧的かはところどころに垣間見えるだけである。
誠の同級生で優等生のお嬢様、しかしものすごく腕のいいパイロット橘範子が「ですわ」で喋り、誠と警備会社の厳しい訓練を耐え抜く烈女パイロット千衛子(苗字はないみたい)は男っぱくまくし立て、前作で登場した天才的女性パイロット久地樂(くじら)の息子・同名の久地樂は母と同様、のらくらと関西弁。見事にアニメ風の登場人物であるし、翻訳もその辺はあざとく訳している。ドイツからの交換留学生で誠が思いを寄せるグリゼルダがこの体制に疑問を差し挟ませる重要な役柄となるが、本作では皇国のため、ナチスのバイオメカをやっつけろという話で押していく。
誠ら士官候補生は、ドイツから亡命したギュンター博士の指導の下、バイオメカに互する性能を持ったリバイアサン級メカの実験に参画するが、そこにナチスの攻撃が……という展開。続編の予告あり。前作同様、新ハヤカワSFシリーズ1巻本と、文庫上下との同時発売。 -
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『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の続編。続編といっても直接話が繋がるというのではなく、同じ世界設定のもとでの、数年後の別の話である。それにしてもこのあまりにキッチュなタイトル。
第二次世界大戦で日独が勝った世界、アメリカは東側がナチスに支配され、西側が大日本帝国の領地となっており、日本合衆国(USJ)と呼ばれている。日本とナチスは一応は同盟国ながら、いまや世界を二分する敵対勢力であり、一触即発の様相を帯びている。さらにUSJではアメリカ人レジスタンスがナチスと手を組みつつテロ活動をしている。世界の主たる兵器はメカ。二足歩行の巨大ロボットである。そんな1994年。
一人称で語られる主人公、不二本誠は軍人の両親を戦争で亡くし、養父母のもとでつらい生活を送ってきたが、メカ・パイロットとなることを夢見ている。でも学校の成績は悪く、すんなりと士官学校に行けそうもない。そこで実技でなんとか状況打開しようとするが……。
天皇陛下のもと皇国が正義、ナチスが敵という世界観のもと、メカ・パイロットを目指す主人公の物語は巨大ロボット・アニメみたいなストーリーだ。ゲーム好きのだらしない高校生が皇国兵士として成長していく物語は、抑圧的な体制に疑問も抱かずに兵士として階級を上がっていくハインラインの『宇宙の戦士』を思い出す。
士官学校に入学できなかった誠は民間のメカ警備会社に就職し、そこで厳しい訓練に耐えて、メカ・パイロットとなり、警備の仕事で、テロリストに力を貸すナチスのバイオメカとの戦闘に巻き込まれる。USJがバイオメカと事を構えるのはこれがはじめてで、その圧倒的な力に皇国メカはやられてしまうのだが、誠は警備会社の多足メカでもって将校を助けつつ、何とか生き延び、その功績でバークリー陸軍士官学校でメカパイロットをめざす道が開けるというところまでが上巻。
バイオメカはメカの表皮に高い再生力を持った生体素材を用いたメカで、外皮は生物なので見た目は怪獣のようになるわけで、絵としてはカバーのようである。つまり、まるで『パシフィック・リム』。 -
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「スタートボタンを押してください(ゲームSF傑作選)」
全作が書籍初収録。
「紙の動物園」のケン・リュウ、「All You Need Is Kill」の桜坂洋、「火星の人」のアンディ・ウィアーら、現代SFを牽引する豪華執筆陣が集結。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞受賞作家たちが、ビデオゲームと小説の新たな可能性に挑む。本邦初訳10編を含む全12編を厳選した、傑作オリジナルSFアンソロジー。
という触れ込み。桜坂洋しか知らなかったのですが、どれも面白い。ゲームSFと言うジャンルすら初耳なんですが、こんな小説の世界観があったとは知らなんだ、、、
まず1発目の「リスボーン」が強烈なインパクトを放つ。未知なジャンルの場合、しかも傑作編、短編集等の纏め版だと、一番最初に読むモノの力が弱いと読者は離れる可能性大かと思いますが、それをさせないパワーがある。ゲーム(RPG等)の“何度でも生き返るという特性”を活かすだけでなく、こんな形で適応させるとは。All You Need Is Youに通ずるものがありますね。とりあえず、読み出して途中でGIVE UPすることは無いと思います。
続いて「救助よろ。」。ゲームばかりして遂には大学を退学してしまう彼氏に愛想をつかしたガールフレンドの下に、彼氏からSOSが届き、毛嫌いしていたゲームにログインする話。現実と仮想世界の違いに触れるワードが頻繁に出てくるが、ポイントなのが「何が現実世界なのか」ということ。読んだらすぐ違和感が出ると思いますが、その時点で既に創造者(彼氏)の企みは成功していたということ。ゲームらしい世界観が良く出ている作品でした。
翻って「1アップ」は、ミステリーに近い。ネットゲーム仲間が死に、彼の葬式で初めて出会う友人達の物語であり、彼は誰かに殺されたのではないか?という疑惑が、彼が残したゲームにより確信に近づいていく。思春期らしい描写が多く、青春モノのような雰囲気を漂わせます。ゲームといえば、シューティングや格闘技といったイメージを思い浮かべる人が多いと思いますが、この短編で使われるのは古くから愛されるロジックのRPG。このゲームをフックに、真相に迫ります。
どれもお勧めで、外れはない印象でした。其々の著者による作品も手に取って見たいものです。 -
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陸軍検閲局大尉・石村紅功,通称ベンと特高課員・槻野昭子(作者的にはこっちが主人公らしい)は憲兵に追われる身となる。非合法ゲーム『USA』を制作し、アメリカ人レジスタンスの手助けをしているらしい六浦賀将軍の首級を挙げてこの窮地を脱することを目指す。向かう先はレジスタンスと激しい戦闘がなされ壊滅状態にあるサンディエゴ。
片腕マシンガンガール、命がけのゲーム対戦、巨大ロボ「メカ」戦、キッチュな展開が実に大まじめに進むところがすごい。
大日本帝国治下のアメリカはディストピアには違いなく、ところどころで滅びてしまったアメリカの「自由」の理念が語られるが、そのアメリカも日系人を強制収容所で人権蹂躙したことはプロローグで触れられているほか、理念と現実の解離はしっかり見定められている。他方、大日本帝国の掲げた理想にも言及され、USJの世界とUSAの世界は徹底して相対化されたある種の公平さに作者のアメリカのアジア人という位置をみる。
作者もディックと自己の資質の違いに言及しているようだが、確とした価値観がいまだあるなかで現実の崩壊を描いたディックに対して、もはや1つの世界ではなくなってしまった現代におけるディック的世界を楽しむのもよかろう。 -
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第二次世界大戦で日独が勝った世界。ディックの『高い城の男』の設定を頂いて、新たな物語を紡ぐ。作者は日本文化びいきの韓国系アメリカ人。ティエリャスと読みたくなる名前だが、本人がトライアスといっているようだ。
アメリカは東側がドイツに支配され、西側が大日本帝国の領地となっている。それは『高い城の男』と同様だが、本書ではこれがユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパンと呼ばれている。略してUSJ、ええと大阪にそのようなものがなかったっけか。
日本がアメリカに勝つためには戦前の天皇制にかこつけた無責任体制がどうにか変わっていなければ無理じゃないかと思うのだが、この世界の日本はむやみと戦端を拡大せず、まずはドイツとともにソ連を攻略し、それから開戦。原子魚雷を3発お見舞いしてアメリカを降伏させるのが1948年。大日本帝国軍による日系人収容所開放から話が始まる。
主人公の石村紅功は日本軍の検閲官。ベニコという名は女の子の名をそのまま付けられてしまった。愛称ベン。物語の主たる時代は1988年。戦後、40年である。
大日本帝国が残ったわけだから、当然軍事国家であり、ベトナムで戦争したり、アフガニスタンでナチスと衝突したりしている。アメリカが戦争で勝ったなら、きっともっと平和な世界となっていたことだろう、あれ? という皮肉が効いている。テクノロジーは相当に進んでおり、スマホならぬ多機能の「電卓」が情報端末で、「機界」に接続して使用する。さらには軍の巨大ロボット兵器である「メカ」が登場するあたりが、帯に書いてある『高い城の男』+『パシフィック・リム』の謂いである。怪獣は出てこないようだが。
ベンはこちらの言葉でいえば優秀なハッカーだが、軍人としては勤務態度が悪く、昇進も遅れている。かつての上司である六浦賀将軍が姿を消し、大戦でアメリカが勝ったという設定の非合法ゲーム『USA』を作ったらしいということで、特高の槻野昭子が捜査に現れる。昭子は天皇に忠誠を誓ったファナティックな捜査官でその捜査といったらダーティハリーか、昨今のすぐに黒人を撃ち殺す警官の如し。これも皮肉が効いているとみるべきか。
現人神を頂点とした日本の支配を賛美しているわけではないが、さりとて、アメリカの支配する別の現実も賞賛できない書きっぷりがディックとの時代の違いを感じさせる。USJは悪夢的な世界だが、それはこちらの現実と同じくらいに悪夢的なのだ。
ハヤカワSFシリーズで出ると思っていたら、文庫が出ていたので買ってしまったが、なんと同時発売。
特高だけでなく憲兵が現れるわ、アメリカ人テロ組織ジョージ・ワシントン団が登場するわ、話がどういう方向に進むのかまるでわからない。