司馬遼太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【感想】
「竜馬がゆく」とは大きく異なり、現世に近いドロドロとした人間関係がエグイ・・・
大久保と西郷、2人とも日本の将来を展望していると言う意味では同じ立場かつ同じ目線なのだろうが、
それぞれの立場やわだかまりがズレを生じさせつつ、それが日本全体に波及していっている。
いくら影響力がある者同士とはいえ、国家を揺るがすくらいの問題になるのが今では考えられないなぁ。
とは言え、今は爆発寸前で一点の揺らぎもない状態で物語は進んでいる。
たまに突き合いがある程度でハラハラする事もなく、少々読んでて退屈になってきた。
【あらすじ】
西郷に続いて官を辞した、もとの司法卿・江藤新平が、明治七年、突如 -
Posted by ブクログ
事実誤認の多さが、今では批判されているらしい
ウィキペディアなどで調べてみてください
しかしまあ娯楽小説ですから
日露戦争の旅順攻略戦において、六万もの犠牲を出した乃木希典は
今なお愚将との謗りを受けることが多い
ただ実際の問題は
当時すでに、半ばお飾りの大将だった乃木自身のことよりも
参謀の伊地知幸介らが、己の固定観念とプライドにとらわれすぎて
外野の意見を聞かなくなっていた点にあった
損害が大きくなって、やむを得ず大本営の進言を受け入れたが
それを上手く生かすこともできないまま
結局、児玉源太郎においしいところをさらわれる格好となった
マクロな観点で戦場を眺めわたす目を、伊地知が持ち得な -
Posted by ブクログ
ネタバレ幕末の動乱の中で偶然にも出現した賢候たち。実際賢かったとは思うが、それ以上に各国の頭という立場故に誇張された噂が時代を変転させた原因となる、言い換えれば実力以上の影響力を残した賢候達の物語といえます。
土佐の山内容堂は豪傑で酒飲みという印象だが、歴史の大きな立役者たる坂本龍馬の存在を知らず、志士である武市半平太を死に追いやるなどで佐幕に固執したために視野が狭くなり残念な末路に。
島津久光についても同じようなものを感じるが自己に驕りすぎる気質があり、大成を成したとは言えない存在に。
伊達宗城、鍋島閑叟についてはあまり知らなかったが今回の短編で興味がもてた。
司馬作品は長編こそやはり楽しく、短編 -
Posted by ブクログ
「御為」
という至上の(もしくは無意味な)目的もしくは正義の名のもとに、人殺しであろうが物盗りであろうが、すべてゆるされるというふしぎな時代がはじまっているのである。
正義の時代というべきであった。
日本人に「正義」を教えたのは、強烈な観念論である水戸学であったろう。
幕末、革命の必要が成熟しつつも、普遍的な革命思想や哲学が入らず、結局、世界史の流れとは無縁の、手持ちの水戸学的尊王攘夷でもって革命思想の代用とせざるをえなかった。
その「正義」のもとに文久年間には天誅が流行して佐幕派ーー開国主義者ーーが暗殺され、のちには攘夷御用という御用盗まで流行して江戸、大坂の富家をおびやかした。と -
Posted by ブクログ
「イノサンよ、新薬についてちゃんとした本がないと、蘭方の医者が迷うのではないか」
と、関寛斎が伊之助に話したことから、この両人の関係が密接になった。寛斎は伊之助の実力に敬服していたが、ひとつにはこういうかたちで伊之助を解放しようと思ったのにちがいない。
関寛斎からこの著作についてすすめられたとき、伊之助はしばらく否とも応ともいわず、斜視の視線を宙に遊ばせていた。
寛斎からみれば、無感動な横っ面がとげをふくんでそこに存在している感じで、なにか不調和なのである。
(考えているのだろう)
寛斎は推量したが、
(これが、ひとに嫌われるもとでもあるのか)
とも思い、さらに考えてみた。寛斎の思案 -
Posted by ブクログ
「人間は、本来、猛獣かひどく気味のわるい動物だったかもしれん」
と、いった。そのくせ人間は虎のように一頭で生きるのではなく、群居しなければいきてゆけない動物なのである。群居するには互いに食いあっては種が絶滅するから食いあわないための道徳というものができた。道徳には権威が要るから、道徳の言い出し兵衛に権威を付け、いやがうえにもその賢者を持ちあげてひろめた。しかし道徳だけでは、事足りない。人間の精神は、傷つけられやすく出来ている。相手を無用に傷つけないために、礼儀正しい言葉使いやしぐさが発達した。人間にとって日常とはなにか。仕事でも学問でもお役目でもなく、それぞれの条件のもとで快適に生きたい、と -
Posted by ブクログ
【感想】
大久保利通の若干の狡猾さはあるものの、彼とて親友の西郷を出し抜く事に心を痛めているような描写もあり可哀相だなと思った。
しかし、後年にも語り継がれる西郷の偉大さからは想像できないほど、晩年(というか明治時代)の西郷は愚鈍な人間っぷりだった。
それもそのはず、西郷には桐野利秋というフィルターがかかっていたからねぇ。
優秀な人材はもちろん、些細な情報からでさえ彼は蚊帳の外になってしまった。
YESマンで周りを固めた「お山の大将」になってしまえば、こうも愚かになってしまうのだろう。
そう思えば、自民党圧勝のこれからの日本がどうなるのか、先行きが怪しく感じてしまう・・・
あと個人的に、今