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Posted by ブクログ
第二次世界大戦で日独が勝った世界。ディックの『高い城の男』の設定を頂いて、新たな物語を紡ぐ。作者は日本文化びいきの韓国系アメリカ人。ティエリャスと読みたくなる名前だが、本人がトライアスといっているようだ。
アメリカは東側がドイツに支配され、西側が大日本帝国の領地となっている。それは『高い城の男』と同様だが、本書ではこれがユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパンと呼ばれている。略してUSJ、ええと大阪にそのようなものがなかったっけか。
日本がアメリカに勝つためには戦前の天皇制にかこつけた無責任体制がどうにか変わっていなければ無理じゃないかと思うのだが、この世界の日本はむやみと戦端を拡大せず、まずはドイツとともにソ連を攻略し、それから開戦。原子魚雷を3発お見舞いしてアメリカを降伏させるのが1948年。大日本帝国軍による日系人収容所開放から話が始まる。
主人公の石村紅功は日本軍の検閲官。ベニコという名は女の子の名をそのまま付けられてしまった。愛称ベン。物語の主たる時代は1988年。戦後、40年である。
大日本帝国が残ったわけだから、当然軍事国家であり、ベトナムで戦争したり、アフガニスタンでナチスと衝突したりしている。アメリカが戦争で勝ったなら、きっともっと平和な世界となっていたことだろう、あれ? という皮肉が効いている。テクノロジーは相当に進んでおり、スマホならぬ多機能の「電卓」が情報端末で、「機界」に接続して使用する。さらには軍の巨大ロボット兵器である「メカ」が登場するあたりが、帯に書いてある『高い城の男』+『パシフィック・リム』の謂いである。怪獣は出てこないようだが。
ベンはこちらの言葉でいえば優秀なハッカーだが、軍人としては勤務態度が悪く、昇進も遅れている。かつての上司である六浦賀将軍が姿を消し、大戦でアメリカが勝ったという設定の非合法ゲーム『USA』を作ったらしいということで、特高の槻野昭子が捜査に現れる。昭子は天皇に忠誠を誓ったファナティックな捜査官でその捜査といったらダーティハリーか、昨今のすぐに黒人を撃ち殺す警官の如し。これも皮肉が効いているとみるべきか。
現人神を頂点とした日本の支配を賛美しているわけではないが、さりとて、アメリカの支配する別の現実も賞賛できない書きっぷりがディックとの時代の違いを感じさせる。USJは悪夢的な世界だが、それはこちらの現実と同じくらいに悪夢的なのだ。
ハヤカワSFシリーズで出ると思っていたら、文庫が出ていたので買ってしまったが、なんと同時発売。
特高だけでなく憲兵が現れるわ、アメリカ人テロ組織ジョージ・ワシントン団が登場するわ、話がどういう方向に進むのかまるでわからない。
Posted by ブクログ
面白い。日本とドイツが勝利した歴史改変物。日本が原爆を投下してUSAをUSJとして統治、って設定が燃える。科学の水準も1988年で既に現代を凌駕してるのが面白い。まだイマイチ主人公には感情移入できず、ただこの世界観を楽しむのみ。猟奇的な描写にはちょっと辟易。作者は韓国系アメリカ人だということだけど、日本文化について相当深い理解がある様子で興味深い。現代日本人の感覚からすると、戦後も続いた日本帝国のエクストリームすぎる描写が誇張にも皮肉にも思えるんだけども、冷静にもしあの戦争に負けてなかったらこうなってるかもな、と納得出来もする。これは日本のことよく知らないと書けないし、そこに脱帽。それと、訳の素晴らしさが特筆できるレベル。日本人名にどの漢字を当てるかとか、劇中の大阪弁の描写とか、これは訳者と著者が相当やり取りしてないと出来ないはず。下巻にも期待。
Posted by ブクログ
1948年、アメリカでの地上戦に日本の皇軍が謎の破壊兵器を投入し、アメリカ全土を制圧してユナイデッドステイツオブジャパン(USJ)を建国した。1988年、終戦時に生まれたベンこと紅功は、USJにおける日本皇軍の諜報部に所属していた。ある日、元上司と思われる男性から「娘が死んだ」と電話を受けた…。
ディックの名作『高い城の男』同様、第二次大戦を起点としたパラレルワールド物である。もっとカラッとドライな話かと思いきや、わりかし重めのストーリーで面食らった。
日本皇軍、諜報部、憲兵といった日本人コミュニティに対して、テロ組織ジョージ・ワシントン団が裏の裏をかいて手を回してくる事に対し、日本軍は情け容赦ない鉄槌を下していく。
割と初期から100円で売られていたのだが、おそらく日本を悪役として描いた反日的な部分に嫌気が差した読者も多かったのではないかと考えられる。しかし、よく読み込んでいくと細部にそうではないことが見えてくるのだ。
翻訳の作品には非常に珍しく、どうも原作者の意図と思われる日本人名が漢字で書かれる。最初にでてくる日本人が深作慧(ふかさくさと)という漢字を書く時点で、なんか普通じゃないぞという雰囲気が漂う。いくらなんでも作者の意図を無視して六浦賀(むつらが)なんていう漢字を使わないだろう。
また、序盤では「天ぷらバーガー」などと適当っぽい食事に関しても、卵かけご飯(ゆで卵だが)、「本式の伊勢うどんを出す店は少ない」とまで来ると、この人、日本マニアで日本大好きなのだなと思わざるを得ない。
1988年に電卓(携帯電話)だの、1948年に巨大ロボットだのと、ありえない設定がでてくるのも、本当じゃないんですよという意思表示なのだろう。『高い城の男』で易を使って意思決定をしていたこととも似ている。
ただ、上巻ではさほど盛り上がらなかったので☆は3つ。ようやく巨大ロボットらしきものがでてきたので、後半に期待。
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