司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ司馬遼太郎は、1996年2月に亡くなっているが、本巻はその年の巻であり、実際は5つの章のみで、あとは随筆集が掲載されている。最後のテーマは海軍である。海軍は商船を守る形で誕生したということが語られている。
結局司馬は、本シリーズを通して何を言いたかったのだろうと考える。
司馬は日本をこよなく愛していると感じた。室町時代に現代に至る文化の萌芽が芽生え、育っていったが、昭和初期の統帥権解釈の拡大によって、その日本は暴走を始め、滅んだ。司馬が愛している日本は、この昭和の初期までだと感じた。その愛で様々なポイントに光を照射して浮かび上がった像を鋭く描写しているのが、このエッセイの形だと思う。
自分の言 -
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ネタバレ前巻からの流れで、複数章にまたがって一つのテーマを掘り下げる形が多くなっている。神道、鉄、宋学、看羊録。
神道も宋学も仏にひとまとめにしてしまえ、という動きがあったことが面白かった。日本人も面倒くさがり、というか、几帳面というか、捨てられないというか、柔軟すぎというか、乱暴というか...
神道で面白かったのは伊勢神宮のことである。伊勢神宮は内宮と外宮に分かれていて、天照大神が伊勢の五十鈴川のほとりに御魂代がやわたの鏡として祭られたのが、内宮の起源らしい。外宮は五世紀後半になってやっと造営されたらしい。外宮を造営するために食物の神が探され、丹波の比治山の頂上の麻奈井という池のほとりにまつられて -
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ネタバレ今回特に力が入っているのは統帥権の流れ。昭和の太平洋戦争を経て国を滅ぼしたのは、この統帥権の拡大解釈のなせる業だ、というのが著者の思いである。この拡大解釈の流れが何と4章にまたがって記載してある。
幕末の藩軍を勝手に動かした西郷隆盛で統帥権のあいまいさががきざし、明治初年の薩摩系近衛兵の政治化で出発し、首相浜口雄幸が昭和五年+-月+四日にロンドン海軍軍縮条約調印に際し、「統帥権干犯」と糾弾されたのちに右翼に狙撃され、命を落とした。そこから昭和史は滅亡へと向かったというのが著者の言い分である。
統帥権があるのは天皇だが、統帥機能の長(例えば参謀総長)は天皇に対して輔弼の責任をもち、何をやろうと自 -
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船持船頭の高田屋嘉兵衛から、蝦夷地開拓者としての高田屋嘉兵衛と変わっていく部分の話しである。
そして、嘉兵衛の話しではなく、横道もかなり多い。横道の多さは司馬文学の特徴であろうが、この巻は特に多かった。北方領土及び千島列島(クリル諸島)におけるロシアとの領有の歴史、日本とロシアが先住民に対してどのような政策を行ったのかについて書かれている。日本の政策が今の政府がそうであるように、トップが変わるごとに二転三転していた様子も記されている。
北方四島といわれているが、国後島までは嘉兵衛以前でも、船も航法も技術も無く行き来が自由にできたようであるが、択捉島は遠い島であった、ということのようだ。その -
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ようやく翔ぶが如くを読破。いやぁ、長かった。そして途中辛かった。元々2008年大河ドラマ「篤姫」を今年の8月に全話DVDで観終えた後、「その繋がりで薩摩藩のことをもっと知りたい」という動機で読み始めたのだが…。確かに薩摩藩士による薩摩藩士のための小説なのだが、篤姫や私のお気に入りの家老:小松帯刀は全く登場しないし、やたら政治学的な記述が多く楽しめないというまさに予想外のコンテンツ。そのため、巻によっては1ヶ月近くも要したものがあった。まぁ、その時は「新書太閤記(吉川英治著)」シリーズやら東野圭吾作品、池井戸潤作品やらに浮気していたのであるものの。
とにかく読み終わった。今まで数多く読んできた -
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読むスピードがぐんぐん上がってきた。前半など、1ヶ月近くかかった巻もあったのに。
いよいよラスト2巻、クライマックスに近づいてくる。有名な田原坂の戦いも事細かに描かれている。
私にとって嬉しいのは、佐川官兵衛や山川浩(大蔵)など今年の大河ドラマ「八重の桜」にて主要人物だった元会津藩士がしっかりと取り上げられていることである。もちろん、政府側。薩摩と会津は幕末期に血みどろの因縁があり、その怨恨を政府側は上手に利用するのである。佐川や山川にとっては憎き薩摩であり、戊辰戦争での恨みを晴らさんと意気込む。
残念ながら佐川はこの西南戦争で戦死するのだが、大河ドラマでも中村獅童が凄絶な演技を見せてく