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ロシアは、その東部の寒冷地帯の運営を円滑にするために、日本に食糧の供給を求めた。が、幕府が交易を拒絶したことから、報復の連鎖反応が始まった。ロシア船が北方の日本の漁場を襲撃すれば、幕府も千島で測量中のロシア海軍少佐を捕縛する。商人にすぎない嘉兵衛の未来にも、両国の軋轢が次第に重くのしかかってくる…。
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Posted by ブクログ
▼こ、これはすごい・・・。江戸後期の船乗り/商人である、高田屋嘉兵衛さんの生涯とその時代を描く司馬ワールドなんですが、この五巻はすごかった・・・。 ▼高田屋嘉兵衛さんは、その生涯の後半というか終盤のあるポイントで、「ロシア軍艦に身柄を拉致される。そして軟禁生活を送るが、最終的にロシア人と信頼関係を...続きを読む築き、身柄の解放を勝ち取る。そして日本に軟禁されているロシア軍人の解放に尽力して実現する」という、言ってみれば日本史の舞台に躍り出る訳です。それはまあ、ある程度こちらも織り込み済みで読んでいます。その事件がなかったら、高田屋嘉兵衛さんはさほど歴史にゴシック大文字で残るような存在では、恐らく無かった。この本が書かれることも、無かったわけですから。 ▼そして四巻までかかって、大雑把理に言うと、その、「大事件」の前夜までが描かれるんです。「いよいよ、事件が始まるかな!」と思って第五巻を開く訳です。読み始めると、まずは、「えっとね、一旦、嘉兵衛から離れて、事件が起こるまでのロシアと北海道の成り行きというか、事情っていうか、そういうものを紐解いて話すね」というような感じ。つまり、事件を味わうための予備知識直前再注入!という。 (四巻まででも、ちょいちょい、かなりな量のそういう閑話休題があったんですけれど) ▼そうしたら・・・その、「ロシア&北海道の歴史事情解説」が、長いんです。そして・・・なんと、五巻はほぼほぼそれだけで終わってしまうんです・・・。な、なんて大胆なというか・・・なんて自由なと言うか・・・。 駆け出しの小説家だったら、編集者が秒で却下して絶対に許さない所業です。 ▼で、それが面白いのかと言うと、「全然おもしろくないよ!いい加減にしろ!ドラマチックな小説を読ませろ!」という読者もいっぱい、いっぱい、居ると思うんです。個人的にも恐らく10年20年前なら、そうだったと思います(今、50代なんですが)。 ▼なんだけど、今の自分としては、この五巻も大変に面白かった(笑)。分かりやすいし、「へ~なるほど」がキラキラと散りばめられています。俯瞰の語りの中に、躍動するロシアの軍人や、北海道の日本人や、当時の幕閣までが体温を感じられます。 ▼要は帝政勃興と隆盛発展とともに東へ東へシベリアへと、貂の毛皮を求めて進んできたロシアの冒険的人物たち(ほぼほぼアウトローな人々)が、皇帝のお墨付きを得て、ロシアそのものとして「遅れた帝国主義の暴虐強引さ」をもって、満州へ、あるいは樺太へ、そして北海道へと迫ってくる歴史的な成り行き。 (その暴虐強引さ、って言うのは大正昭和と、日露戦勝後の日本もなぞっていくものなんですが・・・) ▼それがヒタヒタと、江戸幕府体制に迫ってくる。幕府は鎖国してます。摩擦を起こしていく。そういう「個々の人格の問題もあるけれど、それに惑わされちゃいけない全体状況」みたいなものが、ものすごく指紋露わに見えてくる感じです。 ▼日本史で言うとこの温度が、ペリー来航で沸点に達して、明治維新が起きる。明治維新っていうのは、江戸時代の商品経済の爛熟(高田屋嘉兵衛的な)と、西欧帝国主義(嘉兵衛が拉致されるロシア艦隊的な)の接近。このふたつが出会って、、、、「俺たちは十分文化も経済も満ち満ちてるんだから、清国みたいに植民地化されたくないよ!武力が強いからってあんまりにも横暴だろ!」という戦いとして始まるんですね。無意識下でしょうが。 (同様の構造上の、加害者に、昭和日本はなるんですが) ▼帝国主義の時代には、言ってみれば先進国はみんなプーチンさんやトランプさんみたいだった、とも言えます。ついこの間まで奴隷貿易してた方々ですから。「力こそ正義なり」。対抗するには富国強兵しかありません。その手段としての維新。欧米化。旧制度の反発と鎮圧(西南戦争)。手段としての憲法、議会。そして日露戦の勝利=近代史上初の有色人種の白人種への勝利。それで、言ってみれば幕末維新は、読点が打たれるんだなあ、と思いました。 (だからその後は、加害者への守勢から、「自分が加害者になる」という方針転換になる。その時点で、新たな価値軸を見いだせなかった。仕方ないことかも知れませんが)
江戸期の商人高田屋嘉兵衛の生涯を描いた大作。全六巻中の五巻。いよいよロシアと日本が衝突する時を迎える。 江戸幕府とロシア、それぞれの立場の良く分かる巻。余談がほとんどを占め嘉兵衛はほとんど出てこない。ラクスマン、レザノフ、ゴローニン。日本史で習った人物たちが活き活きと描かれる。 ここまでの四巻で...続きを読むは全く出てこなかったロシア。唐突に現れるのも構成なのだろう。当時の日本人の驚きはもっとずっと大きかったことだろう。 現代まで続く日露の国境の問題の原点ともいえる両国の蝦夷地開発の歴史が本作で良く分かる。 残り一巻で結末まで持って行けるのか、まだまだ予断の許されない展開が続く。
2014.11.6 ロシアと日本の話。司馬遼太郎の戦争観、国家観が表れている。 嘉兵衛の蝦夷での活躍は凄まじかったのだろう。船と海を愛した好漢。ロシアとの出会い、次の展開が楽しみだ。 幕末前、この時期は商品経済の勃興という矛盾、鎖国という矛盾が露呈し始めていた。この矛盾が幕末、明治維新の原動力にな...続きを読むったのか。
嘉兵衛さんの出番がものすごく少なく、ロシアの歴史に関する記述が大半を占めた。第4巻の一部とこの第5巻を丸々使ってロシアという国を解説する司馬遼太郎さんの心意気を感じた。日本にとってロシアは決して優しい隣人ではなく、日露戦争、ノモンハン事変、第二次世界大戦、東西冷戦、今日では数多くの領空侵犯と色々なこ...続きを読むとが起こった。ロシアとの摩擦は江戸時代後期から続く問題なんだと痛感させられた。 ピョートル大帝やエカテリーナ二世といった専制君主に率いられたロシアという国の歴史を紐解く参考になるとともに、最終巻が楽しみになります。
次巻の6巻で主人公・嘉兵衛がロシアに拉致されることの背景説明の巻。 当時のロシアの国情に関する記述や、ロシアから日本に初めてつかわされた使者レザノフの航海、レザノフ配下による択捉島の日本人集落襲撃のエピソード、これに対して当時の幕府がロシアに対する態度を硬化させロシアからの使者ゴローニンを2年間幽閉...続きを読むした経緯、といった周辺ストーリーを緻密に描写。
読んだきっかけ:古本屋で50円で買った。 かかった時間:8/19-9/23(34日くらい) あらすじ: ロシアは、その東部の寒冷地帯の運営を円滑にするために、日本に食料の供給を求めた。が、幕府が交易を拒絶したことから、報復の連鎖反応が始まった。ロシア船が北方の日本の漁場を襲撃すれば、幕府も千...続きを読む島で測量中のロシア海軍少佐を捕縛する。商人にすぎない嘉兵衛の未来にも、両国の軋轢が次第に重くのしかかってくる……。(裏表紙より) 感想:
この巻は、長大な前フリだと思います。高田屋嘉兵衛が全然出てこない。最後のほうに、少し出てきたと思ったら、 嘉兵衛が大きな歴史の渦に巻き込まれそうな予感を残し終了。といってしまうと簡単ですが、これから本格的に絡んでくるロシアという大国の( 嘉兵衛と同時期の )歴史的背景が緻密に描かれており、この伏線が...続きを読むどのように最終巻で絡んでくるのか楽しみです。
5巻では、嘉兵衛の話を離れ、当時のロシア事情や間宮林蔵について紙面を割いている。脱線と思いきや、6巻で嘉兵衛がロシアに行くことになる背景に繋がってくるのだが。 ピョートル大帝がロシアの近代化の開祖であるが、当時、その近代化を進めたのは北欧やドイツ系の人だったりする。 エカテリーナ2世もドイツ人だ。...続きを読む また、コサック、農奴などロシアの特殊性に関しての考え方は「坂の上の雲」にも繋がっている。 ロシアだけなく、欧州の近代国家について興味深い考察が散りばめられている。 『ポーランドはロシアと同じくスラブ人であるが、宗教は(ロシア正教でなく)ローマ・カトリックを国教としている。 欧州や中近東における宗教は、東アジアにおけるそれのように希薄なものではない。 「人も普遍的な思想(宗教)によって飼いならせることがなければ野獣に近く、人になりえない」という説明不要の考え方が、アーリア人やセム・ハム語族にあった。』
この巻では物語の本筋はあまり進まず当時のロシアや日本の時代背景など物語をより楽しむための話が続いた。話が進まないため、じれったくはあったがこれはこれでありだと思った。ゴローウニンの『日本幽囚記』をものすごく読みたくなった。
嘉兵衛に関する記述は少なく、当時のロシア事情や日本への航海、襲撃などについて主に書かれています。前半とイメージが違うのでなかなか読むペースが上がりませんでした。レザノフとクルーゼンシュテルンの航海。幕府の拒絶。カラフト、サハリン。ユノナ号とアヴォス号の日本襲撃。ゴローニンの拘束など。
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