司馬遼太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
乃木希典の一生を冷ややかな筆致で描く。日露戦争のくだりは『坂の上の雲』を読めばいいとして、後半部、明治帝の崩御に殉じ妻と自死する場面だけでもこの本は読む価値がある。
『坂の上の雲』では触れられていなかったが、乃木希典の陽明学への傾倒についての言及と考察が興味深い。陽明学派にあっては、【おのれが是と感じ信じたことこそ絶対真理であり、それをそのようにおのれが知った以上、精神に火を点じなければならず、行動をおこさねばならず、行動をおこすことによって思想は完結するのである。行動が思想の属性か思想が行動の属性かはべつとして行動をともなわぬ思想というものを極度に卑しめるものであった。】
物事に客観的態度をとり時に主観を合わせつつ物事を合理的に格物致知しようとせず、おのれが道が常に正しいとする考えは学問というより宗教ですらある、と司馬は断じる。
そーいや、自分の価値観や前提を疑わない人って、人の話を聞かないのに加えて、妙に行動的なところがあるよなぁ。思想と行動を一致させることが正しいと思ってるとこもあるなぁ、と思ったりしました。74点。